玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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超電磁マシーン ボルテスV 10〜15 富野は12話

脚本:田口章一 絵コンテ・演出:高橋資祐 作画監督高橋資祐、金山明博(総作画監督

プライベートの忙しさと、おにいさまへ…について考えすぎていたためにボルテスをすっかり忘れていたために、見てませんでしたw
第11話と前後編みたいなので、11話の冒頭で説明があったみたいだし、見なくてもいいかなーって。
解説はこちらに詳しい↓

http://higecom.web.fc2.com/bigfalcon/story/story10.html


僕もあらかじめ合体しておけばいいと思いました。

脚本:田口章一 絵コンテ:柳弘通 演出:横山裕一郎 作画監督:坂本三郎、金山明博(総作画監督

冷戦だとかなんだかんだ言って、国連にまだ夢があった時代(グローバリゼーションが実現したあとの卑俗な権益争いや民族紛争が顕在化する前の時代)のアニメなので、宇宙人子侵略に対して、各国首脳が平等に協力し合い、世界防衛機構があっさり出来てしまうアイアン・スカイの正反対な感じが笑えた。
でも、各国の数千機の戦闘機が怪獣にめがけて編隊を組んで突撃してくるという絵ヅラには迫力がありました。ミリタリーな面白さがあった。(子供じみたミリタリーの面白さというのは、第5話の「戦艦三笠が危機を呼ぶ」で、主人公チームの一員の剛日吉という小学生が戦艦三笠のプラモデルを海に浮かべて欣喜雀躍するというシーンに示されている。このボルテスVというアニメは、楽しい戦争のプラモやフィクションを楽しむ子供向け、というスタンスであるので、ミリタリズムや政治的描写はあくまでエンタメのためのスパイスである。)
でも、怪獣にほとんど全滅させられるっていうのが、こう言う怪獣映画での防衛軍の辛いところであり、戦死者が多すぎる。
ボルテス1機のために数千機の戦闘機が捨て駒になるって、冷静に考えたら本当にひどい話なんだが、まあ、萬画だからな・・・。
これを本気でやると、ダンバイン後半になります。ダンバイン後半のアメリカもソ連もヨーロッパも入り乱れて、怪獣ロボット軍団に向かって核兵器を積んだ戦闘機を突撃させまくるという世界の終わりのような戦争はミリタリー的な面白さを超えた恐ろしさと狂気があって迫力があったよなあ。


敵による合体封じ装置を無効化して、ボルテスの超電磁合体を復活させるウルトラ・マグコンという装置は、クラインの壺をモチーフにしてるデザインなのが面白かったです。でも、クライン空間だからといって、ウルトラ・マグコンの影響下では操縦の操作が逆になるという段取りはちょっとわかりにくかったし、わかったとしても大して感動するようなこともなく。
まあ、巨人の星とか熱血ドラマが好きな長浜監督としては、世界中の軍隊が命懸けで、ボルテスチームも博士も命懸けで、爆発して死ぬかもしれない装置を使って合体する、っていう魔球特訓みたいなテンションの高い感じをやりたかったんだろうなあ。

  • 第12話 ボルテス起死回生(富野回)

脚本:五武冬史 絵コンテ・演出:とみの喜幸 作画監督:金山明博
ボアザン星人の合体破り装置を打破する合体破り破り装置を開発する話。前回使った装置はプロトタイプで大型で一回の使用で焼き切れたので、小型化と安定化を図るという、プロジェクトXみたいな話。
技術面がフィーチャーされて、富野喜幸の理系センスが感じられる。ガンダムに出てきた謎の数式みたいな雰囲気数式が出てきてる。富野監督自身は理科が好きだけど数学は苦手。
地球侵略基地にいるプリンス・ハイネルへの何万光年も離れたボアザン星からの通信が乱れるのはSFっぽいし、TV電話画面の中の人が伸び縮みするのは鉄腕アトムっぽい変形だった。機動戦士ガンダムの序盤でシャアに通信するドズル中将の描写にも通じますね。あー。系譜感がたまらん。
プリンス・ハイネルが浜口博士たちの地下秘密基地に
技術チームがクリーンルームで顕微鏡とマイクロロボットアームで装置を組み立てるところも無駄に凝っていて富野の理系に対するこだわりを感じる。宇宙戦艦ヤマトも結構科学技術班が活躍していたけど、名も無き技術チームの脇役の活躍というよりは真田さん万能説だ。


