玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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超電磁マシーン ボルテスV 16〜18 富野は16話

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  • 第16話 ファルコン壊滅の危機

富野回
脚本:五武冬史 絵コンテ・演出:とみの喜幸 作画監督:坂本三郎、金山明博(総作画監督

基地の指揮能力が欠けたビッグファルコンは敵との対応に遅れて、甚大な打撃を受けてしまい、更に司令室がやられて、ボルテスチームまで全滅したとの誤報が飛ぶ始末。またボルテスチームも司令室が破壊された影響で出撃が出来ず、シャッターをミサイルで打ち破る強引な方法で出撃してボルテスⅤへボルトイン。


ビッグファルコンの隊員のトホホっぷりに泣けます。デマが飛んで脱走しようとしたり、切り札の電磁砲を使ったのはいいけれど、ボルテスⅤの足を破壊してしまったり……どういう事なの?と言えることでまた、後の機動戦士ガンダムホワイトベースクルーのバラバラっぷりの先駆けの様な気がしないでもありません。
http://higecom.web.fc2.com/bigfalcon/story/story16.html

敵の空襲で混乱する味方のビッグファルコン(基地)隊員が慌てて間違った操作をしたり、コンピューターを破壊されて通信や連絡の齟齬により恐慌が増幅されていって無益に次々と殺害されていく描写がイデオンのように凄惨である。イデオンも戦闘機パイロットと通信手と砲手の連携ミスで戦死者が出たりしてましたしね。

ホワイトベースの先駆けでもあるし、モブに厳しい70年代アニメの路線でもあるし、コンピューターが破損しただけで基地機能が麻痺してしまうというのはエヴァンゲリオン第拾参話 「使徒、侵入」 や第25話「Air」に続くリアルSFっぽい感じでもある。
エヴァってイデオンの影響も強いが、やっぱり70年代王道ロボットアニメの影響も強く受けていたのだなあ。
また、前半戦でビッグファルコンに多くの死者をもたらした敵の攻撃手段が顔の見える怪獣ではなく、大量の戦闘機の波状攻撃という地味で無表情な感じというのが空襲の恐ろしさを感じさせます。戦闘機の大群に対して、1台のスーパーロボットだけでは対抗しづらくて、その奮闘は滑稽にすら見える、というのが戦闘の苦しさを感じさせる。
戦いは主役ロボットと怪獣だけじゃなくて、基地の大勢の職員(しかも自分の命を大事にして戦況が悪くなると敵前逃亡する)や戦闘機や砲座の連携で行われるんだ、っていうのがリアルロボットっていうか社会性を重んじる富野っぽさだなー。
ビッグファルコンの基地機能が麻痺した時に主役メカの発進ゲートが開かなくて、内側からボルテスチームが砲撃して壁に穴を開けて出て行くの、すっごくガンダムGファイターで見た。他にもゲートを吹っ飛ばして発進ってやってるロボットアニメはたくさんあると思うけど。


また、修理描写にイチイチ細かい単位とか手順を重んじるメカマン路線がモスク・ハン博士のチームを思い出させて、理系好きの富野さん、って感じです。
そういう風に機械整備の精密さとめんどくささを描いた上で、新しい司令官の佐近寺公三が戦況に応じて修理手順を変更して一気に戦闘中に修理を完了させてしまうという、圧倒的な技術力を見せる。マニュアルのめんどくささを示すことで、それを臨機応変に使う佐近寺公三を引き立たせている。うまいなー。
佐近寺公三が登場シーンで逃げ出そうとしていた部下を銃撃して脅して持ち場に戻すのは、新選組の鬼の副長、土方歳三みたいなんだけど、追加で出てくる指揮官といえば、宇宙戦艦ヤマト2の土方竜を思い出させる描写でもある。
戦闘中に新米技術者を指導する時に「佐近寺が技術者をを叱咤しつつも安心させていく」、という表情の演技をつけることで佐近寺の人間的な度量の大きさを示していて、これもグッド。
理系的な論理の説得力に付け加えて、安心感を与える父性がある。人間個人としても実行力があり、頼れる人物。
途中から出てくる司令官なので、主人公たちや今まで見ていた視聴者には多少反感を買いやすいのだが、それを逆手にとって、厳しく口も悪いが実力で行動し、部下を導き、付いてこさせるパワーのある人物だということを印象づけている。
ラストに「お前らのへっぴり腰を鍛えてやる」と言って笑ってボルテスチームを睥睨する佐近寺の表情が実に食えないオヤジって感じで良い演技。そうやって新しい指揮官に笑われて「なにくそ」と思いながら黙っているような健一の顔が、すごくガンダムの序盤にブライトに叱責されて内心怒ってる時のアムロとそっくりの表情で、すごく富野でした。


