玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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無敵鋼人ダイターン3第27話 遠き日のエース

脚本:星山博之 絵コンテ:斧谷稔 演出:小鹿英吉 作画監督:やしろかずお
万丈が子供時代に憧れていた手品師と再会するも、彼はメガノイドのコマンダーとして万丈を誘拐し殺害しようとして縛る。また縛られるのか万丈。
マジシャンは自分のマジックを利用した作戦で万丈を人間花火にして処刑しようとする。
すったもんだがあるが、アシスタントたちの助けで脱出する万丈。作画ギャグや繰り返しギャグがスラップスティック的だが、微妙にメタ視線があるため素直に笑えない、というか、単にあんまりおもしろくないだけかもしれない。
万丈は子供時代に手品を教えてくれたマジシャンに「僕の夢を壊したな!」と怒る。マジシャンの方は「さすらいの手品師を拾ってくれるのはメガノイドくらいだったんだ!」と、さすらいの絵コンテマン・富野喜幸を代弁するようなことを言うんだが、万丈はそれに対して「甘ったれるな!」と一喝し、マジックのトリックを逆に使ってサン・アタックでマジシャンを殺害する。
万丈は子供時代の夢を生活のために踏みにじったコマンダー・エドウィンに怒りを爆発させる。
これは子供向けアニメで子供に夢を見せる仕事だけど、食っていくためにさすらいのコンテマンをしていた富野の夢と現実のあいだでの葛藤なのかなあ。「甘ったれるなぁ!!」と叫ぶシーンは富野監督がアドリブで追加したシーンらしく、自分を拾ってくれる所なんてないとの嘆きに対して自分への戒めもあった模様だとか……。
ただ、そういう個人的なテーマを作品にすることにテレがあったのか、万丈がエドウィンを殺害するために使ったマジックに唐突に「トッポのマジック教室―」みたいな寸劇が挿入されて感情的なラインが台無しになっていて、いまいち煮え切らない印象だった。なんか、いい話なのに、演出態度がぶれていたり。
また、コマンダー・エドウィンが巨大化した後の顔に塗りミスがあって急きょマジックで塗り直したところとか、撮影台が今回はいつも以上に揺れていたりとか、なんだかラスト3クール目に突入した所で製作の不安定さも見えてきたり…。
マジシャンエドウィンが自分の技を「奇術は幻の技よ!」と叫んだり、ロボットアニメというだまし絵芸をやってること自体に懐疑的な作り手の迷いみたいなのが感じられる。アニメ制作に飽きたんじゃないのか?という疑いさえ出てくる。
松本零士ブームも後半で、勧善懲悪の巨大ロボットアニメもパターン化してネタが出尽くしたって言うことを作中の人物が言ってしまうほど閉塞感があったのかもしれない。
だが、それを打破しようという危機意識が、機動戦士ガンダムと言う金字塔を打ち立てたわけで。


ちなみに、海水をくみ上げて津波を起こす今回の敵メカのデスバトル"スカイウォーター"はスカイウォーカーのもじりなので、やっぱりスターウォーズの影響がすごい。また、エドウィンのメガノイドの科学と融合したマジックが海を割るのはそのまんま「十戒」の映画でした。
映画はだまし絵でマジックでトリックなんだ!でも、だまし絵の作り物でも物語の感動は伝えられるのかどうなのか?というガンダム直前の作り手の葛藤も伝わってくる。


自分にマジックを教えてくれたエドウィンを殺害した後、自分の家でアシスタントたちにマジックを披露する万丈だが、彼はアシスタントたちの喝さいを浴びながら少年時代の思い出を弔うような微妙な表情をする。万丈は割と人間味のあるメガノイドを殺害しまくってるので、そろそろカミーユみたいに精神がヤバくなるのかもな。


少年時代の万丈は髪の毛が緑っぽい所もあって海のトリトンに似ている。