玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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アイドルマスターシンデレラガールズ23話島村卯月のいい子問題への私見

  • 今話は、「島村卯月のいい子問題」に集約できると思う。

前回、デレマスアニメのアイドル性について葉鍵と絡めて書いて200ブクマ行ったのだが。
今回は自分語りが多くなる。今回の島村さんにはかなり感情移入できるというか、私の経験と似たようなところを感じた。
実は私もいい子だったのだ。今では33歳にしてアニメブロガーと言う社会の底辺になってしまったのだが、島村卯月さんと同じ17歳の頃の僕は進学校の進学クラスで5本の指に入る成績で、いい子だった。親の期待もあったし、自分も勉強が好きだったし。
しかし、いい子はストレスが溜まる。勉強をするだけだと退屈だ。だから、個性を出したくなる。
僕も18歳で国立大学に入学した後、京都の学生演劇界に参加した。今ではプロとなったヨーロッパ企画がアマチュアのころとほぼ同期だ。はてな村id:yarukimedesu 氏の劇団に参加したりした。また、演劇で体を使いこなすために合気道道場にも通って体を鍛えた。
単なる良い子ではなく、芸能とかやりたがるのは、島村さんと共通したものを感じた。


結果、潰れた。


演劇も上手くならず、合気道では練習中に怪我をしたり本気度の違う先輩たちとの温度差でうまく付き合えず、何より勉強をしなかったので大学の単位を落としたし大学での友だちも出来なかった。
そして、引きこもりになってしまった。
大学の指導教授には「もっと頑張れ」と言われたし、親には「がんばります」と言っていたが、結局誰とも合わせる顔が無く、誰にも会いたくなくなってしまった。
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そういうわけで、今回の島村さんは非常に感じ入るものを感じた。
ただ、僕と違うのは、島村さんは本当に価値のある人で、「ほっとかないよ!」という春香さんみたいな感じで、渋谷凛と本田未央が関わりを持ってくれたことだ。僕には誰も来なかった。まあ、僕はオトコノコだからね。
島村さんに渋谷凛が関わろうとしたのは、春に島村さんの笑顔に励まされてアイドルを目指したから。島村さんに本田未央が関わろうとしたのは、初夏にちゃんみおが逃げ出した時に受け止めてくれたから。島村さんは自分では気づかないうちに二人を助けていて、だからこそ今回助けられる価値があったし、そういう良い縁をちゃんと作っていたのだ。
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しかし、自分の魅力に自分で気づけないし、自分の笑顔は自分で見ることができないというのもまた真理なので。源氏物語千年紀-Genjiの光源氏も若紫に満面の笑みを与えたが自分では気づいていないという演出があったし、そういう事。
今回、島村さんは渋谷凛と本田未央に「あんたには価値があるよ」と言われて、それを自分で実感して、改めて自分の意志でもう一歩を踏み出せるか、と言うのは次回なんだろうけど。

  • いい子の迷走

今回、非常にうまく描かれていたのは、島村卯月が自信を喪失して何をするのかと言うと、「養成所に逆戻り」だったのがすごい。春香さんが自分の過去と向き合ったのにも似ているが、微妙に違う。
これは先週は予想がつかなかったが個人的に「島村さんはいい子」だと考えると非常に得心が行った。
と言うのは、僕も同じことをやったのだ。
大学の勉強が分からないのは受験勉強をちゃんとやらずにセンター試験と小論文で合格したからだと思い込んで受験勉強をやり直したり、演劇でも武道でも他のメンバーの顔を避けていたのに、基礎レッスンとか筋トレをやったり演劇論の本を読んだり、基礎に逃げた。
なぜ基礎に逃げるのかと言うと、基礎は正しいからだ。単純に価値を与えてくれるし、やったらやっただけリターンが得られるという可能性が高い。また、道を選ばなくても基礎をやっていればモラトリアムでいられる。
しかし、そこにも落とし穴があって、基礎メニューはどれだけやっても基礎から先には進めないのだ。やっぱり、基礎はある程度やった後、実践とかコミュニケーションに取り組むとか、取捨選択して専攻を絞るなりせねばならん。18歳の頃の僕や島村さんはそこに気づけなかったんだなあ。
でも、いい子は大人になるべき時や道を選ぶべき時になっても、踏み出しにくくて「それをやっていたら褒められたこと」を繰り返しがんばろうとする。僕も高校までは勉強したらそれだけ褒められたのだが、大学でいきなり演劇とか科学実験とか武道とかいろいろやろうとし過ぎて何も選べなくなり崩壊し、引きこもりながら高校の教科書を読み直すという地獄に落ちた。
また、いい子って意外とプライドが高いというかバカにされる経験が無い分滅茶苦茶恐れてるし、「落ち度を見せると皆に嫌われるのではないか」と思うし、「常識的に正しい作った顔」以外は周りに見せないようにするし、自分が弱るとそれを見せないように逃げたりする。
島村さんが「シンデレラの舞踏会は自分には早いので」とか言って逃げそうになるのは、自分が逃げた時のことを思い出してつらかった。
まあ、僕はダメ人間なので、逃げ続けて回避性人格障害と心身障碍で幻痛を発症して精神障害者になってしまったのだが、僕と違って価値のある島村さんは主人公アイドルなのでがんばってほしい。

