玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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ファウ・ファウ物語(リストリー)上下巻

この間、下巻だけ読んだのだが、アマゾンで投げ売られてたから買った
送料が本体の三百倍した


何だか変な小説ですが好きだなあ


下巻のみの感想は
http://d.hatena.ne.jp/nuryouguda/20060121/1137855721
割と被ってるかもしれんが、今回も勢いで書いたので・・・。2年前よりも文章が長くどくなってる・・・。
えーと
あらすじとしては、バイストン・ウェル(日本名、上石神井とか井戸端とか)という海と大地の間にあるファンタジー世界からファウ・ファウという名前の妖精の生まれたての幼女が東京に来て、元気でかわいい騒動を巻き起こすと言う、ありがちな童話です
崖の上のポニョみたいな構造ですな
花から生まれた女の子を女児が見つけて面倒を見るのはおジャ魔女どれみ#みたい
(本文によると竹取物語バイストン・ウェルから来たものの話らしい。ひゃー)
が、
そこは富野小説ですよ!
宮崎駿のように動きが良ければ説得力も娯楽性もあり、などという事はない!
り、理屈っぽい・・・!
例えばファウ・ファウは妖精なんだから、魔法か何かで何となく飛べば良いのだが、いちいち「ファウ・ファウの羽の付け根は筋肉が盛り上がっていて、よく見たら気持ち悪いのです」などとわざわざ書いてしまう
ミ・フェラリオを妖精というか物理的に飛行する生物として描いてる
中世代のトンボみたいな大きさと羽らしい
ミ・フェラリオの筋肉はガーゼィの翼でも言及してる。オーラバトラー戦記は未読
何となくのお約束で済ませばいい所も理屈をこじつける富野
二次創作では無く自分でこじつける
しかし押井守のように現実的に書くか幻想でも無く、電波で超常現象
わからないことを書いてるのだが、無理繰り分かりたがる富野
あと、ファンタジーやメルヘンだと言っても物語世界全部の雰囲気をフィクションっぽく統一もしない
ファウ・ファウは異世界の妖精だが、回りの人間が妙にリアル
妖精が来たらテレビの取材に追いかけられるとかファンタジーでは避ける展開をやる
見つかったら呪われるとか、逆に妖精が当たり前の世界と言う世界設定を作らない
文字通りに妖精を裸で世間に放り出す
ファンタジーのハイとローの界面を物語エネルギーにするか?
一応、ファウ・ファウは超能力で、自分の存在を人間に認めさせるという能力があるそうです。るくるくのブブみたいな?
という設定はあるのだが、ファウ・ファウを見た人は大さわぎになるし、異世界の存在を知った人類にとって政治的宗教的事件として捉えられると言うリアル展開。ダンバインとかオルファンみたいなものか。
ファンタジーであっても、それよりも現実のままならなさ頑なさは変わらない、という諦念が在りつつもファンタジーに希望を持つようなところがあるねえ。
同一構造の崖の上のポニョで、明らかに化け物のポニョを魚の子と扱っているのとは違いますね。(逆にトキさんだけが「人面魚」と言うのは母親的なものの代表とか老人は現世と幽界の両方の人だから本質を見抜ける位置?とか。まあ、フィーリングなんだろうなー。宮さんもナウシカの序盤の頃はまだ今より整合性があった。富野監督はハウルの動く城を見てテーマとストーリーが解離している失敗作かもしれないって言ってたけど。そこら辺は性格かなあ。しかし、富野作品も感覚的な部分もあり、と見せかけて筋が隠されていたり・・・。ムムム。)
とりあえず、富野小説での妖精はリアルに珍しがられるんですな。
町田ひらく萬画に出てきた宇宙人の女の子みたいな事にならなくって本当に良かった。あと、リーン翼(小説)のディバイディングドライバーとかな・・・。



んでそのような当たり前の人間の反応をドミノ倒しにすることで
家の一大事、学校の一大事、地域の一大事、日本の一大事、世界の一大事、神の一大事、そして伝説へ!
と、スケールがインフレする
出て来るライバルも、日本刀の達人の祖父、クラスの男子、ヒステリーの担任、校長、民放、開かずの間の妖怪、森本タレント(モデルはタモリ)、NHK防衛庁長官、総理大臣、昭和天皇、各国放送局、国連、お稲荷様、佐渡の霊木、地球やバイストン・ウェルの意識
という序列正しいインフレーションぶり
富野すぎる
ガンダムも宇宙移民、宇宙生活、宇宙政治、宇宙差別、宇宙脳、宇宙人、伝説!というドミノ倒し
最初に嘘を吐いて、それに説得力を持たせようとして理詰めで説明して行くうちに余計あさっての方に行く富野ダイナミズムが好き


