玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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劇場版∀ガンダムII 月光蝶 再見 黒歴史終焉

2年前にテレビ版を再建する前に先に劇場版を見て書いた感想は↓。
http://d.hatena.ne.jp/nuryouguda/20080709/1215593051


2年前は面白かったようだ。しかし、2年前に劇場版を見て面白かったところはTV版を見て面白かったところにもあったようだ。TV版の面白さが抜けてるように思ったか?劇場版は一本にまとめた陶酔感があればいいのだが。地球光は陶酔できた。
TVに比べたら、今日は、あまりおもしろくなかった。でも、見終わった後の気分は良い。
富野信者として富野映画に陶酔するのが好きなのに、出来たりできなかったりした。なぜか?


作画や仕上げが、先日見た0083の方が、細かかったからかな…。でも、∀ガンダムって柔らかい作画が、持ち味、だから、これで、いい・・・。いい、はずなのに、、、。
ボンズにもっていかれた、か?
テレビ版でも作画が良かったところはすごく良かった、けど…。


作画が良かったのは、CGの使い方も立体的で良かった。というか、立体的に見せようというところでCGを使ってた、な。隕石とか、月とか。人物が手前から奥に走る所とか。
そこのような立体感を見せたがるのは逆シャアのスウィート・ウォーターから伝統の富野CG。CGを使ってないところでも立体感を強調したレイアウトやカメラワークが多い。正面や真横の構図がザブングルとかと比べて全く無いし。描きにくかろう…。


新作画のビッグD作戦は最高でした…。とてもユーモラスで。劇になってて。白の宮殿にとらわれたディアナ様たちのお茶、ロランたちのコンビーフ、ビッグD作戦の食事が「着せ替えドール」のBGMに乗せてまとめられているのはとてもかわいい。ボルジャーノ公やフィル大佐やミリシャが掘り下げられてていい。


そのように、面白いと思えたシーンと、それほどでもない、と思ってしまったシーンを考えてみたのだ。
作画リソースが足りないからつまらなかった、というところで納得してしまうのはトミノ信者としてはつまらないだろう?!


では、その面白かったものは何か、と言うと、三つのノリであります。
1.音楽の「ノリ」、2.編集の「糊」。3.結局のところ気分の「乗り」です。これは富野アニメでよくあるものなんだがなあ。


音楽のノリがTV版より押しが弱い。うーん。今日の僕の耳が悪かったり、音響が貧相だったからか?かもな・・・。
しかし、BGMが切れているシーンも結構あって、そこはなんか弱かった。というか、はっきり言って退屈した。
∀ガンダムってオペラのように菅野音楽とシーンがかっちり噛み合ってるところがすごく良かったんだけど。

∀ガンダムがオペラ過ぎてヤバイ
http://d.hatena.ne.jp/nuryouguda/20081012/1223744581

今回の菅野よう子はTV版の音楽をメインに使って、劇場版に対して新作の曲をあまり作らずに、映画の尺に合わせて既存の曲に付け足して編曲し直したり、という事を中心にしたそうだ。
地球光もかなり早く圧縮して編集してあるのだが、音楽がなんとなくつながっているのでものすごく速くてもオペラのようになんとなくまとまって乗れてしまった。
が、月光蝶の方は人間ドラマや戦闘シーンでもBGMが無いシーンが結構多く、そこは、ちょっと退屈した。
それに関しては菅野よう子氏が月光蝶のパンフレットで

CMの曲と同じで、映画でもできればコマ単位で画面と音楽を合わせることで感情の機微を表現することが、私のやりたいことなんです。
ただし富野監督の持ち味って10分間ずっと戦争やっているという事はなくて、30秒戦闘があったら10秒ドラマが入るとか、出入りが激しいですよね。
セリフの意味とカット割りだけで、お客さんを楽しませる最低限の土台を作ってしまおうとしているんでしょう。それに合わせて音楽を変えていくと忙しくなってチャカチャカしてしまうので、今回はカットが変わってもずっと戦闘の音楽だけで通したりしています。

と、的確に評論している。
そのように音楽が通っているところはすごく面白かった。菅野さんも「体感する映画です」って言ってるし。
だが、音楽が無いシーンが多いんだよなー。TV版は一話20分強だからBGMが有無でメリハリがあって良い。が、映画ってもっと全体として一本の曲になってる風になっててほしいのですよ。再編集映画だし、富野監督もスピーディに圧縮してるし新曲も少ないから長い音楽が付けにくいのかもしれん。が、音楽が無いとだれる。


