玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年10月 第10話 第7節

サブタイトル[ロマンスの休日]  
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前書き:なし

  • 下るエレベーターの中

 結局、なしくずしで社の素顔を見るのはお預けという事になった。で、頭令そらはふてくされて長身痩躯の老執事の黒いコートの腹にふんわりとした髪の後頭部を持たれかけて腕を組んでいる。
そら「っったく。バカバカしい。最初っから言えばいいのよ。合格祝いに仮面を脱ぎますって。
 そしたらあたしたちもこんな風に押しかけたりしなかったわよ。
 アレッシアさんも忙しい人なのに」

 遊び半分でなじるように、社に文句をダラダラ垂れ続ける美少女。
社「すまんな。しかし、こちらにも色々とあるのだ」
 少女の繰り言を軽くいなしながら、社の指がコツンと仮面の耳を叩く。
アレッシア「無理はしないでくださいね。あなたは・・・・・・」
社「それは、この娘しだいだな」
そら「なにそれ、最後はあたし頼み?そっか、あたしが中学に落ちたら、あんたはずっと仮面のままなんだ〜。どうしよっか?責任重大よねー」
社「全く、こういう事になるから、貴様には言いたくなかった」
 腕を組んでいるが、仮面の下の唇は笑っている。
アレッシア「私からもお願いします。そらさん、合格してね」
レイ「そら様は学生に成った方がよいと、ご自分でおっしゃったではないですか」
そら「でも、ヲタ女以外にも学校はあるからねー」
 四畳半ほどの広さはあるエレベーターの中で、教え子は教師に半歩寄りかかって上目遣い。そこで教師はひざまずき、目を少女の高さに会わせる。騎士のように恭しく、少女の手を取る。
社「頼む。合格してくれ。私の顔もその時に存分に見ると良い」
そら「うふふふ。わかったわ。あたしってそんなにあんたの顔が見たいわけじゃないけど、そこまで言われたらしょうがない。取引してあげる」
 ちやほやされてほほを満足そうに染めた美少女が笑顔を膝をついた家庭教師にくれてやったところで、
チーン!
 1階についたことを知らせる電子音が鳴り、扉が開く。
アレッシア「それでは、また」
そら「また明日ね」
レイ「お邪魔いたしました」
社「ああ、お休み」
  
  
 社亜砂はそのまま扉を閉じてエレベーターを最上階に戻していった。それを見送って、頭令そらと、アレッシア・マセラティはロビーを出て、地下駐車場を並んでそれぞれの車に向かう。そらはアレッシアとまだ話し足りなそうに歩みを遅くして、レイはすっと離れてサイドカーを停めてある方に向かった。


そら「アレッシアさん、あなた、社の事が好きなんでしょ」
 年上の女性の脇に身を寄せながら、顔を合わせず前を見据えてそらは小声で言ってみた。問われた方は短く答えた。
アレッシア「そうね、嫌いだったら身元を引き受けたりはしないわ」
そら「いいんです?またヨーロッパに行って別れて。アレッシアさんはお金持ちだし、その気になれば社を囲うことだって」
 傾げた視線を落としてくれたアレッシアに目を見上げて、そらは疑問をぶつけた。
アレッシア「この歳になれば兄妹なんて、そんなものよ。それぞれ仕事もあるし、兄さんもそれなりに仕事をこなしてるって、あなたを見たらわかったわ」
そら「あたしは、わからないな。あたしはお兄ちゃんと離れたくないです。絶対離れたくない。
 どんな事情でも、絶対抵抗する」

アレッシア「でもね、私だって、兄さんが出て行った時は泣いたのよ」
そら「そうですか」
 あと、20mほどで別れる女と並んで歩くそらは、兄と別れる未来を想像してしまって俯く。住民が一人だけの高級マンションの地下駐車場は広く、そしてコンクリートむき出しの天井からぶら下がった水銀灯がやけに明るかった。その光が、少女の前髪に影を作った。大人の女性は一拍置いてから、
アレッシア「……そうね。あなたが絶対にそう思い続けるなら、あなたはそうできるように、私の兄から学ぶのね。
 男は利用する物よ?」

 そう笑って、アレッシアの手がそらの髪の毛越しに、背中をポンと撫でてやった。
そら「あ、ああ!そうですね!そうします!」
アントニオ「奥さま、お早く。(伊)」
 そらに裂かれた車輪を交換し、ここまで鳶色の髪のロミオが運転してきたアーマードベンツの後部席の扉を開けた脇で、黒服に着替えた黒髪のアントニオが促す。
 乗り込む前にふっとそらに向き直った金髪さん、
アリサ「大丈夫、あなたなら、できるわ」
 まっすぐ目を合わせ、微笑みあって、車に乗り込んで年上のひとはそらの前から去って行った。少女は黒い車が駐車場を出るまで、その小さな手を振って見送った。
レイ「そら様、我々も」
 そっとレイが主人の脇に寄せてきたサイドバイクロンのゴンドラの扉が自動的に開き、帰りを促す。
そら「ええ、帰るまでにミイコ達にお風呂を沸かしておいてもらっといてね」
レイ「了解し、実行します」




次回予告


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 亡き父祖が残した倒産間近の工場Card. Crackers. Clan. Confederation.(シーフォー)を継いだ江戸川。(C3は多すぎである)
 ひょんなことで宇宙人レイと知り合った。
 ネバダ州で新型『ケツァルコアトル』を生産することを決意する。
 そして、レイをネリス射撃場に迎え、ケツァルコアトルの開発に励むのだが…


http://kairuna.hp.infoseek.co.jp/Ikinari.html
(こちらをやや改変しました)

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