玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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白鯨伝説1~4話見た。エモい

7年前にDVDを入手したが、クズなので見てない。
機動戦士ガンダムのBD-BOXも持っているが見てない。
なのでGyaO!でやってるタイミングで見た。

gyao.yahoo.co.jp
第1話 ふきだまり
第2話 鯨捕りたち
第3話 寒い星から来た…
第4話 白い悪魔


正直、出崎統監督の作品を見ることは富野由悠季監督の作品を見ることの次に優先される人生の課題である。(次は高橋良輔監督)


Gレコで一昨年から多少富野に振れ過ぎたが。
スペースコブラは昨年見た。


しかし、白鯨伝説、前評判は打ち切りとか「試される」とか聞かされていたが、すごく面白くないか?


うん。すごく面白いぞ。
アニメーション制作技法―『4701白鯨』を創る


僕は今、半年くらい風邪を引いたりインフルエンザや気管支炎や大腸炎や虫歯や肝炎などに次々と罹患して、体力の低下からうつ病がかなり悪化してあんまりアニメが見れなくなったしブログの文章を書いたりできなくなった。


なので、難しいアニメとかカロリーの高い演出を見たり語ったりするのはしんどいかなーって思って録画をため込んだりブログを書けなかったりしている。


甲鉄城のカバネリは面白いんだけど、「正義とは強さとは」みたいな思考実験みたいなことを始めたのでめんどくさくなった。
そういう風に頭を使いたくないんだ!


だらだらデレステをやったり特に頭を使わずに見れるアニメを見ながらモバマスでドリンクを飲んだり料理を作りながら銀英伝一挙を見てたりしている。頭を使ったり感情を動かすこと自体がストレスなのだ。バブみ感じてオギャってYouTubeで授乳動画を見て赤ちゃん返りしている。
銀河英雄伝説はいろいろ言葉遣いは難しいけどラインハルトが偉そうな大人をやり込めてヤンがそれっぽいことを言ってユリアンが成長するだけの話なのであんまり考えないで済む。


だから、白鯨伝説のような出崎統渾身の作品を見ると体に悪いんじゃないかなーって思ったけど、2話の配信は今日までだし、このまま出崎統作品を見ずに無駄に生きて腐った赤ん坊になるのもクソすぎるなーって思ったので、見た。


面白かったです。


頭が悪くなっているので、あんまり語れないんですけど。


好きな作品ですね。
というか、1997年の作品だしその当時は地域の図書館でアニメージュを借りて読むけどOVAは見れない(エヴァンゲリオンのレンタルで精いっぱいのお小遣い)の貧乏な田舎の中学高校生だったので、アニメージュで「白鯨伝説の制作がやばい」とか「新山志保さん…」とかで興味はあった。(ブレンパワードも見ることができたのは8年後である)


なので、僕がエヴァンゲリオンばかり見てオタクになり始めていたころの作品なので僕が白鯨伝説を見ていれば人生が変わっていたかもしれない。もっとまっすぐなオタクになれたかもしれない。


ガノタだったので富野アニメを見るオタクになってしまった…。


しかし、97年なので自分が中高生でカウボーイビバップとか見ていたころのセルアニメーション末期の質感のアニメでなつかしさがある。杉野昭夫さんのキャラクターデザインだけど、90年代末期のセルアニメらしい影の付け方とかディフォルメの仕方になじみ感がある。あのころのことぶきつかささんとかのセル画の影の付け方であんまり杉野さんっぽくないんだが誰の差し金なんだろう。
・白鯨伝説 セル画 No.2133

音楽はやや緩い。


NHKアニメだからなのか、同時期の宇宙アニメであるYAT安心!宇宙旅行に似た感もある。あー、10代のころはこういうアニメ見てたなーって感じ。
10代のころにもっとちゃんとこういう健やかなアニメを見ていれば俺はこんな人生になっていなかったかもしれない。


しかし、かっこいいし粋だし気風がいい。


いつもの出崎統アニメでもあるし、使い古された3回パンだしハーモニーだし光るゲロだし、謎ディスコだしルパン三世テレビスペシャルみたいな微妙なギャグだし、出崎統節の特有の喋り方の体言止めや手紙口調だし、いつもの出崎統だけど、ああ~~~こういう迫力のある楽しいアニメをもっと子どものころに見ておければなーーーっていう子供にもちゃんと楽しめる作りになっていて楽しい。
ハム太郎も良かった。


見る前は「打ち切りにもめげず出崎統が珍しくオリジナルで作り上げた」という情報くらいしか知らなかったし、出崎統の宇宙SFのウルトラヴァイオレット:コード044がすごい張り詰めた感じだったので、もっとしんどくて真面目で耽美で男の世界をゴリゴリ押してくる感じかと思っていたら、宝島のジムのような感情移入の導入役に子供が出てきて、ガンバの冒険みたいにジョブごとに特徴のある仲間が分かりやすくて、頭が悪くなっている僕にもすごい分かりやすくて楽しめた。


