玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。旧玖足手帖から記事・ブクマを引き継ぎました。


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富野喜幸絵コンテのさすらいの太陽10,11話をGyaO!で見た。

新年最初のアニメ記事はさすらいの太陽の富野回です。ちなみに新年初アニメはリーンの翼で大和心でした。

gyao.yahoo.co.jp



第10話あすへの旅立ち
第11話ひびけ!トランペット

虫プロ大同窓会開催!
http://www.style.fm/log/02_topics/top030215.html


――『さすらいの太陽』について
 これだけは言っておきたいんだけど、(『ジョー』を強くライバル視したけど)『あしたのジョー』にギター1本じゃかなわなかった(笑)。(富野由悠季/演出)


――『あしたのジョー』について
 手塚さんの作品ではありませんが、ちばさんの作品ならいいんじゃないかと手塚さんから言われんです。(富岡厚司/初期プロデューサー)
 (『あしたのジョー』は)まだ生き残ってるね(笑)。(出崎統/チーフ・ディレクター)

こんな虫プロ70年代初頭に富野由悠季が斧谷喜幸名義で演出、絵コンテで参加したさすらいの太陽がGyaOでやっているので見ている。


nuryouguda.hatenablog.com



2年前にも配信されていたのだが、4話までしか富野回の感想を書いていなかったので、今回の機会に書くことにしたのだった。
富野由悠季全仕事によると、富野コンテは
3、5、7、10、11、13、14、17、20、22、23、26話です。
Wikiには画面クレジットに乗ってる演出の11話までしか載ってないけど。
13話以降は絵コンテのみで演出は別の人。


だが、先に書いたエントリの通り正月から体を壊したので、あらすじや感想を書く気がしない。


とにかく富野回だけでも騙されたと思って見て!見ればわかる。

さすらいの太陽 DVD-BOX

  • 個人的に箇条書きの見どころ

・芸能界のプロデューサー、作詞家、看護師、などの社会的地位にある大人が芸能界志望の女子高生を平気で騙す
・女子高生の前で大人が札束をやり取りするゲスっぽい感じ
・インターネットとかメールとか携帯電話とかないので海外に行った師匠と連絡ができないで、バカな女子高生主人公が一人で考えて悪徳芸能事務所に勝手にに所属して帰国した師匠に即破門
・バカな女子高生が悪い看護婦の「いじわる」で刺された父親の入院費18万円を払うためにオデン屋をやったりドサ周りの歌手になったり
・バカな女子高生をドサ周りに連れていって連絡手段もない八戸に連れていってから契約金をピンハネする悪徳プロデューサー
・SHIROBAKOやそれが声優!を見てアニメ業界に入る最近の若者もアレだけどさすらいの太陽を見て芸能界に入る70年代の若者もアレだな…。って言うか、普通にハッカドールのKUROBAKOよりひどい。


dargol.blog3.fc2.com

昨晩たまたまマツコ&有吉の怒り新党を見ていたら、
「新・三大○○」のコーナーにて「さすらいの太陽」が取り上げられているじゃないですか。


今回のテーマは「 ヒロインへの理不尽過ぎる試練」。
主役ののぞみがこれでもかと理不尽な仕打ちを受けるシーンを3話抜粋しています。


2003年に鉄腕アトム放送開始40周年記念として「虫プロ同窓会」が開かれ、
そこで虫プロ制作アニメ各作品の関係者が壇上でコメントすることがあったんです。
そこで富野は「さすらいの太陽」唯一の関係者としてこのようなコメントをしていました。

「僕自身は虫プロを辞めてフリーの立場でコンテの作業をさせてもらってました。ただ、総監督に勝井千賀雄監督が立ってくださったので、勝井監督の大きな演出をなんとか少女ものに映したいっていうのと、それからこの前に(壇上に)登場した『あしたのジョー』ってのがあったんだよねぇって。あいつらの仕事には負けたくないんだけれども、ギター一本じゃちょっと無理なんだよねってそういう実感をすごく持って、悔しくって悔しくってしょうがないものをとにかくやったら、本数だけバンバンいってしまった、という作品なんです。そういう意味では今ここ(壇上)に関係者がいないってことはどういうことかっていうと、(ここからやさぐれモードへ)虫プロから本当に冷遇されたシリーズでよー!!!(絶叫)おまえらこっちみて少しは『さすらいの太陽』大事にしてやってくれよ!!!!!!!!!……(少し冷静になって)って言いたいっていう、そういう作品でした」

