玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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無敵超人ザンボット3第10話バンドック現わる! 金田アクション回

脚本:田口章一 絵コンテ:金田伊功 演出:貞光紳也 作画:スタジオZ 敵:トラシッド


前回、商船オーナーの大滝社長に神ファミリーの戦いが理解されると言う事があって、今回は一足飛びに日本国副首相(清川元夢)を神ファミリーが助けて、理解を得る、と言う話。展開にスピード感がある。ここら辺のリアルな権力のインフレは富野らしい。もちろん、富野が参加していたコン・バトラーVでは国連がたまに存在感を発揮していたが。富野はコンV等の経験を踏まえて、それまでのロボットアニメの本筋の外側にあった大人社会の政治をザンボットに入れ込んだんだろうなー。
ガンダムはそれまでのロボットアニメになかったリアルなロボットアニメ」と簡単にガンダムを紹介する人に言われがちなんだが、富野自身もそれまでのロボットアニメに関わっていたのだから、単なる革新と言うよりは延長線上としてとらえた方がいいのではないだろうか。
イノベーションが突然、降って沸くと期待している人が最近多い。たとえば、ガンダムの富野さんが岐阜の商工会議所で講師になっちゃったりするのも、30年前にイノベーションを起こした実績から、「不況対策のヒントになるのでは?」という期待を持たれていた感じがした。しかし、革新は突発的に起こるのではないし、時代の流れの必然に乗ってなければヒットしないわけだし、「ガンダムの富野」を革命家として経済人までが神格化するのは、ちょっとおかしいと思います。あの爺さんはちょっと演出とディレクションが上手いだけの人です。


ザンボット以外の話が長くなったが、つまりガンダム以前のザンボットやライディーンも面白いという事です。あと、ガンダムも突然変異ではなく、富野の人生やアニメの歴史や人間関係の遷移の一部なんだよな、と言う事。


ネタバレはする。

  • 金田作画のギャグとアクションとリアル

同じスタジオZ回でも、5話ほどのアクションのインパクトはなかったかなー。ドラマ性が5話の方が深刻だったし。なにしろ親や妹を失う津波だからなー。
ただ、今回は今回で、日本国のガイゾックに対する和平使節団の政治家や官僚たちがガイゾックに惨殺される所などが非常に恐ろしかったし、それが作画面でも非常に強調されていたと思う。
それはどういう事かと言うと、今回のゲストキャラクターである日本国の外交官の野崎氏や安西氏の顔つきや服装などが、鉛筆の描線を活かした劇画タッチでリアルなのに対して、ガイゾックは絵柄もやってる事もギャグなのである。その対比が結果的に非常に恐ろしいものとして描かれていて絶妙だなーと。
5話では、深刻なラストの前に勝平がディフォルメされたギャグ顔をしていて、ちょっと変だった。
今回はギャグ顔はガイゾックに割り振られている。そして、ギャグのようにひたすらふざけているガイゾックのブッチャーが、人間を墜落死させたりする、ギャグからシリアスの落差の激しさによって狂気と異物感を感じさせる。
人間を突き落とすけど、その人間には風船が付いていて助かる、と言うのは子供っぽい空想であり、ギャグに近いのだが、それを弓矢で撃ち落として遊びで殺すというのがリアルに酷い。
ガイゾックって本当に理屈が通じない感じがする・・・。本当に宇宙人は酷い!
とも思えるのだが、本当に無機的で異質な宇宙人で全く地球人を理解していないのであれば、地球人の和平交渉を一度受けて安心させてから人質にとったり、その上でいちいち風船で空中にぶら下げた人質を狙撃して遊びながら殺すという事はしない。人間の心を理解したうえで人間を弄んで不快感を与えることで、喜ぶというようなサディストだ。
むしろ、ガイゾックがやっている事は子供っぽいんだよなー。タコ風船とか冗談っぽいし、ブッチャーも子供っぽい。
力を持ちすぎた子供なのかなー。スマイルプリキュア!のウルフルンさん、アカオーニ、マジョリーナも子供っぽい所があるので、子供向けアニメで描く悪は子供でも分かるような悪、つまり子供のいたずらレベルと言うのは割と分かりやすい理論から逆算して作られてるものかもしれん。
まあ、ザンボットは子供のいたずらレベルの遊びによって、リアルに大人がゴミのように虫のように殺されるわけだが。ここらへんの惨殺は筒井康隆のブラックSFに雰囲気が似ていて、私は結構好みではあるんだが、酷い話でもある。


