玖足手帖-アニメブログ-

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創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年11月 第11話 第12節

サブタイトル[ラスベガスと王の心] 
前節
創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年11月 第11話 第11節 - 玖足手帖-アニメ&創作-



 成層圏で仮の人間の姿から真の戦闘ロボットに変形したレイは猛然と飛行中の戦闘機に連打を浴びせる!地球次元の物理法則Cardinal Codeを無視した宇宙人の超攻撃的なその不条理的パンチからは突撃隊員の微小宇宙人がブチ込まれ!機体を内側からも破壊する!正当な行為において第一のしもべと第四のしもべも賛同し奴隷諸国連邦は一致団結し、力を行使した。
0「会見時刻・北緯37° 3' 16.33", 西経115° 26' 44.58"である」
 もはや、ケツァルコアトル型自動戦闘機は飛行不可能の形状にまで破壊され、墜落した。


ガガーン!
ズザザザザザザーッ

 核ミサイルは逆に宇宙に飛び去って行った。レイの行動で核ミサイルを止められて、日本に拠点を置く11の11の11たちも乗っ取ったコンピューターシステムの裏に隠れ、次の核ミサイル発射は控えている。
 バラバラになった無人戦闘機の機首が墜落した所にレイも着地した。分子操作でレイは顔を覆う人皮のマスクを瞬時に修復すると、撃墜した機体の内側を調査するために無人機の残骸の装甲板に手をかけた、が、それより先に内側から金属板が引き裂かれ、声が飛びだした。


キング・オブ・ハート「Nice to meet you!」
レイ「!これは!人間!なのか?」
 ぶっ壊れた戦闘機の機首に、設計上存在しないはずのカプセルがあり、そこに老人がいた。
  

  
 驚きのあまりレイは墜落した戦闘機の機首から這い出ようとするサイボーグを見下ろしつつ、超時空通信ではなく、久しぶりに音声を出してしまった。
 いや、老人と言えるのは顔の半分だけで、その体の残りは、機械だった。それを見て、宇宙人たちは混乱する。が、重力波逆算型全地球測位システムから瞬時に該当者を検索照合した。
レイ「Nice to meet you too. あなたのその機械化した体。ザック=タンク・大江戸さんですね。キング・オブ・ハートとしてこの戦闘機に乗ってらしたのですか」
 混乱のあまり宇宙人は日本語翻訳機能を失調し、敵対している超能力者に対して丁寧なあいさつをした。
キング・オブ・ハート「乗っていたというのとは少し違いますな。しかし、確かに私はあの戦闘機を通じてこちら側にアクセスしておりました。つまり最初にお伝えした通り、我々は世界の裂け目の存在。世界の裂け目と言う点では異次元生命体のあなた方に似ている」
レイ「そこまで知られた!?」
キング・オブ・ハート「時間どおりのご到着ですな。はじめまして、そう、私がキング・オブ・ハートことザック=タンク・大江戸です。貴方達の実力は見せていただきましたよ・・・。私の顔を見ただけで本名を知るとはすばらしい」


レイ「ザック=タンク・大江戸は身障者ながら、大富豪。有名だ。
 そして、・・・・・・セントウォーター女学院を含む学校法人の理事長兼校長。知っている」

  
  
大江戸「そう、私はこれでも人間なのでね・・・。裂け目から出たのでもう殴らないでください。物理空間での戦闘能力ではあなたには敵わないでしょう。ふふふ・・・。同盟の同志を通じて米軍の攻撃も終わらせましたので、平和的に話しましょう。
 宍戸隷司さん、こと奴隷諸国連邦第零番国のレイさん」

 レイは既に人間の振りをする顔の皮を被りなおしていたが、自分たちと頭令そらしか知らない宇宙人としての自称を大江戸に口にされた。大江戸ではなく、名前を知られて驚いたのはレイの方だ。
レイ「何故、私の名を知っている?」
大江戸「最初の招待状に記載したとおりです。私はハート属性の超能力者、オーバーマンなので。あなたがた黒色遊星連邦出身の奴隷諸国連邦の方の心を私のオーバースキルで読んだまで」
レイ「???」
 完全に沈黙したロボット戦闘機から、巨大な蟻のような形のロボットが脱皮するように出てきたが、その機械製の昆虫の体の頭の部分が人間の上半身になっているのが、キング・オブ・ハートの容貌であった。蟻のような、蜘蛛のような形のロボットが蠢かす8本の金属の手足のうちの前脚の一本がレイの顔を貫いた槍だった。
大江戸「ですから、私の特殊能力は精神制御・・・このカプセルごと戦闘機に刻んだ世界の裂け目に入っていましたが、それだけではあなた方から隠れて観測するのに不安がありましたのでね。精神力で自分自身の生命反応を消していたのです。
 どうやらあなた方は知的生命体を殺せないらしい。やはり生命力を消していてよかった・・・」

