玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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ベルリの殺人考察第3部第17話 人は分かり合えるのか?そしてクンパ

 劇場版が間近に迫って本当に焦っているけど、やっていきます。そして、今回はいわゆる「お掃除回」なのでベルリは殺人をしていないので殺人考察としてはさらっと流したい所。
 ですが、「Gレコの2周目の精査した感想」としてはちょっと言いたいこともあるので、まあ、お付き合い頂きたい。(その結果として2万7千文字も書いてしまった)
 本放送の時の感想はこちら
nuryouguda.hatenablog.com


 前回の殺人考察はこちら
nuryouguda.hatenablog.com
nuryouguda.hatenablog.com


 次回
nuryouguda.hatenablog.com

 今回のガンダム Gのレコンギスタ第17話「アイーダの決断」は文字通りアイーダが重要視されている。ですが、アイーダだけでなく、他のキャラクターも多く描かれている。なので、ベルリ・ゼナムの行動の考察の他に、群像劇パートとして分けて論じていきたい。特にBパートはカット割りが短くて速く、群像劇っぽさがある。しかし、カメラがあっちこっちに行ってシャッフルされた感じもするので、多少わかりにくい。


  • ベルリの行動

 前回、アイーダさんが自分の姉だとバレてキレて、ガランデンの入港を警備していたザックス部隊に単身で喧嘩を売りに行って1人は確実に殺して、1分未満でザックス部隊を制圧して撤退させたベルリだが。
 前回のあらすじについて、


 否認気味で、自分一人でやっているという意識だった。ザックス部隊と戦ったことについては「僕が何をやったのか(よくおぼえていない)」というキレた供述をしている。


 で、今回の冒頭はトワサンガのシラノ-5というスペース・コロニーの南の側のリングに穴が空いて、そこから土砂が流出という事故が16話と17話の間に起きて、それに対するガレキ掃除のボランティアと言う名目でメガファウナがシラノ-5の港から抜け出して出港するというもの。

 (シラノ-5の亀裂の他に、複数のネオドゥの出動と、キャピタル・アーミィ(おそらくクンパ大佐)の赤いランチ小型宇宙艇が見える)

 とても呑気なBGMが流れているが大災害だろう。しかし、そこに主人公のベルリは全く関係していない。

 アイーダさんが陣頭指揮をとって、


 G-セルフに乗っているラライヤと共同して、


 ケルベスやリンゴに女性たちが指示を飛ばして働かせる。
 本放送の時の感想でも、女性が政治(土木事業などは政治の根幹である)をやって、弟のベルリが武を司るというような、卑弥呼的な感じだということは述べた。
 それにしても、リンゴはトワサンガに帰ってこれたのに、メガファウナから逃げようという素振りもなくメガファウナの一員になってる。ラライヤが好きだからって言うだけなんだが。天気の子の帆高と同じような狂気を持っているのかもしれない。地元のトワサンガでの地球に行ける人間と行けない人間の憎み合いなどを見ていて、リンゴも地元に反感を持っていた青年なのかもしれない。しかし、美形なのに彼女とか友達はいないのか・・・。親は?
 Gレコはベルリとアイーダとクリム以外の親子関係は殆ど語られないなあ。



 そして、前回キレ散らかしたベルリだが、今回はみんなが災害処理のために働いているのに、眠って登場。シラノ-5に地割れが起きたことも気づいていない様子。それでいいのか、主人公。
 本放送の時の感想では、ベルリがキレて危険なので、メガファウナのみんなは腫れ物に触るようにほっといて、G-セルフにベルリが乗って勝手なことをしないようにラライヤを乗せたのでは?という風に考えた。
 前回はアイーダさんが姉だとバレる回で、細かく見るとベルリが一杯一杯になってキレるのも仕方がないと思える感じだったが。キレ続けるのも体力を使うし、「寝逃げ」ということになったのだろう。
 また、富野監督やあきまんが言っていたが、G-セルフとベルリが最強すぎてベルリが活躍しすぎると話が終わるので、なるべくG-セルフにベルリを乗せないように工夫した、らしい。


 また、ベルリが登場シーンで寝逃げしているのは第15話でもやった。
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 第15話で寝逃げする前の第14話では、トワサンガのドレット艦隊のMSモランを数えながら狙撃して殺しまくった後にリンゴを捕虜にして、殺した相手も人間だったと突きつけられてしんどいのに、アイーダさんに戦士をやれと言われてストレスがたまった。
 主人公なのに寝逃げしちゃうとか、ちょっと情けないのだが、逆に言えばそれだけベルリはストレスを溜めてしんどい思いをしているということ。ファーストのアムロみたいにジオンの基地を母親との揉め事の八つ当たりで殲滅して憂さ晴らしができない。そもそも、ベルリは人殺しが好きな性格ではないし、一年戦争リギルド・センチュリーでは戦時中のレベルが違う。ジオンは人類の半分とアムロの地元の人を殺しているし。アムロ・レイランバ・ラルに対して強い戦士になりたいと思った。ベルリはモビルスーツパイロットの能力としては最初からカンストしていて、強くなりたいというより、強さを正しく使いたいのに、周りの状況も混乱しているので、うまく使えないという葛藤がある。
 Zガンダムカミーユは恋愛関係になった女性たちを次々と殺害してしまったので、ベルリとはまた違う葛藤なのだが、カミーユも殺した無名のパイロットを追悼する祭壇を無宗教で作るような生真面目さがあって、壊れた。
 人殺しから逃げられない宿命のパイロットの、殺しに対する葛藤のバリエーションが富野アニメではそれぞれ違っていて、職人技だと感じる。


 また、デレンセン大尉を倒すという、ベルリにとって人生最大のミステイク(逆に言うとその後の殺人はそれほどでもないのか?)をしたあとの第7話でも、今回の第17話と同様に、ベルリの先にラライヤがG-セルフに乗るという展開があった。第7話のベルリはメガファウナで言われた作業をこなしつつ、積極性を欠いた状態で出遅れていた。そこで、クリム・ニックがラライヤをG-セルフに乗せたのだが。
 そこで、ラライヤがピンチになって、それをベルリが乗り換えて助けるということが、彼にとってリハビリになっていたと見えた。

nuryouguda.hatenablog.com

 で、ベルリはデレンセンを殺したことで洋画のランボータクシードライバーのような帰還兵、新兵の病気にかかったのではないか?ファーストガンダムアムロ・レイククルス・ドアンランバ・ラル達に対する負けん気や戦わなければ生き残れない生存本能でそれを乗り越えたが。Gレコのアプローチはちょっと変わっていて、帰還兵のPTSDを負ってある意味精神障害になったベルリの復調に関連するのが「自分より弱い幼児退行した少女を助けること」。
 ラライヤは端的に言って金魚のフンだし精神障害者だし役立たずなのだが。(まあ、後天的、一時的な精神や記憶の混乱なので生粋の障碍者でもないのだが)
 そういう弱者を助けることができる自分を発見することで、ベルリは海賊のこわもての大人たちに命令されてロボットを操縦して組織に貢献することよりも、弱い女の子を助けられた、と言うことで精神的な落ち込みから這い上がれたのではないだろうか?
 これはある意味訓話なのだが。富野監督が演出で参加したアイドルアニメ「さすらいの太陽」(ウルトラマンオーブじゃない方)でも、主人公が自分の歌で精神障碍者を元気づけることができて逆に自信を取り戻す話があった。

