玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年11月 第11話 第17節

サブタイトル[ラスベガスと王の心]
目次
幻視小説夢兄妹寝物語第2巻 「少女愛・教師編」目次 - 玖足手帖-アニメ&創作-
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創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年11月 第11話 第16節 - 玖足手帖-アニメ&創作-

前書き:レイと大江戸は機械の体だったから全然動かない。そらは動く。

  • 日本、現地時間11月13日(木曜日)午前9時、頭令そらの邸宅

 そして、宇宙人達は1日のアメリカ出張から頭令そらの住む屋敷に戻ってきた。
 屋敷に宿っている4番目のしもべである四辻の四つの塔の屋敷の宇宙人たちは、レイ達と大江戸のラスベガス近郊での抗争については、そらにずっと黙っていた。
レイ「ただ今戻りました。そら様」
 扉を開けて、そらの居る朝食用の食堂にレイが入ると、
そら「ザッケンナコラーッ!なにしてたのよーっ!」
  
  
バリーン!!
 

 ワープの時に、砂ぼこりを落とし服も整え直して戻ってきたレイに対して、丸一日、執事に放っておかれたそらはいきなりブチ切れた。居残り組のメイド宇宙人が創り出した朝食のミートパイを食べ終わった平皿を突然そらがレイの顔に手裏剣めいて投げつけたので、陶器とサングラスが盛大に破けて破片が舞い散った。
そら「アホーッ!」
レイ「そら様・・・」
  
  
バキッバキッ
 その破片を踏みしめて歩み寄ったレイは、ひざまずいてそらの小さな体を抱きしめた。


レイ「レイはそら様をお守りいたします。そら様は本当に、大切なお方なのです」
そら「あたりまえよっ!意味のわからない事をするな!」
 柔軟対弾プラスチックの皮膚に覆われたロボットの体にレイは宿っているが、そっと優しく抱きしめた。それは全くそらにとって不快ではなかったが、よくわからなかったしイライラしているので、膝蹴りを入れた。レイの体を包むバリアーはそらの蹴りを受け、もちろんそらに痛みはなく、代わりに運動エネルギーのすべてを引き受けたレイの体は吹き飛んで壁に叩きつけられた。
レイ「すみません!」
そら「なに柄にもなく興奮してるのよっ。気持ち悪い。さっさと皿を片づけなさいよ」
レイ「了解しました。そら様はお元気そうで良かったです」
 
そら「ボケナスがっ!」
グシャァ 
 銀の燭台でそらが殴りつけたので、それがレイの顔でひしゃげた。
そら「あたしは怒ってるんですけど?ほら、とりあえず座っててやるから、社が来る前にさっさと何があったのか言いな」  
 ガラン、とひんまがった燭台のカスを床にほおり投げてからそらはビロード張りの椅子に腰かけた。それでレイはその隣の席について報告した。散らかった物は屋敷の宇宙人が自動的に元の場所、元の形に戻しつつある。
ミニコ「あ、そらさま、これ、お土産のお菓子です。現地のクッキー」
ミイコ「朝食後のデザートとしてのカロリーはちょうどいいかと」
ミミコ「紅茶も足しますので、機嫌を治して下さいませ」

 スペアの体に戻ったミニコが残りのメイド人形と一緒にそらのご機嫌をとる。
そう「じゃあ、もらうわ。で、レイ、代表して報告」
 椅子にふんぞり返って、そらはクッキーをぱくつきながら、足元にひざまづいたレイから経緯を聞く。
  
