玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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富野由悠季 Earthling2011スペシャルトークが配信されない感想

EARTHLING 2011 - 地球人大演説会
Think the Earth | EARTHLING 2011 地球人大演説会 |
日時:2011年7月30日(土)、31日(日) 開場:9:15 開会:10:00
場所:慶應義塾大学 日吉キャンパス 協生館 藤原洋記念ホール
主催 : Think the Earthプロジェクト + イベント実行委員会
共催 : 慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科/メディアデザイン(KMD)研究科
で、7月30日土曜日、日本時間18時20分頃から、我が敬愛する富野由悠季(主にガンダムとかバイストン・ウェルなどのアニメや小説や詩を作ってる人)が出た。
んで、その講演会は3月の東日本大震災がなければ4月に開催されたはずなので、チケットは買ったのだが地震で中止になり、私も転居したために、USTREAM配信で見た。
それはいいと思う。世界配信だしね。英語による同時通訳も放送されていたし、日本語、英語双方もUSTで公式に録画されてる。
http://www.ustream.tv/channel/earthling2011/videos


それは良い!富野以外の人の講演も色んな環境問題を考えるデータや経験を話していらして、興味深い。
だが、富野由悠季スペシャルトークの録画だけが配信されていない。
英語での同時通訳が付いている動画は一時公開されていたが、それも非公開になっている。
http://www.ustream.tv/recorded/16328511
http://www.ustream.tv/recorded/16328511

追記:
後日、無事にバックアップから配信されました。
EARTHLING 2011富野由悠季スペシャルトーク配信復活! - 玖足手帖-アニメ&創作-

↓公式声明

EARTHLING 2011 地球人大演説会 アーカイブ公開について
2011.07.31


「EARTHLING 2011 地球人大演説会」の出演者には事前に
Ustream配信についての承諾を得て実施しています。
オンデマンド配信(アーカイブ公開)に関しては、視聴しやすくするために、
ライブ配信と同じエンコーダーでセクション毎にファイル化を行い、
ファイルの最適化を行った後にサーバへ転送し、オンデマンド配信できるようにしています。


しかし、7月30日のセッション3が終了した段階で、
エンコーダ側のファイル保存が機能しないトラブルが発生しました。
ライブを優先させるため、ファイル保存機能を復活させないまま、
スペシャルトークのライブ配信を行いました。
結果としてライブ配信直後に、
スペシャルトークのオンデマンド配信を行うことができませんでした。


対応策として、バックアップのために、
別のファイル形式でファイルを一括保存していましたので、
下記の対応を行った後、アーカイブを公開したいと考えています。


・ファイルの分割とエンコーディング
・一部の発言に対するご登壇者への発言内容の確認
これらの対応に一週間程かかる見込みです。


また、英語(同時通訳バージョン)は問題なくオンデマンド配信が可能となりましたが、
事前打ち合わせや原稿なしで、ボランティアの通訳者によるものだったため、
登壇者の意図を正確に伝えられるクオリティではないとの判断で配信を停止しました。


配信を楽しみにしている皆さんにはご不便をおかけしますが、
上記の状況をご理解頂き、配信可能になるまでお待ち頂けるようお願いいたします。
配信可能時期が明らかになり次第、予定をTwitterまたはホームページでお知らせいたします。


Think the Earthプロジェクト | EARTHLING 2011 地球人大演説会 | 新着情報
http://www.thinktheearth.net/jp/earthling/news/2011/07/31/earthling-2011.html

とのこと。
上記の記事も削除される可能性があるので、ここに全文引用させていただく。


富野由悠季という名指しではなく、登壇者と言っているが、配信されていないのは富野だけである。つまり、富野の発言がどういう事だったのか、運営本部が確認する作業に1週間かけるとのことである。
それと、ファイルを分割して(おそらく問題発言部分を削除して)エンコードするってことね。
うーん。
そんなに問題発言だっただろうか?



たしかに、富野由悠季監督は多少過激な事を言った。
私は個人的に録画しておいたので、何度も見れるのだが。

地球について考えるって、皆さん自然エネルギーなどの技術を研究してらっしゃいます。
それで、需要を満たすと考えておられる方が多いのですが、それよりもエネルギーを要求する消費者の方を減らす方がクリーンではないでしょうか。
政府には少子化担当大臣などがいますが、これ以上人口を増やす事に何の意味があるのでしょうか?それは、経済論でしょう。経済の数字を良くするために、生産者ではなく消費者を増やして市場規模を維持したいためだけです。
しかし、人類は環境に対する汚染源なのです。人口を減らせばいい。