 人間は社会的な動物なので、スタンドアローンで性能を発揮するよりも、集団の中で役割を持つことでさらに大きな働きをなすし、それを本能的に喜びと感じるように進化の過程で脳がそうなった。(もちろん発達が障害している人もいる)
 ベルリは助けられて復調したのではなく、助けることができたから復調ができた。そういう意味では、障碍者のラライヤも役に立つのかもしれない。

 そういう訳で、今回も「ベルリのリハビリの回」なのですが。ベルリがしんどくなってリハビリをする頻度が高まっているので、ベルリはどんどんしんどくなっている。元気のGだが、リアルは地獄なので、ベルリはギリギリのところで元気をなくしたり、何とか寝たりして元気を補充したりリハビリで自己肯定感を持ち直したりして、苦労していく。
 そんなベルリは土砂が流れ出す音のうるささで目を覚ますが、注意を惹かれたのは土砂災害ではなく、レジスタンスの3人がネオドゥビームライフルを運び込んだ所。やはり、ベルリは根っこの部分でメカオタクだ。



 民生品の果物の木箱に偽装してビームライフルを持ち込むレジスタンス、割りと犯罪に近い。(細かいところだが、大きな箱を載せたエレベーターが降りるカット尻でフラミニアさんが笑顔になる芝居が細かくていい)
 また、ネオドゥも今回の災害で複数出動していたのをドサクサに盗んだのではないか?という想像もできる。
 そういうレイハントン家の家臣たちも犯罪者すれすれ(まあ、反政権レジスタンス)なのだが、メガファウナが出港したことをベルリが問うと、出港しなければ奴隷労働をさせられただろう、ということも聞かされる。

 真偽は定かではないが、レイハントンの土地のあるシラノ-5の南のリングが差別されてちゃんと整備がされていなかったという事を鑑みるに、トワサンガの政権から土砂流出事故にかこつけて難癖をつけられてレイハントンに連なる彼らが奴隷にされることはありうることだ。(だが、そんな風に政権やドレット家と敵対している彼らが作ったYG-111とラライヤが地球への事前偵察に採用されたのは謎なのだが。都合のいい使い捨てのコマとして扱われたのだろうか。実際、ラライヤは地球に降りてすぐに遭難してキャピタル・アーミィに捕縛されて、G-セルフアメリア軍に奪取されたので、ラライヤの地球への事前偵察作戦もかなり杜撰なものだったと想像できる)



 ネオドゥなど、調達物資の帳簿データの整理を任されているノレド・ナグだが、ベルリの頭痛を心配してくれる。やさしい。ベルリは「今はなんともない」とそっけなく答える。しかし、アイーダさんが姉になって、ラライヤがケルベスやリンゴにモテ始めたので、ここでノレドの優しさにつけ込んで恋愛関係になって頼っても良さそうなものだったのだが。ベルリは生真面目なのか、ノレドに傷を舐めてもらうようなことはしない。それともノレドのことがそんなに好きじゃないのか・・・。まあ、ノレドも二人の名前を合成したペットロボットを送りつけるような重い女だけど、チアリーディング部だし肉体は健やかだし、作画の補正はあるにしてもかわいいので、ノレドと恋愛してもいいのに・・・。やっぱりベルリはアイーダさんを引きずっているんだなあ。


 それで、ベルリが前回のラストよりもいくぶん穏便にゆっくりとパイロットスーツに着替えつつ、出撃の準備のために弁当を食べていると、アイーダさんがロルッカさんとクンパ・ルシータ大佐について揉める。



 アイーダさんの問について、しらを切ろうとするロルッカさん。レイハントン家には忠義があるが、後継者のアイーダとベルリ本人にはあまり忠誠心がないのかもしれない。(フラミニアさんに「全部教えてしまえばいいんです」と言われてもロルッカさんは「時期尚早だ」と断った)
 まだ出会って数日だろうし。でも、見つけられた時は涙を流して喜んだ。しかし、レイハントン家の遺児を利用して自分たちがドレット家への恨みを晴らすことのほうが重要なのだろうか?


 そこにベルリがズバズバと切り込んでくる。

 ベルリはメガファウナがニックスペースだったことを調べてグシオン・スルガン総監を糾弾したこともあるし、大人が隠そうとしていることを行動力と推理で暴くのも好き。ベルリは正しいことをするのが好きだし、正解を導き出すのも好き。優等生だ。


 前回、ベルリはガランデンの動きの理由がわからなかったことも含めて怒って暴走したのだが、自分の推理でガランデンの動きが読めたと思うと、嬉しそうにドヤ顔する。わからないことをわからないままにするのが嫌い。自分の目で確かめに行くアイーダさんの弟だし、世界の真実には興味がある。


 前回はベルリはガランデンの動きがおかしいというより変だと混乱して戦闘してしまったが、クンパ大佐の素性を推理してレジスタンスの二人を言いくるめると満足気になる。
(ところで、ここでメガファウナのクルーがレジスタンスの二人を睨みつけているが、この二人のご老人もレジスタンスの部下を連れずにメガファウナに入って、不安感はないのだろうか?自分たちがメガファウナの主導権を取れると思っていたのだろうか?フラミニアさんは結局多重スパイだったし・・・。一応トワサンガに居る同志から物資を調達するなどのやりとりはあるが、次回は惑星間航行に・・・)


 で、


 ロルッカとミラジを糾弾するのもそこそこに、G-セルフガランデンにも狙われているということで意見が一致する。そこで、ベルリは前回のイライラのリハビリが多少達成されたのか、G-セルフに乗って、ラライヤをネオドゥに乗せて、出動することを決意する。G-セルフを狙われているけど、メガファウナの奥に引っ込めているのではなく、打って出るベルリ。

 レイハントン家の家臣二人をメガファウナに乗せたから、アイーダさんとしてはトワサンガからはもう得るものがないと思ったのか、逃げ出す事を考える。

 ベルリがここでわんぱくに扉の枠を蹴って無重力空間を泳ぐの、「元気を取り戻した」という表現だろうか?個性的でいい芝居だ。

 多重スパイだけど、動いていくレイハントンの後継者を見るフラミニアさんは何を思うのか・・・。
(ここでAパートは終わる)


