玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年9月 第9話 第13節

サブタイトル:第9話 [家庭教師VSニンフェット!頭令兄妹誕生の秘密です!!]
1997年9月20日の話が続きます。

  • 1997年9月20日:田園地帯

 養護学校を出て、頭令礼一郎の養女となった幼女のそら(五歳)は、宇宙人に連れられて初めてテレポートした。

  • 某県、田園地帯

 稲穂を垂れる田園絨毯の4キロメートル向こうの地平線に、薄らと山の稜線が青く見える農道に、ふと、白いワンピースを着た五歳のそらと、黒衣の男女の形をした宇宙人二体が出現した。
そら「家じゃない。田んぼだ」
レイ「家に行く前に、大切なお話がありますので、人の少ない所にお連れしました。現在、半径3キロ圏内に誰もおりません」
そら「ゆうかい?」
レイ「いいえ」
そら「そうだ。身代金はさっき払ってた。お父様は、あたしを買った」
レイ「その件ですが、そら様。まず、我々はあなたのお父さんではございません。嘘をついて申し訳ございませんでした」
そら「うん。あたしはもらわれたから。だから、うそのお父様だ」
レイ「いえ、そら様の養父の頭令礼一郎という存在自体が嘘なのです」
そら「はあ?」

レイ「この体をご覧ください」
 80代以上に見える頭令礼一郎の黒い羽織が、ズズと波打ち、みるみるうちに腰が曲がり肥満した丸い体躯が、縦に細く変形した。そらとほぼ変わらぬ高さだった顔は、数十センチも高くなった。

 着ていた物も体型に合わせて形を変えた。サングラスも四角形から丸に変わり、後頭部にしか残っていなかった薄い白髪も伸び、むくんでいた老人の顔からシミが消え、すこし痩せた初老のものになった。
そら「お父様が痩せて、背が伸びた」
レイ「普通の地球人は体を変形する事ができません。頭令礼一郎という人間がいることは、地球人に対する嘘です。我々は宇宙人です。
 ホモサピエンスのそら様は我々とは違いますので、我々はそら様の親ではありません。あの太った老人の形が頭令礼一郎、この形は宍戸隷司と御呼びください」

そら「あなたはししどれいじ。それでお父様じゃなくて宇宙人。でも怪獣より人間に似てる」
レイ「この顔も、人間の皮を被っているだけです。ご覧ください。」
 黒羽織の宇宙人は帽子を脱ぎ、裏返したそれにサングラスを納めた。再びそらの顔の高さに合わせてかがんだ宍戸隷司の白髪をオールバックにした顔の瞼を開くとレイの黄色いレンズがあった。
そら「おもちゃのウルトラマンみたいな眼だ」
 宇宙人の白い手袋が自らの体の喉元を掴み、さらに顔の皮をグイと脱いだ。


 人の皮の下から、ロボットの頭が現れた。黒い顔面に眼のような黄色のカメラが大小三対あり、頭と口に当たる部分は透き通った球となっていた。
そら「水晶玉だ」
 パシッ!
 そらの小さな二つの手のひらがレイの頭と顎の内部にある二つの全周囲観測複眼を保護するアクリルガラスのように見える並行位相集光高分子塊を叩いてから撫でた。
そら「すべすべ」
レイ「我々が人間ではないと御理解いただけましたでしょうか」
そら「ロボットだとおもう」
レイ「地球に捨ててあったロボットの体を、宇宙から来た我々が操縦しているのです」
そら「あなたは動くお人形の宇宙人。うそのお父様がずりょうれいいちろうで、背の高い方がししどれいじ。宇宙人のお人形はなんて言う名前?」
レイ「変装した姿の全ての名前に”レイ”がありますので、レイと御呼びください。こちらの我々はそら様の最初のしもべです。ですから、零番のレイです」
そら「しもべ?」
レイ「家来、奴隷、下僕。そら様を守り育て、身の回りのお世話をさせていただくものです」
ミイコ「こちらの我々の体もお見せいたします」