自衛隊は震災の後、救助活動で活躍していますが、まだ政権には、去年「自衛隊暴力装置だ」と発言した閣僚がいる。
私が自衛官なら殺しに行っていました。

私は民主主義が嫌いだ。ギレン・ザビのような人物に統治してもらった方が良い。
政治家や官僚たちや巨大企業の管理職は、原発事故などで露呈したように、専門知識を知らないで人事異動だけで原発や電力の責任者になり、現場を知らないで報告だけを流し見しているだけ。それで、自分個人が生き延びて、遊び暮らすことしか考えていない。だから、事故の対応が遅れる。

パクス・トクガワーナの江戸時代は幕藩体制で、藩の武士は武力集団であったが、同時に民百姓の事を考えていた。軍事だけでなく、経営、経済、治水、災害を考慮して、地方自治として運営していた。
日露戦争までの時代は、そのような侍の文化を持った人が政権にいたが、その後は、サラリーマン化した官僚組織となり、組織維持をするメンタリティだけとなった。

我々は愚民なんです。
先の政権洗濯の選挙の時、日本の百年先や全体を見通して考えるリーダーを選ぶべきだったのに、結局、我々は目先の生活の利益をマニフェストにする人を選んだんです。だから、管総理大臣を批判するだけで済む話ではないんです。我々が愚民なんです。
(ここで笑う観客に対して)
私は漫談をやっているのではありません。


と、言った程度。
論理的には破綻していない。
もちろん、富野は学者ではないので個別のデータや経験はない。
ただ、アニメを作る過程で色々な分野の学者や芸能人や技術者や政治家に取材し続けてきた69歳なので、個別論ではなく、総論を語っている。総論としては、論理的に酷いものではないと思う。
生まれすぎたり、死んだり、って言うのも地球の総論としては有り得るのだから、タブーとして語ってはいけないと言う態度はよくない。と、私は思う。


富野の言った事は、過激ではある。だが、原発事故や食料やエネルギーの枯渇という危機は倫理的な正しさや優しさとは無関係に存在する。人がいっぱい実際に死んでいる。だから、過激な現実に対応するには、それこそこれくらいの事を考えてもいいのではないだろうか?
と、私は思う。


そもそも、地球は最初から泣きも笑いもせず、人類に酷暑や氷河期、地震や嵐という災害をもたらす過激な存在なのだ。このイベントはThink the Earth.地球を考える、というテーマなのだから、地球スケールで考えると人類を間引きすると言うこともタブーとしないで考えていもいいのではないかと思う。
国民全員平等や、人命尊重など、ここ百年の流行でしかない。むしろ、死ぬべき時に死ねない奴はクズという文化すら在った時代がある。
その時代ではそれで人は適応して事態に対処してきたのだ。
もちろん、無差別殺人などはよくないし、富野も

アメリカの無人爆撃機でゲーム感覚で女性士官が「私でも出来るわ」って言ってディスプレイの画面の中でゲリラを見て爆撃するのはよくないと思う。
殺すなら、せめて自分で刃物を持って戦うという覚悟が必要だ。

私は年寄りなので、申し訳ないが、若い人の事は分からない。ただ、みなさん若い人には、みんなで生き延びるシステムを考えるようにしてほしい。

と、言っている。
無差別殺人やテロリズムを奨励しているわけではない、と言う事は一言一言に注意して聞いていればわかる事である。
むしろ、地球の中で生き延びるシステムを地球世界レベルで広く考えるシンポジウムなのだから、タブーを設けずに語り合い、考え合う事が必要なのではないだろうか?タブーを設けないと言うのは、悪口を言う事ではなく、辛いことや酷い現実も直視して考え、間違いを恐れずに口に出して伝えるることではないだろうか。


だが、今回の運営は、事実上富野発言を削除した。


富野由悠季自身、壇上で明石屋さんまの冗談のように、「ここ、youtubeではカットしておいてね」と言う所もあった。
これは冗談なのか、本当に富野が公開するなと言ったのかは分からない。
ただ、富野のアニメやインタビューや著書をそれなりに読んだファンとしては、富野はUSTREAMで配信されていると言う事を理解せずに失言をしたり、おおやけに配信されているという状況を忘れて「これはオフレコだぞ」と、口を滑らせたとは考えにくい。彼は人類や、現体制に対する批判を確信犯的に、正しいと思って行ったと推察される。彼はそう言う機知は働く人だ。


ゆえに、私は富野監督が配信を差し止めたとは思えない。
やはり、開催運営スタッフが、富野監督の過激に聞こえる発言におそれをなして、問題発言部分をどうやって削除するかパッチワークするか考えるために配信を一時差し止めと言う手段に出たと思える。
機材トラブルと言う声明を嘘だと私が言う根拠はないが、バックアップがあるのに再公開に1週間かかるのは作業量として不自然と思える。
やはり、完全公開するのではなく、富野監督の発言の過激な部分を切り取りたいと言う意思があると見た。そういう自主規制こそ、地球的規模でものを考えると言うお題目に反していると、私は思うがね。