(Bパートはゴミ掃除中心。)
 細かいところだが

 宇宙戦艦メガファウナがロケットのプラズマノズルを調節して砂を吸い込まないようにするっていうのが地味にリアルでいいですね。ステアがウィンクするのも芝居の気が利いていてかわいい。


 キャラクターごとに後述するが、ラライヤのネオドゥが暴走してマスク部隊とぶつかったのを見て、突発的に開始された戦闘空域にベルリのG-セルフが行く。ゴミ掃除をしに来たアメリアの天才パイロットのクリムとミック・ジャックも居る。

 そこで、ベルリは今回は人殺しをせずに済んで、ゴミ掃除という平和的な活動にG-セルフを使えたので、前回に殺人をしてしまってイライラしたのが多少改善したと思う。
 今回は事故で手一杯ということもあるだろうが、平和的活動をするG-セルフを奪おうという人が少なく、みんなで強調できた。
 それでも次回はG-セルフ争奪戦になるし、終盤では今回わかりあったかに見えたメンバーで全面的な殺し合いになってしまうので、Gレコは簡単に人が分かり合えるアニメではないのですが。

 ゴミ掃除にかこつけてメガファウナを出港させた意味をラライヤに問われて、「モロイの港に居っぱなしだと、自由にならないでしょう」と言うアイーダさん。実際にモロイの港に居るとドレット軍に捕縛されるかも、ということはトワサンガレジスタンスの人も言っていたので、結果的に正しい。
 また、艦長ではなくアイーダさんが出港の決定をしたということで、アイーダさんがこの船のリーダーだと示されている。ドニエル艦長は序盤でもアイーダさんに「姫様になるお方です」と言っているし、終盤でも艦隊指揮を継げと言っている。ドニエル艦長はアイーダさんを育てたい気持ちがあるようだ。単に世襲制というだけではなく。
 ドニエル艦長の内面が語られることは少ないのだが、海賊部隊というアメリア軍のなかでの非正規の軍艦の艦長をさせられつつ正規軍の総監の娘の世話もしているドニエル艦長。うーん。なかなかよくわからない人物だ。でも、一応行動は機敏で部下にも慕われているし、ユニコーンガンダムガランシェール艦長ほどトラウマに動かされているわけでもないので、安定した大人なんだろうな。でも、アメリア大統領とその息子のクリム・ニックには反感を持っている様子。


 ゴミ掃除を切り上げてメガファウナに戻ったアイーダさんは、スコード教御神体カシーバ・ミコシを見て、ロルッカさんから説明を受ける。


 あとでアイーダさんはカシーバ・ミコシについて権威付けだと批判的に言うが、自分たちに土砂掃除をさせて、文句をいうだけのカシーバ・ミコシに反感を抱いたのだろうか。しかし、その運営のヘルメス財団アイーダとベルリの両親のレイハントン家が密接に関わっていた。


(Bパート)
 ラライヤのネオドゥの暴走をきっかけにした、ラライヤとリンゴと、マスク部隊と、クリムとミックの混戦を見て、メガファウナの防衛をしているアイーダさんは悩む。

 ラライヤのやっていることも偶発的戦闘なので、役割を果たしているとはいえないのだが・・・。今回はノレドも自分の進路に悩んでいるので、そういう回なのかな。



 ベルリが素早く掃除をしているのを見て、やっぱり悩むアイーダさん。(細かいところだが、全方位モニターに頭を押し付けて、液晶パネルが歪んでる感じになっているのがナイス。視聴者の殆どが気づかないであろう部分で手間を惜しまないGレコ・・・。劇場版ではもっときれいになるのだろうか)

 今回のスタート時点では率先してガレキ掃除やメガファウナの出港指示などをしていて、がんばっていたアイーダさんだが、ベルリの働きを見て劣等感を抱いてしまう。いや、アイーダさんはモビルスーツは下手だけど、カリスマ性とか政治的な言葉遣いはベルリよりできてると思うのだが・・・。やっぱりガンダムなのでモビルスーツが上手いやつが偉いという風潮があるのか?



Bパートの開始。ラライヤはG-セルフから乗り換えてネオドゥでゴミ掃除に再出発する。

(ところで、今回は何故かメガファウナに載ってるレックスノーがレクテンに成っている事が多い。レックスノーが装備を取り外したらレクテンになれるのかは謎。流石にケルベスはレックスノーだけど(キャノンは取り外している))



 記憶を取り戻したラライヤさんは真面目キャラになったが、千年くらい前に作られて汎用性も信頼性も高い量産機のネオドゥに乗って、暴走する。

 錐揉み飛行をしたあと、ゴミよけの隕石型風船にぶつかって跳ねて、偶然、バララ・ペオールが操縦の練習をしていたビフロンにぶち当たって、ゴミ掃除のための叩きで叩いてしまう。いや、そうはならんやろ・・・。なっとるやろがい!
 マスク部隊はビフロンの完熟飛行をしつつメガファウナ接触しようとしていたので、近づいていたのはわかるのだが・・・。
 マスクとバララにとってはこのネオドゥメガファウナに奪われたものかは知らないので、トワサンガモビルスーツが攻撃してきたと思って混乱する。

 整備に立ち会っていたと言い訳をするミラジさんに「ミスが有ったとは言っていない」とたしなめるロルッカ。千年前から基礎設計が安定しているネオドゥは信頼性のあるマシンだけど、拾ったりパクったりした機体を急に使うと・・・。という点でイデオン的な批評性がある。(まあ、最初の発進で加速しすぎただけで、その後は割りと普通に操作されているが)



 とりあえず、交渉する以前に殴られたというわけで話し合いもせずにバララはヨツデ・ユニフィケーション・アタックのビームダガーでラライヤのネオドゥを攻撃する。


 「そんなまやかし!」と、シールドでダガーを受けきり、はたきで殴りかかるラライヤさん。ラライヤさんは真面目だけど、自分の機体が先に暴走したのに、謝ったり弁解せずに戦闘に移る。えっ、いいの?
 ガレキ掃除という穏当な任務だったのに一気に修羅場になるの、人生に落とし穴がいっぱいある感じだし富野アニメっぽい。


 リンゴのモランの腕の中のグレネードランチャーの援護を受けつつ、ラライヤのネオドゥはビフロンの4本ビームダガーの連撃をシールドで受け切る。G-セルフの高性能シールドほどではなく、傷ついているが、なかなかに上手い防御。


