玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。


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出崎統版ブラック・ジャック しずむ女感想

 ぼやぼやしていたらまた数日くらいブログを書かないで寝てしまっていた。グラブルの大食いイベントが終わったので(十天衆とかアーカルムはまだまだ)、今日は奇跡的に午前中に覚醒したので、先々週に見た出崎統ブラック・ジャックの感想をざっくり書く。

KARTE10 しずむ女

KARTE10 しずむ女

  • メディア: Prime Video


 10年くらい前に入手していたし、同梱の人面瘡は見ていたのだが、何故かこれは見ていなかったようだ。2000年制作。


 出崎統AIRの元ネタとも言われるし、民話に憧れる病気の少女という点で非常に共通点がある。そういう点で自分的には重要な作品のはずだし入手した時もそれが目当てだったはずだが、見ていなかった。僕はそういうところがある。


 ところで、以前、劇場版AIRの記事について「美少女を救う話ではなく、心が凍っている国崎往人岡崎朋也を、美少女が命がけで温める話」みたいなことを出崎統ファンの人からコメントしていただいた。
 
nuryouguda.hatenablog.com
 まあ、11年前のこの記事では観鈴ちんと同じような病気に苦しんでいる僕はドグマチールで治ると医者が言っていた話を紹介したけど、結局労働や家庭崩壊などのせいで更に悪化して3年くらい前に精神障害者保健福祉手帳2級を発行された。就労困難者。


 それはそうと、この「しずむ女」のヒロインの月子は知的障害がある。しかも戸籍が見つからないので指定公害病に罹患していても治療費がもらえない。かわいそう。恋のために痛みを我慢しているのは直球でAIRにつながっている。


 しかし、手塚治虫萬画版のブラック・ジャックの「しずむ女」(封印作品)のヨーコは街の人や役人から冷遇されているが、アニメ版の月子はお小遣いをくれたり、病気を治そうとするリハビリを応援したり、ブラック・ジャックの手伝いをする人が居たり、役人や公害病の原因企業もお金を工面してやろうとする人が居たりする。萬画では精神薄弱者として差別されて冷遇されているが、アニメ版では頭が悪い描写はあるしブラック・ジャック精神障害者だと認識しているけど、冷遇はされていない。心の純粋な乙女として、おじさんたちが助けてやろうとしている。


 だが、それでは救われないのだ。
 おじさんはおじさんなので、月子を助けてやるのだけど、「一生面倒見てやる」と妻に娶るような丁度年齢のあった青年などが出てこないのだ。月子はそれをブラック・ジャック(アニメ版は年齢不詳、原作より高齢)に求めていたのだ。
 まあ、出崎統監督はルパン三世のアニメもやっていたので「ゲストヒロインとの短い恋」みたいなのは、このブラック・ジャックアニメシリーズでは多い。


 ブラック・ジャックは自分が表社会に出てはいけない人間だと思っているし、今回もそれを痛感させられる。具体的には公害病の医療チームのメンバーとして高名な医者に参加を要請されるが、無免許医だとバレたらチームを追われる。
 なので、ブラック・ジャックはヒロインに惚れられても、割と冷たいというかスルーしがち。まともな結婚もできないと思ってるっぽい。(まあ、ブラック・クィーン氏に痛い失恋をしたり、医局時代に女子のストーカーをしたりはしている。)
 パートナーとしてはやはり自分と同じくバラバラの体から人間になったピノコが丁度いいと思っている。なので月子が結婚願望を抱いていてもスルーする。ブラック・ジャックは月子が一生暮らせるだけの金を工面しようとするが、月子はそうではなく、お嫁さんになりたかったのだ。


 そういうブラック・ジャックのつれない態度について、月子は地元の人魚伝説の悲恋に出てくる、人魚に好かれてもなかなか結婚してくれない漁師と重ねる。それで、民話に自分を重ねて、同じように痛みを我慢して、その伝説に出てくる女からの好意の証の特別な青真珠を取りに無理して潜ってしまう。


 以下はネタバレだが
 


























 月子は溺れて死ぬ。


 そして、彼女の体内から真珠のような結晶物が摘出される。それをブラック・ジャックは受け取って公害病(三日月病)の研究に役立てようと決意して終わる。



 前述の出崎統AIRCLANNADの「凍りついた男の心を、命がけで女が溶かす」という話だが。この「しずむ女」もそうですね。


 ブラック・ジャックは今回の件で、最初は「公害を起こす企業に怒りを感じていた」また「公害病のメカニズムに興味があった」という動機で医療チームへの参加を決意するのだが。闇医者だし、最初は企業への一般的な怒りと公害病への学術的な興味であり、悪く言えば他人事で興味本位。無免許医だとバレて医療チームを追われても、そんなに困らない。無免許医として社会からはぐれた人間らしく、公的な医療チームに治療してもらえない戸籍のない月子の治療に絞って仕事をして、月子に金を渡せばいいだろ、くらいの熱量。(まあ、3千万を工面するのは常人ではできないし、そこらへんはすごいといえばすごいのだが)


