玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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超電磁ロボ コン・バトラーV 41,42 42話が富野回ブルーフレンドっぽい

話数 サブタイトル 脚本 絵コンテ演出 作画監督
41 卑怯! 悪魔の人質作戦 辻真先 寺田和男 坂本三郎金山明博
42 清き瞳の暗殺者 田口章一 斧谷稔 佐々門信芳 金山明博
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41話。
あらすじ↓
超電磁ロボコン・バトラーV 全話解説
敵のバリアーに囲まれた都市が丸ごと人質に取られて戦えなくなるっていう話。バリアーを解消する手段が、若干ご都合主義でお涙ちょうだいではある。が、ロリはかわいい。子供が活躍するという当時のロボットアニメの事情、交通戦争の交通事故で孤児が多いという昭和の時代が感じられる。
ゲッターロボ鉄人28号を混ぜたような、藍色のデザインの敵ロボットが面白い。ゲッターロボと鉄人をコン・バトラーVが討ち果たすという、マーケティング的な思想戦略を感じますね。敵はロケットパンチとかするんで、マジンガーZ批判もありますね。あざとい。
人質がある時は一方的に敵ロボットにいじめられたコンVでしたが、人質が解放されたら一気にやり返しました。キャンベル星人は勝てそうな時に遊んでいるから負ける。


42話富野回
あらすじ↓
超電磁ロボコン・バトラーV 全話解説
ここら辺の終盤残り12話はスケジュールがきつくなってきているのか、富野絵コンテが増えます。12話中6話が富野です。千本切り時代の富野は絵コンテの手が早いのです。
キャンベル星人のために労務をしている、どれい人間が描かれるのは、富野が演出をした19話以来か?宇宙人にさらわれて人質にされている奴隷というのは、割とコン・バトラーVにおける悪の所業の大きなところであるが、割とスルーされがちである。でも、キャンベル星人の兵士はほとんどが現地徴用の地球人の奴隷人間らしい。バトルチームはそういうキャンベル星側に寝返った奴隷人間と戦っていたりもする。結構、ここら辺で地球人同士の殺し合いというダークサイドもあるのかもしれない。コピー人間かもしれないけど。
こういう、一般市民の戦時下の不幸を描くのはザンボット3に通じる富野っぽさかなー。


奴隷から脱走しようとした山部一郎という人は捕まってしまい、逆さまになって溶岩に頭から少しずつ漬けられる拷問処刑に会う。頭が少しずつやけどします。それを見せしめとして、他の奴隷人が見せられます。「目を逸らすな!」と言われます。富野らしいサディスティックなシーン。緊縛と火あぶりと言うのもサディスティックだが、数百人単位で集められて拷問処刑を見せられるという中世的な精神的サディズムも富野らしい。父が助かったと同時に、悪の手先にさせられる美少女と言うのも、上げて落とす精神的ないじめが感じられる。


そこで、山部一郎の娘のゆき子さんが必死こいて命乞いをして、豹馬を殺す暗殺者になる代わりに、父の命を助けてもらいます。ちなみに、山部さんは脱走する時は男性3人だけで逃走しまして、ゆき子さんはもしかしたら捨てられてたのかもしれません。そんな親の命を救うために敵に命乞いをする奴隷の少女と言うのは、いろいろと屈折したドラマ性が感じられます。


で、豹馬を殺せと命令されたゆき子は、豹馬がバイクで通りがかるのを見計らって海に投身自殺をします。
ここら辺、ゆき子はわざと豹馬に捕まる感じだけど、リアルに溺れて失神してるので、本気で死んでもよかったという面もあるのではないのかな。自暴自棄。
豹馬は海中で気を失っているゆき子の顎を片手で引っ張って呼吸をさせながら、立ち泳ぎで泳いで助けます。なんかすごく適切な助け方の泳ぎ方で、富野コンテのキチンとした演技だと思います。


あ、あと、富野コンテになると何故か登場する女医さんがまた登場。ちずるの病状を見たりしてました。今回は豹馬が助けたゆき子の入院の準備をしてた。っていうか、富野コンテ回は医者が出る率が多いな。ちずるのコピー人間回ではまた別の医者がいたし。


そんで、ゆき子は「両親が交通事故で死んでるから」っていう嘘の理由で「自殺したかった」と言う。この、女の嘘と本心がないまぜになった感じが富野っぽいなー。それで、豹馬も交通事故で良心が死んでるから、「俺たちは兄妹みたいなものだ」と、言います。ここら辺のゆきずりのアバンチュールっぽさも富野っぽい。


