バス停に全速力で激突する寸前、「危ない！」と言う声が聞こえたので、私は月から目を逸らした。
女学生だった。
「可愛い女の子が僕に声をかけてくれた！」と思いながら、バス停を倒して私は吹っ飛んだ。
「大丈夫ですか？」と駆け寄った女学生に、起き上がりながら、私は「今夜は月が綺麗ですね」と言った。
マンガのように笑った。
もしかしたら、アレが僕の初告白で初ナンパだったのかもしれないが、もちろん二度と会う事はない。
そもそも目の前に星が飛び過ぎて顔も見られなかった。
多分、ドン引き。
いや、ハタチのころはまだ顔には自信があったんだよ。ただ、同じクランの言葉が選べなかっただけで。
おたくだからなー。
私は「今夜は月が綺麗ですね」と言った。