 そして、カメラがグルングルン揺れながら、ラライヤさんが吠える。ラライヤさんは優等生気味なのに、一度熱くなったらカメラをグルングルン回すくらい暴走するのか。


 溶接機のビーム・ライフルをビフロンの頭にガンガン当てるが、それほど効果が無いみたいだ。出力が低い。バララちゃん、以前に射撃が下手なアイーダさんのG-アルケインにも直撃を食らったのに生きてる。回避は下手くそなのかもしれない。(ビフロンの組み立てが甘くて、コックピットでも基板の回路が壊れたりしているというハンデもある)ほんと、バララちゃんが途中で死んでたら終盤はまた変わってきただろうに、結構バララちゃんも運で生きてるな・・・。


 弱い溶接ビームを何度も直撃させたので調子に乗って、追い打ちをかけようとしたラライヤさんをベルリのG-セルフが止める。前回は暴走したG-セルフにラライヤさんが「まずいですよ!こんな戦闘力を示すなんて!」って怒ったのに、ラライヤさんも戦場の空気に飲まれたらやってしまう女性なのか・・・。今回は前回とベルリとラライヤの関係が逆転している。ラライヤは前回のベルリのように、自分の地元が災害にあってストレスになっていたのだろうか。


 各陣営総出の掃除が始まって、


 ついさっきまで暴走していていたラライヤさんがベルリとリンゴに指示を飛ばす。ここで微妙にG-セルフが速いという性能差をさりげなく描写するのがいいね。ラライヤさんはさっきまで暴走していたのに・・・。ロックパイの説教で頭が冷えたのだろうか。



 ネオドゥが暴走しているさなか、ネオドゥなどの搬入で疲れたのか、軍医のメディー・ススンと看護師のキラン・キムの診察を受けるノレド。というか、悩みのカウンセリング。メディー・ススンが持っている医療キットに漢字で「医」と書いてあるのがポイント。



 「ラライヤはネオドゥに乗って輝きだしているもの」とノレド。キラン・キムさんは「ラライヤさんが自立したんでさみしくなったのよ ね?」

 ちなみに、これは舌診と言って、舌の苔とか血流による粘膜の色で体全体の調子を見る、東洋医学の手法です。リギルド・センチュリーアメリア帝国にまで東洋医学漢方医学の知識は生き残っていたのか・・・。(ブレンパワードの鍼師の艦長とかな・・・)

 ロルッカさんたちに持ってきてもらう不足品のリストアップとか、雑用は色々あるとメディー・ススン先生は言うのだが。(結局、最後にはG-ルシファーに乗ってしまうし)Gレコはやっぱりロボット残虐ファイトアニメなので、普通の事務員よりモビルスーツで武勇を誇るのが偉い、という価値観なのかなあ・・・。(とか言いつつ、9話でパイロットのアイーダさんが情報収集のついでに家畜を買い付けたりもする・・・)
 あと、メガファウナは半分トワサンガから出港しかけているのにロルッカさんがまだ不足品を持ってきてくれるらしいので、トワサンガにもまだまだレジスタンスの組織的な内通者が居るんだろうなあ。(あんまり描かれないけど)



 看護師の勉強をしたいというノレドは、おそらくストレスで頭痛や睡眠過剰に成っているベルリを助けたいという素直な恋心があって、ラライヤへの嫉妬はそれほどでもないと思うのだが・・・。
 ここで歴史政治学をやれというのは少し唐突にも思えるが、Gレコの本の企画になったガンダムエース100号記念に載った富野監督の書いた小説の「はじめたいキャピタルGの物語」では、ノレドが通うセント・フラワー学園(のクンタラ)は出来が良い生徒が多いと書いてあった。なので、ノレドは婿探しをするチアリーディング部と言うだけでなく、もともとちゃんとした女子校で歴史政治学を専攻していたんじゃないかなあ。また、「はじめたいキャピタルGの物語」でもノレドはタブー破りの常習犯と書いてあったので、常識や慣習にとらわれず考える柔軟性を持っている子、ということなのだろうか。


 アメリア軍のサラマンドラを視察に訪れるマッシュナー・ヒューム司令。


 ロックパイの上司のマッシュナー司令はビフロンと2機のマックナイフにも土砂の掃除をさせられないのかと、アメリア軍のサラマンドラの艦長に問いただすが、キャピタル・アーミィは敵だと断られる。


 地球人の戦艦であるサラマンドラの視察をしつつ、土砂災害についてカシーバ・ミコシやクレッセントシップなど、ヘルメス財団からのクレームにも対応するマッシュナー司令は中間管理職。
 ヘルメス財団のことは、地球人は知らなくてもいいとマッシュナーは言うが、色々と中間管理職として突き上げを食らっているから説明が面倒くさくなったんだろうな。大変だ。

 クリム・ニックはマッシュナーからの土砂の掃除の命令を不服とする。


 その上、部下のロックパイアメリア軍のクリムとミック・ジャックと揉める。



 G-セルフの取り合いと、月での地球人とトワサンガ人の主導権争いが激化して、一触即発のようになる。
 そのクリムとミック・ジャックが出撃したあと、ちょっとホッとしたようにマッシュナーはロックパイにガレキ掃除をしろと言う。ロックパイは不服そうだが、従う。

 中間管理職の悲哀であるし、いろんな勢力が戦争直前の荒々しさで主導権を狙っているので、マッシュナーの苦労は凄い。


 で、ロックパイがBパートまでに色々とガレキ掃除のための機材を準備して来たら、地球人同士がメチャクチャ戦争していた。
 ロックパイメガファウナから見ると敵のパイロットなのだが、めっちゃ説教してくる。


 「ヘルメス財団を怒らせたらフォトン・バッテリーの配給がされなくなって地球上の電気は全て消えてお湯のシャワーなどは使えなくなる」という、すごく具体的な脅迫を繰り出してくる。

 Gレコは主人公と敵対している陣営は単純に悪い、ということはないのでわかりにくいのか?地球人の主人公よりも敵のほうが世界の仕組みに詳しくて(マッシュナー司令からの受け売りかもしれないけど)、道理について説教してくる。

 クレッセントシップとカシーバ・ミコシフォトン・バッテリー運搬船なので、石っころ一つぶつけるわけにはいかんのだ!!!地球人も掃除を手伝え!