  • 進路の必要性

島村さんが今回基礎練習に逃げたのは、一方で武内Pの失策でもある。武内Pは「笑顔」を褒めたり、「島村さんは必要だ」と漠然と応援するだけなのだ。
一方、本田未央が参加したポジティブパッションの秘密の花園の舞台はまだ続いていて、演出家の指導が入っている。
トライアドプリムスはカメラマンやマスタートレーナーに割と具体的なオーダーや指導を受けている。
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私も学生演劇時代に感じたのだが、役者個人として基礎練習や役作りはできるのだが、その方向性を束ねて指示を出す「リーダー」というか「演出家」「舞台監督」がいないと不安になるし力が出せない面もある。
また、僕が武道から逃げ出した時も価値を示すべき師匠が割と雑だったのを見て生真面目だった僕が勝手に怒った面もある。
10代後半の若者はがんばりたいんだが、どういう方向に頑張れば良いのかわからないし、それを方向付けてくれる指導者を必要としている。
で、本田未央と渋谷凛はソロでシンデレラプロジェクトの外に出たと言う割には、意外と指導者に恵まれたのかもしれない。もちろん、彼女たちがその場所を自分で勝ち取ったという面もあるのだが。
島村卯月さんは一見優等生なので、割とそつなくこなすし放任してもいいんじゃないか、小日向さんとのユニットも手堅くこなせると武内Pも思ったのでは?
小日向美穂とのユニットは三村かな子が代役でもOKだったし、今回小日向美穂は出てきてくれなかった。(ここで「私じゃなくてかな子ちゃんでも大丈夫なんだ」と言うのも割と「いい子」の自信を挫くんだが)
また、僕も高校の時の進路指導で「君は成績が良いからどの大学でも大丈夫でしょう」と担任から放任されて、どうしたらいいのかわからなくなった。
島村卯月さんとか「いい子」は失敗しないのは得意なんだが、自分でどこへ向かうか決めるのは苦手。
そこをプロデューサーが上手く方向づけたらいいと思うんだが。
どうも今回を見る限り、武内駿輔プロデューサーはスケジューリングなどをやっていて、実務的な「マネージャー」や「プランナー」であっても「演出家」とか「監督」などの創造的な人ではないと言う風に描かれた。なので、「笑顔」という漠然としたオーダーが演出指示のレベルになってなくて「笑うなんて誰だってできるもん!」という方向性の違いとか魅力の理解のずれのしわ寄せがアイドルの島村さんに行ってしまって泣かせた。
まあ、アニメのアイドルマスターは赤羽Pの765プロ編も「プロデューサーはあくまでサポートでアイドル同士で絆を高め合う」という方針がある。だが、前回のラストで「女の子同士の絆がアイドルの魅力って言うのは大人の男の勝手な理想じゃないの」という自己批判を始めた。
そして、今回は「笑顔の女の子はすてき」というアイドルの概念に対して「そんなの誰でもできる!」とまた自己批判をぶち込んできた。
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しかし、今回はそこで島村さんが感情を爆発させることで、「いい子」が「友達」の前で「恥をかく」というハードルをクリアできた。いい子は恥をかくことを恐れたり、その上恐れていることや現状に不満があることを知られると見捨てられるのではないかと言う不安がある。そう言う不安をしぶりんとちゃんみおには見せることができた島村さんは少し「いい子」から足を踏み出せたのかもしれない。
ここで今回の距離感が良いのは、しぶりんとちゃんみおがべったり付きっきりになるんじゃなくて「じゃあ、私たちは帰るから」と言って帰って、346プロに戻る一歩は島村さん自身に信じて任せている所。いい子を演じたがるメンヘラに近い人は依存心も強いが、「信頼はしているけど、進むのはあなたですよ」とさせるのはとてもメンタルヘルス的にも上手いやり方。
境界例と自己愛の障害―理解と治療にむけて (ライブラリ思春期の


