玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年9月 第9話 第17節

サブタイトル:第9話 [家庭教師VSニンフェット!頭令兄妹誕生の秘密です!!]
前書き:エピローグと次回予告
  
  

  • 四辻の四つの塔の屋敷

 バダーン!
 頭令そらと黒いレイが帰還し、客室に押し入った。そらの着衣は鮮やかなピンクの生地にダークブラウンのレースが付いたワンピースに変わっていた。
そら「たっだいまー」
社「おかえり。頭令……」
 屋敷の客用ベッドには、社が腕に輸血の点滴を付け、白いバスローブを着て、上体を起こして待っていた。ただでさえ白い仮面に半分を覆われた社の顔は包帯とガーゼで真っ白になっていた。その隣には彼の治療というか修復をしたメイド宇宙人のミイコが座っていた。
ミイコ「そら様。おかえりなさいませ」
そら「ぶっ!社!あんたその顔、何?ミイラ男?」
社「貴様がやったのではないか」
 顔中を蹴られ、口の中まで怪我をした社は包帯の向こうで、くぐもった声で答えた。
そら「それはあんたがあたしのパンツを見たから鼻血をだしちゃったんでしょ?」
社「貴様は私の顔に殴る蹴るしただろう。頭蓋骨が割れて死ぬ所だった」
ミイコ「オホホ、先生は大袈裟ですね。小さなそら様にそれほどの力が有るはずないでしょう。少し頭の皮と口の中を切っただけですわ。出血はほとんど仮面のせいの鼻血ですし、それも買い置きの輸血で大丈夫ですよ」
 と、社亜砂のめちゃめちゃになった頭蓋骨と顎の原子分子を宇宙的技術による再配列で治療した宇宙人が嘘をついた。
社「確かに骨が砕ける音を聞いたのだが」
そら「勝手にあんたが興奮して鼻血出したんじゃないの」
社「……まあいい。しかし、こんな時間までどこへ行っていたのだ。授業中に」
そら「あんたがぶっ倒れたからね。自分で調べに行ったのよ。自主研究ね。そのあと、お兄ちゃんの病院に寄って、ついでにお買いものしてきた」
 ぶっ倒した張本人がしれっと答えた。
そら「聞いて驚きなさい!あたしとお兄ちゃんは結婚できるのよ!それを調べに行ってて時間がかかったの!
 じゃぁーん!
 これが戸籍謄本と、お兄ちゃんとお父様とあたしの履歴書ね。役所で貰ってきたの」

 もちろん、それは嘘でレイが自分の中の異次元空間から取りだしたコピーにすぎないが、その元本も宇宙人が作成したものだ。
そら「ほら、よく見なさい!あたしとお兄ちゃんはね、お父様が別々に引き取った養子だから、血の繋がりはないの!だから結婚できるのさ!どうだ!」
 必殺の一撃のごとき勢いで、そらが書面を白面の男に突きつける。
社「そうなのか……」
 2リットルくらいの輸血がまだ終わっていない社は力無く、うなだれながらレイを仮面の奥で睨んだ。頭の傷は宇宙人が原子レベルで溶接したので、社の金髪は剃られておらず、包帯の隙間から金髪が垂れた。
レイ「と、言う事です。先生が倒れられた後はわたくしがそら様についておりましたので大丈夫です」
社「宍戸さんがついておられたのなら、頭令には心配はないでしょうな…。しかし、血が繋がっていないとは意外だな。頭令たち兄妹はよく似ている。私はてっきり実の兄妹だと思った」
 仮面のスパイはクローンだと言わぬよう言葉を選んだが、そらは空気を読まなかった。
そら「ははーん。あんた、あたしたちのDNAを覗き見たのね?変態ストーカーだからね。
 でも、そんなの関係ないの!なぜなら、DNA鑑定は数十兆人に一人は一致する技術なんだからね!
 つまり、あたしたち兄妹は、天文学的数字を乗り越えて出逢った運命の二人ってわけ!」