で、音楽が切れて気分が切れやすいところで編集も忙しい。それで、編集の「糊」が弱い。
TV版で多かったワイプアウト月光蝶ではすごい少ないから、切れた感じがする。
それは劇場公開当時、氷川竜介先生と藤津良太先生が指摘してる。

──手法ということでは、テレビが始まったとき、古典的なワイプ(ぬぐうようにして画面を転換する技術)が目立ちましたが、今回の映画では、あまり目立たないような気がしましたが。
富野 『地球光』で? 1話のワイプは全部使ってますよ(笑)。実は劇場の大画面で見ているときのワイプは、ものすごく目に優しいんです。今回改めて「すごいな、このワイプという処理は」と思いましたね。テレビの小さな画面で見ていると映像が記号的に見えるんで、ザッとやられるとワイプ(の移動する境界)が見えちゃうんですよ。大画面だと画面に感情移入している上に、それに速度感やテンポが合ってると気づかないんでしょう。だから、気持ちよく場面転換できるんです。


──切り替えが自然なんで、気づかなかったということだったんですか。
富野 それはテクニックのことだけじゃないんですよ。実は、音楽にも秘密があるんです。菅野よう子さんは、今言ったような細かいことは意識していませんが、本能的に音楽で感情を通すことで、場面転換を助けてくれているんです。むしろ音楽で情感を貫通していけばいくほど、カットつなぎの方がシャープすぎるんで、よほど上手にそのときの環境のリズム感に合わせていないと、シーン換えみたいなところがポンと見えちゃうんです。今回、本当に音楽が物語の情の変化によりそってくれて、画面のぶつ切り感を全部取っ払ってくれたのです。

http://www.turn-a-gundam.net/special/07.html

地球光はワイプも使ってたし、音楽もうまかったけど、富野監督が言うほど、月光蝶は何となく乗れなかった気がする。何となくですけど。
んで、編集で言うと富野作品に多かったセリフのコボシ(絵のカットが切り替わってもセリフが続いていること)も少ないからそれもブツ切れ感があった。
ほんと、映画的な陶酔の乗れるか乗れないかって脳の細かいところで左右されるのねえ…。


ただ、終盤の活劇は元から映画を意識したものだったので、そこはきちんとまとまって編集されていて、音楽もきちんと乗っていて超良かった。しかも、元から映画を意識してTV版が作られているにもかかわらず、TV版とセリフやニュアンスやテンポが一番変えられてるのも終盤のギンガナム戦だよね!
特にコレン。アドリヴ?「ターンエーだって、時代を拓けるはずだーっ!」 →「ターンエーなら時代を拓けるぞ!」


ロラン・セアックがギム・ギンガナム御大将に対して、劇場版の方が偉そうだ。強そう。
月でズサンのパイロットを殺したりキースの家を焼いたりしてないから、テレビ版49話のようにターンAガンダムを取り戻すのを無意識に怖がる描写が無くなり、フランに「僕がジョゼフさんに∀を返してくれるように直接交渉します」っていうセリフが入ってる。尺が変わったからだけか?


面白いところでは、リリ嬢がグエンに「ローラは男の子です。そんなにも愛しているなら、ご自分がスカートをお穿きになれば?」 ではなく「ローラは男の子です。そんなにも愛しているなら、ご自身のお力で!」って言われてるのに、グエンが「スカートを穿いて産業革命を起こせるにはまだ時間が。」 って、劇場版ではグエン・サード・ラインフォードの方から「スカート」の話題を出してるから、普段からスカートを穿きたくてたまらんけど身長が190センチあるし、産業革命を起こしたいからTPO的にもスカートが似合わなくて悩んでる人になってて、かわいい。
後日談でも髭を生やして男装しちゃうし。グエンが女装できる世の中が早く来たらいいですね!


閑話休題
劇場版サントラには入っていないけど、ディアナ様が終盤で特攻するところにかかる鐘と読経のような新曲とホワイトドールターンXが繭に変えるシーンでのメルヘンな新曲は短くて静かな曲だけど、映画的なつながりを醸し出していて、そこは超良かった。
そして、やっぱり月の繭の後日談とEnd title ノスタルジーナの曲に合わせた圧巻の風景画が最高!そのせいで、中だるみしてても見た後は映画を見た爽やかさになってしまった。うーん。力技にやられた…。