おそらく、富野監督はアニメ監督という自分の肩書や立場を利用して、敢えて道化を演じていたと思う。
だって、他の学者や会社の社長などは、自分の組織や派閥を維持しなくてはいけないというジレンマがあるからです。フリーランスの人でも、自分の評判を維持して生き延びなくてはいけないので、あまり酷い事や間違った事は言えない。
ただ、富野由悠季は違う。新作の企画も通っていない、孫も生まれた、特に社会的な地位や責任のないアニメ屋さんです。


Think the Earth | EARTHLING 2011 地球人大演説会 | 当日プログラム
↑こちらの、錚々たる登壇者の一覧を見てください。組織の代表やCEO、課長補佐が並んでいます。ですが彼らとは違って、富野には守るべきものがない。
他の人は、間違いを恐れる。だが、富野は間違ってもいいのだ。失うほどの名声もないのだから。
だからこそ、逆に自由に戦えるのだよ!ララァ


同時に、富野と言う人が思いっきり羽目をはずして、酷く間違い、ダメな見本を見せると他の発言者も「あー、ここまでは間違ってもいいのかなぁ」「下には下がある」「自分が間違っても富野ほどひどくはないな」って思って、逆に自由闊達な議論になるのではないかな。
そういう悪知恵も富野は使ってそうなんだよな。実際、4年前の京都精華大学の講演会で「大学で友人を作るなら、友人を踏み台にして切磋琢磨しろ。同時に、自分が良い踏み台に慣れるように努力しろ」って激励してたし。


富野は講演会の最後に、

私は年寄りですが、年寄りは年寄りなりに、若者に元老としてアドバイスをしたり、老醜をさらす前に権利や技術を受け渡すという事ができると思います。
そうすると、人はみんなで生きていけると思う。
人は一人では生きていけないんですよ。

と、言っていた。
富野は自分が自爆する事で、慶応大学の若者を触発しようと言う考えがあったのではないだろうか?
富野のアニメって、自爆する老人が好きだからな。Vガンダムとか、リーンの翼とか。ザンボット3とか。84年頃から、すでにアニメの制作現場でも若手を育成する事を考えつつ作品を作っているっていってたし。
でも、富野監督って20年以上、自爆し続けていてもまだ生きてるからすごいよなあ。



ところで、この講演会の動画って、いつ再配信されるんでしょうね。このまま自然消滅はしないよねー。
このシンポジウムの最初、脳科学者の茂木健一郎さんが「秋葉原で無差別殺人をした加藤智大や、ノルウェーで爆破と銃撃による殺人をしたアンネッシュ・ブレイビクに、もし可愛い彼女がいたら、それで彼らはテロを起こさなかったんじゃないか」と、半分笑いながら言っていたが、それは配信されている。
私は、茂木さんのこの発言の方が気に食わない。
結婚していても異常な連続殺人やテロを行った人間はたくさんいますよ。
茂木さんは「思考停止やレッテル貼りを辞めよう」って言ってたけど、可愛い彼女にすごい抑止力と言うレッテルを張ってる気がする・・・。女がらみの事件も多いのにね。
まあいい。
茂木さんの授業は受けた事があるが、富野の方が良い男だと思う。(富野監督には4回、話をしてもらった事がある)



それから、最後に、配信停止についての感想ではなく、富野の談話自体に対する感想を述べる。


富野由悠季監督に、東日本大震災の一週間前の3月6日に、私は質問した事がある。
あまり上手く質問できなかったが、要約すると、
「人口を減らすことが必要なのはわかる。だが、それは技術開発で簡単に解決するものではないと思う。
だから、増えすぎた人たちに死を受け入れてもらわなくてはいけないのだけど、どう思うか?」
っていう質問をした。
富野由悠季 豊島公会堂2011年3月6日で質疑応答してきた。 - 玖足手帖-アニメ&創作-
http://d.hatena.ne.jp/nuryouguda/20110310/1299744242


富野監督は「二百年かけて自殺や戦争をせずに人類の人口を減らして軟着陸させる希望を持ちたい」「若者は鬱屈するな」
「資源と人口を安定させるために豊かさを求めるな、と、途上国に言うのはかなり酷いことだ。ですが、それは必要です。ですから、豊かさを求めないという新しい思想を獲得させなくっちゃあいけない」
「人類が豊かさだけを求めずに、一万年生き延びる知恵や新しい思想を身につけるためには、過酷な時代があるだろう。それは日本では二百年、世界ではあと五百年かかる」


