玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」第22話『まだ還れない』しっかり生きて、それから死になさい

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↑あらすじはこうだ


まあ、俺も悪かったと思うよ。画面の描写だけからはナノラミネートアーマーはMSによる打撃だけでなく、射撃砲弾でも持続的に熱や衝撃を与えれば破壊できるということが読み取れなかったから。(公式サイトで見た)


しかし、今回はひどい。
ビスケットの一枚や二枚、砕けたところでなんだというのですか!ブルワーズとの白兵戦で鉄華団員は何人も死んでいたし第一話から味方は死んでた!殺人集団の頭目の大の男が、親友が乗り物で転んで死んだくらいでガタガタと1話も使ってるんじゃあない!ビスケットは戦場で下手を打ったから死んだだけだ!誰が次に死ぬかわからないけど殺す!これが戦場というものじゃないですか。それがなんですか!今回は敵のロボットが攻めてこないからと言ってウジウジウジウジと引きこもって。オルガ・イツカはいつからそんな生ぬるい男になってしまったのか!いまさら一人の死がなんだっていうんですか!
鉄華団の他の連中もそうです。ビスケットは参謀だったかもしれない。だが、参謀が死んだからこそウジウジして暗くなっている暇はないでしょう。明日は我が身なのです。戦場で味方が死んだときに思うのは、悲しいとかではなく、そいつが死んだ分自分の負担が大きくなって死にやすくなるから、自分が死なないようにどう立ち回るかってことです。なので、味方が死んだ時こそ逃げるなり戦うなりリーダーを追求するなりいろいろとするべき時なのです。なのにお前たちは昼飯を食いながら愚痴ってオヤッサンに怒られたくらいでさあ・・・。そのくせオルガが三日月に説教されて演説をしているときは大人しい小学生のように整列して聞き入っていて、殺人集団としての意識が低い。敵地で参謀が死んで行き場所が決まってないのなら、もっとオルガに優しくするんじゃなくて集団訴訟するのが自然じゃないですか。オルガの気持ちの整理を待ってたらいいとか、心のケアとか、そんなことはどうでもいい!リーダーの指示で全体の生き死にが決まるんだ!そっとしておいたら自分が死ぬんだぞ!


で、三日月ですよ。
三日月がオルガに詰め寄るのは正しい。
正しいのだが、「戦闘狂の三日月が個人でオルガに詰め寄ってギャラルホルンへの攻撃を決意させた」という、「三日月が異常者だからオルガに説教をした」という構図になっているのがなんとも気持ち悪い。戦闘狂じゃなくてもリーダーに指針を問うのは当然じゃないですか。なのに、主人公の異常者とそのツレの二人のドラマになってしまっていて、それは甘ったるい恋愛ドラマならロマンチックでいいかもしれないけど、戦場でロマンスだと!死ね!戦闘組織の話なんだから君と僕の一対一のドラマにしたらだめだと思うんですよ。もっとグループミーティングをしろよ。あんだけ人がいるのに、結局能動的にドラマを動かしているのは三日月とオルガとクーデリアだけじゃないですか。
キャラが立ってないんだよ。もっと生き延びる努力をモブも徹底的に本能的にやれ!
ドラマのために重要なキャラの死だから強調するとか、そんなのはキャラクターの個人的事情であって戦闘はそんなの知ったことはないんだ。
オルガが凹んだことで裏切ったりオルガを暗殺しようとしたり逃亡するようなやつがいてもいいのに。
あるいは、今まで何人も死んでるのにビスケットが一人死んだくらいでガタガタいう奴と殴り合いになってもいい。
なのに今回は全体的にビスケット追悼回になっていて…。


で、その追悼ムードの裏でクーデリアが勝手に団の進路を決めちゃう。ああああああ。
クーデリアもフミタンという参謀を失ったから張り切ってしまっているのかもしれないけど、もうちょっと話し合おう?
三日月は三日月で「歯向かうものはみんな敵だからギャラルホルンを崩壊させる」とか、なんで一私兵団体が惑星警察を解体させる宣言をしてるの!もっと冷静に状況を見ろ。
鉄華団も三日月の武闘派宣言を受けてやる気になってるけど、そんなの自分が死にやすくなるだけだろ。もっと慎重になれ。


なんか、「仲間の死」→「暴走」を描きたいんだろうけど、団員がたくさんいる割に暴走させるのが中心メンバーのオルガと三日月くらいなので、蠅の王みたいにデブが死んでみんながおかしくなっていく漂流教室っぽさがないよなー。ガンダムなんだからもっと全体的に荒んでいきましょうよ。中心メンバーのオルガと三日月がたまたま異常者だから暴走、っていうんじゃちょっとキャラクターに頼り過ぎたシナリオかなあ。


