玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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ゼーガペインADP(adaptation)芸術映画だった

先週にゼーガペインの映画を見てきた。
セレブラントとして覚醒したのは放送終了後6年目くらいだったし、他のセレブラントと比べるとそんなに熱心なファンではない。
nuryouguda.hatenablog.com
富野由悠季監督やサンライズのロボットアニメのファンとして、ゼーガペインと富野小説の「アベニールをさがして」の関係を記事にしたこともあった。


詳しくは公式サイトや他のブログや同人誌をチェック。
www.zegapain.net
sokoani.com
zega10th831.blog.fc2.com
frenchhoron.jugem.jp


で、映画版ゼーガペインですが。
昨日上映が終わってしまい、僕がだらだらデレステをしたり体調を崩して記事を書けないうちに行灯記事にもならなくなってしまったのだが。


いやあ、素晴らしい映画でしたね。
というか、すごく尖っていた。


10年前に放送されてあんまり売り上げが伸びなかったけど根強いファンに支えられて数年後にパチスロになって、今回再編集版と言いつつ、機動戦士ガンダム(ファースト)の劇場版みたいな総集編の体裁と思わせておいて、ループする世界の中でのテレビ版の前日譚というイデオン接触篇系の映画だった!


そして映画のラストにNEXT ENTANGLEというロゴがあり、10年かけてもまだ新展開を狙っているのだろうか?すごいな。富野監督は「Gレコは売れなかった」と言いながら劇場版を作っているが、サンライズにはガンダム以外にもこうして売れなくてもしぶとく続いているロボットアニメがあるので(コードギアスも)Gレコも頑張ってほしい。
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で、ゼーガADPですが。
上記のように、「ループする世界を描いたアニメなのでテレビ版と同じ絵を使いながら、テレビ版の前日譚を描く」という新訳Zガンダムよりもさらにテクニカルに込み入ったことをしているのだが。それで、はっきり言って変な映画です。
下田監督は「映画版でも完結するように作った」って言ってますが、僕は、はっきり言ってテレビ版を見てないと全然人間関係とか設定とか用語とか分からないと思いました。映画の構成としても2時間の映画ですが3幕構成とかいうハリウッド映画のような分かりやすい構成では無い。4回くらい映画の作中でループするのだが、テレビ版は26話かけて1、2回しかループしてないので映画版は滅茶苦茶時間の経過が早い。
新キャラが出る割に出たと思ったらガンガン人が死んでいくし、ヒロインとの関係性が発生したと思ったら記憶障害が起きたり死んだりループしたりするので、すごい密度。
そしてSF用語もめっちゃ多い。
僕も一応理系の大学を出てるのでヒロインが未来の記憶を見るのは量子コンピューターの中にいるデータ人間が未来からの波動を受信するのは量子力学を上手く使っているなーって思いましたけど、普通の高校生はそんなのわからないと思うし映画の劇中でも説明はない。
僕も一応大学は出てるけど全部は分かってない。


でも、ゼーガペインってかなり尖ったSFだけど、同時にジュブナイルなんですよね。
だから科学論文とか叙事的に事件の情報を理解する5Wではなく、Howの気分がゼーガペインの感覚的なpain重視の志向なんだろうな。
ループの時系列とかテレビ版との整合性とか、ゼーガペインファンガチ勢セレブラントの考察意欲を刺激しそうだと思うし、考えがいのある作品だと思う。
ドラマCDとも微妙にリンクしつつちょっと違ってたり、かなりリテラシーが要求される映画だった。
しかし、同時に理解したり正しく解釈すること以上に、「痛い話だな」という気分を体感する作品でもあると思った。



かなり怒涛のようにループのリセットや戦闘や死が襲ってくる映画で、理屈で理解する以前に主人公のソゴル・キョウが痛い目に遭ってるのが感じられる映画だった。
中盤にも何人も立て続けに大事な人が出会っては死んで行くので辛いんだが、最終決戦とか数十億人単位で人が死んでて(まあ、実際に死んでるかっていうとこの映画の前に死んでるともいえるんだけど)、ものすごくつらい。
イデオン並みに死ぬ。


テレビ版を見てるくらいだと、テレビ版の前のキョウは線が細いメンタルが弱い主人公かと思っていたのだが、その理解もキョウの一部を途中から見ていたイェルの解釈に過ぎなかったのでは?という感じだ。
映画版のキョウも素はテレビ版のキョウと同じ強く明るく明晰な水泳部員というのは同じだった。でも、映画版はつらいことが立て続けに起きるので精神的なウェットダメージがガチンコで実感できて、そりゃ、壊れるよね…。って。


そういうわけで主人公が精神崩壊してしまうENDの酷い映画とも言えるんだけども。
だからハリウッド的映画のような三幕構成が分かりやすい映画でもないし、ロボットアニメの総集編というほどすっきりしてないし、メカ作画のCGがすごく上手くなっているけど痛い戦いなので娯楽痛快アクションでもないし、作画アニメとしてもシズノ先輩が美人になったり作画のやり直しをしてはいるものの基本的にツギハギなので美麗作画を見てるだけで良いアニメでもない。かなりいびつだし特殊な映画だし、テレビ版でハッピーエンド(?)があるから許容できるけど精神崩壊エンドなのでひどい話と言えばひどい。


だけど、ゼーガペインってフランス要素が意外と強い作品なんですよね。

監督への質問3:アルティールの機体番号はADP作中から"HLA-24"だと思われるが、これはアルティールの前までに24機のゼーガペインが作られたというような意味なのか? また、作中でヴェルレーヌの"秋の歌"が出て来るが、意図は?


