玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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若いアニメオタクが、まず富野由悠季作品を見るべき理由


 熱風という雑誌で富野由悠季監督が高畑勲監督についての追憶を語るインタビューが載っている。


 僕も大学時代に不登校になったのだが、自分の通っている大学の近くの京都精華大学の情報館でタダでガンダムやダンバインやブレンパワードなど富野由悠季作品を始めとしたアニメや映画が見れたので、復学するために1日の授業を我慢したら1話アニメを見てから帰る、という習慣をつけて登校拒否を克服したという経緯がある。(むしろダブルスクール)
 結局、大学で学んだ分子工学の仕事には就けなくて、アニメ語りブログ無職になっているので、大学時代はアニメを見ていたほうが身になっている。


 僕はうつ病だが、富野由悠季監督の作品を見ると元気になる。また、富野由悠季監督もうつ病を経験しているのでその点でも元気になれる。黒富野と言われるような人がたくさん死ぬ作品でも、死ぬまえに命の輝きを見せるので見てて元気が出る。(僕は富野監督ほど、うつ病を支えてくれる家族には恵まれなかったが、脳内妹はいる)


 そういう僕の20年近く前の個人史はともかく、富野由悠季作品に興味を持つと、オタクとしての幅が広がる。


 なので、これからオタクとしてやっていこうと思っている若い人は富野作品を見るべきだと思う。僕自身がそうだったのだけど、富野監督はいろんなクリエイターと仕事をしているので、オタクとしての興味の枝分かれの幹になる。



 富野監督は大卒新卒で手塚治虫先生の虫プロに就職した。その後、辞めて半年くらいCM制作会社で働いたあと、フリーの演出家としていろいろなクリエイターやスタジオで絵コンテなどを書く仕事をした。
 詳しくは富野由悠季全仕事(1999年ころ発行)と、エッセイ「だから僕は」を読んでください。
富野由悠季 全仕事 (キネマ旬報ムック)
だから僕は…―ガンダムへの道 (角川スニーカー文庫)

  • 様々なクリエイターのハブとしての富野由悠季

 手塚治虫先生は言わずとしれた漫画の神様だ。なので、ガンダムみたいな、現在すごいメジャーコンテンツになってしまったものを生み出した富野由悠季監督の原点として鉄腕アトムを見たり、手塚治虫先生の漫画を読んでもいい。これだけでかなりの沼である。
 虫プロでは手塚治虫先生の原作をアニメ化した「どろろ」という名作がある。これは21世紀になってからも何度もリメイクされている。
 その総監督は杉井ギサブロー監督。各話の絵コンテ、演出では高橋良輔、出崎統などが名を連ねている。
 杉井ギサブロー監督は名作「タッチ」、「銀河鉄道の夜」の監督である。
 高橋良輔監督は富野由悠季監督と同時並行して、「太陽の牙ダグラム」や「装甲騎兵ボトムズ」などの80年代サンライズロボットアニメの名作群を監督した。
 出崎統監督は富野由悠季監督が認める天才であり、「あしたのジョー」「ベルサイユのばら」「ブラック・ジャック」などの硬派なアニメを作った。同時に「ガンバの冒険」や「劇場版ハム太郎」などの可愛い作品や「劇場版AIR」「劇場版CLANNAD」などの萌え系作品も手掛けている。出崎統監督と富野監督は絵コンテの書き方について相談しあったり、出崎統監督の葬式に行くくらいの付き合いだったそうだ。「あしたのジョー」の絵コンテも富野監督がたくさん書いている。
 また、富野由悠季監督の虫プロでの同輩には、りんたろう監督もいて、ここから「銀河鉄道999」に接続できる。同じ松本零士作品の「宇宙戦艦ヤマト」のTV版で富野監督も1話だけ絵コンテを書いた。
 「宇宙戦艦ヤマト」を作ったプロデューサーの西崎義展Pの元で、富野監督は初監督作品で手塚治虫原作の「海のトリトン」を作って監督デビューした。
 付け加えると、現在リメイク企画が長期進行中の宇宙戦艦ヤマトシリーズの脚本の福井晴敏氏も富野由悠季監督によって「∀ガンダム」の小説版執筆者として起用されて、アニメ界にデビューして「機動戦士ガンダムユニコーン」などをヒットさせた。
 リメイク版宇宙戦艦ヤマトのキャラクターデザイナーの結城信輝氏やアニメ版「閃光のハサウェイ」の監督の村瀬修功氏も若き日に富野由悠季監督のもとでアニメーターの仕事をしていたことがある。
 アニメーターと言えば機動戦士ガンダムのキャラクターデザイナーの安彦良和先生は外せないし、80年代アニメのエースだったビーボォーの湖川友謙さんや北爪宏幸さんも見過ごせない。
 更には富野由悠季監督の抜擢により重戦機エルガイムのメカ・キャラクターデザインを手掛けた永野護さんの「ファイブスター物語」という壮大な沼にもハマることができる。
ファイブスター物語 16


