玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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富野ファンのブログのコメント欄を荒らしてきた

d.hatena.ne.jp
コメント欄を荒らしました
向こうが削除したらアレなのでこちらに複製しておく

3日遅れで申し訳ないのですが、拝読したしました。
なかなか興味深い論点ですね。

しかし、「富野アニメは「巨大ロボット」をどう描いたか?」という大きなタイトルの割に実際の内容は「富野アニメのコックピットの周辺の人間とロボットの描画」という程度でしたね。
もちろん、「富野アニメと巨大ロボット」というテーマは膨大に過ぎるので一記事ではまとめられるわきゃあねえんですが。

エルガイム、Z、ZZに対する記述が少なかったようですので、僭越ながら捕捉させていただきます。
確かにエルガイム、Z、ZZではパイロットがコックピットの周囲で活動する描写が少なかったのですが。(皆無ではない)
最もこの3作でエポックメイキングだったのは「全天周モニター」の発案だと思います。全天周モニターはアイディアの源泉がダンバインの透過装甲キャノピーからにせよ、逆シャアからGレコまで富野ガンダム作品で採用された重要なアイディアです。(逆に富野監督以外のガンダム作品ではあまり使われていません)(キングゲイナーでも採用されましたね)


おそらく貴殿あでのい氏は「ロボットを外側から見た時の描写」に着目されたと思います。
それゆえに全天周モニターに関する注意が少なかったようですね。

ロボットは手足の延長線の道具でもあるのですが、パイロットとロボットをつなぐ界面(マン・マシーン・インターフェース)としてのコックピットの内装、接続法も技術者としての視点では興味深いファクターです。
アニメ鑑賞者としてはどうしても画面に映し出される客体として外側からロボットと人を視認するのですが。キャラクターの視点からするとコックピット内で操縦する内側からロボットを認識する行為も重要かと思われます。

それで、全天周モニターについてですが、これはこれで機能面からもSF論からも演出面からも議論百出の歴史があるのでこのコメント欄ですべてを記述することはしません。


とりあえず貴殿の説明してくださった1作品3行程度の情報量で言うならば、「全天周モニターはパイロットを外界と融合させつつ隔離する効果」とまとめることができるでしょう。
貴殿は「人間とロボットを同時に映すカット」に注目してまとめられたようですが、その論旨では全天周モニターはそれと正反対の演出機能を持つので、論文としての一貫性を持つために、また作業時間の兼ね合いか割愛せざるを得なかったのでしょうなあ。


貴殿あでのい氏は

永野護小林誠らといった才気溢れる新世代のデザイナー達が「ロボットデザイン」の新たな新機軸を切り開いたものの、「ロボットアニメ」としてはそのデザインを活かし切れずに終わった感が若干ある。

と書かれましたが。外側のシルエットデザインの善し悪しはともかく。デザインコンセプトとしてエルガイムが新しかったのは「内部構造まで意識したトータルデザイン」です。
これについては富野由悠季全仕事集307pに「マジンガーZの内部構造みたいなものを最初から意識してリアルにデザインして玩具化できるロボットを出す」というスポンサー側の企画意図があった、と記述してあります。
全天周モニターのアイディアは永野氏ではなく富野監督から出たものらしいですが、内部から意識する、ということがエルガイムのロボットデザインの肝でしょう。


ZガンダムのOPのように全天周モニターでパイロットが宇宙空間に浮いているように見えるのは映像として、かなりショッキングで宇宙に対する解放感と同時に、全周囲をモニターに囲まれる孤独感と閉塞感が押し寄せる、かなり異様な演出です。
また、パイロットから機体の手足が見えない(橋のワイヤーを掴むギャプランなどの描写はありますし、ガンダムユニコーンで補足説明演出が入りましたが)という、パイロットと機体の一体感があると同時に身体の喪失、というのも連想させるものです。
それで、エルガイム、Z、ZZの話に戻りますが、この3作品はサイコとバイオをテーマの一つに置いています。ザブングルでも洗脳はありましたし、ダンバインバイオテクノロジーなのですが。
エルガイム、Z、ZZでは少女の洗脳やバイオリレーション、バイオコンピューター、クローン人間が描かれました。
で、その機械と人間の界面が曖昧になる感覚、あるいは人の意識や命がマシーンに吸われる、人間が機械扱いされる倫理的な危険性、人間の領域が機械のセンサーに侵食される神経が磨り減る感覚。
これらはエルガイムのクワサンやカミーユやプルシリーズの末路として描かれたので作品のテーマとして見出すことができるでしょう。
カミーユが球形ですらないZのコックピットを「暑っ苦しい」と評したラストなど。Zガンダムのプラモデルを組んだら分かりますが、Zシリーズのコックピットはまさに棺桶です)
機械のモニターに常に囲まれている神経質ストレスがこのころの富野監督の作品の毛羽立った感触ともリンクしているのではないでしょうか。
機械と融合した鉄仮面のサイボーグ性を一時期テーマとして模索しようとしていた富野監督ですが、それは監督の神経衰弱によって頓挫したようですね。荒んだ心に武器は危険なんです!