ウルトラ・マグコン機械の小型化を図る技術チームはガンダムにマグネットコーティングを施すモスク・ハン博士のチームみたいな感じでした。モスク・ハン博士の回は安彦良和先生が倒れてタツノコ系の作画だったんだけど、今回のボルテスVのビッグファルコン技術チームは竜の子っぽかった。あと、敵の雑魚兵士と「博士」が肉弾戦をするアクションは破裏拳ポリマーみたいなモブに厳しい暴力アニメでした。富野はポリマーもやってたからなあ。
あと、浜口博士と岡防衛長官は地下の秘密基地に行く時は数十人の衛兵を連れて行ったんだが、ハイネルたちの襲撃に遭って衛兵は特に意味もなく全員死んだ。敵の兵士を殴り殺して浜口博士と岡長官だけが助かって基地を自爆させた。モブに厳しい。
あと、浜口博士と岡長官は基地を爆破したあと、そこら辺にいた木材伐採業者のトラックを強奪して「料金は防衛軍にツケておいてくれ」って行って華麗に基地に帰る。
カッコいいけど、ふ、普通にタクシーを拾えばよかったのでは?なぜそんな無駄な暴力を・・・。そんな不条理も富野らしいマッチョイズムを感じる。ガンダムカイ・シデンベルファストホワイトベースに帰るときにバイクを持ち逃げして「軍に取りに来てくれ」っていうのに通じる系譜
あと、健一が基地から発信するときに一時的に基地のバリアーを解いたら、そのせいでモブキャラが死にます。厳しい。厳しいんだが、何故か音楽がチャージマン研に似てるようなテンポで、簡単に人が死ぬシーンの割に妙なおかしさがある。チャー研も大概、殺人エンターテインメントだもんなあ。


そんな理系にこだわったSF描写とタツノコ臭さが合わさって、なんか新世紀エヴァンゲリオンにも通じる。
「あと1分で装置を組み立ててみせます!」とか言う技術者、ヤシマ作戦の時に見た。
TV電話の画面内の人物と目が合って会話するのは、トップをねらえ!などでもロボット物のパロディとして描かれていたんで、ガイナックスのお家芸のように思われる昨今ですが、ボルテスのこの回はそういう描写がナチュラルに多用されていて、本家っぽさを感じる。やっぱ、庵野さんは富野アニメがすごい好きだったんだなー。
あと、地下基地が爆発して爆風が地下道を吹き抜けるところもエヴァンゲリオン第25話Airで見た爆発シーンにすごいレイアウトとか爆風っぽさが似てた。エヴァのスタッフは多分ボルテスを参考にしたというよりは、無意識的に刷り込まれてたんだと思う。
それと、浜口博士と岡長官が新装置開発のために、創業を停止された旧地下秘密基地でデータをサルベージしながら「ここですべてが始まった」「あの時は剛博士夫妻と私と君の4人だけで異星人と戦う計画を始めたんだな」とか言ってて「ネルフ誕生」で見た会話に似てる。
剛母博士は赤木ナオコ博士ですか?
地下基地で思い出話をして、機密を守るために自爆させるとか、エヴァっぽいわー。アニメは人のつながりやでー。


CMを挟んで、無事に脱出した浜口博士がボルテスチームを送り出したあとに、自分がどうやって助かったかを思い出す回想シーンのトリッキーな使い方も富野のひとひねりが聴いてるなあ。別にやらなくてもいいような気もしたけど。まあ、主人公チームの出番が少なくてオッサン二人の脱出劇っていう、子供の視聴者にとってはそんなに興味のない題材なので、おっさんのシーンを連続させるよりは間に主人公チームの絵を挟んでおこう、という演出意図はわかるけども。


あと、プリンス・ハイネルの言葉に浜口博士が驚くんだけど、浜口博士はハイネルが基地の場所を知っていたことよりも剛博士が生きていると知らされたことに驚く。その驚き具合を顔のドアップの度合いで表すのが富野らしい演出技法だなーって。まあ、スタンダードなんだけど。で、浜口博士は剛博士の生死について驚いていたんだけど、ハイネルは「浜口博士は自分が超電磁の基地を知っていることに驚いているだろう」って思ってるっぽくて、その意味の二重性とか情報や感情の折り畳み方と圧縮率が富野っぽいなー。
浜口博士が剛博士のことを思いやっていて、ハイネルは地球人を馬鹿にしている、っていう表現がわかりやすく演出している。