 そこで、まず、あとから来たので今回の戦闘に参加していなくて比較的冷静だったベルリが掃除に前向きになる。ヘルメットを取るのは、戦闘ではないという自分への意思表示だろうか?前回のラストでキレ散らかしてヘルメットを雑にかぶっていたのとは対照的だ。
 やはり、ベルリは元々キャピタル・ガードの保守点検業務を志望していたので殺人に才能があるけど、殺人よりもこういうボランティアのほうが心が落ち着くのかも。
 ビーム・ライフルも(プラモデルでは再現できないけど)バックパックの背中にマウントして、非武装をアピールする。(前回はフルオートで乱射した挙句、ライフルを加熱させて爆発させたのだが、スペアは何個かあるのか)



 そこで、何度もドレット艦隊やガヴァン隊のMSを破壊してきたYG-111(G-セルフ)が来たことでロックパイは警戒して、ビーム・ソードの準備をするが・・・。G-セルフ武装を仕舞って、素直にロックパイが投げてよこした折りたたまれた網をラライヤとリンゴのMSとともに広げていくのを見て、安心する。



 アリンカトとアサルトパックの一件で殺し合いになっていたロックパイとベルリだが、ビーム・ソードを発振せずに指揮棒のように使って指示をしてベルリもそれに従う感じなので、平和というか、人がわかりあった感じがして感動する。(まあ、でも終盤はやっぱり・・・なんですが)


 しかし、ドレット家はヘルメス財団とも関係のあるレイハントン家を滅ぼした割に、ヘルメス財団クレッセント・シップカシーバ・ミコシの乗員にはマッシュナー司令はクレーム対応でペコペコするんだな。(でも、離れたところではターボ・ブロッキン大佐が「ヘルメス財団の連中はフォトン・バッテリーの運搬にしか興味がない怠け者」と陰口を言ったりする)




 前回のG-セルフの戦闘力を示すザックス部隊との戦いがアメリア軍にまで知られたのかは語られないが、G-セルフ争奪戦でアメリア軍の主導権を握れとサラマンドラの艦長がクリムに檄を飛ばして、クリムとミック・ジャックは出撃する。


 そこで、クリム・ニックはマスク部隊のビフロンとラライヤのネオドゥが揉めているのを発見して、「ことのついでではあるがやつは狙撃する!」とマスクたちを殺しにかかる。
 マッシュナー司令からゴミ掃除の命令を受けて出たし、G-セルフアメリアのものにしておくというのもサラマンドラ艦長からの命令だが、まずやることが「マスクたちへの狙撃」。

 ひどい。もう、蛮族というか武人というか、さっきまで同じ港でビフロンの出撃を見てミック・ジャックがのんきに「バララ中尉を守るマスク大尉にあやかりたいですね」って冗談を言っていたのに、バトルフィールドというか、ゴミがいっぱいある宙域に出ると、すぐ殺そうとする。公的な記録が取れない場所だったら、ぶっ殺しても「不幸な事故でした」とか言って、しらを切るつもりだったんだろうな。多分、大陸間戦争でもそういう戦法を何度かやって敵の戦力を削いでたんだろう。人を殺しに行くことの判断に全くの躊躇がないクリム。

 マスク部隊の脇役、ステファンの「プラズマ・クロウ」を受けるクリム。脇役なのにクリムに格闘武器を当てるとは、地味にかっこいい。しかもクリムに反撃されてもステファンは生還するので凄い。クリムはだいたい返り討ちにするのに・・・。


 ミック・ジャックはリンゴのことを知らないので、塗り替えられたモランがメガファウナのものと思わず、トワサンガのMSとしてガトリング砲を撃ちまくる。混戦がメチャクチャだ。
(クリムがドサクサに紛れてマスクを殺害しようと攻撃しているところをトワサンガの正規兵に記録されていると、後々裁判で面倒になるので、見えるところにいるトワサンガのMSも抹殺していこうという気持ちだろうか。リンゴはメガファウナに乗っているのにな・・・)


 そして、ロックパイの説教とG-セルフの掃除を見て、クリムも殺し合いを止めて掃除にやる気を出す。スポーツ感覚?



 エネルギー論を語るミック・ジャックは多少冷静なんだが。地球から遠路はるばる月のトワサンガまでやってきた地球人のそれぞれの艦隊がトワサンガできちんとバッテリーや食料や生活品を補給できたようなのが、ちゃんと兵站を考えている感じでいいですね。(ガランデントワサンガに着く直前まではトイレットペーパーが貴重品になるくらいカツカツだった)(機動戦士ガンダムはサイド6のペルガミノのドックで修理と食料の補給を受けたけど、燃料や弾薬の補給はジャブローで貰った分でア・バオア・クー戦まで足りていたのかなあ?ソロモン戦の前後にティアンム艦隊やレビル艦隊から分けてもらった描写はあったっけ?)

  • マスクの行動

 ビフロンを得たマスク部隊はクンパ大佐の支持とトワサンガの政権の後押しの元、メガファウナ接触を図る。
 そこで偶然ラライヤのネオドゥがビフロンに衝突して戦闘になったり、ことのついでにクリムとミックに殺されそうになるが・・・。


 ロックパイの「お前ら戦争をするな!掃除をしろ!」と言うのにG-セルフが従ったのを見て、


 謎の体育会系みたいなライバル意識を出してくる。そして掃除へ。こういうキングゲイナーみたいなお祭り感覚で利害関係が一致して、共通の目的でみんなが協調できたら良かったけど、そこで終わらないのがGのレコンギスタという作品なのだ。


 トワサンガの試作大型モビルスーツのビフロンがガランデンに運び込まれたことについて、クンパ大佐はG-セルフを取り戻したいと言ったら貸してもらえたと言う。
 前回、G-セルフがザックス部隊を攻撃して威力が公になって、その争奪戦が加速しているようだ。これは次回まで続く。


 クンパ大佐はマスク大尉に「(ビフロンを)貸してくれた意味を考えたか?」と問い、マスクは「こちらの能力チェックと内輪もめの状況を調べるためでしょう」と答えた。クンパ大佐はトワサンガの内情を知っているので、「ドレット艦隊は一隻でも戦力がほしいんだよ」と言いつつ、

トワサンガキャピタル・アーミィのものにすることも考えられる」とマスクを激励する。
 G-セルフだけでなく、地球人の戦艦戦力の主導権争いも裏で進行している。
 ガランデン一隻でトワサンガ全体を支配することは軍事的にも政治的にも不可能に思えるが、終盤でGit団と連合したキャピタル・アーミィはドレット艦隊を打倒したので、キャピタル・タワー近辺の地の利を活かせば勝てる、ということだろう。ヘルメス財団とも関係のあるピアニ・カルータである彼は、地球と金星のバッテリー交易の中継点にすぎないトワサンガ地政学的に孤立させれば、長期的にはキャピタル・アーミィが支配できると考えたのかもしれない。(それに抵抗するために月に太陽光パネルなどが作られたのだろうけど)
 皮肉にもラストでアイーダさんがトワサンガもタワーも無視してクレッセントシップを支配してしまうのだが・・・。クレッセントシップは構造的に地球の重力圏に入れないと思っていたので最終回は度肝を抜かれたなあ。(G-セルフのシルエットエンジン的なパワーでヒッグス・ルート・カプセルが開放されて疑似フルムーンのパワーを発揮できるようになったからだろうけど)(ベルリが乗り捨てたG-セルフはクレッセントシップのエンジンの一部になったのだろうか?)