って答えた。それが3月11日の宮城県沖を中心とするM9.0の巨大地震の1週間前。


で、今回の富野である。
「人間は増えすぎた」「もう、ギレン・ザビみたいな人に統治してもらった方が良いんじゃないか」
うわー。言っちゃったぜ。


ただし、死を奨励しているだけではないということに着目したい。
クロスボーン・バンガードの鉄仮面もバグによる無作為な殺戮虐殺をしたと思われがちだが、最初のクロスボーン・バンガードは生き残るべき若者を育てる職業訓練学校だったしな。貴族主義と言うのは、単なる選民思想ではなく、能力主義や克己心もあったのだ。
まあ、アニメの話はアニメや小説を読んでいただくとして、ここでは講演について書く。


トミノは人類を減らす事や、侍の時代が良かったと言う事や、今の官僚体制はよくないと言う事や、資源が足りない事、市民は残虐であると言う事、人は平等ではないと言う事を言った。
だが、それで、彼が偏狭な右翼や国粋主義者軍国主義者や、回顧主義者や、死を推奨する人と言う事にはならないであろう。
事実、富野は「司馬遼太郎を読みこむうちに、司馬は右翼で愛国主義すぎると思い、嫌いになった時期がありました。事実、右翼だったそうです」と発言している。


私が注目したいのは、富野が「幕藩体制では、県や市と言ったレベルの自治体の武士が、軍事から経済、治水、環境までを考えていた」と言って、侍の美学やプライドを評価した所です。昨日の富野はローマの戦士階級についても同様に評価していた。
侍は貧乏だったけど、教養とプライドを持って、手の届く範囲の自治体を武力と権力で統治し、中央の徳川幕府と交渉していたとの評価。
もう一つ注目点。
「今の社会は組織の論理に汚染され過ぎている、新しい社会を作るのは40歳以下で、老人は権力を受け渡すべき」としながら、「年寄りは元老としてのご意見番としての役割はあるのではないか」といった点。


それに補足して、「宇宙エレベーターを社会の中で考えたら、独自の大きな運用組織が必要で、その中では分業と経済的利益も必要だと思う」と言った点。
完璧に組織と経済を拒否するアナーキストではないと言う事ね。


つまり、人の認識力の射程距離を藩の中の人間関係という空間的にある程度限定して接続し、同時に、若者と老人の経験と行動力という、ライフサイクルと言う時間的につなげて、分業制で責任と人の役割を明確化して、社会を円滑に廻す。と言う事なんじゃないかな、と言うのが私の見解です。
間違ってたらすみません、富野さん。


富野の1時間以上の喋りを3行に要約してやったぜ!
・空間
・時間
・人間
の三位一体態勢な。
この連結が平和の鍵だと言う事だ。
と、富野の話を聞いて思った。富野はここまではっきりとは言わなかったが、おそらく、幕藩体制が成立したのはこれが安定していたからであろう。
そう考えると、身分制度や、役に立たない老人や知的障害者の間引きといった、明治以降の民主政治では悪と言われてきた風習もシステム論としては必要だったのではないかという考えも出てくる。タブーをなくして考えれば。
同時に、元老となるほど役に立つ老人に対する敬意や、人を殺す時に殺す相手に敬意を払う美学も重要。
徳川幕府が倒れたのは、西洋で産業革命が起こり、アメリカ合衆国南北戦争を終え、蒸気機関の船で空間的に黒船が来航した事、
時間的に経験知が侍の中で形骸化してしてしまったこと、
人間的に身分制度が揺らいだり、薩摩などの外交密貿易によって資本を得た藩が出てパワーバランスが崩れたり、
といった具合に時代が揺らいだからだと私は考える。



さて、今日、飛行機やインターネットで空間的に繋がり、人間のライフサイクルを超える時間ででイノベーションが進み、人間の質も多種多様になって、ひとつの共同体を形成することが難しくなっている。


そこで、新しい安定したシステムを作れるかな?
争いなんぞせんで済む、そういう文明に生きる人は、ニュータイプだろうな。
我々は生き延びることができるか?


俺は戦士!



ちなみに、富野監督の思想は以下の書籍でチェックだ。

ガンダム世代への提言  富野由悠季対談集 I (単行本コミックス)

ガンダム世代への提言 富野由悠季対談集 I (単行本コミックス)

ターンエーの癒し

ターンエーの癒し



はじめたいキャピタルGの物語に続く!)

GUNDAM A (ガンダムエース) 2010年 12月号 [雑誌]

GUNDAM A (ガンダムエース) 2010年 12月号 [雑誌]