玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。


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リーンの翼新装版2巻読了 後編

そして、リンレイも女として、少女として、恋人として、女王として、迫水を手元に置こうとする。
ここは旧版も新版も同じ。アマルガンと対決をするのも。
しかし…。
以下、超絶ネタばれ。
 
 
 
 
 
 
 
 
新装版のリンレイ・メラディはサコミズ・シンジロウの代わりにアマルガンに殺される。
こ、これは!いや、アニメ版を見たら、リンレイの死がある事はわかる!が、ここで死ぬのか!
しかも、迫水はアマルガンからリンレイによって庇われ、その背中を巨大で逞しいと思ってしまう!女の背中を、だ!
確かに、リンレイは強い女で、スニーカー文庫版の表紙ではすごい形相をしている。でも、読み返したら、結構19歳の少女らしい所もある娘だ。それを迫水は最後に逞しいと思い、助けられただけで助けられず、しかもリーンの翼リンレイの願いによってバイストン・ウェルから地上へ送り返されてしまう!これは悔しい事だ!
迫水は戦時中の日本海軍軍人で特攻隊に志願したほどの戦士だ。軍国少年で超マッチョイズムだ。
序盤、新装版1巻42Pで、死に物狂いで戦った様をハロウ・ロイという美女に見られた迫水は「あの美女には自分の狂態がどう見えたのだろうか……狂態とは男の意思が犯される事なのだから、男に責められる女の姿以上に下卑たもので、男の死に体である……」と物思う。ハロウがレイプされる所を見ているのに、自分が我を忘れた事の方を気にするプライドのある青年。そこから、数年の時が流れ、迫水も勇者となり将軍となるのだが、最後、迫水は女に救われてしまう。勇者となった迫水は、リンレイに救われた事をハロウへの恥と同じように感じたのだろうか?
旧版の迫水はアマルガンに殺されるが、リンレイの使う新たなリーンの翼により救われ、成仏して地上世界に戻る。
新版の迫水はリンレイをアマルガンに殺され、リンレイの魂と共に地上世界に戻る。
そこで、同じように与謝野寛の「わが恋は火中の車 かた輪ぐるまよ ただに怨を載せて燃えける」(毒草)という歌を思い出す。これはリンレイとの恋を総括した思いなのかな。そこに自分は怨みが無かったと迫水は喜ぶ。
そこで、第三の原爆と遭遇した迫水はリーンの翼を使い、原爆を包み込んで業火の中で命そのものに還元される。そこで旧迫水は悟る。汚濁した人の争いであっても、核戦争で命が無になるよりは愛せるだろうと。
だが、新装迫水は、悟らない。
なぜなら、女を死なせたからだ。
旧迫水が悟ったタイミングで、死んだリンレイの魂が迫水に寄り添う。それは迫水の古里を見たかったというリンレイの恋心で最後の萌えポイント。とてもかわいい。迫水の古里を見て、その日本の美しさ、戦後日本の明るさに、リンレイは感動して成仏する。旧迫水がリンゴの唄に現れる戦後の明るさを愛して成仏したように、リンレイが成仏する。
だが、新迫水はそれを全く逆に取る。リンレイが成仏したというのに、先に逝かれたという怒りが、日本への、平和への、死者を裏切った生者への怒りに転嫁される。リンゴの唄の明るさも戦後の復興ではなく、裏切りと能天気さと解釈する。
魂の融合を果たしても先に女に死なれる男の寂しさはアムロ・レイシャア・アズナブルを混ぜたような辛さであろう。
サコミズはリンレイと共に成仏したいという思いを持ちながら、しかし、新装版のバイストン・ウェルの意思か、彼の怒りからか、第3巻に続いてしまう。
それは、リンレイが生きてバイストン・ウェルで迫水の子を生んでくれるかもしれないという希望のかけらがあった旧版リーンの翼にはない、取り残された新装版の迫水の寂しさからか。
旧版と新装版とのリンレイの生死の違いはリーンの翼の発動があるかどうかという違いしかない。つまり、世界の意思、富野喜幸の意思?その違いで迫水真次郎は全く逆の考えにいたり、修羅となる。女に命を残せない男は絶望するのか。
スターウォーズアナキン・スカイウォーカーパドメ・アミダラが出産のときに死ぬ夢を見て、狂って、オビワンと戦い、パドメはアナキンに首を絞められ、出産して死ぬ。しかし、ベイダーは子供の事は20年間知らなかった。スター・ウォーズEP5で知るんだっけ?4だっけ?
なんか、ここら辺の構造はSTAR WARSと似てますね。
違いは、新装迫水はリンレイの子を残せなかった事。そして、リンレイと魂を交流したのに、自分はリンレイほど成仏できなかったという悲しみ。ダース・ベイダーは妻がオビ=ワン・ケノービと浮気をしたのではないかとか疑っていたんだっけ。
妻を疑ったまま死なれるのと、恋人と深い所まで一緒になった瞬間に消えられるのとでは、どちらが辛いのだろう?
そんなわけで、迫水真次郎はオーラ力の暗黒面に落ち、ホウジョウ国の覇王迫水となる。
しかし、それは彼の暗黒面だけではなく、バイストン・ウェルという命を持った世界そのものの意思が望んだ事かもしれないのだ…。
 
 
さて、そんな衝撃の第3巻ですが。
正直、読むのが怖い…。なんだか、もう、濃い。




リーンの翼 2

リーンの翼 2