あと、必殺の天空剣を放つ時にタイミングがちょっと遅れて、岡めぐみが剛健一に「健一、何やってるのよ!」と言って、健一が「黙っていろ!めぐみ!」と叫びながら技を決める、微妙なロボ内部でのギスギスした言い合いもイデオンっぽくて、富野アニメのギスギス会話が好きな私としては嬉しかったです。現実でギスギスした会話をするのは嫌いですけどね。現実の人はアニメほど言葉にセンスがないですし。



  • 絵コンテ的な見所としては


「今は何も考えないことよ、健一」

「めぐみにあっちゃあ、適わないなあ」

「あっ」

「円盤だ!」「警報!」
という、ロマンチックなヒーローとヒロインの会話から怪獣登場、そして基地の大混乱と職員の混乱と犠牲にワンカットでつながるところがすごく良い。ヒロインの表情の変化であっという間に日常が戦場に叩き込まれるところがすごくショッキングだ。




破損した脚部の4号機を基地に帰らせて応急修理を受けさせるために上半身とが分離し、4号機に内蔵されている武器だけを取って戦う。
うわー。すっごく異形。イデオンだなー。ボルテスやコン・バトラーVでこのようなイレギュラーな部位欠損型分離を行っているのはほとんど富野演出回です。
でも、実はこういう変なロボットの分離とか変形って、子供がロボットのおもちゃでゴッコ遊びする時によくやります。だから、アニメの中でも分離と変形を活かした戦い方をすると面白いと思います。中途半端な変形を生かした戦い方って、ガオガイガーとかでもやってたよね。あれは面白かったなー。


それにしても、富野回は色々と内容が濃くて楽しい。

  • 第17話 愛も涙もふりすてろ!!

脚本:五武冬史 絵コンテ・演出:寺田和男 作画監督:佐々門信芳、金山明博(総作画監督
特訓回。
佐近寺博士の父性が炸裂した巨人の星のような激烈な特訓によって、敵の攻撃を破り、ボルテスVの合体の時の弱点を克服した。
長浜忠夫監督の巨人の星っぽさが炸裂する。レイアウトも煽りの構図とかが多く、力強い印象。佐々門作画監督の男らしさもあるのだろうか。
理由の不可解な特訓を強いる指導者に反発する主人公たちだが、今回のラストで割とあっさりと佐近寺博士が謝罪してくれるので、悪い奴だなーっていう感じはすぐに払拭されるけど、やっぱり人の物を壊したりするのはよくないと思う。謝ればいいってもんじゃないし。体罰をしたり人権侵害をしてから「お前たちを思って鍛えたことだ」って言うの、マインドコントロールの手法だよね。
まあ、熱血指導って多かれ少なかれそういう面がありますよね。
まあ、命懸けで訓練しないと死ぬっていうアニメです。でも、マシーンで操縦できるんならマシーンで自動操縦したほうが・・・。いや、一度人間性を捨ててから得られた真のチームワークってやつが大事だったのか?
スパルタ精神論は因果関係がよくわからん!
まー、2クール目の中盤から途中登場してリリーフ指揮官になる佐近寺博士のキャラを立てなくちゃいけなかったんだね。

  • 第18話 父よ!地球は近い!!

脚本:田口章一 絵コンテ・演出:横山裕一郎 作画監督:金山明博

ボルテスチームの主人公三兄弟の父親である剛博士がボアザン星で反乱を起こし、地球に亡命してきたところを、ボアザン星の地球侵略基地の幹部に秘密裏に拉致される。その宇宙空間での戦闘を察知したボルテスチームは父親と戦場で再会する。だが、今までも父親の偽物を敵に送り込まれていたボルテスチームは敵の盾にされている父親を見ても偽物だと思い込み、父を巻き添えに敵を殲滅しようとする。それを「息子たちの成長」と喜んで死のうとする父。だが、攻撃する瞬間、父親が本物だと察知した息子たちは父を殺さずに済んだ。だが、敵に父は連れ去られてしまったままだ。


というあらすじなんだが、ボアザン星での父親の立場を説明するために、今まで全然出番がなかった剛博士の正体が回想で描かれるという演出はちょっとぎこちないと思いました。
今まで全然出番がなかった人の正体や本質を、いきなり回想シーンで、しかも主人公との絡みがほとんどない宇宙の彼方の別の星でのできごとを、10分くらい見せられるのはちょっとテンションが低かったと思う。衝撃的な真実の開示なのだが、いきなり説明されてもあんまり乗れなくて、そこは困った。


でも、主人公チームが父親とガラス越しに、Zガンダムカミーユの母親のように再会してからの父親の生死や真偽をかけたサスペンスドラマは面白かったです。
やっぱり知らない人の人生について説明をだらだらされるより、主人公の心情や人情と絡めたドラマの方が、同じ生死を賭けるにしても感動的だと思いました。