 で、Bパート後半になってみんなが掃除をしているのを見てダメ出しを言う傍観者のクンパ大佐。


 クンパ大佐のランチ(キャピタル・アーミィ所属、ガランデンに収納されていたもの)は援護のモビルスーツもつけずにメガファウナの非常口に接触します。メガファウナの上部でアイーダさんが警戒していたはずだが、気づかれない。みんな掃除に夢中だったのか?
 一応、左舷の非常口はオリバーのグリモアが前半で警備していたのだが、ネオドゥの暴走を止めるためにドニエル艦長の指示で戦場に行くことになって、そのまま掃除をすることになった様子。だから、その部分が手空きになったということはさり気なく明確に描かれている。(見落としがちだと思うけど)

 どんな形のものにもジャストフィットして気密を保つGレコ世界の大発明の「成型ラバー」でメガファウナの非常口にくっついて、ユニバーサルスタンダードで扉を開ける。
 非常口は宇宙的災害の時の避難のためとかでユニバーサルスタンダードで開くようになっているのか?軍艦として、そのセキュリティはいいのか?次回、マニィもメガファウナモビルスーツデッキを開けてしまう。キャピタル・アーミィは調査部から発展したのでITの情報能力は高いのだろうか。



 本当になんど見ても何しに来たのか全く分からないがさっそうとメガファウナの倉庫をびゅーんと飛んでくるクンパ・ルシータ大佐。


 メガファウナに事前の連絡もしてないし、攻撃するわけでもないし、護衛もなく丸腰だし、何しに来たのか全く分からないが、劇としてクンパ・ルシータ大佐とロルッカ・ビスケスとの会話をアイーダに見せることは必要だった様子なので、ねじ込んだ感じがある。

 十数年ぶりの再会っぽいのだが、偶然会ったロルッカさんにすごい嫌味を言ってくる。G-セルフに核の自爆装置とかが付いていないことは、3話で接収したG-セルフを調査部で調べさせたクンパ大佐はわかっていると思うけど、嫌味を言いたかったんだろうなあ。
 ヘルメスの薔薇の設計図のタブーを破って何をしているのか?とロルッカが言い返す。

「私は争いの種をもみ消すために地球に降りたのです」
 色々と煙に巻くセリフが多いクンパ・ルシータ大佐だが、これは重要ワードのようだ。



 ロルッカから、クンパ大佐が地球に降りた頃から地球人が宇宙世紀武装を拡大させて大陸間戦争をするようになったと糾弾されるが。
 ロルッカはクンパ大佐のタブー破りで地球人が武装するようになったと、クンパ大佐個人に罪をなすりつけようとするが、クンパ大佐としては自分だけでなく密航して地球に降りた技術者も居ると言う。


 そして、逆にロルッカたちレイハントン家臣を糾弾する。


(追記:ここでカメラが回り込んでクンパ大佐の位置が上手に移動することで、クンパ大佐の行っていることのほうが正しい風に見えるように意図的に演出されている)
 レイハントン家が滅ぼされるときに、殺されないようにクンパ大佐が地球にアイーダとベルリを捨てたと言うが、ロルッカは逆にレイハントン家の再興のために見つけ出そうとした。つまり、クンパ大佐は地球に捨てた子どもたちに旧世紀の親の世代の因縁から開放された自由な生き方をしてほしかったのだろう。だが、旧レイハントン家の家臣たちは自分たちのレジスタンス活動と復讐のために遺児を錦の御旗にしようとG-セルフで探そうとしたし、そのせいでベルリとアイーダは戦争に巻き込まれた。(アイーダさんは宇宙海賊に率先して入隊していたけど・・・)


 ここだけ見ると、クンパ大佐の方がロルッカたち旧家臣(逆襲のシャアでシャアを総帥にするような政治家に近い)よりベルリたちに対して優しいいい人に見える。



 ミラジ・バルバトスさんはメカの専門家で、ロルッカは政治家っぽいので何の専門家なのか分からない(経済か法律か?)のだが、クンパ大佐は強い口調で専門家の急ぎすぎを糾弾する。



 が、アイーダさんに見つかると、「ご活躍を!」と言い捨てて逃げ帰る。本当に何をしにきたんだ。



 ここで、クンパ大佐の行動と言動を整理してみると、クンパ大佐は意外と善人なのではないか?と思えてきた。


 もちろん、ビーナス・グロゥブで「人は地球で弱肉強食の生活をして種自体を強化するべき」という宣言の「ピアニ・カルータ事件」を起こして、地球にヘルメスの薔薇の設計図を流出させたことは事実だろう。


 だが、ここで重要なのはクンパ・ルシータ大佐は「自分は争いの種をもみ消す為に地球に降りた」と自認していると証言したこと。単純に見た印象だと、ヘルメスの薔薇の設計図をばら撒いたクンパ大佐自体が争いの種に見えるし、実際にロルッカラ・グーなどはピアニ・カルータが騒動を起こしたと考えている。


 若き日(と言っても40代?)のピアニ・カルータは20年前にビーナス・グロゥブで高度な技術を持ちながら、バッテリーを充電するためだけにダラダラと生活して、長寿を貪りながらムタチオンなどする人類の劣化を見て、義憤にかられて「地球で人間を強化すべき」という宣言をするピアニ・カルータ事件を起こしてGit団などに影響を与えた。
 その後、ピアニ・カルータトワサンガに行った。(出身がビーナス・グロゥブなのかトワサンガなのかはよくわからない)(月と金星を行き来するヘルメス財団の一員という説もある)その時点で約80年前に産業革命が終了していたトワサンガでは、(タブーはあるものの)技術の発展に伴い、レイハントン家をトワサンガの発展のためにドレット家が滅ぼそうとする争いが起きていた。レイハントン家はフォトン・バッテリーなどをはじめとする宇宙世紀の技術を秘匿しようとしていて、ヘルメス財団と通じていたので。
 ピアニ・カルータは当時どちらの陣営の味方だったのかは不明だが。ノウトウ・ドレット将軍には顔を覚えられていたが、トワサンガの現在のハザム政権の首相や政治家には顔を覚えられていない様子で、本編ではガランデンに乗ってきた地球人代表として振る舞っている。
 おそらく、アイーダが幼児でベルリが乳児のころだろうし、ビーナス・グロゥブでのピアニ・カルータ事件からは数年後のことだと思うが、レイハントン家の滅亡で二人の赤子が殺されないように、ピアニ・カルータは赤子とともに地球に降りた。本編の10年ちょい前のことだろう。
 これは憶測だが、ヘルメスの薔薇の設計図をばらまいたのはピアニ・カルータだけではないのでは?技術を秘匿しているのが仕事だったレイハントン家に仕えていた技術者集団もドレット家の攻撃を避けるためにピアニ・カルータと同時期に地球に降りて、薔薇の設計図を地球人に売ることで生き延びようとしたのだろう。今回のクンパ大佐のセリフでも自分ではなく流れていった技術者が設計図を広めたというようなニュアンスがある。(全部喋り切る前に会話が途切れ途切れになってしまうのは富野演出の功罪あるところだが)