敵はゆき子の殺意を煽るために、南原コネクション上空で人形をバラバラにして「逆らえばこうする」と言う。そのせいで、南原コネクションの内部でゆき子の身元を疑う雰囲気になる。でも、豹馬はゆき子を妹だと思ってるから、そんな風な仲間の言動に腹を立てる。ここら辺のギスギスした人間関係の空気感が富野っぽいなー。ちょっとしたきっかけでギスギスするよなー。社会性があるなあ。
でも、結局ゆき子は豹馬の寝込みを襲う。豹馬は警戒していたのか、返り討ちにする。逃げるゆき子を追い詰めて、怒涛の説教をする豹馬。説教しながら自分の恋心とか幼少時代とかを口走る所が非常に富野的。フォウ・ムラサメに対して両親の事を口走るカミーユ・ビダンみたいだ。そして、豹馬は作戦がばれて自殺しようとしたゆき子に「生まれ変わった気持ちで」「死のうと思ったのなら、その力を俺たちにくれればいいんだ!」と、ブレンパワードの伊佐未勇の「その力を逃げるために使うな!生きるために使うんだ!」に似ている。
雨と断崖と言う舞台と、回想の使い方も、非常にドラマチックだ。


で、豹馬はゆき子と協力して山部一郎を助けに行く。だが、山部一郎の体の中には時限爆弾が。
ザンボット3に通じる人間爆弾!ちなみにコン・バトラーVよりも2年前の1974年にチャージマン研!でボルガ博士の人間爆弾をやっている。
山部一郎は口を聞けなくされていて、非常に情けない。情けない父親は富野っぽい。だまって一人で死ねばいいのに、豹馬をおびき寄せてしまう。一度は豹馬の助けの手を払いのけるも、一人で爆発する事ができないで体内の爆弾を基地で取り除こうという豹馬についていく父。そこで、ゆき子が身を呈して父親を崖から突き落とし、一緒に爆発して死ぬ。ヒロインが無残に自爆するのが富野っぽい!


で、ここからはロボット戦闘。
ツインランサーやバトルチェーンソーというコンバトラーVの武装が敵の刃と装甲によって破壊されるピンチが、戦闘の激しさを表現していておもしろい。
コン・バトラーVが敵の仕掛けに縛られて、超電磁スピンでそれから抜け出すも、超電磁スピン・アタックは敵に止められる!というショッキングな事もあり、戦闘のギリギリ感覚。富野の戦闘はロボットプロレスと言うよりも、チャンバラとメカニックの応酬と言うのが基本で、緊張感が大きい。
それで、ビッグブラストミサイルを撃ち、敵の意表をついた一瞬のすきを見て、再度超電磁スピンをかけてコンバトラーは勝つ。今回は人間ドラマがメインで、戦闘は少なかったが、優勢と劣勢が何度も入れ替わる所が面白かった。短くても戦闘シーンも工夫する富野は良いと思います。



この話は前年の勇者ライディーンの「地獄の射手マダンガー」(ラーゼフォンのブルーフレンドの原作)に意味合いが似ている。ポッと出のヒロインとの淡い恋と敵に通じるヒロインの悲劇を通じて、男性主人公が成長する話。
ブレンパワードのネリー・キムやララァ・スンにも似た感じのアバンチュールだ。
人間爆弾もあるし、親子関係、SM趣味、どれいにされる弱い人間の描写、人間同士の戦い、など、富野エッセンスが濃かった。なかなか味わい深い話だった。
豹馬の孤児設定を掘り下げる面でも。
また、ゆき子が自爆して果てた後に、それを引きずらずに淡々と戦いに打ち込みながらも、脳波では非常に怒っている、と言うのがララァが死んだ後のアムロとか、伝説巨神イデオンカミューラ・ランバンの敵を討つユウキ・コスモなどの富野主人公っぽい戦闘のプロって感じ。女が殺されたら、哀しみにくじけないで、それをそのまま表に出さずに戦闘意欲に変えて弔い合戦をする、って言うのが富野のパイロット哲学を感じさせる。ヒーローは哀しみの涙を人には見せない。
そうなんだけども、コン・バトラーVがコンバイン合体する時に一瞬、パイロットたちは脳波で繋がり、そこで南原ちずるだけが豹馬の脳波の違和感を感じたような表情を見せるのが上手い。ヒロインっぽい。ゆき子が死んですぐに戦闘に入ったので、ゆき子の事情は他のパイロットは知らないんだが、ヒロインであるちずるだけは、それとなく脳波で豹馬の怒りを感じ取った、と言うニュアンスの短いカットを入れてる。これだけでゲストヒロインよりも正ヒロインのちずるの方がヒロインなのだ、と言う主張を入れられている。ヒーローはおおやけのために戦うから個人的な哀しみを見せずに戦闘に撃ちこむけど、その裏の気持ちはヒロインだけは受け止めてくれている・・・。そういうロマンチシズム。こういう短くても効果的な富野演出は非常にいいと思う。


ちなみに、70年代は、みなし子アニメが多い。作り手が戦争体験者で、孤児だった者が作り手となった70年代。
また、高度成長期に伴う交通戦争で人が死ぬ事が多かった。
子供は塾通いが増え、親はサラリーマン、と言う事が増えてきた。つまり、精神的に親とあまり接触できないカギっ子がみなしごっぽくなっている。だから、70年代アニメには孤児が多かった、という説がある。みなしごハッチとか。