 虫プロ系人脈だけでも富野由悠季監督の関係者はもっといるのだが。
 サンライズ系でいうと「機動戦士ガンダム」の脚本を書いた星山博之さんがシリーズ構成を務めた「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」では監督が後に「機動戦士ガンダムSEED」を務める福田己津央監督だったり、キャラクターデザインが後に「ブレンパワード」を務めるいのまたむつみさんだったりする。サイバーフォーミュラの最初の方のオープニングの演出を富野監督が手掛けたことも有名。
 また、80年代の富野アニメの演出を務めて「魔神英雄伝ワタル」「ママは小学4年生」などをヒットさせた井内秀治監督もいる。井内監督の元で修行を積んだ菱田正和監督はプリティーリズムシリーズで有名だが、「Gのレコンギスタ」にも演出家として参加している。
 「Gのレコンギスタ」の各話演出家としては「革命機ヴァルヴレイヴ」の松尾衝監督、「海がきこえる」の望月智充監督、「進撃の巨人」の荒木哲郎監督も挙げられる。彼らの絵コンテは富野監督によって修正されているが、劇場版GのレコンギスタのBDの特典で見ることができる。
劇場版『Gのレコンギスタ II』「ベルリ 撃進」 (特装限定版) [Blu-ray]


  • スタジオぬえ関係

 「機動戦士ガンダム」のモビルスーツのデザイン原案がスタジオぬえによる「宇宙の戦士」のパワードスーツから来ているというのも有名な話だ。
 ぬえに所属していた「マクロスシリーズ」で有名な河森正治監督もガンダムのファンで同人誌に寄稿していた。
 マクロスシリーズのキャラクターデザインで有名な美樹本晴彦氏も富野由悠季監督のガンダムの小説版のカバーや挿絵を書いていることでも有名。
 スタジオぬえの二代目社長の松崎健一氏が機動戦士ガンダムの各話脚本を書いただけでなく、ミノフスキー粒子のSF設定などを考案したというのも有名。松崎健一氏は「超時空要塞マクロス」の脚本、シリーズ構成も手掛けた。
マクロスΔ キャラクターデザインワークス


 ぬえの人といえば宮武一貴さんによる「聖戦士ダンバイン」のオーラバトラーというエポックメイキングなデザインも見逃せない。

  • 少女漫画沼

 また、機動戦士ガンダムのニュータイプとかは当時人気だった「地球へ…」などのエスパー少女漫画の影響もある。
 後に安彦良和先生は「風と木の詩」の総監督をしている。
風と木の詩 (1)


  • 逆襲のシャア友の会

 同人誌と言えば「新世紀エヴァンゲリオン」の庵野秀明監督が発起人となった1993年の伝説の同人誌「逆襲のシャア友の会」であるが。

 本を持っている人に確認してもらったのだが、奥付には、発行人・責任編集/庵野秀明、編集/小黒祐一郎、小川びいとあるそうだ。小川びいというのは「WEBアニメスタイル」スタッフのB君だ。内容としては、寄稿もあったがインタビューが中心だった。参加していただいたのは、會川昇、あさりよしとお、幾原邦彦、出渕裕、井上伸一郎、内田健二、大月俊倫、押井守、岸川靖、北爪宏幸、ことぶきつかさ、此路あゆみ、サムシング吉松、鈴木敏夫、鶴田謙二、永島収、早見祐司、ふくやまけいこ、藤田幸久、美樹本晴彦、むっちりむうにい、山賀博之、結城信輝、ゆうきまさみだそうだ。『逆襲のシャア』に参加したスタッフを含めた業界の色々な方に『逆襲のシャア』と富野由悠季監督について語ってもらったり、描いてもらったりしたわけだ。勿論、富野監督自身にも登場していただいている。僕にとっては「逆襲のシャア友の会」は、アニメージュの富野イズム特集でやった「それぞれの視点で8人が語る富野イズム」のパワーアップバージョンだった。
WEBアニメスタイル | アニメ様365日 第458回 「逆襲のシャア友の会」(完結編)

 錚々たる面々が逆襲のシャアについて語っている。それぞれに富野監督に関係している。富野監督と一緒に仕事をした人もいれば、富野作品に影響されたクリエイターもいる。これだけの人に影響をしている富野作品はすごいわけで、幾原邦彦監督の「美少女戦士セーラームーンR」「少女革命ウテナ」などの沼やGAINAX沼や押井守沼、OVA沼、鶴田謙二漫画沼など、様々な沼に誘導される。
機動戦士ガンダム逆襲のシャア 4KリマスターBOX(4K ULTRA HD Blu-ray&Blu-ray Disc 2枚組) (特装限定版)