  • 本当の友だちと現代の子供向けアニメについて

この話題はガンダム Gのレコンギスタの感想で書こうと思っていたネタだが、今回出してしまう。
涙ながらに言葉をぶつけ合った後に、本田未央が渋谷凛と島村卯月を抱きしめて「これからまた友達になろう」みたいなことを言うんだが。
Gレコのベルリとルインが死闘の果てに本当の友達になる(富野監督談)話にも近い。
で、そこで何がすごいのかと言うと、ニュージェネの3人やベルリとルインは家庭の社会的地位が違うという事。
現代の子どもを取り巻く環境はかなり変わっていて、ドラえもんやちびまるこちゃんみたいな「金持ちの子と庶民の子もとりあえず一緒になって遊ぶ」と言うのが難しい世の中なんじゃないのか?
経済格差が広がって、金持ちの子と貧しい子は隔てられているのでは?


bylines.news.yahoo.co.jp



なので、アニメでも「物凄い金持ち」キャラと「ほどほどに不愉快にならない程度の庶民」キャラに二極化していると思う。そして、金持ちや貧乏は「ギャグ」にはなるが、本質的な行動原理や性格設定としてドラマ化しているアニメは少ないのでは?「貧乏だから悪事を働く」というキャラは使い捨ての小悪人か、強調され過ぎた悲劇として描かれることが多いような。
今の子供は大人が想像する以上に肌で日常的で理不尽な経済格差を感じているはずだが、アニメはそれをくみ取れているのか?とも思う。
それをキャピタルガード養成学校の中でのクンタラとレイハントン家の二極化で強調することで、「大人社会の中で利用されて食い物にされながら上昇しようとするマスク」と「大人社会からホイホイ超兵器を与えられて祭り上げられるベルリ」の対照でアニメで経済格差から来る人間関係を描こうとしたのがGレコの「子どもに見せたい子どもアニメ観」だと思っている。


話をTHE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLSに戻すが、ニュージェネレーションズの3人の家族構成が地味に今回の3人のディスカッションの伏線になっている気がする。
島村卯月は一戸建てで割と裕福で自分のCDを親や親戚がたくさん買ってくれるくらい愛されているし金も持っている富裕層。だから、いい子である自分や愛されることが当たり前で、愛されたり価値を獲得するために自分で何をしていいのか逆に分からない。
渋谷凛は一人っ子だが自宅が花屋で親の仕事を手伝いながら、愛されるために社会性も必要だということ、親が自分だけを見ているわけではないというクールさを学んでいる。仕事をしている親を間近で見ているので価値を獲得するために自分から動くという事が分かっている。あと、犬飼ってる。
本田未央は一番貧乏そうなアパート暮らしの三人兄弟の真ん中なのだが、貧乏だという事をかわいそうがられないように、元気ぶる。本当は小心者だが上のこと下の子を見て「他人から評価される目線に晒されている自分」を意識している。だから6話で学校の友だちに恥をかいたらメンタルが折れる。だが今回は演技の皮が剥がれて泣く島村卯月と、本心を見せろと激昂する渋谷凛の間を取り持つことができた。
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そんな風に、生まれ育ちの違いから違う性格になっているし、ある意味経済格差のバックボーンが性格に反映されているかもしれない3人が互いをぶつけ合って「私たちさ、もっかい友達になろうよ!今から!」と関係を再構築していくのは、美しい。生活感がバックボーンとしてある上でちゃんと物語を動かす作りにしているのは上手い描写。
島村さんもプロジェクトにめっちゃ迷惑をかけた上に友達の前で大泣きして大恥をかいたので、逆に恥を恐れない強さを得たのかもしれない。僕は恥をかいたまま戻れなかったので、そこは島村さんとは違うし、戻った島村さんは強いと思う。

