玖足手帖-アニメブログ-

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創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年11月 第11話 第4節

サブタイトル[ラスベガスと王の心] 
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創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年11月 第11話 第3節 - 玖足手帖-アニメ&創作-

  • 四辻の四つの塔の屋敷のそらの勉強部屋

社「おはよう。頭令」
そら「おはよう。社」
 勉強部屋に通された家庭教師の社亜砂は今日も赤い背広姿であったが、赤いスーツは何着も持っているようで、毎日若干変わっている。すべて妹のアレッシアによるイタリア直輸入の高級品である。もちろん、性犯罪者対策の監視GPSと懲罰機能付きの白い仮面は変わらない。しかし、毎日自宅で手入れをしているのか、仮面から汗臭さや汚れをそらが感じたことはない。むしろ、香水と男の体臭が淡く匂う。
社「頭令、今日は新聞よりもテレビとネットのニュースがすごかったな。貴様は見たか?」
そら「核爆発ね。なんか大騒ぎに成ってるみたいだけど、大したことないんでしょ?」
 学習机の隣の回転椅子に腰かけ、教え子を貴様呼ばわりする家庭教師に対して、出会った時から一貫して敬語を使わないのがそらという少女だが、社亜砂はロリータコンプレックスなのでその気やすさを咎めたことはない。
社「いや、実際の結果が小さくとも、最悪の事態が起こり得た、という事が社会的には重要なのだ」
そら「ふぅん?あたしは寝てたからねー。あんたも寝てたでしょ。5時だし。
 こっちに迷惑が有ったら、それはその時に考えりゃいいでしょ。あたしは今日も普通にご飯食べて、これからいつもの授業よ。あ、宿題もちゃんとやったから」

社「まあ、な。私も米軍ではないから普通に授業をするのが私の仕事だな」
 と、教科書を開こうとするが、
そら「あ、ところでさ、社は今朝、何を食べてきた?」
社「洋食だな。パンとオムレツとベーコンとポテトサラダとオニオンスープ。それと梨」
そら「ふっふっふーん。なるほどねー。実は偶然あたしも同じメニューだったのよ。ね、レイ」
 そらの訳知り顔の笑いが社の後ろ、勉強部屋の入口に突っ立っている執事に投げられた。
レイ「ええ」
社「そうか。基本的なメニューだからな・・・・・・」
そら「あはははは!社の仮面がちょいぶるぶるしてるー!ロリ電波?あたしとお揃いで嬉しかった?」
 社の白い仮面の耳の、ペドフィリア矯正超音波発振機の振動に色白の掌で触れて笑うそらは、執事も家庭教師もおもちゃにしているのだ。
社「・・・・・・頭令。こら。授業を始めるぞ」
レイ「社先生。すみません。その前に少しお話があります」
社「ああ、何でしょう?」
レイ「今から泊まりがけで数日、私は屋敷を出なくてはいけなくなりました。メイドたちはおりますが、社先生にもそら様をよろしくお願いいたします。また、お車でそら様を倶雫様のお見舞いへ送迎していただけると助かります」
そら「なにそれ、聞いてない」
レイ「そら様と社先生に一度にお伝えすべきことですので」
そら「あんたが面倒くさがっただけでしょ。あたしは許可した覚えはないわよ。あんたさあ、何考えてんのさ」
レイ「申し訳ございませんが、決定事項ですので」
そら「バッカじゃないの!ふざけんじゃないわよ!何勝手なこと言ってんのよ!」
社「その悪態をやめないか。頭令、私は何度も注意したぞ。
 宍戸さん、私の方は構いませんが、私と頭令さんを見張らなくて良いのですか?」

レイ「先生は性犯罪の前科者ですが、現在は紳士と見込んでおります。その仮面の監視装置もありますし、メイド二人にも見張らせます」
そら「そーいう事じゃないでしょ!レイッ!何しに出てくのよ」
レイ「申し訳ありません。現在アメリカにいらっしゃる礼一郎旦那様から、私の手が必要との連絡を急きょ受けたのです。本日の核爆発事故で経済情勢が変動しましたので。ですので、これからそちらに向かう事に成りました」
そら「はぁ?だって、あんたはっ・・・・・・あっ」
 そらの執事の宍戸隷司と、養父の頭令礼一郎は共にレイが化けた架空の同一人物であり、礼一郎が宍戸隷司に連絡する事は有り得ない。が、それは家庭教師の社亜砂には秘密なのだ。ならば、大声を張り上げて引きとめる事が出来ないと、そらでも分かる。だからそらはツカツカツカとレイに歩み寄り、その黒服の胸に自分の胸のロザリオを押しつけて、背後の社には聞こえないよう小声で
そら「あんた、あたしをはめたわね。わかったわ。それって、なんかヤバい事でしょ。
 だったら行かせてやるけど、社の目が離れたら、あたしにすぐ連絡する事。夏の時みたいに馬鹿な奴にとっ捕まるなんて許さないから。あたしはもう助けてやらないし。いいわねっ」

レイ「はい。そら様。気を付けて行ってまいります」
そら「絶対よ!絶対帰ってくるのよ!」
 そのちいさな肩を隣からそっとなでて、
社「さびしいのはわかるが、そんなに大声を上げるな。頭令」
そら「えらそーなこというなっ。って!っ」
 そらの肩に置いてある社の掌は、優しく関節を固定して少女のビンタを止めた。
社「だから、な。すぐに暴力や大声を使うのはいかんと前々から言っているだろう。
 宍戸さん、まあ、こちらは大丈夫ですから。行って下さい。礼一郎さんにもよろしく」

レイ「はい。それでは行ってまいります。ミイコさん、後は頼みます」
ミイコ「はい」
そら「もう行くの?」
 挨拶してメイドから荷物を受け取り、階段を下りて行く執事をそらは駆けて追おうとしたが、社の手が肩から離れず、走れない。
そら「ちょっと、離しなさいよっ!」
社「授業を始めるぞ」
そら「女の子に力ずくってサイテー!変態っ!」
社「力ずくではない。簡単な合気道の一種だ。次の体育で教えてやろう」
そら「わかったわよ。勉強するわよ。
 レイーっ。いってらっしゃいねーっ

 それでその場はそらも国語の助詞の授業を始めたが、その合間にこっそりロザリオに唇を付け、
そら「あんたたち、あとで覚えてなさいよ」
 と、小声ですごんだ。

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