kirohapinku.blog.eonet.jp

・金持ちのお嬢さん香田美紀が作曲家の先生の家に金でレッスンを受けて、金で大手芸能事務所への紹介をしてもらう。一方、貧乏だが快活な主人公の峰のぞみは住み込みの内弟子として作曲家の家の女中をしていて。レッスン生の美紀が女中をしている同級生に向ける差別意識。
・作曲家に金でレッスンをしてもらっている美紀の前で売れっ子作詞家がのぞみの歌を「すてきなサムシングのフィーリングがある」と70年代っぽいコンクリート・レボルティオな発言で褒めて空気が悪くなる。
・金で美紀のレッスンをしている作曲家が作詞家に美紀のデビュー曲の作詞を頼んで「君のドロドロとした部分を盛り込んだらいいと思うよ」とか言って空気がギスギスする。表面上はビジネスパートナーの作曲家と作詞家が腹の底で侮蔑し合っている中年男性の関係性を見ている女子高生という逆シャアかよ、みたいな構図がいい。
・金で美紀のレッスンをしている作曲家が作詞家に「のぞみには君みたいな業界ゴロの手を付けないで欲しい」とか言う感じのことを言って、美紀は良いのかよ?みたいなギスギスした空気のハーモニーが作曲家・江川いさお、作詞家・野原純、デビュー間近の美紀の3人の間で奏でられて富野アニメなんだなあ…。侮蔑し合い利用し合う人間たちの空気の悪さを描いたら最高だなあ…。
・その後、作詞家野原純のスポーツカーに美紀が乗り込んで自分を売り込む必死さとか、それに対して「ステージママは嫌いなんだよ」と言い放つ大人の野原純の空気の悪さ。
・しかし、野原純の姉が悪徳看護師(生まれたばかりののぞみと美紀を入れ替えて、のぞみの育ての父を刺し殺そうとした犯人)の野原道子だったので話が酷くなる。
悪徳看護師野原道子は弟の純に「お前が作詞家として成功したのは私が青春を捨てて働いた金を持ち逃げしたからだ」「その事をマスコミにバラされたくなければ、のぞみを悪徳芸能事務所のDMプロでデビューさせて不幸にさせるのだ」と、普通に実の弟をゆする。骨肉の争い!
・のぞみに壁ドンする作詞家
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・美紀の母親から作詞のお礼としての賄賂の金を女子高生の美紀の前で汚くもらって「金があり余ってる人からはいくらでも貰います」と言う野原純だが、DMプロの悪徳プロデューサーからのぞみを買った金を差し出されると、「金は要らない!それよりこの件に関して私の名前は出さないでくれ!」と断る。賄賂を使った美紀とのぞみの汚い立場の違いを表現したエグい展開。あー、これ、鉄血のオルフェンズの火星賄賂おじさんで見た奴だ。うーん。1971年に子供向けとされたアニメでこういう成人男性や芸能関係者の腹芸とか金を巡る人の汚さを表現してるんだなー。リアルタイムで見たキッズはこれ、理解できたのかな?いや、60年代貸し本少女漫画はこれくらいのリテラシーがあった?
・原作は後に宇宙戦艦ヤマトの脚本で大人の鑑賞に堪えるアニメーションブームを作った藤川桂介先生。