あと、なんで貴族であるプリンス・ハイネルは敵メカを作るのにナマズとかカニとかクラゲとかそういう海の生き物を元ネタに使うんだろう。あんまり高貴さを感じないよね。

  • 第13話謀略の父が地球を狙う

脚本:田口章一 演出、絵コンテ:寺田和男 作画監督塩山紀生 金山明博
キレのいいアクションとかシリアスとユーモラスをふんだんに使った表情の作画が金田伊功作画かと思ったけど、塩山紀生作画だったので、ボトムズもいつか真面目に見ようと思いました。浜口博士は今回も敵の兵士を素手で圧倒していたので、ポリマーみたいでした。
また父親が裏切ってるかもしれないとか、人が特攻して死ぬっていう重たい話でしんどいんだけど、そのしんどさをコメディっぽい顔つきやユーモラスな敵メカの動きで中和しようとしてるのかなあ?ザンボット3の金田回でも津波で人が死にまくる前に神勝平がギャグ顔をしたりして中和させてたし、そう言う同時代の演出感覚を感じる。
ただ、今の目で見ると、シリアスにギャグを混ぜるのは、ちょっと演出にブレを感じる。まあ、シリアスに萌えを混ぜる最近の風潮も数十年したらちょっと違和感を感じさせるものになるんだろうけど。
ギャグには違和感があったけど、博士の死に様にはすごい本気っぽさを感じて熱い。
ボルテスは2体の怪獣に攻められて割とピンチっぽかったんだけど、博士が特攻して剛健一がマジ切れしたら敵のゴリラ怪獣を下手からパンチのラッシュで攻めて、投げ技で上手に回ってボルテスバズーカ、ボルテスキックで攻め立て、さらに敵を上手に投げるも更にそれを飛び越えて上手に回って殴りつけて、また投げて超電磁コマ、天空剣で止めという左から右へパワーが上昇していくアクションで、逆転劇が表現されてて良い。怒りに燃える健一の声も迫力がある。ラストは空高く舞い上がってからの画面上からの天空剣なので、すごく迫力があった。アクションらしいアクションで、映像の原則だなーって思った。

富野コンテじゃないけど、スタンダードに迫力を感じさせる逆転劇としては、すごくわかりやすくて良かったです。

  • 第14話 父と子の罠

脚本:辻真先 絵コンテ;柳弘通 演出:横山裕一郎 作画監督:金山明博
ボアザン星人に子供を人質に取られたゲストキャラの父親が地球人を裏切ってスパイをする話。ボアザン星人基地から脱出してきたという父親キャラに「主人公たちの父親である剛博士は裏切っている」って言われて悩んだりして、二重父親裏切りっていうプロットが面白い。
でも、人質の子供はすでに・・・。というえげつない脚本を書くのが辻真先なんだなーって。辻先生はまどかマギカを褒めてたので、70年代の虚淵玄だったんだなあ。正直、辻真先先生の書く話は悪趣味なんだが、ドキドキハラハラするというのも事実。
しかし、この殺人エンターテインメントっぽさはチャージマン研!みたいな気が。


あと、今回もやっぱりモニターのなかの人物と目を合わせているので、ロボット物のパロディとしてGAINAXにネタにされるんだなーって。

  • 第15話 皇帝陛下のプレゼント

脚本:桜井正明 絵コンテ;高橋資祐 演出:山崎和夫 作画監督高橋資祐金山明博(総作画監督
親父が敵になって同僚を猟銃で射殺しまくるという、子供にとっては悪夢のような猟奇的エピソード。
剛兄弟が父親の偽物に騙され、プリンス・ハイネルは叔父あたりに当たるっぽい本国の皇帝陛下に作戦レベルで騙されている、っていう主人公とライバルキャラの切ない相似関係が萌えました。
前回、ボアザン星人の連中が「地球人に愛を感じる心があるってのは疑問」と言っていたけど、今回は主人公たちが父親への愛情を敵に利用されて「こういう卑劣な作戦を思いつくボアザン星人には赤い血が流れていないんだ」って怒るので、イデオンみたいな民族対立だなーって思いました。
あと、ボアザンってフランス語で隣人っていう意味だし、父親の偽物が「ボアザン星はいいところだ。私はそこで要職に就いている」とか言うの、北朝鮮のスパイの人みたいな感じで、70年代の冷戦真っ只中の北朝鮮っぽい感じでした。
まー、ボアザン星の方が朝鮮民主主義人民共和国よりも文明は進んでますけどね。ワープとかするし。美形だし。
今回、ロボットアクションは淡白でしたが、基地に侵入したオッサンが無表情で脇役を猟銃で射殺しまくるというボーリング・フォー・コロンバインみたいな絵面がショッキングで大変でした。モブに厳しいのは竜の子だけでなく70年代アニメの共通なのか?やっぱチャー研っぽかった。この40年でアニメ脇役キャラの人権、生命権は非常に向上しましたね。
ほんと、昔のアニメの脇役は殺されてもかわいそうじゃないって感じの軽さで死ぬからなー。
脇役の命も重いっていう概念を作ったのは富野とか出崎統だろうか?出崎統は負け犬にも人生を背負わせてるしなあ。
富野はザクのパイロットにも生活感を出す。まあ、ガンダムはしょっぱなに人類の半分死んでるけど。