もちろん、貴殿あでのい氏は逆シャアF91Vガンダムでのコックピット内に映る宇宙のCGにも造詣が深くいらっしゃるので私が述べたことは先刻承知でいらっしゃるとは思いますが、本文での記述がエルガイム~ZZに少なかったので蛇足ながら補足させていただきました。

また、富野作品に特徴的なカットインもロボットに閉じ込められたパイロットの主観が装甲越しに飛び出るような感じで、この演出論だけでも一つの記事が書けるでしょう。

余談ですが、エルガイムの発展形であるFSSと、周回モニターを使ったGガンダムの両方でマスタースレイブトレースによる人機一体方式の操縦法を採用しているのも面白いですね。
(マスタースレーブといえば士郎正宗アップルシードもありますが、攻殻機動隊にシフトするにつれてヘッドマウントディスプレーか電脳に観測情報を注入するインターフェイスになってます。しかし、個人的にアイアンマンのトニー社長の顔のドアップは絵的に面白くないと思います)


本文末尾に「ハッチを開ける」について言及なさっていましたが、ZZの冒頭で大して理由もなくZガンダムやガルス・Jのハッチが開けっ放しになっているというのも、何らかの意図を感じさせます。カミーユがマシーンに閉じ込められて崩壊したので、ZZの序盤は開放感を取り戻そうとしたのでしょうか。しかし、結局ジュドーも強化人間たちの因縁に絡まれましたね。


また、全天周モニターの話に戻りますが。
ブレンパワードの終盤で人間の取り付けた内装を必要としないネリーブレンやバロンズゥ、それに影響されて内装を取って全天周モニターになったヒメブレンなど、人とブレンのシンクロ率が上がる(仲が良くなる?)につれて機械部品が不要になるという描写もありましたね。
また、∀ガンダムホワイトドールの全天周モニターの仕切りが途中で分解してしまう、というのはおそらく作画の手間を省くためだと思うのですが、これも∀ガンダムナノマシンの回復過程と見ることもできます。

キングゲイナーは肋骨を透かした全天周モニターという割に顔を隠されるとモニターが消えるという謎…。


リーンの翼の航空機っぽいウテルスが張り出した飛翔感も好きでしたね。


ライディーンは頭からフェードインして、ひびき洸が落ちて行って心臓にコックピットがある、というのも神秘的です。ライディーンの操縦は操縦桿と念動力とトレース(パトレイバーのグローブみたいなやつ)の複合です。ライディーンもオカルトとメカニックが企画レベルでもめた作品でしたね…。


イデオンなどにも見られるロボットの内部の操縦席の移動はゲッターロボで既にやっています。トップをねらえ!でもやってますが、日本で一番これをやってるのはスーパー戦隊でしょうね。内部で座席が動くのはワンダバ感あります。


というわけで、あでのい氏を批判するわけではないのですが、私は視点を逆にしてコックピットやロボットの内部から見た観点で補足させていただきました。
いやあ、ロボットっていろんな語り口があって楽しいですね!(と、批判ではなく建設的な雰囲気にして投稿させていただきます)


本来私は人付き合いをあまりすべきではない人間ですし、あまりコメント欄で長文を贈ることはないのですが。まあ、あでのいさんは私に去年いろいろ絡んでくださったので犬に噛まれたと思ってください。私は犬は嫌いです。

nuryougudanuryouguda 2016/09/10 13:50 書き漏らしたので、また蛇足ですが
Zガンダムの全天周モニターに閉じ込めらてバイオセンサーに命を吸われて崩壊したテレビ版カミーユ
新訳でウェイブライダーから人型に変形させなおすことに成功して脱出できたカミーユの対比もなかなか面白い演出だったと思います。
あそこでZが実にゆっくりと人に戻っていってカミーユの20年間の呪いが解けたのは映画というイベント公開ならではの喜びがありましたね。

nuryougudanuryouguda 2016/09/10 14:09 イデオンメカの戦闘描写は単座戦闘機ではなく小型駆逐艦として描かれているので、
「コスモの自分以外の砲手全員死亡」の絶望感がおもしろいですよね。


また全天周モニターを使った芝居といえば、Zガンダムの20話灼熱の脱出、新訳2部恋人たちで、サイコガンダムのコックピットに侵入したカミーユフォウ・ムラサメの前で感極まっていろいろ言いまくるがフォウに銃口を向けられる、というロマンスのシーンで、メカのコックピットなんだけど全天周モニターの効果で周りが無機質なメカではなくて蒼穹の高空に恋人が二人っきりでケンカするっていうロマンチックなシーンに見える効果があって、それも面白いですね。
みんなも富野アニメの面白い所を見つけてみよう!
機動戦士ΖガンダムII -恋人たち-