あと、ハリーとキエルのスモーのコックピットの中でのキスシーンは最高でした。ハリーがキエルの尻から顔までPAN-UPするところとか、キエルがハリーの唇をおさえて黙らせる指の動きと、キス。
この間、ガンダムファンの友人と電車に乗りながら「同じグラサンをつけたままのキスでも、クワトロ・バジーナ大尉はレコア・ロンドさんに嫌われてハリー・オード大尉はキエル・ハイムお嬢さんゲットはなぜか?」と話したんだが。あまりよくわからなかった。
キエルとレコアでは、キエルさんの方が愛され上手余裕があったりでレコアさんが自分の欲求を優先する人だったからか?キエルさんはしっかり者で恋愛以外にも自己実現手段があって、レコアさんは恋愛に必死だからか?シャアもレコアも相手に依存しようとしあいつつ、かっこつけたり、うそついたり、相手の欲求をうわべだけなぞったりしてるから?
などと考えてしまったのだが、今回見たら。
ああ、もうね、ハリー大尉のキスの方がクワトロ大尉よりもクソ上手いから、もう勝負にならない。
クワトロ大尉のキスは、クワトロ大尉が「危険な任務をしてくれ」ってレコアさんに頼んで、レコアさんから「そのかわりキスしてください」って要求されてからの即座のキス。女から言わせてる時点でもうね。
で、ハリーのキスは段取りがすごい。


ハリーもディアナ様のために危険な任務をしてくれって頼んでる。むしろ、他の女のために死ねって言ってるわけだからクワトロのメガバズーカランチャー補助のお願いよりよっぽどひどい。
でも、段取りがすごい。
キエルの方からハリーに「私はハリー殿が好きなのです!」って告白する。
ハリー「自分は親衛隊の隊長でありますから…」ハリーに抱きついて白魚のような指でハリーの唇を閉じさせるキエル。必死。
「好きだとおっしゃってくだされば、アグリッパを暗殺する事だってやってのけましょうに」目をそらしてハリーを見ずに強がりとおねだりを言うキエル。キエルはハリーにキスできない。目を合わせない。おくゆかしい。
その顎を上げさせて自分を見させるハリー。ここからハリーの反撃が始まった!唇をキエルの指に抑えられたまま「キエル・ハイム、いかように私をなぶっていただいてもよい」とハリー。唇の動きがキエルの指に伝わる。「え・・・?」とキエル、静かに驚き、ハリーから体が離れる。キエルの顎を上げさせていたハリーの右手、キエルの頬を撫ぜる。キエルがハリーと目を合わせ、ハリーの左手も添えられ、ハリーは両手でキエルの顔を温かくつつみこむ。「あなたには、ディアナ様の盾になっていただきたい」真正面から真摯に言うハリー。サングラスは外さない。目をそらすこともできず、涙をあふれさせるキエル。彼女の唇が開き、吐息が漏れる。「そのかわり愛するという愛では、それは貧しいでしょう」殺し文句を言うハリー。キエルの体から力が抜け、無重力空間でキエルの体がふわ、と浮いた瞬間、キス!
驚いて見開いたキエルの目から、涙がパッっと散る!


うめえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!
ハリー大尉キスうめええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!
ていうか何なの、無重力空間を巧みに使った女の子の体の反応の演出うめええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!ロボットアニメでそれをやるんだあああああああああああああああああああ!
キエルの細くて弱く添えられた若い指と、ハリーの少し骨ばって皺のある力強い大人の男の掌の対比の作画が二人の人生経験の対比になっていて、父親を亡くしたけど自分の力で生きていこうとするキエルをさらに強くリードするハリーの男らしさになってて、すげえええええええええええええええええええええ!!!!


レコアさんはキスの時、体が固いから濡れない。キエルさんはハリーに丁寧に愛撫されてるからキスの時に力が抜けて涙とかいろいろ決壊。
ザビーネも普段やベッドでは優しくする努力をしてるけどけどクライマックスの直前では一方的になるって気付かれるから愛想を尽かされる。
なるほど、女ってそういうものか。ちぃ、覚えた。
ていうか、ガンダム恋愛を覚えっぱなしで実践しない図上演習の俺、まじギンガナムなんですけどwwwメリーベルに笑われるwwwオ・ノーレ!


ロランがソシエにキスするときもソシエはガンガン泣いててロランにいまにも叫びだしそうな顔をしたんだけど、ロランが一瞬早くソシエをキスで黙らせてたので、ハリー大尉にアドバイスされてたのかなーとか。
ロランは最終的にある意味親衛隊長だし。親衛隊には「オード家直伝ナオンを落とすキスのやり方」とかあるのかなーwww


映画も恋愛も戦争もノリとタイミングだよ、兄貴!

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