藤川桂介 - Wikipedia

実家からは勘当されて無職同然のまま、田園調布の安アパートで餓死寸前の極限状況に追い込まれるも、その時の様々な体験は、のちの作家生活において貴重な財産となった。

こういう貧乏とか金銭トラブルの実感が出てて空気の悪さがリアルな昭和。



・作画がすごいしょっぱいっていうか、ほとんど動画が無いので、ほぼ止め絵の連続に近く、富野絵コンテを直で見ているような濃さ。
・ドサ周りで八戸の田舎者たちの前で野次られながら歌うのぞみ。まばらな拍手。しかし、母親への手紙には、「その瞬間ライトも何もないステージがどんな大劇場より素晴らしいものに思えました」と書くのぞみ。
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俯瞰でみじめさを演出しておいて手紙で母親に去勢を張る主人公という空気の悪さが映像の原則を醸し出していて良い。
・自称のぞみの後援会長で日雇い労働者の熊五郎と幼い弟妹達は素直に喜ぶが、のぞみの母は微妙に乾いた笑いをするのだった。その乾いた笑いは何だ。
・ドサ周りに落ちぶれた元レコード大賞歌手や日本人初のジャズトランペットの世界的賞を貰ったのにアル中になった男、新田アキラ、そして騙されてデビューしたのぞみを連れて八戸のパチンコ屋の隣の劇場で行われるショーの看板に「フレッシュ青春大行進」と書かれている70年代初頭の昭和の汚さを描いた高度に皮肉なメタ演出。きたねえなあ。八戸には娯楽が乏しいしテレビもインターネットも少ないと匂わせる、文化的差別意識。
・地味にドサ周りの劇場の周りに米国兵士を置いたりして場末感を出すのが昭和って言うか戦後。
・ドサ周りの公演の看板でのぞみの名前が徐々に大きくなるというテロップ芸。新房シャフトっぽさ。まだシャフトできてないけど。
・のぞみの歌で客が喜ぶと知った悪徳プロデューサーはのぞみの喉が潰れるまで歌わせるが、のぞみの出番が増えたことで元スターの女歌手は激しく嫉妬するのだった。汚い。全然フレッシュ青春大行進じゃないところが良い。なんだかんだ言ってSHIROBAKOはきれいなアニメだったなーって思う。というか、SHIROBAKOはまだパロディとかオマージュで作ってるけど、さすらいの太陽の時代はパロディ元が無いので、素で人間の汚さを描いてて、アニメキャラと言う感じと言うより普通に汚い大人に巻き込まれる子供と言う図で昭和が汚い。
・うーん。ドサ周りと言えばやっぱりあしたのジョーなんだよなあ。

nuryouguda.hatenablog.com

nuryouguda.hatenablog.com

このドサ回り編は、少年院出所編で、ジョーがプロボクサーになろうとあがく時期からあしたのジョーチームに入った富野喜幸の最後の演出登板編でもある。さすらいのコンテマン富野が最後に「帰えれ、輝くリングへ」でジョーチームを抜けるのは象徴的だなあ。
このドサ回り編でのジョーと稲葉の関係性が、後に葬式まで続く出崎統と富野との関係性にも似てて、萌える。富野と出崎統だけがドサ回り編ですよ。
第65話 リングある限り 宮田雪    杉野昭夫   崎枕
第66話 明日への旅立ち 田村多津夫   荒木伸吾 吉川惣司
第67話 小さな冒険旅行 松岡清治     杉野昭夫 斎藤博
第68話 仕組まれた八百長 山崎晴哉     杉野昭夫   富野喜幸

