玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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白鯨伝説8~12話レビュー

精神的に限界なのであまりアニメの感想を書けないが


  • 第8話 いとしのケープ・ゴット

うまい。
友、女、雨、港、酒、金、死、恋、宝、親子、仲間、男。
ものすごくベタな題材のドラマを単発のボトルショーに高度にまとめていて見ていて気持ちがいい。
原作がアニメの作り方の本ということで、非常にテキストとして高度。

アニメーション制作技法―『4701白鯨』を創る

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  • 第9話 ファンクラブ誕生

ゲスト回。
前回、立ち寄った港町で勝手にエイハブたちの船に勝手に乗り込んでいた女子大生とエイハブたちの交流。
やっぱり、女子大生にモテたいという出崎統監督の気持ちや実体験が反映されているのかなあ。
冒険する男がゲストヒロインとちょっといい感じになるのはルパン三世ゴルゴ13など、出崎統監督がかかわった劇画アニメの単発話でもよくある。
僕としては一夫一婦制にこだわる気持ちもあまりないので、最近の不倫報道には違和感を持つが。出崎統やエイハブが小娘と火遊びをしてもいいと思う。鳳暁生を60代までやっていった感じでいてほしい。
そんな女にモテる話だが、エイハブ鯨取りカンパニーに通りがかっただけの女子大生の視点を通じて、アンドロイドのデュウが「エイハブ船長と友達になった」と発言するに至る組み立て方は上手い。
アンドロイドのデュウはアンドロイドなのであんまり気持ちを表に出さないけど、彼にとってどうでもいい女に軽く質問されたことで「エイハブ船長と友達になった」と明文化する、ってのがその次の彼の笑顔に繋がるので、エモい。


そして、女の子だとバレたわりに男の子っぽく振舞っていたラッキーが、女子大生という女性を見て色気づくところもおもしろい。


出崎統アニメだと、男と女(ベルサイユのばらスペースコブラ)、オッサンと少年(あしたのジョー、宝島)、大人と少女(エースをねらえ!おにいさまへ…)という取り合わせが多かったが、
男の子みたいな小学生の女子のラッキー、
美形のアンドロイドだが見た目より過去を背負っているデュウ、
オッサンだけど生き生きとしたエイハブ、
という3人が同格っぽいので、出崎統作品の中でも要素の組み合わせの集大成感がある。

  • 第10話 惑星モアド

惑星モアドで暗躍する連邦政府の兵器アンドロイドと地元の抵抗勢力の戦いなどを描いている。
惑星モアドに到着する直前の鯨取りたちのカラオケ大会も楽しく、エイハブとデュウの甲板での交流もエモい。
モアドにいる敵ロボット軍団が描かれるわけだが、ここら辺の悪いメカ軍団の幹部はルパン三世テレビスペシャルっぽさがある。


90年代ルパン三世テレビスペシャルは私にとってはテレビでやってたら何となく見るというもので、あまり監督の作家性などは意識しなかったのだが。
出崎統監督はその70年代80年代の活躍を見るに、宮崎駿富野由悠季に並ぶ作家、カリスマとして扱われてもいいのだが。
白鯨伝説のなんとなく予備知識がなくてもエンターテインメントとしてアニメファンとしてではなく普通の子供の視聴者も楽しく見れる、という「テレビ番組」っぽさは、逆にオタク趣味とは反対なのだが、こういう「普通に楽しい番組」「ホビーのスポンサーにとらわれないお話」というのは貴重だなあ。
まあ、おもちゃアニメじゃないのでスポンサーがいないしオタク趣味でもないので制作会社が倒産したり大変なことがあったらしいが、「制作会社を倒産させるほどの巨匠の超大作」という肩ひじ張ったところがフィルム自体からは感じられず普通に楽しめるのがすごいと思う。