  
レイ「かくかくしかじか」
そら「まるまるうまうま。
 なるほどね。宇宙人VS超能力者ねー。へぇー。そんな事があったの」

 自室のデスクに今日の教科書をまとめながら、そらはさらりと言った。レイが正直に事情を話せば、それがどんなに奇妙奇天烈な話でも構わない、ただ奴隷が自分に隠し事をしていたことに腹を立てていたのが解消された、と言うだけの反応だ。
レイ「宇宙人の我々を見た大江戸先生もそうでしたが、そら様も驚かれないのですね。超能力者が出現したのですよ」
そら「宇宙人のあんたも超能力を使えるじゃん。さっきぶっ壊したお皿も蝋燭立ても元どおりになったし。
 そーいう宇宙人がいるんなら、超能力者もいるでしょ」

 ペラペラと参考書の環境白書の写真を眺めながら、そらはこともなげに返す。
レイ「いえ、そら様。我々の能力は我々の宇宙の物理法則と科学に基づいたれっきとした技術であって、精神エネルギーや超常現象ではないのです」
そら「はぁ。そう。まー、どっちにしろあたしが使えるもんじゃないし。あんたがあたしのために使ってりゃーいいのよ。だって、あんたたち、必要があったら私とお兄ちゃん以外の人間を全員殺してもいいって思ってたんでしょ。ほんとに血も涙もない宇宙人よね」
 などと言いながら、そらは残虐な言葉とは裏に嬉しそうにニタニタして言った。
レイ「いえ、しかし我々の技術では核兵器で瞬間的に抹殺した方が、観測データのずれが少なく、容易に復活させることができるのです。しかし技術的には可能ですが、倫理的問題がありますので、これは最終手段です。今回は使わずに済みました」
そら「でもさー、社亜砂先生はオーバーマンだったんだしさー、もし核で殺してたら復活させないつもりだったんでしょ?2ヶ月もうちに出入りしてる顔見知りなのにさ。ひどいわねー。やっぱり宇宙人に人間の命の重さは分かりようもないわよね」
 ヘラヘラしながら伸びをして、そらは頭を逸らせて上目づかいで後ろに控えているレイの長身痩躯の上の老人顔を見上げながら言ったので、くるくると学習椅子が回転し、ふわっと髪の毛が回った。
レイ「結果的に、誰も殺しませんでした」
そら「別に言い訳なんかしなくてもいいわよ。結果的にぃ、私は影響なかったわけだし。私とお兄ちゃんが幸せになれるなら、他の誰が死のうが生き返ろうが大して変わりないわけだし」
 スラリと、縁にレースの付いた白いソックスに包まれたまだ肉付きの薄い少女のふくらはぎをスカートの下からくねらせて、そらは右足を組んで左脚を伸ばして、宍戸隷司のよく折り目のついた黒いズボンに当てて回転をやめた。
レイ「はい。我々の力はそら様のために」
 女主人の足元に恭しい跪く宍戸隷司。
そら「それに、その校長先生の言ってるのが正しいんなら、あんたたちは超能力者よりも強いって見せてやったからC4が怖気づいて、あんたたちを味方にしようってことでしょ。だったらなおさら私は安全ね。その点は褒めて遣わす」
 今度は見下すように顎を突き出して、少女は奴隷をかわいらしい桜貝のような爪で指さして微笑みをくれてやった。
レイ「勿体なきお言葉、恐悦至極」
そら「そうね。せいぜい、超能力者同盟でも名門校でも、あたしのために利用してやりなさい。だって、あんたたち、あたしの奴隷だから」
レイ「了解です」
  
  
 勉強時間前に召使たちに指示を出し終えると、小さな女主人はデスクに肘をつき、自己陶酔の世界へ。
そら「そして、あたしの力はやっぱり、お兄ちゃんのためのもの・・・・・・。えへへへー。
 世界中の超能力者の誰もできない事をあたしはできるのね・・・・・・。あたしこそがお兄ちゃんを目覚めさせる鍵・・・・・・。
 うふふふ。
 超能力者どもが何人いようが、お兄ちゃんを復活させられるのは私だけ・・・。
 うふっ 

 アハッ
 ウヮーーーーーーーーーーハッハッハッハッハッハッハッハッハーッ!

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