  1. 追記

「私たちさ、もっかい友達になろうよ!今から!」→「じゃあ帰るね」と言って別れるのはしぶりんとちゃんみおが冷たいって言う声をネットで見たけど、逆にあの二人が島村さんの自宅やレッスンスタジオ(荷物が置いてある)までついて行って、泣き顔を大人に見つかるのは彼女たちの恥の上塗りになるからやりたくなかったって言う距離感なのかなあ。あくまで、あの会話は三人だけの話にするって言う。


さて、そういう経済とか才能とか立場の壁が取られて友達になって、でも友達は友達でしかないので卯月はやっぱり自分で踏み出そう、と言う感じで346プロに戻る島村さんのところで、今回は引く。
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そして、来週からは特別篇になります…。うわああああああああああ。
いや、作画がんばって!課金をしても時間は買えない…。
でも、声優さんや作り手の特別篇を見たら、それはそれでCDとかの課金煽りになるかもしれないので良いかもしれないんですが…。


まあ、その。
「自分が演技してることと、これまでは友達ごっこでしかなかったとバラされた」島村卯月、でも「本当の笑顔が良かった」と渋谷凛に褒められて「もう一回友達になろう」と本田未央に後押しされた島村卯月さんがどこへ向かって歩くのか、どんな気持ちで再び舞踏会に参加するのか。そういう過程を見守りたいですね。
エンディングで島村さんがいないのに戻ることを信じてダンスレッスンをするちゃんみおとしぶりんが美しかった。


しかし、星を信じるだけのプロデューサーは道を示さないのか。そして、まだ彼の過去は明らかになっていない。


次回、「裸足の少女」ですからね。ウテナじゃん。
オープニングで少女が下着から軍服に着替える所で、シンデレラガールズ少女革命ウテナの影響があると思うんですが。王子様に守られるお姫様よりアイドルになりたいって話なので、ではカボチャの馬車の車輪とか魔法使いのプロデューサーはどうするんですかっていう。
765プロの赤羽根Pは「女子校の男性先生」というスタンスだったが、シンデレラガールズはそのタイトルの通り「魔法をかけて」あげるプロデューサーとシンデレラたちの関係の寓意性が増している。
だが、現代の女の子は「貴族の女の子が一回没落するけど正しく王子様に見つけられてお姫様に成る」というシンデレラストーリーは似合わない。王子様に見初められて幸せになるだけの女の子より自分で踏み出すアイドル!
じゃあ、そこでプロデューサーはどうなるの?薔薇の花婿になって消えていくのか?さーて、シンデレラの舞踏会のライブをして楽しい最終回になるだろうという事はほぼ確定しているけど、感情の面でそれぞれがどういう決着を迎えるかは割と謎。
割と好きなアニメになったので、見守りたいですね。あと26話は放送されないので、円盤を買おうと思います。G4Uはプレイ環境が無いので…とりあえずデレステをします。
アイドルマスターシンデレラガールズスターライトステージはニュージェネレーションズ以外のアイドルもどんなバックボーンで何でアイドルを志望したのかって言う個人シナリオが描かれていて、かなりイケてるので、みんなレッツプレイ!
あと、個人アイドルのCDドラマも聞きごたえがあるし、音ゲーになったのでこれを機にみんな買うといいよ。
THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 015 本田未央


あと、本当にスタッフさんとアニメーターさんと声優さんがんばって・・・。300円ガチャ1回が動画1枚になるんや…。


第23話 Glass Slippers. 脚本:土屋理敬 絵コンテ:舛成孝二 演出:益山亮二 作画監督:古橋聡 総作画監督松尾祐輔


今回の脚本の土谷さんはKAIKANフレーズ、シンデレラボーイ、きらりん☆レボリューション、プリパラのシリーズ構成なので、すごくアイドル性がある。
硝子の靴がサブタイトルだけど、没落したシンデレラを探しに来てガラスの靴を履かせてくれるのはしぶりんとちゃんみおっていう事か…。プロデューサーはやっぱり王子様じゃない?