- 追記。
外宇宙生命体として希望をもってエンジェル・コールと呼ばれた細菌は、46秒で接触した人間をドロドロに溶かす超危険な細菌兵器だった。
これを奪ったエリンは「地球の人間など滅べばいい。コロニーや木星で暮らせばいい」と言っていたが、そんな彼でさえ「ワクチンが作れなかったし、想定よりはるかに危険で耐久力のある細菌だったため、地球だけでなく宇宙に広がって木星まで確実に人間を絶滅させる」と恐れた。
木星まで破壊する兵器としては、∀ガンダムのナノマシン・月光蝶を連想させますね。宇宙細菌はナノマシンなのか?
ガンダムはロボットアニメなので毒ガスはあってもあまり生物兵器は使われないのだが。(プルシリーズやバイオコンピューターもある意味生物兵器と言えるかもしれないが)
細菌兵器については、逆襲のシャアを描いた小説版機動戦士ガンダム ハイ・ストリーマーで興味深い記述がある。
映画では序盤のνガンダムの調整中のアムロ・レイとチェーン・アギの会話
「宇宙時代、人が生きていく環境を人為的に作るしかなかったから、自然の営みを忘れて、人類の体そのものがビビッドでなくなったんじゃないかしら?だから、性的にも社会倫理的にも、モラルが低下して、動物的な性を求めようとするんじゃなくて?」
チェーンは、シートの間に乗り出して、アムロを正面から覗き込んだ。
「大学の卒業論文みたいだけど、認めたいな」
「ほら、後天性免疫不全症候群って病気があったでしょ?あの予防と治療方法が発見されてから、モラルは低下し続けたという歴史じゃなかったかしら?」
「ああ、旧世紀後半に流行した難しい病気だったね。あれは、文明を構築してうぬぼれすぎた人類に、神がブレーキをかけようとしたんじゃないかと思ったけど、文明の発達現象自体が、自然にたいしての冒涜だってことが、人間にどうしても分からないんだよな」機動戦士ガンダムハイ・ストリーマー〈2〉クェス篇 (徳間デュアル文庫)
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主人公のセリフとは思えない、エイズの文化的肯定論。これを、富野由悠季監督は薬害エイズ訴訟が起こるずっと前の1988年に書いた。明らかに、80年代後半のエイズ問題を引用した会話で、宇宙世紀の自然な会話ではない。富野が言わせたセリフだ。
富野とアムロはモラルのないセックスを批判すると同時に、それが生まれていく人口環境に囲まれた世相とか、それを作り出した文明全体への批判へと話を大きくしている。
そして、発達しすぎた人間に神などがブレーキをかける、と言うのは富野監督のザンボット3、イデオン、ダンバイン、でも描かれたテーマだ。
で、クロスボーン・ガンダムゴーストの話だが、長谷川裕一先生は僕よりも数倍富野作品への造詣が深い人なので、アムロの「エイズは神の意志だ」という発言も念頭に置いているのだろう。
そして、エンジェル・コールは外宇宙に人類を呼ぶ声だと、テテニス・ドゥガチは夢見て名付けたコードネームだが、実際は人類を死へ誘う天使のラッパだった。
宇宙進出した人類を抹殺するための外宇宙の生物兵器。あるいは、トップをねらえ!の宇宙怪獣のような宇宙全体の免疫細胞なのかもしれない。
これはSFですね!!!
ザンボット3で発達した地球人を抹殺しに来たガイゾックの基地、バンドックに似た見かけと機能を持つバンゾというモビルスーツも、クロスボーン・ガンダムゴーストに登場しているので、明らかに長谷川先生は分かった上でやってる。僕が分かったのは6巻の段階なので、遅かった。スマン。
同時に、テテニス・ドゥガチが地球圏脱出ように作った高速宇宙船の名前が「林檎の花(マンサーナ・フロール)」で、カーティスたちが「セルピエンテ・タコーン(蛇の足)」を名乗るというのもエデンの園のアダムとイブと悪魔の神話を連想させる。
なので、単純な生物兵器の奪い合いとロボット戦争だけでなく、そう言うメタファー的な神話性を感じると、より一層クロスボーン・ガンダムゴーストが面白く見えるんじゃないかな。と。Vガンダムの最終回にマヤの遺跡が映ったのは、決して無意味ではないのだ!
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- さらに余談
前記事に書こうとして書き忘れたのだが。
テテニス・ドゥガチを名乗ることになった前作のヒロインのベルナデット・ブリエットを支えるカーティス・ロスコは、前大戦の木星戦役で死亡したはずの男の名前と戸籍を借りている。
本物のカーティス・ロスコはクラックス・ドゥガチの後妻でテテニス・ドゥガチの義母のエウロペ・ドゥガチの恋人である。エウロペは木星戦役の3年後の木星帝国との最終決戦、神の雷計画でトビア・アロナクスをかばって死亡した。
なので、テテニスとカーティスの親密な関係は名前だけ見ると親子どんぶりの不倫関係にも見える。アダルティー。
もちろん、中身は少年時代の彼と彼女のままなんだけど。
彼がそういう不倫にも見えるような危険性のある名前と戸籍をあえて使っている、と言うのは、やっぱり前作の鋼鉄の七人で命を救ってくれたエウロペへの想いがあるんだろうな。
そういう大人になった少年少女の心の微妙な部分が、ネーミングをとっても垣間見れるので、やっぱりこれは深い作品ですよ。
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