濱岡「"秋の歌"というと、私の担当している某戦車アニメの英国かぶれの人のイメージがあります(笑)」


下田「まあ、こっちはフランス語が使えるんで(ゼーガAIを演じるMAIさんが、秋の歌の母語であるフランス語も使えることを意味しているのだと思われる)」


ゼーガペインADP オールナイト上映会参加しました | ほろんけ

ふてくされたキョウがクリスとアークに向けてつぶやいた皮肉。
「セーヌ」はセーヌ川、「ポンヌフの恋人」はフランス映画の表題。

リョーコの設定といい、スタッフは映画好きであることが推測できる。
にしても、キョウってホント博識である
ここはセーヌかよ お前らはポンヌフの恋人か | ゼーガペインwiki

僕もそんなにフランス映画には詳しくないのですが。(ガンダムファンとしてシャルル・アズナブールの出てる映画をいくつか見たくらい)
ゼーガペインADPもかなり映像面でもストーリーでも設定でも感情面でも込み入った映画だけど、ハリウッドやロボットアニメではなく、むしろヌーヴェルヴァーグの文脈で見たらカテゴライズしやすいのでは?
キョウがいろんな女性と関係を持ったり、脈絡なく金髪美少女達の恋愛エピソードが入ったりするのもフランス映画だと思えば…。
ロボットアニメと見せかけて芸術映画だったのでは?


主題歌の新居昭乃さんROCKY CHACKさんとかもシャンソンっぽい歌を歌ってるし。
「and you」の浴衣の挿入のジャポネスクっぽさとかもフランスっぽいなー。
ゼーガペイン・アルティールの月面での戦いもCGがすごいんだけど、ロボットアニメとしての格好良さとか強さというよりは、儚いガラス細工のような繊細な美しさを表現していたと思う。
特攻隊についての言及もあるんだけど、キョウの自爆は神風の熱さというよりはもっと……。

リトルピアノ・プラス

リトルピアノ・プラス

新居昭乃さんのCDは全部持ってるくらい好きなんですけど、スプートニクとか子猫の心臓とか、「死の匂いの美学」みたいなのが漂ってるのが好きです。Vガンダムともちょっとリンクしてて)


そういうわけで「ロボットアニメとかSFはちょっと苦手…」っていう人も、そういう先入観を少し我慢してみたらフランス映画っぽい構成の美しさとジュブナイルの感情を劇場版ゼーガペインから感じられるのではないかと。


僕も半分「総集編かよ」ってナメて見に行ったけど、映画ではゼーガペインの痛みと人の意志の力とか、ヌーヴェルバーグっぽい言語化しにくい美しさに圧倒された。それで、テレビ版を2回見たくらいだけど、さらにゼーガペインが好きになりました。
サンライズのロボットアニメなんだけど、機動戦士ガンダムはORIGINとかで「歴史もの」「年表もの」の方向に行っているんだけど、ゼーガペインは劇場版で叙事的に入り組んだ物語に叙情の痛みをぶち込んでいたので、ガンダムファンの僕としてもロボットアニメの多様性を感じられてよかった。

しかし、ネクスト・エンタングルってなんだろうね。
個人的には放送当時にXbox 360で『ゼーガペイン XOR』と『ゼーガペイン NOT』というゲームが出てたしアニメ版でもゼーガペインに乗るゲームをするシーンがあったので、パチンコよりはPSVRでゲームが出たら面白いかなーって思う。
ゼーガペインとかホロニックローダーの戦闘機に手足がついてるコックピットのデザインとか、操縦のゲーム性、アトラクション性は高いと思う。VRゲームのゼーガペイン、いけると思います!
幻体での学園恋愛シミュレーションも?
ミテイルセカイヲシンジルナ

ROBOT魂[SIDE HL] ゼーガペイン アルティール

ROBOT魂[SIDE HL] ゼーガペイン アルティール


追記
ていうかゼーガとVRのコラボは今年に公式でやってるのか。

NEWS : [ZEGAPAIN] ゼーガペイン

作中でもVRを活用したゲームが登場し、そもそも世界観がVR空間と密接な関わりがある「ゼーガペイン」が、VR元年と言われる2016年にVRイベントを続々開催!
VRヘッドマウントディスプレイをお持ちでない方も、VR空間上の同時間にアクセスする事で、登壇者のプレゼンテーションを体験する事が可能です。
今回は、新作「ゼーガペインADP」劇場上映の前夜と、上映真っ盛りの10月20日に実施し、作品をより深く掘り下げます!
VR空間「舞浜サーバー」に、エンタングル


☆「ゼーガペインADP」劇場上映前夜祭
日程:10月14日(金)20時00分~
出演:ハタイケ ヒロユキ(デザインディレクター)・松村圭一(サンライズ第7スタジオ プロデューサー)・泉英儀(サンライズ第7スタジオ 設定制作)・高島雄哉(ゼーガペインADP SF考証)


☆「ゼーガペインADP」ネタバレ満載!VR座談会
日程:10月20日(木)20時00分~
出演:ハタイケ ヒロユキ(デザインディレクター)・井上喜一郎(サンライズ DIDスタジオ CGプロデューサー)・木内拓馬(サンライズ ライツ営業部)・高島雄哉(ゼーガペインADP SF考証)
※出演者は予告なく変更となる場合がございます。ご了承ください。


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