中心メンバーの生死に雰囲気が左右されてしまうことで、一般団員の生き汚い生存本能があんまり描かれてなくて、あんなにメンズがいるのに生命力に乏しい感じで残念だ。
そのうえ女に進路を勝手に決められて情けない。まあ、組織の舵を切る女性の強さみたいなものを描きたいのかもしれない。でもなー。クーデリアの印象がはっきり言って今まで無能という感じしかないので、「勉強しました」って言われても「勉強くらいみんなしてて当たり前だよ!お前だけが賢いと思うな!」と思うので、説得力がない。
だいたいあんな爺が代表になろうが知ったことか。金が欲しいなら爺を拷問して爺の組織の人からゆすれよ。なんで爺の代表選挙に命を懸けないといけないんだ。ふざけるな。
鉄華団は別に正義の味方ってわけじゃないんだから別に鉱物資源のフェアトレードとか関係ないんじゃないの?うーん。まあ、企業としてやっていくとかクーデリアのイメージを広報に利用するとかそういう事情があるならあれだけど、あんまり一般人からどう見られているかということはあまり気にしてない感じだなあ。別の惑星に来たんだから現地住民とどうするかってのは気にしそうだけど、あんまり身内が死んだとかそういう小さいことしか見れてないよう見える。マッドマックスなら普通に野盗が出たはず。
カルタさんはキャラが濃いからごまかされてるけど、なんで衛星機動部隊の井上喜久子隊くらいしかでてないの?地球はギャラルホルンの本拠地なんでしょ?もっと数で圧倒しろよ!なんで鉄道警備隊がいないの!
(あと、まあ、来週ネタ晴らしがあるのかもしれないけど、要人輸送が任務なので、鉄道の他にも陽動の部隊を分けて展開した方がいいと思います)


あとなーーーー。
三日月が「あと何人殺せばいい!」とか言うの、バカなんじゃないのか。そんなの数える必要なんかないだろ。死んでもいいやつは死んでもいいんだろ。
まー、敵じゃなくて「ビスケット級の親友を何人殺すか」って話かもしれないけど、トレーズ閣下じゃないし三日月は割と今まで反射的に殺人をしてたので、そんないまさら何人殺すとか気にされてもなあ…。
いっぱいだよ。いっぱい。


ガンダムは殺人アニメなんだから味方が一人死んだくらいでガタガタ言うのは甘えてるし、敵を何人殺したかって言うのは戦闘が終わってから勘定したらいいだろ。
ガンダムWのヒイロも似たようなことを言ってたけど、ヒイロは所属してる地下組織とか守りたいコロニーに何回も裏切られて戦闘狂の五飛くらいしか相談相手がいないという最悪の状態だから「あと何人殺せばいい」とかポエムを言ったけど、三日月はそこまで孤独じゃないからなあ。


そんでなーーーー
敵のギャラルホルンのマクギリスが鉄華団に内通しながらガエリオに地下のガンダム工場を見せて世界の真実だから、腐敗したギャラルホルンを革命して云々。


まあ、マクギリスが暗躍するのは仕方ないとして、ガエリオ、お前、いい年をした高級公務員なのに、地下の古代ロボットを見せられただけで「世界の真実!」「革命!」とか信じちゃうの?
えっ。
そういうの、地下のアダムを見たエヴァンゲリオンのシンジ君レベルじゃないの?中学二年生レベルなの?
むしろ、碇シンジ君ですら地下のリリスを見た後は「僕がこういうもので世界の命運を握って殺人などをすることが倫理的に正しいのかどうか」とか悩んだりしてたじゃん。シンジ君は基本的に頭がいいよ。周りがクズだけど。
ガエリオ、お前そんなに適当に地下のロボットを見ただけではしゃぐとか、いや、普通に組織として遺跡は調査団に普通に調査させよう!な?



そういうわけで、三日月とオルガの二人の男の物語+クーデリアとアトラとそのほかの女と手下の話(並行してマクギリスとガエリオの二人の物語)なら、まあ、こんなもんかという感じだが、殺人訓練を受けて一山あてに冒険をするヤクザの若者の群像劇や至近未来軍事警察国家小説としてはちょっと生命力が薄いと思ったので、もっとしっかり生きてあがいて殺して、それから死んでほしいと思いました。
機龍警察 暗黒市場



余談だが、初代機動戦士ガンダムでみんなに慕われていたリュウ・ホセイが死んだ後の大反省会で、
「か、勘弁してくれ、リュウ、勘弁してくれよ。な、お、俺達こ、これからどうすりゃいいんだ?え?リュウ、教えてくれ。教えてくれんのだな、もう」ってテンパってるブライトに
「…ブライトさん、やめましょう。ジオンを倒すしかない。戦争が終わるしか」ってジオンに内通していた疑いをかけられて投獄されていて、リュウが死ぬ原因になった白兵戦の時にランバ・ラルと会話してスパイだと思われていたセイラ・マスさんが「ジオンを倒すしかない!」ってみんなが混乱しているときに武闘派宣言をしてスパイ容疑をうやむやにするところは最高にセイラさんの赤い彗星の妹の血筋が炸裂していて最高でしたね。
みんなが仲間の死で判断力が低下しているときにセイラさんが「ジオンを倒す」っていうめっちゃ遠い目標を掲げることで話題を逸らすの、さすがジオン・ダイクンの娘らしい話術ですねー。
リュウが死ぬ第21話「激闘は憎しみ深く」は他にも少年たちが自分たちが生き延びることに精いっぱいで戦争に夢中になってホワイトベースが飛んでいくときに、子供のキッカが「お兄ちゃんたちのお墓おいてっちゃうの?」と言うことで命の軽重が子供と少年と戦士の間で違うし戦争はヤバいな…。と見せてくれていい。


そういうわけで、鉄華団もビスケットだの昌弘がどうこう数えることも嫌になるくらい派手に戦って死んでほしいと思います。戦争娯楽映画アニメなんだから視聴者の俺を楽しませるために必死に派手に戦って見せて命を使ってくれよおおおお。