レイ「・・・・・・私、我々の、思考を読んだ、の、ですか?と、と?」
 戦闘は終結したが、オーバースキルによって思考を読まれるという前代未聞の事態に混乱し、さらに発話に不具合を起こしている。
大江戸「先ほど私の義足があなたを刺して接触回線を開いた一瞬だけ、です。今はもう読めません。これで安心できますか?」
レイ「ありえ、ない・・・。人間が我々の心を読むなどと言う事は・・・・・・」
大江戸「あり得ない事を可能にするのがオーバーマンです。それで読みましたが、あなた方は人間の次元からは見えないほど小さな小さな大きさで、しかも多くの宇宙人で、いろいろな物体に宿って地球にいる、ということでしたか。
 ですから、思考が多量すぎて私でも平時にはあなた方の心が読めなかったのですな。それで先ほどまでの攻撃で、あなた方を徹底的に追い込み、結果的にあなた方の心を一つの方向、つまり“私に会うという目的”にまとめさせていただきました。それで、あなたの心を読めたのです。
 ですが、今はまた元に戻っておられる。これでは私でももう心は読めません」

 と、義手の指を器用に結んだり開いたりするハンドゼスチャーを交えて大江戸は語り、最後に肩をすくめてみせた。


レイ「我々がキング・オブ・ハートを探った時に多くの我々が目的を一つにしたのは事実だ・・・が・・・」
 7(エリア0へ、次元観測班からの概要報告。我々の方の宇宙の精神波紋にごく微弱な増加ノイズが観測された。ザック=タンク・大江戸が我々の世界の情報を取得したなごりだろう。
 そこからザック=タンク・大江戸の精神干渉波形を推測できた。原理は不明だが、幽子を観測する能力のようだ)
 0(エリア7、了解だ)

 、超時空通信でセブンセンサーが密談を交わした。
0(しかし7、我々の情報はどの程度大江戸に漏れ、他のC4に知られたか、調査結果は不明なのか?)
7(不明だ。エリア0に大江戸と会話し、漏洩状態を調査するように要請する。だが、現在はこちら側の宇宙の精神波紋にノイズは入ってない。傍受されている可能性は低い)
 
  
  
ぷしっ
 そこで、大江戸が背中にしょっている、大型冷蔵庫のような箱の上部が機械駆動音を立てて開いた。
大江戸「私は見ての通り、体の大半が機械で、これは私の内臓代謝装置ですがね。物入れにもなっております」
 と、大江戸が語る箱から、彼の機械製の脚のうちの二本が折りたたみテーブルを器用に担ぎ出して、自分の頭をまたいでレイとの間に置いた。天板の裏から自動的に金属製の足が開いて地面に固定した。それから、人間の腕に当たる部分についている義手も真後ろに回転して、てきぱきと箱からティーセットを出してテーブルの上に置いた。
大江戸「それでは、予定通り、ここで会談を始めましょう」
レイ「了解、した」
 合金製の薄いが頑丈な折りたたみテーブルに据え付けられた金属棒の椅子に、レイが腰をおろした。予定通り、山中の窪地で、子牛くらいの大きさはある機械の蜘蛛に接続されている地球人のサイボーグと、人型ロボットに憑依して人の皮を被った宇宙人が向かい合う形となる。
 エリア51からの砲撃も、ラスベガス方面の部隊からの戦闘機の攻撃も終わり、セブンセンサーが引き起こしていた嵐も去り、砂漠の深い蒼天に浮かんだ太陽が雨上がりの砂漠を熱し、立ち上った陽炎がこの二つの体を包んでいた。
大江戸「どうぞ、あなた方もくつろいで下さい」


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