玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

ブラック・ジャック FINALを見た

 出崎統監督の遺作である。2011年作品。もっと早く見るべきだったのだが、ダメ人間なので延ばし延ばしになっていた。
 FINALということになっているが、これまでのOVAと連なるカルテ11とカルテ12とナンバリングされている。一本約45分。2話で1時間半。
ブラック・ジャック FINAL [レンタル落ち]

  • カルテ11 おとずれた思い出


ブラック・ジャックFINAL<OVA> カルテ11 おとずれた思い出


原作
ブラック・ジャック:おとずれた思い出



出崎統監督について
animation-nerima.jp


 もちろん、出崎統監督なので大幅に改変してあるのだが。どこまでネタバレしていいものか。まあ、ググれば荒筋は出る。ウィキにも載っている。




 
 ピノコの姉が坂本真綾さんで舞の家元の高貴な女性というのがうれしい。中村悠一堀内賢雄柿原徹也など、2011年の時点でも現代でも人気のキャスト。


 睡眠リズムが壊れて眠いのであまりしっかりしたことは書けないのだが、出崎統監督は本作では死の直前ということもあり、監修とシリーズ名誉監督という役職だが。


 3回パンや入射光や画面分割やハーモニー演出や鳥など、出崎統監督の技巧が尽くされていて、ストーリー以前にとにかく美しいアニメーションである。
 題材が「死にかける病に冒された女性が、伝説に伝わる舞を舞うという国家的な宗教や政財界で重要な神事に命をかける。しかし、その伝説の舞、白鷺天昇自体が彼女とピノコの病の謎を解くものだったという伝奇要素」というものであり、芸術がテーマなので美しい。


 また、命がけの稽古など、エースをねらえ!にも共通する出崎統ヒロインの感覚が見えて、とにかく切迫感と緊張感があって目を離せない。技巧的な演出なのだが、それを解釈したりというのは無粋。美しさに目を奪われる。もちろん、声優陣と音響の芝居の誠実さも気を抜かせない。まさに、出崎統のアニメーションの美学は天才的と言う他無い。どの程度、現場のスタッフワークにまで晩年の出崎統監督が関わったのかはわからないが、ノウハウが死後も受け継がれたらいいと思う。


 アニメオタクとして見ると、「伝説で短命であることが運命づけられた家系」「鳥を天に帰すことで呪いが解かれる」など、思いっきり劇場版AIRの影響があって、ものすごく出崎統晩年の集大成感がある。
劇場版 AIR (通常版) [DVD]


 出崎統監督は劇場版AIRの鍵ゲー悲劇を気に入っていたのだろうか・・・。大ベテランだが、エロゲーアニメでも本気で関わっていたんだなあ。劇場版AIRは好きなオタクなので嬉しかった。「カルテ10しずむ女」も難病で死んでいく少女の話で、AIRに影響を与えたと言われているのだが、AIRの伝奇要素がカルテ11ではブラック・ジャックに逆輸入されたような形である。


 そんな伝奇要素の病気を名探偵並みの推理力と科学の力と技術で解決するブラック・ジャックは最高にかっこいいヒーローだ。というか、免疫学でかなり難しいことをやっててすごい。まあ、実際にあるかどうかは別として(そもそも畸形嚢腫自体がアレだし)、SF的なおもしろさもある。


 原作では高貴な家柄に縛られて性格があまり良くなかったピノコの姉だが、出崎統バージョンでは高貴であるものの責任感などが「エースをねらえ!」のお蝶夫人や「おにいさまへ・・・」の宮様のような真剣さで描かれていて、その精神も美しい。
 ピノコの彼女に対してかける言葉も感動的だ。大塚明夫水谷優子のコンビのラストとしても趣が深い。
 また、高貴な女性に仕える笛師、中村悠一の秘めた感情もよい。ここらへんは源氏物語千年紀Genjiの雰囲気が出ていて、やはり美しい。


 「カルテVI 雪の夜話、恋姫」に見られるような和風ファンタジーの要素の集大成といったところか。
 もちろん、ブラック・ジャックのメインヒロインのピノコへの愛情も素晴らしい。


アニメーション監督 出崎統の世界 ---「人間」を描き続けた映像の魔術師
アニメーション制作技法―『4701白鯨』を創る

  • カルテ12 美しき報復者



ブラック・ジャックFINAL<OVA> カルテ12 美しき報復者

原作
www.akitashoten.co.jp



 もちろん、これも原作と大きく違っていて軍事要素は残っているが、手術を受けるのが原作では若い兵士だが、出崎統バージョンでは国家元首になっている。


 紛争地域で奮闘するブラック・ジャックというOVAシリーズのもうひとつの集大成という感じだ。ルパン三世のTVスペシャルのような架空の国で苦労している女兵士、みたいな要素。ゲストヒロインは朴璐美さん。


 朴さんだから、というわけでもないのだろうが、明らかに北朝鮮をモデルにしており、国家元首の跡取り闘いをする兄弟や核実験や拉致などの要素が入っている。


 8年前のアニメでは民主派が蜂起してリベラルな弟が独裁軍事的な兄を倒すのだが、その間に現実では金正男金正恩によって殺害されたり核実験の成功によりアメリカのトランプ政権と会談したりして、現実はアニメみたいに格好良くはならんのだなという感じがする。


 ブラック・ジャックと不幸なゲストヒロインとの淡い恋愛というのもOVAシリーズの要素の一つなのだが。やはり僕としてはメインヒロインはピノコだと思うし、それが一つ前で決着しているので、多少蛇足な感じがしたというか、順番を入れ替えたほうが良かったのでは?という気もする。


 しかし、ブラック・ジャックとかコブラに惚れた女はだいたい死ぬなあ・・・。

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