 それが、月子の犠牲から生まれた結晶物(伝説の青真珠と重なっている)を、検死した医者に見せられて、一度は海葬が月子に似合うので海に捨てるように言ったブラック・ジャックだが、ラストシーンで「いや、やはりいただこう。公害病の研究に役立つと思います」と、受け取って「まだだ。まだ負けるわけにはいかない!」と薄く透過光の涙を浮かべて止め絵ハーモニー演出で終わる。


 外科医のブラック・ジャックは手を動かす仕事が得意で、基本的に化学とか病理学的な仕事はしない。(できないわけではない)しかも今回は患者がすでに死んでいるし、医療チームからも脱退した。なので、ブラック・ジャックの行動としてはかなり珍しいのだが、月子の体から出てきた青真珠を解析して公害病のメカニズムを解き明かそうと本気の熱量を燃やすようになる。
 出崎統監督の気持ちとしては、やはりブラック・ジャックのような冷めた男が「公害病」という大きなものに立ち向かう熱量を抱くようになるためには、「企業への一般的な怒りと病気への学術的な興味」だけでは足りなくて、個人的に深く交流した女が死んで、その女が恋の熱量を使って命がけで残したもの、というのが必要だと考えていたんだろうなあ。(コメントをくれた出崎統ファンの人の受け売りだが)
(原作のブラック・ジャックはわりとしずむ女に対してさらっと流して終わる連載漫画形式だったのだが。手塚治虫先生はキャラの死を割と軽く使う)
(公害や組織などへの怒りは原作のブラック・ジャックからあるのだが、原作のブラック・ジャックは不発弾で自分が子供の頃に大怪我をして、母親が死んだことが怒りのモチベーションだが。出崎統OVAブラック・ジャックシリーズは過去の自分の不発弾事故に関わる復讐などは終えている(もしくは描かれない)時点のブラック・ジャックらしい)
出崎統監督も母親に対してなにか思うところがある家庭環境だったらしいが、手塚治虫先生の作品によくあるマザコンっぽい感じは大塚明夫のBJ先生には似合わない)


blog.livedoor.jp
( 藤津亮太さんの読みでは、間黒男公害病の被害者の月子にBJ先生が不発弾事故の被害者である自分の境遇を重ねていたということだが・・・。)



 それはAIRCLANNADの「人生をどこか斜に構えて冷めている男の心を、女が命がけで熱くさせる」という展開につながっている。Genjiも万能で美形でトップ貴族だが満たされないと思っている光源氏(彼の内面世界は雪深い戦場)がいろんな女との恋の熱で燃えたり罪を重ねたりする話なのかな。


 AIRCLANNADはおじさんが主人公のBLACK JACKとは違って、ヒロインと年の近い青年が主人公であり、恋心を向けられるので割とストレートに結婚する流れになるのだが。(まあ、ちゃんと添い遂げられないという悲劇は原作からあるのだが)


 おくたんなのよさ、というピノコだが。今回の冒頭で神社にお参りするシーンは、この地域に伝わる人魚伝説を紹介すると同時に、ピノコがすごい形相で「いつか先生に好きだと言ってもらえますように!」と祈願する場面でもある。
 出崎統版のピノコはコメディーリリーフであると同時に、割とクレバーでテキパキと手術の助手を務めるパートナーでもある。なので、月子に対してもあまり嫉妬心を出さずにリハビリを応援してやるし世話も焼いてやる。でもそれは看護師としてのピノコであって、ブラック・ジャックの伴侶は他の女に譲る気がない、というのが序盤で示されている。そういうわけで、月子が自分と人魚伝説の悲恋と重ねて、「頑張って青真珠を手に入れないと振り向いてもらえない」とまで気持ちをこじらせて無理をして死んでしまったのは、ピノコのおくたんとしてのオーラが強かったから、なのかもしれない。
 人魚伝説を伝える神社の神様としても、ピノコの祈願と月子の恋心のどちらを優先するか迷うところであったのだろう。


まあ、ピノコも色々と難しいキャラクターだよね…。このKARTE10から10年後に作られたブラック・ジャックFINALではピノコと姉の関係がテーマになる。
nuryouguda.hatenablog.com


 しかし堀内賢雄さんの出崎統作品との馴染み方よ。

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nuryouguda.hatenablog.com
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