 ロルッカ・ビスケスはクンパ大佐個人がひどいタブー破りだと言ったのだが。クンパ大佐だけが設計図を流したのではなさそう。(技術者の密航に手を貸したということはあるだろうけど)むしろクンパ大佐は産業革命を終えてビーナス・グロゥブから独立して太陽光パネルを月に整備するようになって、さらに発展しようとしてヘルメス財団と通じているレイハントン家と争いになったトワサンガの情勢を見て、「争いをなくしたい」と思ったのではないだろうか。


 なぜ、争いが起きていたのか。それはレイハントン家がビーナス・グロゥブと共有しているフォトン・バッテリーなど宇宙世紀時代の技術を秘匿しようとして、産業革命からの発展の機運で経済発展しようと目論んだドレット家を始めとするトワサンガ人に技術や富を独占して人類を支配していると憎まれたからだろう。
 もっと大きな視点で見ると、ビーナス・グロゥブヘルメス財団のもつ強大な宇宙世紀の技術とフォトン・バッテリー生産技術と配給制に対して、トワサンガと地球がスコード教の平穏な教えのために依存しきっていて、技術とパワーバランスが不均衡で、それを嫉妬したトワサンガ人がレイハントン家を攻撃するようになった。そして、レイハントン家を滅ぼしたドレット家は次に環境が回復しつつあるが、キャピタル・タワーからの配給に頼りきりで技術的には弱い地球を狙うレコンギスタをする艦隊を建造し始めた。
 同時に、ビーナス・グロゥブでもピアニ・カルータ事件を受けて、狭い世界で延々とバッテリーを充電してムタチオンをする退屈で不安な人生を嫌って地球を狙うジット団やフルムーンシップなどのレコンギスタの機運も高まりつつあった。


 そこで、どういう風に争いの種をもみ消そうと地球に降りたクンパ・ルシータ大佐が考えたのだろうか?それはおそらく「ヘルメスの薔薇の設計図を教えて地球人の技術力、生活力を向上させて経済的に自立させて、金星や月が容易に手出しをできないような抑止力を持たせる」という作戦だったのではなかろうか。金星や月の勢力が宇宙世紀の技術を使って地球で戦争したら、また回復した自然が崩壊して地球圏の人類が滅ぶし。
 なので、クンパ・ルシータ大佐はヘルメスの薔薇の設計図を地球に流出させる。しかし、同時にキャピタル・ガードの「調査部」の長に就任して、世界中のタブー破りを監視する仕事も始めた。つまり、ヘルメスの薔薇の科学技術は地球人に再学習させて種として強化させるが、クンパ大佐が望まない戦争や悪いことに技術が使われそうになると、それは調査部の権限で取り締まる。という両面作戦。そういう啓蒙活動を理想を持っていたクンパ大佐は行おうとしたのだと思う。


 おそらく、クンパ・ルシータ大佐が望んだのは地球人に戦争をさせることではなく、むしろ民生技術の向上によって地球人をスコード教の依存から開放させる、経済的自立と自己決定力を持たせることだったのではないだろうか。理想主義者だったピアニ・カルータは過去に作られたブラックボックスの科学技術に囲まれて惰性で生きて甘えて劣化する金星の人類がすごく嫌だったので、自分で科学とか物事を考えられる強い人類を再生させたかったのではないだろうか。ピアニ・カルータ事件での弱肉強食での強化とは単に戦争だけを意味するのではなくて、技術競争という意味だったのかもしれない。


 ピアニ・カルータ大尉、いい人だったのでは?


 しかし、地球人はピアニ・カルータの想像を遥かに上回るアホだったので、地道に民生技術を高めてインフラを整備して生活力を少しずつ上げていくより、フォトンバッテリーの手っ取り早い奪い合いの戦争による、楽ちんで利己的な経済発展をやりたがった。そして調査部でも取り締まれない規模で大陸間戦争やキャピタル・タワー襲撃などをやる軍隊を作ってしまった。アメリア帝国のニューアークの景色を見ると宇宙世紀の遺物であろう高層ビルが崩壊寸前で樹海に飲み込まれつつあるのに、ズッキーニ・ニッキーニ大統領は都市を整備するより先に宇宙戦艦をじゃぶじゃぶ建造してしまう。あと、サラマンドラの末路を見るように、科学技術の基礎研究や仕組みの考察などはほとんどの地球人はやらずに、設計図通りになんにも考えずに作ったらMSや戦艦が作れるので、そこで思考停止してブラックボックスの機械を弄ぶようになってしまた。
 なので、クンパ・ルシータ大佐は最初は理想主義者で啓蒙主義だったのに、なんにも考えずに戦争をしたがるだらしない地球人を憎むようになってしまった。また、大局的に技術を使って地球の文明を復活させるのではなく、戦場を実験場にして技術の社会的影響力を考えずに、軍事力の発展ばかりを目指すようになった技術者や専門家の一直線な思考も嫌悪するようになった。(風立ちぬへの同族批判かも)


 富野監督によると、クンパ・ルシータ大佐はヘルメスの薔薇の設計図を流出させたけど、自分の想像以上に戦争が拡大して焦っている、ということらしい。(出典失念)そこで、後出しでキャピタル・アーミィを作ってアメリアやゴンドワンに対してキャピタル・テリトリィの自衛をさせるように画策したのだろう。(キャピタル・アーミィの主力戦艦のブルジンの戦隊が出来るまではガランデンを借りたりガードの教員のデレンセンをスカウトしたり向こう見ずで命が軽めのクンタラを集めたりして、急場をしのいでいた印象)
 うっかりキャピタル・タワーザンクト・ポルトが破壊されたら地球はすぐ滅ぶしな。自衛は必要。