 黒衣の女が童顔に似合わぬ、その豊満な胸をはだけると、そこには乳房ではなく頭と同じ少女の頭が二つあった。
ミニコ「丸眼鏡の我々がミニコです」
ミミコ「三角眼鏡の我々がミミコです」
 女体の胸からあいさつした二つの頭がゴトッと地面に落ち、首の切断面から黒い布風船がフワと膨らみ、黒いワンピースを着た少女の形となり、眼鏡以外は同じ容貌の少女が三人立ち並んだ。
ミイコ「最初の我々がミイコです。三体合わせて、三番目のしもべです。ご覧の通り、我々も捨てられた人形を操る宇宙人です」
 と、黒服の合わせを直した胸が扁平になった少女が言った。
そら「普通の人形は動かない。わかった。宇宙人はほんとうにいた」
ミイコ「御理解いただきまして、ありがとうございます」
 6年間、自我が無かったそらであったが、その脳には記憶が物質として蓄積されていた。それを使って思考し、そらは宇宙人とファーストコンタクトについての会話していた。まだ、そら自身に自分が地球人の子供であるという自覚と実感もなかったので、それは無機質な確認作業に近かった。
レイ「しかし、我々が宇宙人であること、頭令礼一郎と宍戸隷司が同じである事、先ほどの瞬間移動のような地球人を超えた力がある事はご主人様以外の地球人には秘密です」
 人の皮と眼鏡と帽子を付け直してレイがそらに注意した。
そら「なんで」
レイ「我々はそら様をお守りするために地球にいます。他の地球人に我々が宇宙人であると、今のように説明する暇と必要はありません」
そら「わかった。でも、なんであたしをまもるの?」
レイ「それは、我々が地球に来た時の事から御説明します。説明の間、あの車にお乗りください」


 農道にいつの間にか、腕の先にタイヤの付いたショベルカーの車体の横に、半分に切断されたシトロエン小型自動車が貼り付けられた、サイドカーのようなものが、在った。
サイドバイクロン「我々は二番目のしもべ、サイドバイクロンです。どうぞ」
 すっ
 声を発したサイドカーのドアーが開いた。
そら「五人だと狭い」
サイドバイクロン「乗っていただけば、中の空間を拡大いたします」
ミイコ「それに、我々は一人分になれます」
 二つの頭を納めて再び巨乳になっていたミイコに手を引かれ、そらは乗り込み、宍戸隷司のレイがショベルカーの腕に設置されたオートバイのシートにまたがった。
そら「ほんとうだ。なかは広い。人形じゃない宇宙人もいるんだ」
ミイコ「我々は下僕ですから、そら様のためにいろいろな事をする者達がおります」
 隣の少女人形の形をした宇宙人が補足した。
 そして、サイドバイクロンの無限軌道と車輪が周り、進み始めたが、車輪は地球人に対する偽装であり実際には地面から数ミリ上空を滑っているので、そらに振動は無かった。
 ミイコが車中のキャビネットを開けると、バスケットボール、バレーボール、野球ボール、ピンポン玉、ビー玉が転がり出し、フロントガラスの前に整列して自己紹介を始めた。
ゴースト「我々五つは、五番目のしもべ、ゴーストです。そら様を陰ながらお守りいたします」
クロムのロザリオ「そして我々が六番目のしもべ、クロムのロザリオです。そら様を一番近くでお守りいたします」
 胸のロザリオがやっと発言した。
そら「宇宙人がいっぱいだ。でも、足りない番号がある」
ミイコ「1番目と4番目のしもべはこれから行くところにおります。七番目のしもべは世界中に」
そら「どこへいくの?家?」
ミイコ「その前に、病院に寄ります。そら様のただ一人の本当のご家族、そら様のお兄様のいらっしゃる所です。一番目のしもべがそこを守っております」
そら「あたしに本当のお兄ちゃんがいるの?」
ミイコ「頭令倶雫(ズリョウ・グダ)さまとおっしゃいます」
 そして、車中のミイコはそらに、6年後に再びレイが話すことになる身の上話をしたが、初めて見る車窓を流れる田園の景色と、その先にいるらしい兄に気を惹かれ、そらは覚えてはいなかった。聞いていたとしても覚醒したばかりの6才の幼女には元々認知できない話だったのだから、6年後を待つしかなかった。

透明プラスチックの最前線 (ポリマーフロンティア21シリーズ (27))

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