玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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戦争と平和読了

戦争と平和 (アニメージュ叢書)

戦争と平和 (アニメージュ叢書)

富野由悠季監督に上野俊哉大塚英志ササキバラゴウ各氏が戦争と平和について聞いた本。
だけど、もちろん富野監督だから戦争と平和だけの話になる、って言うよりはトミノの話。
前半はインタビュアーの三人が「〜〜だと思うんですけど、監督、いかがでしょう?」って完全に仕立てからお伺いを立てていたので、議論が富野監督中心になってて退屈だったんだけど、後半は各氏の専門分野の知見で富野監督に反論し始めたのが面白かった。
富野監督は異種格闘技みたいな物言いの時の方が面白いので、富野監督を奉る構図はあまり面白くない。
富野監督は何にでも首を突っ込んでいくアグレッシブさがあるので、各分野の専門家に思いっきり「直感」で突っかかっていって、「確かに」とか「監督、それは違うぞ」って言われたりするのが面白いし、読者の私も知見が広がる。あと、富野監督は専門家から話を聞きだすのが上手いと思う。
いや、富野監督がインタビューを受ける本だけど、監督の専門はガンダムだし。でも、監督ってプロモーション以外の所でガンダムの話するのはあんまり好きじゃないし。
なんだけど、監督の言ってる事はやっぱり監督っぽい雰囲気があるわけで、大富野教信者の僕としてはそれでとてもよかった。
監督の基本スタンスとしては「戯作を面白く、かつ公共に発進できるものにする」っという事が第一なのだ、って言うのは一貫してて良いなあ。
てなわけで、ガンダムから思想を読み解くというよりは戯作としてのバランスだとおっしゃるので、「戦争と平和」という大上段に構えたテーマについてはあんまりよくわからん。社会学の本でもないし。
とりあえず、良い感じの言葉を抜粋。

富野「間違いなく母親から生まれてくるということです。(中略)だから、他の人間とお肌のふれあいと言う物が嫌いな人間はいないはずなんです。ところがそれが対人恐怖症になったりするのはどういうことかというと、これは産まれた後の環境の問題、育てられ方の問題と言うような、後発的に形成されていった資質だと思えます。
(中略)
帰巣本能は人間にとっての中心軸として、願望として持っているんだろうと思っています。だから、親からいじめられた子が気の毒だと思うのは、自分が帰るべき所が怖いから帰れなくなってしまうという不安感が、その子にとっては一番の恐怖を生み出しているだろうと思うからです。
(中略)
その不安が、その人が人生を心楽しく暮らせるか、うれしみながら生きていけるかということを左右するから、決してあってはいけないということでしょう。」

ササキバラ「ロジックにしてしまったら、自由に物語を組み立てられなくなってしまうという事ですね」
トミノ「そうなったら辛気臭いお説教話はできるかもしれないけれども、当然『おめえ程度のアニメでできるお説教なんて聞きたくないよ』って話になるでしょう。僕としては戯作していくに足るだけの高みに持っていきたかった」

富野「ここで僕が言っている『気持ちいい』というのは、エクスタシーの話なんです。オーガズムの話をしているんです。なんかちょっと気持ちいいなということとは全然違うのです。
ならばセックスするしかないだろう、と言う人も居るでしょう。もちろんそれも入っていますし、それだとかなり近道でそこへいけるでしょう。しかし、それ以外にもこんなにたくさんの道があるんだということを言いたいのです」

富野「明治の日本の人口は3千万くらいしかいなかったんです。つまり、今の七割方の人間が死んだからって日本と言う国家がなくなるわけじゃないんです。
(中略)
重要なのはどういうふうに軟着陸するかということですから、結婚しない人が増えているのなら、それはめでたいよね」

やっぱり富野監督の考えている事は僕にすごい影響をしている、と言うか、フィーリングが合うなあ。