・最初は優しかった悪徳プロデューサーが、のぞみがドサ周りショーで喉を潰して歌えなかったら、「高い銭を払って雇ったんだ」「あんたは破門されたから東京に戻っても手も足も出ないんだ」「公演でがんばらないと歌手にはなれんのだ」「咳くらい水に塩を入れてうがいをすれば治る」と掌返しする。うーん。子供への大人の掌返し。
・元トランペッターの新田さんがのぞみに出番を奪われて焦って、深夜に呼びだして歌とトランペットで勝負してのぞみの喉を潰す。酷い。しかし、そのせいでのぞみがステージ上で歌えなくなったら、トランペットの演奏で暴れる客を黙らせ、悪徳プロデューサーにものぞみのギャラを減らさないように契約書を書かせる。でも、新田さんはのぞみのおかげで音楽への情熱を取り戻してDMプロを辞めてドサ周りの旅から抜ける。
・女子高生の喉を潰させておいて自分は情熱を取り戻して悪徳芸能事務所から抜けるのか。いい話かな?
・まあ、のぞみの契約金を負けさせないために新田は自分がクビになる、って話なんだが。「君も早くDMプロから離れるんだな」と言ってのぞみに自分の作曲した譜面を渡して汽車で去る。いい話かな?
・ここら辺のいい話じゃないように見えるんだが、何となくもやもやしたものを残しつつ、余った尺で「新田は音楽への情熱を取り戻し、のぞみもいい経験だった」とナレーションするモヤモヤした感じは母をたずねて三千里あたりの名劇に通じるものが。
・ここら辺の伏し目がちな表情はジョーの杉野昭夫絵の影響で絵コンテを描いた感がすごいある。
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さすらいの太陽の作画は
キャラクターデザイン - 高橋信也
アニメーションディレクター - 野部駿夫
デザイン補 - 安彦良和
作画 - 野辺駿夫ほか
・主人公ののぞみには「歌は心で歌うものなんです!」と芸能界の夢と希望を言わせる娯楽アニメーションと言う体裁なんだが、どうもその周りの大人たちが全然夢も希望もない場末を生きる昭和枯れすすき。主人公には一応夢や希望を言わせるけど脇役に汚い現実を演じさせてる、っていうのは後の富野アニメの特長にもなりますね。ガンダムの子供のパンを盗むおじさんとか鉄仮面とか。
最近は現実の方が普通にひどすぎて富野監督は逆に「アニメは夢と希望を描く物なんです!」と講演会で発言することが増えたんだが。うーん。
・主人公の峯のぞみはモデルの藤圭子の哀愁とかメンヘラ自殺に至る性格とは違って明るいんだが、さすらいの太陽という作品全体はダーティで暗い。僕の母親も元芸能関係者で藤圭子さんと前後して自殺しているので、僕は宇多田ヒカルなのでは?

wiki

アニメ化に際し、原作版の内容では残酷なシーンが多すぎて視聴者となる子供には精神的な負担が大きすぎると判断され、原作のストーリー性を残しつつシナリオやキャラの容姿、設定を大幅に変えることになった。

アニメ作品として初めて芸能界や歌手、音楽、歌謡曲を主体に取り入れ、現在で言うところの「アイドル系アニメ」または「音楽系アニメ」の礎を築いた作品とも言われている。本編では当時の芸能界の内情がリアルに描かれており、多くの流行歌が劇中で使用された。

その後、1997年に同局で放送された特別番組『ザッツお台場エンターテイメント!』内のアニメデモミー賞にて、本作のシーンが4つもの部門にノミネートされる。歌手の藤山ジュンコが峰のぞみの声優を務めているが、映像を見た浜田雅功からは「(主人公)演技ヘタやなー」と言われてしまった。

アニメ版も割と精神的な負担があるんだが。アニメデモミー賞は面白かった。


  • 宣伝

「大本山大覚寺勅封般若心経1200年戊戌開封法会記念事業」に寄せて | 旧嵯峨御所 大本山 大覚寺


平成27年4月から月刊「嵯峨」に連載されることが決定した本学客員教授である藤川桂介氏による「新・嵯峨野物語―悲劇の皇太子たち―」、さらにその小説の挿絵を、やはり本学客員教員であり若手人気イラストレーターでもある睦月ムンク氏が担当することなど、試行を重ねた結果、決定に至る経緯を考えたとき、大本山大覚寺・嵯峨御流華道・京都嵯峨芸術大学の三者を結ぶ深い縁を感ぜずにはいられません。
また、この小説の連載が終了した後、平成30年には単行本化しての出版を計画しており、さらにその後、小説をもとにしたコミック化の事業も検討しているところです。
ともあれ、60年に一度の事業が1200年の長遠な時を積み重ね、廻り来た今を一つの契機として更なる発展をねがいつつ、ここにご挨拶と心からのお祝いを申し上げる次第です。


平成27年2月慶日
京都嵯峨芸術大学
学長   森本武

富野絵コンテということで見たんだが、のちにヤマトやゴッドマーズや宇宙の皇子でアニメブームを起こした藤川桂介先生(ウルトラマンの人でもある)81歳は未だに月刊誌で小説を執筆してるんだ…。
Gレコの富野監督も企画に7年かけてて途中で死ぬんじゃないかと思われたが死ななくてよかったですね。
藤川先生の新連載が終わるまで生きてるように応援しよう!
陰陽師―瀧夜叉姫― 7 (リュウコミックス)
ASIN:4199504869
いのまたむつみ画集「宇宙皇子(うつのみこ)」