富野由悠季監督や庵野秀明監督がロボットスポンサーアニメの中で作家っぽい作品を作っているのとはまた違った立ち位置だ。こういうアニメはありそうでないんだなあ。
ルパン三世テレビスペシャルも普通にオタクじゃなくて見るアニメだが、名探偵コナンの映画も売れているので、こういうオタク向けやオモチャ業界アニメじゃない一般向けアニメというのも…。
いや、名探偵コナンとかNHKアニメは原作付きアニメなので出版社系なのだが。
白鯨伝説の後にも無人惑星サヴァイヴとかNHKオリジナルアニメの系譜はある。


しかし、普通に楽しい番組だが、萬画絵のキャラクターがコミカルに遊んでいると油断していたら突然出崎統杉野昭夫独特の美学が炸裂した演出がなされて、格好良さに打ちのめされたりする。

白鯨伝説 COMPLETE Blu-ray BOX

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  • 第11話 さよなら、レディウィスカー…

惑星モアドの大気圏に突入したエイハブたちの母艦のレディ・ウィスカーが白鯨とすれ違っただけで撃墜され沈没する。
そして、デュウは行方不明になり、エイハブとラッキーは悲しむというリアクション。
海に沈んだデュウを超戦艦白鯨はテレパシーか何かでデュウに何か意味深なことを言う。
と、まあ、3場面くらいしかないのだが。


正直、メカニックとしてのレディウィスカーはそんなに格好良くもないし機能性があるわけでもないし、そこら辺がメカものに対する出崎統監督の興味のなさなんだろうけど。
なので、あんまりレディ・ウィスカーが沈んでもエモさがあまり感じられないのだが。
宇宙戦艦ヤマトホワイトベースはやっぱりキャッチーなデザインだったと思う。感情移入したくなるメカと言うか。


ただ、超戦艦白鯨には意志とか美学があるっぽいし、アンドロイドは人間が転生したもので永遠に苦しませられる、という独特の設定にはドラマ性がある気がする。
レディ・ウィスカーにも人工知能があって、白鯨もレディ・ウィスカーやデュウの製造番号を知っていて、デュウも漂流していた宇宙船の製造番号を暗記していたので、そこら辺のサイバーな世界観もあるのかもしれない。見た目はそんなにメカっぽくないんだけど。
ウルトラヴァイオレットコード044はちょっと小難しかった。

  • 第12話 恋人たち

レディウィスカーが沈没したことでエイハブグループとデュウは別行動に。
惑星モアドの地理に詳しい地元出身のラッキーが臨時のリーダーになって砂漠を男たちと旅する。熱く苦しい行軍だが男たちが歌を歌ったりして明るく乗り切る。
急に歌うミュージカル展開は最近のアニメのヒット要因なのだが、出崎統監督の急に歌うのはむしろ浪花節だからなあ・・・。
ラッキー以外男しかいないむさくるしい集団。うーん。萌えない。
ガンバの冒険と似たような構成だが、ガンバは動物なのでキッズキャラクターとしての可愛さがある。マスコット的な。ハム太郎も。
ルパン三世も男集団だが、基本主人公のルパンに射撃オプションの次元と斬鉄剣の五右エ門が付属してるだけなのであまり男集団としてのむさくるしさは感じない。
エイハブグループもエイハブ船長が基本主人公なのだが…。
やっぱり中年男性が6人もいたら結構、オシャレ感がないな…。
ダサい歌を歌うし。
いや、そういうバンカラな気風が出崎統監督の元気さで、それはそれでいいんだけど、やっぱりヒットを狙うんだったら美少女に置き換えるよなあ。
おそ松さんも男集団というよりはマスコット的な絵柄に置き換えているのが上手かった。
リアリティのあるおっさんはキツい。
そういうわけで、うまいこと美少女とかマスコットとかを使ったミュージカルだったら白鯨伝説ももっとヒットしたんだと思う。
無人惑星サヴァイヴとか電脳コイルとかののちのNHKオリジナルアニメも少年少女とか百合にシフトして清潔感を出したわけで。ファイブレインは上手いことホモをスタイリッシュに描いたと思う。パズルゲーム模様は記号化なわけで。
白鯨伝説はなー。おっさんもオッサンで元気に冒険してもいいと思うんだけど、やっぱり急に歌うおっさんは酔っ払いにしか見えないんだよなー。いや、出崎統監督の感覚としては鼻歌を歌っている矢吹丈の感覚のままオッサンになっただけであって、別におっさんが歌を歌うのがダメと言う感覚は持ってなかったんだろうけど。
リアリティのある人間を描いているのが出崎統監督の持ち味なんだけど、オッサンはやっぱりきつい。
逆にオッサンが活躍するのを売りにするアニメだとハードでリアルな絵柄でバイオレンスでミリタリーなブラスレイターおじさんとかガサラキおじさんになるんだろうけど、白鯨伝説はそういう記号が分かりやすい「かっこいいおじさんアニメ」の硬質さともまた違って「子どもも含めた一般向けオリジナル」というかなりありそうでやるのが難しいのをやろうとしてるので、すごいとは思うけどうまくいってるかというのは結構難しい。



