玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年9月 第9話 第3節

サブタイトル:第9話 [家庭教師VSニンフェット!頭令兄妹誕生の秘密です!!]

  • 四ツの屋敷での、ある日の昼食の風景

そら「足らない足らないって失礼ね!私に何が足らないってのよ!」
社「人への共感と配慮だ」
そら「……。あはっ!あはははははははは!なにそれ!何かの宗教?あはははっははははははははははは!」
社「貴様は人を傷つけても何とも思わない、そういう娘だと言っているのだ。それでは、これから社会で生きていけない」
そら「周りが勝手に傷つくだけよ」
社「貴様のお兄さまも傷つくだろうな」
そら「なんでお兄ちゃんの話になるのよっ!」
社「今はまだいい。貴様のお兄さまは植物人間だからな。貴様が一人で頑張れば気が済むだろう。だが、お兄さまが目覚めたら、貴様とお兄さまの間には社会が出来る。
 わかるか?その時、貴様に共感も配慮もなければ、お兄さまはどう感じるだろうな?
 それから、もし、これから貴様の一生の間に、お兄さまが目覚めなかったらどうする?
 貴様は寝たきりの兄を抱えて老いるだけだ。目覚めぬ兄以外の誰にも愛されない女は、醜いだろうな……。その時に老いた兄が目覚めれば、もっと醜いだろうな……。
 そう言えば、貴様が先月散財して着こんだ服も酷かった。金ばかりかけて品性が全くない。今のテーブルマナーも汚い。それも思慮の欠如だ。
 同じ男として言うが、そんなことではお兄ちゃんは貴様を好きにならない。いい女にならなくてはな」

 言い終わると、社は目の前に出されたデザート、丸皿に盛られた白い半球のアイスクリームを一匙舐め、白い仮面の下の口を微笑ませた。
  
  
 逆に、そらはアイスクリームには手を付けず、数秒うつむいて、肩で息をしていた。が、瞬発的に銀のスプーンを手に取り立ち上がり、対面する席の社に向けて振りかざした!
 社の眉間を指すスプーンはブルブルと震え、社の席のスプーンは皿に置かれ、肘を卓について白い手袋の両手を仮面の顎の前で組んだ社とそらが見つめ合う。
 美少女よ、華よ、アイドルよ、女王様よと呼ばれ生きてきたそらは悪いと言われた事もなければ、醜いと言われた事は初めてである。自分を気が違っていると言った人間達の事は、あたしたちを何も知らない愚か者め、と見下してもいた。が、この仮面の男はどこか違っている。筋が判る気は、する。
そら『あたしがお兄ちゃんに好かれないかもしれないという、男!
 お兄ちゃんも男なら、それはどうなの?お兄ちゃんはあたしと夢の絆のある家族。それは確か。だけど、……男。
 あたしは男の考えが分かっていないのかもしれない?お兄ちゃんも?』
 胸中に湧いた初めての疑問が判らぬのならば、この場の感情で社の喉を突くわけにはいかない。

そら「お前なら!私を!足りられるようにできるって!言うか!お兄ちゃんに好かれるいい女にできるか!」
社「貴様が学べば、だな。
 しかし、よく怒りを抑えた。私はここで貴様達に消されることも覚悟していた。が、お兄さまの事は多少は深く考えられるのだな。ならば、素質はある」

そら「みくびらないでっ!できるわよ!あたしは!」
 丸い眼鏡のメイドのミニコが起き上がらせた椅子に座り直し、そらはたったの三口でアイスクリームを全て頬張った。奥歯が冷え、少し痛んだ。
社「頭令礼一郎さん。そらさんはこうおっしゃっていますが、私にそらさんが社会に出るための教育を任せてはいただけませんか?」
レイ「あなたの目的は理解しました。また、必要な事だと、私も考えます。娘もやる気ですし。了解です。
 ただ、あなたに娘の教育を最初に依頼した人物、つまり、娘を聖ウォーター女学院に入学させようとしている方について、あなたはまだ明かしていません」

そら「そう言えばそうね。あんたやっぱり怪しいわ。仮面付けてるし。ロリコンだし」
社「それは、その方と私との契約で、明かす事ができないのです。今は、私の行いだけを信じていただきたい」
レイ「社先生、今は信じましょう。しかし、うちの執事達は優秀です。ですからあなたは、家庭教師の領分を越えた行いは、できません」
 そらの奴隷であり、素粒子の間隙に棲む宇宙人たちは、全地球を覆うセブンセンサーと呼ばれる部族達の力を使い、時空の揺れの残滓から社亜砂の過去を逆算できる。つまり社亜砂と接触して命令した人物は既に分かっていたが、この席上では発言せずに、この時は両者とも行動を観察するだけにとどめる事にした。宇宙人奴隷たちは主である頭令兄妹を守れればそれだけでいいのだ。
そら「そうよ、あんたはお勉強を教えてくれてたらいいの。余計な事をしたらぶちのめすわよ」
社「ふふ、では保護者の方の同意もいただけたということで。契約書にサインをいただきましょう。そらさんは来週の最初の授業までに、時間割に目を通しておいて下さい」
そら「わかったわ。それと、ご飯はおいしかった。ごちそうさま」
レイ「ごちそうさまでした」
社「こちらこそ、ごちそうさまでした」
 11歳の頭令そらが手を合わせ、”これくらいの挨拶はできるのだぞ”と睨んでいるのを、ロリータコンプレックスを持つ社亜砂は"本当にかわいい"と仮面の中で思ったのだった。
 それを笑われたと感じたそらには”私は姫草ローラを演じて大人の看護婦をやってたのよ!”との反発心が、あった。演じる事は、出来る少女なのだ。