  • アナザーガンダム

 特に90年代のガンダムのOVAやG,W,Xも富野監督と関係が深い。今川泰宏監督からジャイアントロボ(横山光輝)沼やゲッターロボ(石川賢)沼に入れる。Xの高松信司監督からは銀魂などに接続できる。
 サイバーフォーミュラから来ている福田己津央監督もそうだし、機動戦士ガンダム00の水島精二監督から「夏色キセキを経由してのアイカツ!沼」、「ガールズアンドパンツァー」(水島努監督の方)などの沼に行ける。黒田洋介沼もある。
 脚本家と言えば「∀ガンダム」で脚本家デビューして「オーバーマンキングゲイナー」のシリーズ構成を手がけた大河内一楼さんから「コードギアス」沼に行ける。
 ∀ガンダムとキングゲイナーとコードギアスのデザインを手がけた安田朗さんや西村キヌさんからCAPCOM格ゲー沼にも続いている。
 「ガンダムAGE」はそれほど富野監督とは関係がないが、レベルファイブにもつながっているし、「Gのレコンギスタ」の企画当初は富野監督と岡田麿里さんの共同脚本だったが別れて、岡田麿里さんは「機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ」を執筆した。なので、岡田麿里脚本アニメにもつながる。
 その他にも、サンライズで富野監督の影響を受けた人は多い。ガンダムのパロディが多い「ケロロ軍曹」の佐藤順一監督も「機動戦士Zガンダム」の演出をしている。

  • 世界名作劇場

 冒頭で富野監督が「業界の中で手塚治虫、高畑勲、宮崎駿と関わったのは僕」と発言しているのを引用したが。富野由悠季監督は世界名作劇場という20世紀に長く続いたシリーズの絵コンテも書いていた。「未来少年コナン」の絵コンテも一応書いた。
 なので、世界のジブリとも富野由悠季監督は関係している。
マシュウ・カスバート驚く

  • コンテ1000本切り時代

 多すぎるので書かないけど、「富野由悠季全仕事」を見てもらえば分かるが、富野監督は監督デビューする前から、虫プロ系だけでなく、世界名作劇場の日本アニメーションやタツノコプロでも演出家の仕事をしていた。
 業界で「絵コンテ千本切り」と揶揄されるほど、かなり無節操に大量に仕事をしたので、ジャンルもSFや世界名作劇場だけでなく「ど根性ガエル」や「いなかっぺ大将」、「オバケのQ太郎」などギャグや日常ものや「みなしごハッチ」などのファンタジーや「モンシェリココ」などの少女漫画、「巨人の星」などのスポーツものやウルトラマンなど、多岐にわたる。そういうわけで、過去の70年代のアニメの名作を見ているとかなりの確率で富野演出に当たることが多い。
 富野監督の監督作品第二作の「勇者ライディーン」は後半は大人の事情で降板して長浜忠夫監督に監督の座を譲ることになったが、その下で演出家として働き、最終回の演出をやり遂げた。
 長浜忠夫監督はその後「長浜忠夫ロマンシリーズ」とも言われるロボットアニメシリーズを大ヒットさせて、富野由悠季監督もその下で演出をしてロボットアニメの作法を研究した。
 また、長浜忠夫監督は「ベルサイユのばら」の前半の監督をしたが、後半は降板して出崎統監督に譲った。そこから、「少女革命ウテナ」へのラインもできる。
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  • まとめ

 とりあえず、富野監督は若い頃はめちゃくちゃ色んな会社で働いて、現在の大監督と言われるスタジオジブリの宮崎駿、高畑勲監督とも関わった。長浜忠夫監督や西崎義展プロデューサーなど亡くなったビッグネームとも関わった。
 監督作品を手掛けるようになってからも後進の育成をしたり、多くのクリエイターに影響を及ぼした。


 そういうわけで、僕のオタクとしての視聴履歴の経験談でもあるが、「富野由悠季をスタート地点にすると、アニメ文化のかなりの部分に接続できる」ということが言いたい。


 もちろん、現在は若いクリエイターが出てきて富野監督とは関係ない作品も多いが。(京都アニメーションやシャフトも昔は富野アニメの仕上げなどをしていたが)
 今回の富野監督の発言を受けて、アニメ業界の人間関係を知るには、富野監督をとっかかりにするのもいいのではないかな、ということをちょっと書いてみました。
 

 最近は「オタクになりたい若者」という人達もいるらしい。手っ取り早くオタクになってアニメ業界の歴史と人脈を知るためには、富野由悠季作品を見るのがいいぞ!
gendai.ismedia.jp
 また、富野由悠季監督は実写の黒澤明監督、大島渚監督、スタンリー・キューブリック監督にも影響を受けているので、実写に進むのもいいぞ!


※追記
 バイダイのおもちゃのデザイナーでサイコガンダムやバイク戦艦の件で富野監督と揉めた村上克司さんは宇宙刑事ギャバンなどのメタルヒーローシリーズのデザイナーもしている。なので、特撮に進むこともできる。
 村上克司さんは富野監督と揉めただけではなく、∀ガンダムのデザインが難航していたシド・ミード氏に対して盟友として「俺もゴッドシグマみたいに髭のあるロボットをデザインした」と後押ししたという逸話もある。
第50話 黄金の秋
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  • ほしい物リスト。

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