社「運命、か……。それで、機嫌が治ったのか」
そら「うん!」
社「結構……。また癇癪で殺されてはたまらんからな」
 表情が全く見えない社はぐったりと背中を倒し、分厚く柔らかい枕に包帯の頭を沈めた。
そら「殺すわけないわよ!社先生には、あたしをいい女にするために、これからもご指導ご鞭撻、よろしくお願いしますわ!」
 ぺこりっ
 膝下丈のスカートの裾を持ち上げ、恭しく少女が礼をした。
そら「社は今日はダルそうだし、そこで泊ってっていいわよ。それに、今日はあたしの誕生日だったの!
 だからケーキ買って来たし、点滴と輸血が終わったら一緒に食べようね!柔らかい奴にしたから社も食べれると思うよ」

 兄とは白いショートケーキを食べたが、社とはティラミスを食べるつもりのそら。甘いものは別腹だ。
そら「あとね、この服!社があたしによく服を買ってくるブティックで買って来たのよ?ほら、あんた倒れてたからさ、代わりに誕生日プレゼント、あんたのツケで買ってきてあげたの。どう?似合う?オーナーさんにあんたの好みを聞いて選んだのよ?
 どう?いい女っぽいでしょ」

 男のツケで五万円はするシルクのパフスリーブワンピースを買い、物凄く自分勝手な事をまくしたてたのちに片手を腰に、片手で髪を掻き上げ、そらはモデルさんポーズを社に見せつけた。
 それで社も、点滴の刺さっていない方の右手で体を起こし直し、言った。
社「ああ……。頭令は、とてもかわいいな。12歳の誕生日、おめでとう」
そら「ふふん!ありがと!」
社「それからな……いい女になるための問題だ。
 ……人を殴った後には、何と言うべきかな?」

そら「ん?んーっとねー」
 ふわり、膨らんだワンピースの裾から伸びる黒いタイツのふくらはぎが跳ねて、ととっとベッド脇まで歩き、そらの美少女面からの息が仮面にかかる。それでそらは仮面の頭を優しく撫でながら、
そら「いたいのいたいの、とんでけー」
  
  
ぷるぷるぷるぷるぷる
 肩を戦慄(わなな)かせ、社はその口を覆う包帯を引きちぎった!
社「冗談ではない!一言『ごめんなさい』だ!」
そら「あ、そっかそっか!なるほど。覚えたわ!ありがと、センセ!」
 傲慢すぎるそらに、社の顔は三倍紅潮した。しかし、宇宙人の治療は完ぺきであり、折れた鼻も傷一つなく修復され、美男子に戻っていた。その鼻に
そら「ごめんなさいね、社先生。ゆるして」
 頭令そらはキスをして、傷を舐めるように舌で撫でた。頬に当てられた両の手の平がすっと離れ、
そら「こうしたら、正解?」
 仮面のガラスの向こうにはニッコリほほえむ、お気に入りのブランドの新作ワンピースのニンフェットがいた。
社「ミイコさん。洗面器」
ミイコ「はい、ここに」
  
  
ダバダバダバダバダバダバダバ!
 渡された洗面器に突っ伏して、社亜砂は何杯も何杯も鼻血を出し、輸血を受け続けたのであった。
そら「あー。ケーキはお預けね。それじゃ、また明日!」
レイ「それでは、社先生、お大事に。
 ミイコさん、社先生をお願いします。夜半にはミニコさんと交代して下さい」

ミイコ「はい。了解し、実行します」
そらが出た後、血の臭いに満ちた客室の明かりは仄暗く絞られた。
 

  
 それからそらは一人で夕飯を食べて、お風呂に入って、テレビを見たり本を読んだりしてからぐっすり寝ましたとさ。



次回予告
 

                                                                                                                                                              • -

 
 社亜砂と頭令そらの戦場で芽生えた恋…。
 しかし上官アレッシア・マセラッティは
 そんな二人の蜜場を目撃し……!!
 
 
 次回「アリサ参戦!海の向こうから来たセレブ美女!!」
 
 
http://kairuna.hp.infoseek.co.jp/Ikinari.html
(こちらをやや改変しました)