出て来る人もリアルだが、その行動もリアル
良い人とか悪い人、でなく良い部分と不愉快な部分、変化する機嫌を持っていて、評価が定まらない
みんな好き勝手に動く
ヒステリーの担任がテレビの取材を受けて優しく上品な先生になったり
頼りないテレビの中間管理職が特番を仕切る現場でやる気を取り戻したり
軽薄なタモリが女児に説教されて男気をみせたり
トミノだなー
監督はタモリのオールナイトにも出たし、80年代のタモリ感がうまく出てる。
まーヤな奴が実は良い人だと言うのは話作りの基本だし、ファウ・ファウによってみんなが良い影響を受ける(あるいは取り繕う)、みたいな童話なんだが、童話ならクラス単位の奇跡や魔法界だけの話でいいのに国連とか神まで行く
富野は手加減しないぜ!
童話の体裁でもダンバインの後半と同じような雰囲気
さすがに核兵器は(富野にしては珍しく)出なかったので自重はしたんだろうなあ


富野監督は海のトリトンの時にメルヘンを書くには大人が本気で語らないといけないと悟ったらしい
本気すぎる
何歳向けなのかわからない
例えば、大人が「死んじゃえっ」などと汚い言葉使いをしたら「言ってはならないことを言いました」と書く
大人は言葉遣いが汚いので、そういう描写は十回以上ある
最初からきれいな言葉だけを書くと言う神勝平型ロボットの中の人のような選択肢は無い


文体自体も富野小説には珍しくですます調で改行が多く、子供向けにしようと勤めてはいる
大事な所や妙な効果音は太字という書き方は謎だ
マンガっぽさで子供向けに?しかし、子供向けというには、文字フォントを使ってまで情報を制御しようという風にも見える。イデゲージの活字を作るよりはマシだけど。


が、テレビ局の大人たちのセリフの応酬は元CM会社員らしいリアルな罵り合いだし


バイストン・ウェルシリーズ恒例の日本人論、近代歴史論、教育論、などの富野哲学も炸裂
(バイストン・ウェルシリーズでなくアベニールも日本人論だから現代を舞台にしたら必然的にやっちゃうみたい
ブレンはアメリカ中国チベット(シラーの国)に比べたら日本人の扱いは佐世保暴力団くらいか?政治家が私欲なのは現代が舞台ではないほかの作品でもコンスタントですから日本人論でもないか)
佐渡島は流刑地だと教わった高校生と、大陸からの外交府だという老人とか
メディア論、アニメ論、認識論、文明論もいつものごとく炸裂
子供扱いという概念は無い
子供は大人よりは素直だが、ガキの屁理屈とかもある
とにかくあるものはあるように描かないと気がすまないので体裁などは粉砕するのだ
現実は統一感が無いし
しかし子供は一面では大人より分かりやすい類型を好むので如何なものか


それから、富野小説と言えば独特のエロ描写であるが
今回ももちろんあります。子供向けで女の子が主人公だから多くは無い
だが子供向けな分、目立つ


教頭先生が若い女の先生が取り乱したのを口実に、手の柔らかさを味わっていようと思ったりとか。
ファウ・ファウが初めて服(お人形の)を来た時に、「ぱんつだけの方がはだかよりもエロチックです」とか。


なんなの?これ。セックス描写はないですけど。何かをこじらせた感じがすごくするぞ!
富野に常識は通用せぬ!
上の娘さんが中学生の時に


「セックスをしてはいけないとは教えなかった。近頃はエイズという怖い病気があるのだから、だらしのない男と寝てはいけない」


と教えたそうだし、禁止はしないで現実を言う。教頭先生だって肉欲があるという事実。
あ、Vガンダムは見てはいけないが(笑)



そんな富野の娘さんたちだが、ファウ・ファウ物語に同級生役で登場してらっしゃる。姉妹役じゃないけど。
なかなかこまっしゃくれた正論を言う子で、小学生女児の理屈っぽさがよく出てて好感です。
ブレンパワードにも登場したが、富野作品でハートウォーミングファンタジーをやるときは娘さんを実名で晒すという自分ルールがあるようです。
アカリさんの友達のユキオさんはわざわざ(この人も女の子です)と、注釈があるし、アカリさんについては
「6年生になって急に背が伸びてランドセルが似合わなくなったけど、中学校になったら新しい鞄を買ってもらえるからランドセルを背負っている、けれども似合わないことは間違いがないので、ちゃんと分かっておきたい事です」
と、ほぼ1ページに渡って小学6年生のランドセルについての持論を展開している。
話の大筋には影響しない脇役なんだけど、富野由悠季的には書いておきたい所だったようです。
そういえば、幸緒さんはブログで女の子用の赤い絵の具セットがほしかったけど習字セットも絵の具セットも男物だったって書いたはった。こだわりがあったんだろうか・・・。監督の服は30年以上阿亜子さんが選んでいるらしいが。
富野幸緒さんの年齢はwikiでもヒミツだからわからないけど、ダンスを始めたのが1993年だから、1986年のファウ・ファウ物語の時点では10代くらいでしょうか?
初孫娘さん誕生はとてもめでたい。