ともあれ、通信施設になんとかたどり着いた一行。ラッキーはオルガンを使ったテレパシー装置で兄でありゲリラ組織のリーダーのシロウ・トキサダとコンタクトをする。
ラッキーは普通の子供のようだけど、兄は美形のスキンヘッドで地蔵菩薩っぽいなぞの人物なので、ラッキーも普通じゃないのか?
普通の子供と見せかけて秘められた力が…ってのはロマンである。
今回のラッキーが大人たちに指示を出して冒険をするのは子供向けアニメ目線として考えると「大人に対していっぱしの口をききたい」子どもの願望、夢を見させるアニメなんだな。
なので、出崎統監督は70年代名作アニメのヒットメーカーで21世紀に入ってからは知る人ぞ知る巨匠と言う感じで僕みたいなマニアのおっさんが見るアニメ監督になってしまったけど、キッズが毎週ワクワクして見れるアニメを作りたい気持ちもあったんだろうなあ。雪の女王の謎のギャグシーンとか。


対して海を流されたデュウは、美女の歌姫アンドロイド・セイラに助けられる。
美女の歌姫が後半のヒロインになるのだろうか。
ロマンチックである。

作画も美麗。声も篠原恵美さんだ!
オッサンの頓珍漢な合唱シーンもセイラの美しさに対するカウンターウェイトとして配置されたんだろうなあ。
セイラはアンドロイドになる前のデュウと恋仲だったらしいが記憶喪失になっているデュウと、今後どうなるのか?
しかし、宇宙船から海に沈んで翌日にはもともとの恋人の元に流れ着くとかご都合展開と言うよりは神話っぽさがある。因縁パワー強すぎだろ。
デュウは冷凍睡眠状態で宇宙を漂流している所をエイハブグループが偶然拾ったアンドロイドだけど白鯨と因縁があり、その白鯨が破壊しようとしている惑星に人間だったころの恋人アンドロイドがいて…。スゴイ運命を感じますね!!
「伝説」
なんだよなあ・・・。


この後の運命に左右されるのを描いたAIRCLANNAD美少女ゲーム連作やGenjiなど、こういう運命的な出会いは出崎統監督の美学の一つなのかもなあ。
偶然は確率的には少ないけど物語で描かれるのは一つであり人生は一度切りだからこそ、運命が作る物語は伝説だっていう熱さ。
 

AIRCLANNADの原作のKEYは「繰り返すゲームだからこそ、運命が強調される」みたいな作風、転生物を手掛けているのでリトルバスターズ!Rewriteも。
運命に対するスタンスがちょっと違うかも。
パラレルワールドを認識するのは割と理性の産物でインテリっぽいけど、(富野アニメもそういうところがある。黒歴史世界観とか、イデの輪廻転生とか、バイストン・ウェルの構造とか)
出崎統監督の「人生は一回きり」「一回の人生に命全部賭ける」という野性的な感性はもっと直接的と言うか。
でも、絵コンテ職人である出崎統は俯瞰で物語を整理して伏線を起用に回収したり運命を織り上げたりもするので。
天才なのかなあ。





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