 クンパ・ルシータ大佐がゴンドワンからガランデンを調達して、トワサンガにまで来たのも、主戦場を地球ではなく宇宙にすることで地球上の大陸間戦争を沈静化させる狙いがあった、としたら今でもクンパ・ルシータ大佐は善性を持っているのかもしれないのだが。
(もちろん、ゴンドワンガランデン以外にどれくらい戦艦を持っていたのかは不明だし、アメリア軍は宇宙艦隊以外にキャピタル・タワーに進軍するための地上艦隊も終盤で出してきた)


 僕もGレコを最初に見た時はクンパ・ルシータ大佐は真相を告げずにベルリやアイーダG-セルフを動かさせたり、タブーを破って戦争の原因を作ったり、なんとなく偉そうだったり、弱肉強食を推奨したり、みんなが一生懸命戦ってるのにシロッコやアマンダラ・カマンダラみたいに傍観者を気取ったりして、気に食わない悪いやつだと思っていたのだが。彼は彼なりに争いを最低限にしつつ、地球とビーナス・グロゥブのパワーバランスを再調整しつつ人類の再発展を目指した理想主義者だったのでは?と今回セリフを精査して考えるようになった。(悪役に富野監督が自分を投影するのはよくあること)


 富野由悠季監督は「Gレコのテーマは、現在の科学技術の進歩と金融資本主義に汚染されてしまった現代の問題 」と、難しいことを言ってて、「子供向けアニメにしては小難しすぎる!」と思っていたのだが、Gレコの戦争の幾つかの部分の発端であるクンパ・ルシータの思想としては、科学技術の進歩と金融資本主義(フォトン・バッテリーに置き換えられている)の問題で勃発する戦争への対処、というのがあるんだな、と本放送から4年も経ってやっと想像できるようになった。駄目なファンでごめんなさい。
 

 話は変わるが、僕はいまさら、ロードランナー様(山川賢一) (@shinkai35) さんが書いた輪るピングドラムの評論の「Mの迷宮」を(積んでたけど、さらざんまいキッカケで)読んでいるのだが。
Mの迷宮 『輪るピングドラム』論

 そこで少女革命ウテナの鳳暁生と天上ウテナ萬画風の谷のナウシカの神聖皇帝とナウシカ、渡瀬眞悧と高倉冠葉など、「悪人は元は主人公と同じ理想主義者だったが、堕落したもので、主人公も堕落の可能性を持つ」というのを読んでる。
 「Mの迷宮」では宮﨑駿が庵野秀明幾原邦彦に与えた影響を論述していて、庵野監督と幾原監督が逆襲のシャア友の会の会員でもガンダムの話はないのだが、今回の「自分の目でメガファウナの内情を確かめに行くクンパ・ルシータ」と、「自分の目でビーナス・グロゥブを確かめに行こうと思うアイーダ」の対比なども、そういう面があるなあ。と思った。アイーダさんが良き統治者になるのか、人類のダメさに絶望して堕落してしまうのか・・・。
 また、クンパ大佐がゴミ掃除にダメ出しをするのも、ベルリが敵であるキャピタル・アーミィに正しい行動をするように押し付けてダメ出しするのに似ている。(第6話のジロンド部隊の撤退や第16話のガランデンザンクト・ポルト守護の放棄について、ベルリは憤慨していた)
 どこまでが意図した展開かはわからないのだが、主人公で一応正義を目指しているアイーダとベルリも理想主義をこじらせると、クンパ大佐のようなラスボス系暗躍家になる危険性と類似点があると見える。
 重戦機エルガイムリーンの翼でもそういうモチーフはあったかもしれないけど。シャア・アズナブルギレン・ザビみたいな演説をするようになったしなあ・・・。ギレン・ザビは理想というより支配欲だと思うけど、彼なりに減った人口の世界をスマートに導きたいという志はあった。悪いやつだけど。



 争いの種をもみ消すために地球に降りたクンパ・ルシータと逆に、争いの元を知るためにビーナス・グロゥブを目指すことを決断したアイーダさん。
 自分の目で確かめろ!
 また、ヘルメスの薔薇の設計図に従ってるだけで思考停止して、表面的なモビルスーツの性能を競う戦争で、表面的な経済発展を目指している地球人とは違って「本質」を調べに行こうというアイーダさんはやはり、高貴な女性なのだと思う。
 が、ベルリには苦労をかけるんだろうなあ・・・・。


 科学技術を平和利用するより先に、手っ取り早く他の国の資源を奪ってゼロサムゲーム(ガンダム00?)の世界で自国だけ発展するための戦争の道具を作ってしまう人間というのは、Gレコワールドのみならず、現代の地球人にも批評的である。そういう意味で富野監督は「Gレコのテーマは、現在の科学技術の進歩と金融資本主義に汚染されてしまった現代の問題」と述べたのだろう。また、インフラがガタガタなのに平和外交よりも仮想敵国に対する軍事予算に力を入れるというのも、なにかの皮肉のようだ。
 高貴な理想主義と啓蒙主義の統治論に則れば、自分だけが稼げればいいという、負けた人の不幸の上に成り立つ金融資本主義のゼロサムゲームは軽蔑すべき利己主義だからなあ。
 僕は孫子の兵法を読んでいるが、基本的に人を欺いて殺すのが基本的な趣旨なので、他国を滅ぼして資源や命を蹂躙する古代中国戦国時代では良くても、現代の人権が重んじられる先進国のビジネスマンがそれを真似るのは酷すぎないか?って思う。(それが僕がKLabで損な役回りを押し付けられて出世できずに過労になった遠因でもあるんだろうけど)しかし、ビジネスマンに孫子は大人気だ。
世界を壊す金融資本主義



 そういう意味で、Gレコはテーマ的に子供向けアニメにしては結構難しいことをやっているのだが、銀河孤児亭のあでのいさんが「Gレコはドラえもんだ」とおっしゃったので、そういうものかもしれない。
nextsociety.blog102.fc2.com

 ドラえもんも子供向けアニメ・萬画だけど多様なSF的シチュエーションで子どもたちにコスモポリタニズムと平和主義と科学への興味を(少なくとも大長編では)教えようという志があったからなあ。

  • まとめ

 ベルリの殺人考察シリーズなんですが、ベルリが殺人しない時はあっさり行けるかと思いきや、他のキャラクターの群像劇になっていて、やっぱり色々と語ってしまった・・・。
 また、今回は少ない出番ながら珍しく感情的になったクンパ大佐を見て、理想と失敗などの、彼の思想を推理できたのが良かったと思う。もちろん、推測なのだが、クンパ大佐もいたずらに戦火を広げたいのではなく、彼なりに争いの種を揉み消そうという気持ちがあるということは最低限抑えておいてもらいたい。

  • 目次

「はじめたいキャピタルGの物語」・「ガンダム Gのレコンギスタ」感想目次 - 玖足手帖-アニメブログ-
nuryouguda.hatenablog.com

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