玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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機動戦士クロスボーン・ガンダムゴースト2巻宇宙戦国時代小説武侠冒険SFロマン

時代小説は、『銭形平次』のように架空の人物を登場させるか、実在の人物を使っても史実と違った展開をする。史実や著者の訴えよりも面白さ、いわゆるエンターテインメント性を重要視したのが時代小説である。吉川英治の一連の作品や池波正太郎の『鬼平犯科帳』などは時代小説である。


というわけで、木星共和国軍の秘密部隊「蛇の足」、木星帝国の残党である木星共和国タカ派が開発した一騎当千機部隊サーカス、コロニー独裁国家ザンスカール帝国、地球圏での抵抗民兵組織リガ・ミリティアが四つ巴の争いをするのは非常に時代劇的なエンタメであるなあ。ただし、それが日本の過去の歴史に題材を得た時代小説ではなく、架空の未来である機動戦士ガンダムの宇宙戦国時代を舞台にしている、ってのがちょっと普通の時代小説とは違う。
争いの種が機動戦士Vガンダムに登場したサイキック兵器エンジェル・ハイロウと謎の宇宙生命体エンジェル・コールというのは、SFエンタメ映画みたいですね。謎の宇宙細菌に汚染された幽霊船って、エイリアンみたいですね。リドリー・スコットのプロメテウス公開中!


武侠小説(ぶきょうしょうせつ)とは、中国文学での大衆小説の一ジャンルで、武術に長け、義理を重んじる人々を主人公とした小説の総称である。
内容は多様で、一概に述べるのは難しいが、勧善懲悪や義理を主題とした作品が多く、武術による闘いの他に、冒険、恋愛、復讐、謎解き、伝奇、史実、喜劇など、様々な要素が1つの作品に盛り込まれている。作品によっては、登場人物は超人的な武術を駆使して闘いを繰り広げることもある。


超人的な武術はカーティスの盲目サイキックニュータイプモビルスーツ操縦術とか、異常な形態の一騎当千機サーカス部隊のモビルスーツなどですね。
義理や裏切りや成りすまし、権謀術数や複数の国家の謀略合戦など、戦国時代や三国志演義をも彷彿とさせる。とてもおもしろい。


登場人物にはロビン・フッドのような正義漢や乱暴者、邪悪な戦士などが数多く登場するため、世界観には「暴力が支配する混沌とした世」がうってつけとなる。 日本の剣豪小説のようなアクション小説が戦国の世を舞台にするように、武侠小説においても乱世や独裁国家の時代、架空の世界が舞台になることが多い。


そういうわけで、宇宙戦国時代はガンダムを終わらせようとした富野由悠季が1993年に作り上げた世界観で、非常にいろんな再解釈とか外伝とか二次創作ができる、広い舞台設定だと思う。宇宙戦国時代を舞台にしたエキサイティングでスケールの大きいガンダム外伝創作があるといいなーって常々思っていたので、この作品は嬉しい。
機動戦士ガンダムUC逆襲のシャア閃光のハサウェイの間の時代設定だけど、年表の隙間埋めの作品と言う感じで、いまいちスケール感に乏しかった。ラプラスの箱の中身も大した事が無かったし、宇宙世紀100年といっても、いまいち繋がっているスケール感が無かった。ガンダムユニコーン逆シャアガンダムZZの要素を少し付け足しただけと言う感じで、広がりがあまりなかった気がする。ジオンの歴史と言ってもミネバ個人や矮小なクローン人間がその象徴になっていただけで、あまり広がれなかったのが残念だった。
メカニックの技術的にもサイコフレームファンネルジャック程度を大げさに描いていたが、あまりガンダムモビルスーツの進化の面白みが生かされたとは言い難い。
他のガンダムもだいたい黒歴史の隙間埋めか、宇宙世紀年表の隙間埋めに過ぎないしなー。だいたい一年戦争の細かい所をつつきなおした作品が多い。
まあ、隙間埋めの方がやりやすいんだろうし、Vガンダムは知名度的にも内容のヤバさ的にも触れにくいんだろうけど。戦国はいろんな国や武将をねつ造したりとか面白みがありそうだ。

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だが、今回のクロスボーンガンダムゴーストは、機動戦士ガンダムF91機動戦士クロスボーン・ガンダム機動戦士Vガンダムという大きな30年間の流れになっている。同じ登場人物が年を重ねて成長したり、いろんな組織の中で動いていたりするのが歴史を感じる。
技術的にも、意外と派手さはないが小型モビルスーツの変化の歴史の面白みを生かして、いろんなバリエーションが出ていて面白い。
ビームシールドの進化、サイコミュの進化、ミノフスキードライブの進化、タイヤの進化、ビームローターの進化、ヴィクトリータイプの取り換えシステムの醍醐味など、色々と見せ場があって面白い。
シュラク隊がやっぱり女性ばっかりで隊長がヘキサって言うのもツボを上手く抑えていて、ガンダムマニアの長谷川先生らしい上手さ。


やっぱり宇宙戦国時代にはいろいろと可能性や夢があるし、戦国時代は人の駆け引きと戦争が直結して描かれてドラマチックで面白いので、この時代のガンダムがもっとあっていいと思う。
しかし、木星圏は地球圏よりも広いし、資源はあっても国力がないという妙な国家だし、いくつもの富野ガンダムの中で微妙な役回りをしてきた組織なので、それを一つのマンガにまとめるって言う長谷川裕一先生は色々と頑張って考えたんだなーって感じだ。
Vガンダム外伝やVガンダム小説版にも通じる外宇宙移民計画などもSF的にもガンダム的にもいろいろと広がりがあってよろしい。
色々な勢力の思惑や他のガンダム作品との複雑な関係を、矛盾しないように一つの作品にするのは非常に苦しいと思うが、それを単なる設定のつじつま合わせではなく、テテニス・ドゥガチ女王の苦しみと言う人間ドラマとして表現したのは上手い。苦しい設定自体を、いろんな人に振り回される君主の苦しみとして昇華しているのが素晴らしい。


また、主人公のフォント・ボーが宇宙海賊のカーティス・ロスコ(一体何者なんだ)や木星のお姫様のベルを観察している狂言回しっぽい。この、強い海賊を眺める少年と言うのは前々作機動戦士クロスボーン・ガンダムのトビア・アロナクスとキンケドゥ・ナウの関係と同じなんだが、やっぱり出崎統の宝島みたいな海賊ジュブナイル小説らしさ、って感じで、雰囲気が良いな。


だから、宇宙時代小説冒険SF武侠小説ガンダムだねー。萬画だけど。