確かに、超かっこいい男の美学っぽい場面やスゴイでかい宇宙構造物美術とか謎未来描写とか濃い部分もあるけど、ゆるいおやじギャグとかキッズ感も入れてあって、その箸休めや味の変化のリズム感がすごい見やすい。感動することとか考えること自体が嫌になっているうつ病でも、こういう生理的リズムの元気さが出崎統富野由悠季のアニメにあるから好き。(暗いめのおにいさまへ…Vガンダムですら元気になれる)(おにいさまへは個人的な親の自殺の影響でもう見れないんだが)


動画としては、なんかダバダバした繰り返しとかモブとかのザワザワした感じとかセリフの畳みかける感じが、出崎統監督のファンとしてアニメスタイルで連載をしていたことで有名な板垣伸監督の「てーきゅう」に似ているので、板垣監督のアニメーターデビューがこれかなーって思ったけど、仕事で付き合ったことはないのか。てーきゅうに似てるなあ。

でも俺の場合、出崎監督ご本人に関する思い出は3回ほど「遠くからお見かけした」程度しかなく(前回第214回参照)、面識もありません。
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常に我々お客さん(視聴者)と同じ目線で道を切り開こうとする人間たちが主人公でしょ! しかも時代に流されません。特にアニメって賞味期限が短く、自分も昨今アニメ作りの現場でよく「今のお客さんはコレやると引く!」とか「こうしないとソフトが売れない!」とプロデューサーさんらに言われて大概従ってしまう(あくまで前向きにですよ!)し、もし巨匠クラスの方ならその流行に流されないくらい高い位置にご自身を置いて雲の上から俯瞰して「人類」を描くとかでそこから逃れるんでしょうが、出崎さんはそうしないで、あくまで我々と同じ地上で流行廃りや今の若い人たちに対して敢然とノーガード戦法で立ち向かったんです(最後まで)! そんな気がするんです。別に雲の上からの俯瞰目線が悪いとは思わないし、そーゆー映画・アニメで好きな作品はいっぱいあります! でも俺が本心から尊敬するクリエイターは一般の人たちと同じ地上、同じ目線で絶対不利ともいえる現状で、ノーガード戦法から渾身のクロスカウンターを狙う監督。で、出崎統様なのです!
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ですなあ。
てーきゅうが人間を描いているのかというと疑問が残る)


70年代、アニメブームの巨匠だとか50代の当時ベテランの監督だとかで偉ぶったところがない娯楽性がいい。思想とか社会とかSF設定とか世界観とか、最近のストーリーアニメの重っ苦しい部分があまりない。
自社プロ制作でNHKの衛星枠で渾身の作品と聞いていたけど、あまり真面目に肩ひじ張った所がなく、エイハブ船長は快活で強く格好いいし見ていて楽しくなりますね。
宝島のジョン・シルバーも快男児なのだが、4話時点のエイハブはシルバーよりはヒール(悪役)っぽさが薄い。(シルバーは初登場がガチの殺人者だったからな)
小説の方の白鯨を原作にした映画は子供のころに見た記憶があるが、そのエイハブ船長のような執着的なところが、白鯨伝説の4話のラスト前の段階ではまだエイハブには見えず、楽しく見れた。(白鯨との因縁が明らかになるとまたドラマが動くんだろうけど)
なんか、出崎統監督原作だけど展開がガンバの冒険とかスペースコブラとかどろろで見たシークエンスの自己引用だったりするし、エイハブ船長はヨイショ感もある。でも、焼き回しとか手癖という部分もあるんだろうけど、楽しさもあるのでいい。やっぱりこういうジュブナイル小説的な展開は分かりやすくワクワクするし。(一方でゴルゴ13とかブラック・ジャックなどのアダルト路線もあるのが出崎統なのだが)
ブラック・ジャックOVA劇場版AIRから自覚的に出崎統ファンになる前(遅い)から質アニメとしてとてもかっこいいと思っていた。
白鯨伝説出崎統杉野昭夫コンビでもあるし大塚明夫水谷優子コンビでもあるので時期的にもブラック・ジャックっぽさもある。微妙に俳優を3作品くらい連投させるのは富野アニメとかでも在る。


前世紀末はポストエヴァンゲリオン作品が乱発されてオタク向け市場が開拓されつつありオタクっぽいアレが粗製乱造されていたのだが、こういうちゃんとした(ホビーとは関係ない)子供向け名作アニメがあったんだよなー。なるほどなー。貴重だよなー。でも俺は貧困層だったから衛星放送見れなかったんだよなー。Gのレコンギスタキングゲイナーが深夜だったりWOWOWだったりして子どもに届きにくい現状は今もある。


話は未来の宇宙で宝探しや盗みをするエイハブ船長たち廃品回収業者(通称:鯨取り)が出会いをきっかけに謎の陰謀に巻き込まれるというルパン三世テレビスペシャルっぽい構成でもある。五右エ門みたいなやつがいるし。
話は割と単純だし、演出も本当にいつもの出崎統なんだけど、三回パンとか使い古されてるとか言われるけど、やっぱり僕は出崎統絵コンテのリズム感はすごい好きですね。
三回パンと単純に言っても構成やリズムに応じて微妙に角度と加速度とか変えてきてて、ここら辺がパロディと本家の違いなんだよなあ…。こういう体感が天才のリズムなんだよなあ…。と、いい絵コンテのアニメが動くのを見るとその秒数だけで楽しくなりますね。