てなわけで、作画面でも行動面でも、ギャグとシリアスとリアルの振幅が大きくて面白い。


野崎副総理が落とされるけど、弾んで川に落ちて助かるのはギャグ漫画みたいな動きだけど、野崎さんは非常にリアルな作画をされてる人物だしリアルに大怪我して死にかけているので、リアルとギャグの微妙な化学反応で変な感じがする。そして、その変な不安感こそがザンボット3の演出意図だと思うので、本当に特異な作品だなあ。
富野監督も先週の岐阜の講演会で、
「安彦君のかわいい絵があったからこそ、ガンダムはリアルっぽい政治劇や人間ドラマをやっても、異種格闘技的な反応を起こして、見られるものになったんじゃないか」
と言ってる。ほんと、ザンボット3はリアルな絵柄やグロ描写一辺倒の作画だったら見ていて非常にしんどいものになってると思う。逆に、可愛い絵柄やギャグっぽい行動がリアルな死に繋がってるので、余計恐ろしくもある。


ここら辺のリアル度合いのチューニングによって演出意図を調整するってのは21世紀のアニメでもやってる。
「中二病でも恋がしたい!」を肴にしたリアル度合いの話 - subculic


まあ、中二病でも恋がしたい!では死人は出ないだろうけど、Anotherなら死んでた。

  • 金田アクション

弓矢!戦車!廃墟!バイク!ロボット!怪獣!
と言う感じで、いろんなシチュエーションでの動きがあって面白かったです。バイクアクションはコン・バトラーV勇者ライディーン仮面ライダー電人ザボーガーからの主人公アクションの鉄板ですね。
水面やバックミラーに一瞬だけ映った人物をとらえるのはアニメならではの表現。実写でもCGで出来るけど、リミテッドアニメなので残像が残りやすい。
リミテッドアニメはフルアニメーションの劣化版として思われる事が多いし、僕もそう思う時があるけど、金田作画はリミテッドだからこそ、動きの途中の絵を描くことで、一枚一枚では変な絵なのに、続けて見ると残像の融合効果などで、非常に印象的になる。
金田フラッシュなど、爆発や閃光のエフェクト作画表現も、エフェクトとそれ以外の絵が重なり合い、残像が脳内で融合して認識されることで実写以上に印象的な表現になっている。
あと、今回のザンボットが敵のメカブーストを一気にやっつける時の連続攻撃コンボのカット割りやカメラの動きも流麗で見事。
ミサイルの弾幕も「弾幕で近寄れない」という事を実感するに足る見事な弾幕と戦闘機回避の動画で、板野一郎以前のミサイルとしてはなかなか良いミサイルだ。



あと、神北恵子ちゃんは金髪ポニテ太ももかわいいんだが、虹彩が大きすぎて若干表情が読みにくくて可愛くないという微妙なデザインなんだが。金田作画の時は美樹本晴彦っぽくてかわいいです。あと、バンクシーンにもなってるけど、恵子がダメージを負う所はヒロインピンチでかわいいです。

  • 余談

おばあちゃんの神梅江が、初恋の相手の野崎副総理を助けようとして暴走して騒動を起こすのだが、ブレンパワードの伊佐未直子っぽくもあった。まあ、直子ばあちゃんはそんなに暴走してないんだが。直子の怨念めいたものは孫娘に伝わってたよね・・・。
おばあちゃんの戦場でのプロ意識のなさは神ファミリーのヤバさを感じさせてハラハラしますね。


強い父親の源五郎がいまいち活躍してない・・・。最高指揮官が祖父で、現場の指示役が一太郎兄。
来週、源五郎は祖父兵左ェ門と一緒に敵の基地に潜入するらしいので、そこで期待。
出崎統ならもっと強い父親をアピールしてた気がする。それか早目に殺すか。



これで、日本政府に神ファミリーは貸しを作ったので、日本国民に迫害される側から、人間と共闘するという中盤の流れになるのだろうか?政治的な立場が毎回少しずつ変わるので、ストーリー物として面白い。1話完結のロボットアクションでリセットされないのが良い。


それと、「バンドック現る!」というサブタイトルなので、どんなふうに現れるのか期待してたら、何の伏線もなく普通に出た・・・。ブッチャーと直接顔を合わせた地球人は、神ファミリーではなくて野崎副首相と言うのも面白い。
ていうか、今までガイゾックは「姿を見せない敵」という恐ろしさでやってきたのだが、あっさり出てきちゃって、良いんだろうか・・・。どういう意図が・・・?