まあ、娘さんはまだ良いんです。
ご本人が。



えー、主人公のエミコちゃんはご両親から1字ずつ名前をもらったそうです。
そして、富野喜幸氏もご両親から一字ずつ賜ったそうです・・・・・・・・・・・
もしかして、エミコちゃんって本人の自己投影じゃないだろうナッ!
娘さんの同級生の小学6年生女児のお嬢さまに同化して妖精さんと遊びたいと言うのは、、、、なんかスゴイ!少女を愛でるというか、自ら少女ですか。
小説家ってすごいですねー。


まあ、僕も脳内妹のお兄ちゃんなんですけどね・・・・。はい、僕が言う事ではありません。


エミコちゃんは若い女中さんとブティック経営のお母さんと祖父母と暮らしているお嬢様です。ここら辺は必然的ですね。大き目のお人形を持ってない子だったら、ファウ・ファウにガンダムクロスを着せるような地獄絵図になってしまうところだった。
お父さんは佐渡で焼き物をやっている職人でありながらインテリっぽい。
なんかモデルが居そうな感じだなあ。


で、エミコちゃんの兄は幼少の頃にバイストン・ウェルに神隠しにあったらしいのだが、スルー。せっかくの妹属性が・・・。夭逝って言うのもファンタジーではあるんで、そういう雰囲気なのだろうか。


で、主人公であるファウ・ファウが、すっげえかわいいの!
特に、おれの脳内妹に似ている所とかがなっ!!!!!(オリハルコン爆)
大森英敏さんのイラストではチャム・ファウを全裸にしたような感じなんだが、本文では金髪さんです。カラーページで金髪さんにしてほしかった。全部全裸だし。扉絵では服を着てるけど。金髪さん・・・。
お人形の服なので、ローゼンメイデンの真紅に羽が生えたみたいな感じを想像するとよい。メモルとかあったけどな。
ファウ・ファウの元気な喋り方とかがまた妹チックで可愛い。うちの妹は精神科の先生にも「自然体で素敵な妹さんです」って言われた事があるしな!(イデ発)
それでいて、ただ元気で純粋なだけではなく、気品と分別があるというのがまた富野女性観で好きだ。
筋を通す。
しかし、生後1日で(ネタバレ)祖父を驚かせて、日本刀を振り回させて刃こぼれさせたおわびに、刃渡りの芸を披露するという筋の通し方はどうなんだろう?
本文中で、「体の記憶と言うものがあり、バイストン・ウェルはそういう世界なのだから、いいのだ。それ以上大人の理屈で考えてはいけないッ」っていうような注釈はあったんだが。まあ、注釈をつける時点で宮さんよりも理屈っぽいんだけど。
いや、できるできないというより、いきなりそういう発想をできる妖精って言うのが想像を絶するなあ。と言う話。
他にもファウ・ファウはきちんとした喋り方ができるのでとても好きだ。
その、理屈っぽくて凹みがちな男子である所の僕は、感情豊かでありながら理屈もわかってくれて、その上で新しい視点を見せてくれるようーな女の子というのがー好きー--って言うか、理想を夢見てますね。ハイ。


というわけで、萌え萌えしながら読みました。
これ、今からでも実写映画化できそうなんだけどなあ。分量も丁度いいし。ちょっとした感動作品の佳作としてよさげ。
映画のシナリオをかなり意識して描いてると思うんだけど。オファーが来なかったのね。
タモリはさすがにアクションがきついかも知れんので八嶋智人あたりでもいいかと思うが。おはスタ山ちゃんでもいいけど。
まー、今上帝が出てる時点で日本では無理か?
むむむ。
エロ描写は基本的に地の文の監督意見がエロイだけだからカメラマンが上品だったら見やすい映画になると思うんだが。



映画っぽさを増幅させる一因として、小説なのに主題歌があります。
ホテル・カリフォルニア
http://www.nicovideo.jp/watch/nm3901752
http://g-onion.hp.infoseek.co.jp/hotel%20california.html
意味深だ・・・。
アメリカ大陸からの命も取り込もうとしたのか、THE EAGLESなどのアーティストのインスピレーションもバイストン・ウェルとつながっているというような事か?



映画で見たいなあ。でも、CGのファウ・ファウはかわいくないかもしれない。でも、まあ、ゲゲゲの鬼太郎とかハットリくんくらいにはなるだろう。