あと、出崎統ならではの撮影処理芸もデジタル以降過渡期の90年代アナログアニメ末期でいろいろとやっていて、CGをかなり頑張ったAIRCLANNAD、GENJIとは同じ出崎統の感性でありながら違う道具を使っていて、時代を感じて面白い。
アナログしかない70年代、ビデオゲームの演出を取り入れたジョー2やゴルゴのCGなどの80年代など、同じ感性なのだが時代の道具を変えてきているのが面白い。
白鯨伝説の作画、撮影、演出スタッフはガンダムばかり見ている僕にとっては、あまり知ってる名前が少ないんですが。トリトンの羽根章悦さんと、いつもの鈴木清司音響監督くらいかなあ。いや、まあ、僕が人の名前をあんまり憶えないせいもある)


あと、キッズアニメっぽい絵柄やキャラの構成や旅のエピソードは山内重保監督(この人も富野、出崎統の次くらいに好き)のムシキングっぽさもある。山内監督が出崎統フォロワーという話は聞いてないんだけど、なんかこう、似たようなセンスがあるし、僕はそういう人の作品が好きだったりする。


かといって、エンターテインメントや出崎統コンテの職人芸とか出崎統ファンとして信者だから面白いとか、子供向け王道冒険の構成だから面白いというだけでなく、やっぱり美学もあってかっこいいんだなあ…。


第3話のラストで、メンヘラっぽい記憶喪失の美形アンドロイドの関俊彦大塚明夫演じるエイハブに
「俺は、何も信じない!」
って炎の中で叫んで殴りかかって
エイハブ船長に受け止められて
「俺だってそうよ。だからって、愉快にやらねえって法はねえ」
って切り返しを交えた3回パンからのハーモニーで言われたら、そりゃあ落ちますよ。
良い男は明るく強く楽しいだけでなく、腹の底に闇を抱えながら笑っているのがいい男なんだよなあ…。30代にもなってメンヘラのオタクの俺としても、こういうエモい描写はホント泣ける…。
(エイハブ船長の髪型が富野監督のダイターン3破嵐万丈に似てるので、闇を抱えた快男児)
白鯨伝説は意外と見やすくて楽しい」ということを主に書いてきた文章だけど、技術と経験で作ったエンタメの中に、こういうポエトリーを入れてくるリリカルなところがホント出崎統良いよね…。



オープニングの「風とゆく」の所で目がすごい赤くなって叫んでる人の杉野昭夫絵の一枚絵の迫力がすごい。
絵のことはほとんどわからないし、なんであんな風にぼかしたり目を赤くしたりするのか全く分からないけど、
「夢がある限り 生きてゆく 何があっても」
とか言う強い口調の歌詞に乗せてこういう強い筆致の絵を魅せられるとエモい。


白鯨伝説全26話を見るのがしんどいという人もOPだけは見てほしいですね。
宝島のオープニングも良い…。こういう元気が湧いてくるアニメを見るのはいいと思う。


本編の作画はジョー2やおにいさまへ…の美麗さというよりはNHKキッズアニメっぽい雰囲気だけど、この水彩絵はホントすごい。雪の女王のOPEDもすごかったですね。
源氏物語千年紀GENJI2を待ってたんですが2011年は残念でしたね。いや、あれはあれであのぶつ切り感に疾走感があるんですが。


余談だが、僕は正直出崎統監督のSFとかサイバーとかメカの描写は富野監督よりも下手というかセンスがないというか興味がないと思っていた。
UV044のSFセンスはDNAがアレだったりして朴璐美のドラマとしては熱かったけど宇宙SFとしては全く分からなかった。
スペースコブラもSFと言っていいのかというと疑問だ。いや、かっこいいけど。


出崎統監督ファンの板垣監督も

 いよいよ『白鯨伝説』! これはハラハラものでした。まず個人的に出崎監督のオリジナル。観たくないはずないじゃないですか! ところが、何しろ宇宙を浮遊してる廃宇宙船を「鯨」と呼ぶのは面白いけど、やっぱり暴れもしない船を鯨に見立てる表現が上手くいってない感が否めず、どうしても入り込めなかったんです。
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って言ってる。けど、逆に僕は白鯨伝説以降のプラネテスとかBLAME!の電基漁師とかを見てるし、
「数千年後の宇宙で自動化された漂流宇宙船を鯨と呼んで生産中止された機械を狩猟する」って結構いいと思う。
(いや、80年代にすでに滅亡後の世界のコナンもナウシカザブングルもあるじゃないですか)


自動化された機械を鯨と呼んで狩って戦う世界観が、単なるバトルの設定ではなくアンドロイドのデュウが人か化け物かというエモーショナルなドラマにリンクするんだろうなーという予感が4話の段階で感じられてエモい。


うーん。



なんか精神的に壊れているし文章を書くのがしんどいので、レビューというわけでもない、とりとめのない感想文になったのですが。とりあえず白鯨伝説面白いですね。
白鯨伝説 DVD-BOX