玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST第3巻 宇宙戦国塵積大河ドラマ!

 前回は感想が遅れたが、今回は発売日に買ってきたぜ!まあ、Gレコの感想は遅れているんだが、それはそれとして!
 大河ドラマだこれ!
 宇宙世紀の年表を埋めるような歴史萬画ではなく、NHKでやってる大河ドラマに近い感じ。

機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST (3) (角川コミックス・エース)

 まさに宇宙戦国時代!
 今回は主人公のアッシュ・キングが前回の戦闘で偶然面倒を見ることになった身寄りのない二千人の少女たちを豊かな農業コロニー8基を治める農業王・タガナス・タヤカの領内に引き受けてもらおうとして訪れる。
 しかし、豊かに見えた農業王のコロニーもたった4万人を食わせることで必死な小国だった。なので仕事もできない2000人を養うことはできないって断られる。まさに戦国!運送会社の社長に過ぎなかったアッシュがまず「2000人の子供の面倒を見れるか」という所から始めてキングを目指すという戦国国盗り物語なんですね?


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 前作の機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴーストを「武侠もの」と僕は感じた。宇宙細菌エンジェル・コールはあくまでファンタジックな「お宝」で、それをめぐって海賊や軍閥や傭兵の武侠たちが戦う物語だと。


 武侠小説もある意味歴史ものなのだが、DUSTではザンスカールも連邦も崩壊して、小国領主が群雄割拠する宇宙戦国時代の大河ドラマになっていると感じた。
 なにしろ、3巻の後半では天下三分の計を語る軍師まで登場する!三国志だ!しかもスケールが木星とコロニーと地球連邦なので宇宙レベル。宇宙戦国時代!いやー、おもしろいなあ。
 ティターンズの後継組織キュクロープスの中で天才軍師と小悪党気味の将軍が一時的に利用し合って出世を目指すとか、これも戦国ぅ!
 小さな密閉されたコロニーを「クニ」に見立てて地方領主たちが陣取り合戦をする「宇宙戦国時代」って設定はVガンダムが生み出した数少ない面白い設定だと思うが、それを描いたスピンオフは本当に少なくて、DUSTが出てくれて実に嬉しい。こういうガンダムを待っていたんだーっ!
 (コロニーが地方国になってるのは富野ではサイド6のランク政権とか、トワサンガのハザム政権とかでやってはいる。Gガンダムはまさしく国だったけど、戦国ではないんだよなあ)


 かといって、歴史ものの年表をなぞるだけでなく、偉人や華々しい戦争だけでなく、「2000人の子供を養うにはどうしたらいいのか」とか、「領主の娘が敵将の人質になる」とか、そういう地付きの細かい課題も出てきて、それに主人公たちが向き合う姿が、上からの歴史の解説と言うよりは、歴史の世界の中に目線が入って魅せてくれる大河ドラマっぽいと思いました。スペースノイドが浴衣を着て蛍に感動したりっていう癒しシーンやお風呂シーンのサービスシーンもあって楽しい。子どもは単なる無駄飯ぐらいではないって言うさりげないハートフルなシーンもあって、長谷川裕一先生らしいやさしい世界もある。まあ、撃墜されたMSの中の人は死んだり大けがしたりしてるんだけど。


 そして、女主人公のレオ・テイルが農業王のタガナスと、ティターンズとの戦闘の後、再度意見をぶつけるために決闘するのだが、その手段がMS相撲。事件の事を収めるために相撲するとか、三谷幸喜脚本の「新選組!」だ・・・。
 大河ドラマだなあ…。 




 また、大河ドラマだと思うのは、フォーカスの当て方。
 華々しい英雄や教科書に載ってる事件を説明してるだけじゃなくて、細かい事件や脇役の生き生きとした感じを描いている。そうなのだが、まさか単なる傭兵だと思っていたカグヤ・シラトリがお姫様だった!という展開が3巻のラストで。出番は多いけど大して重要ではない脇役に見えた奴が実は古い国のお姫様!DUSTは塵の物語だし偶然寄り集まってるキャラクターなんだけど、偶然にフォーカスが当たったように見える彼らの出会いが少しずつ世界に影響を与えていく…という立身出世の戦国ロマンがある。キュクロープスのアーノルドも最初は単なるやられメカのパイロットだと思ったし冷酷で出世欲に駆られた小物に見えるが、ゴースト軍師と関わる中で歴史の表舞台に立って行くのだろうか?
 この、塵たちが積み重なって大河になっていくロマンはいい・・・。


 そんな大河ドラマ的な雰囲気の今作だが、決定的に大河ドラマと違う部分がある。それは宇宙世紀年表はVガンダム以降はほとんど公式設定が存在しないところ。(ガイア・ギアやG-セイバーもなあ・・・)NHK大河ドラマはなんだかんだ言って歴史考証がある。DUSTにはない。
 じゃあ、DUSTは単にキャラクターの面白さだけで進めているのか?っていうと、そうではなく、フォント・ボーは「刻が見える」。そして、富野由悠季による∀ガンダムGのレコンギスタで「地球連邦は衰退し、人類文明も後退する」と言うことは決まっている。宇宙世紀年表で細かい事件や戦争は記録されていないのがDUSTの舞台だが、大きなガンダムの歴史のうねりの中では宇宙世紀末期は「あらかじめ破滅が決定している世界」でもある。これはつらい。
 ただ、新選組!真田丸関ヶ原の戦いなど歴史で負けが確定している人を描いた大河ドラマもあるので、やはりあらかじめ決定した敗北に向かうというのも、ある意味大河ドラマなのだ。劉備も滅ぶし。


 で、ニュータイプのベルの力を借りてフォント・ボーは刻の流れ、シュタインズ・ゲートで言う所の世界線を見ることができるし、自分とアッシュが相打ちになって破滅するルートも見える。あらかじめ富野監督にバッドエンドが決められている宇宙世紀の中で、長谷川裕一先生のキャラクターが「滅びないで済むルート」を綱渡りのように選択して、しかも互いに影響し合って生きようとする…。お。おう・・・。


 まあ、劇場版ガンダムGアーマーコアブースターとか、ロランの剣の有無とか、カミーユの精神崩壊とか、パラレルワールドを肯定しているのもガンダムです。長谷川裕一先生のガンダムパロディ初期の名作、逆襲のギガンティスではイデオンも含めてガンダムパラレルワールドとループが混在する世界なので。
 もしかしたら、∀ガンダム黒歴史にならない、Gレコに繋がらないで突破するガンダム長谷川裕一先生は作れるかもしれない。それはクロスボーン・ガンダムで富野監督と共同原作を行った長谷川先生にしかできないことだ。(ユニコーンは閉じてしまったからなあ)


 しかし、フォントの理想とする100年戦争をしない国も、所詮は宇宙世紀からいくつものアナザーガンダムの終末戦争が重なるガンダムの数千数万年の歴史の中では、点に過ぎないのかもしれない…。それでも彼らは生きようとするのだ……。その生きざまを見守りたい。



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