玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年11月 第11話 第3節

サブタイトル[ラスベガスと王の心]   
前節
創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年11月 第11話 第2節 - 玖足手帖-アニメ&創作-
  

  • 四辻の四つの塔の屋敷の朝食の間

そら「いただきまぁす。ぐびぐび。もぐもぐ」
 奴隷宇宙人が謎の超能力者との決戦を覚悟した朝であるが、主人であるそらは東窓から朝日が射し庭の花畑が臨める美しい広間で平穏に朝食を摂る。そらの健康が第一である。テレビを点ければ数時間前のアメリカでの核爆発事故が報じられていた。
そら「あらまー。戦争にならなくてよかったわねー。国外じゃなくてアメリカの真上だったからよかったのかな」
レイ「・・・・・・」
そら「レイ。なんか言いなさいよ」
 真っ白なテーブルクロスの上の皿に盛られたポテトサラダを掬うスプーンを受け取るついでに、黒執事に話を振る。
レイ「地球人の軍の整備不良による事故でしょう。テレビでも新聞報道でも、事態は既に終息傾向です。そら様が御心配される事はありません」
 テレビ画面には向かず、主人の背後で直立不動のまま人間の皮を被った宇宙人執事が表向きの返答をした。
そら「そーね。あたしは寝てたけど、ここに核攻撃があってもあんたたちが守ってくれるもんね。安心安心♪」
 機嫌良く苺ジャムトーストをかじった後は、オムレツにチューブ入りケチャップを軽快に振りかけるそらだ。
レイ「ええ」
そら「ところでさー、ミイコ達?あんた達って最近、合成食料を作らなくなったわよね。人間っぽい食事?」
 女主人はベーコンをフォークで刺して、食卓の脇のメイドたちに声を。
ミイコ「はい。お気に召されたでしょうか」
そら「うーん。微妙っ。なんか、社と食べに行った店のオムレツとはなんか違うのよねー」
ミイコ「申し訳ございません。そら様。不備がございましたら、ご指摘いただきたく存じます」
そら「なんっていうのかなー。薄っぺらい。というかのっぺりしてる。ちゃんとしたオムレツは、外はパリッとして、中はトロっとしてるんだけど。そういう感じが無いよね。パンも」
ミイコ「衛生を考慮し、均一に十分な加熱を加えたのです」
そら「やっぱりね。そういうのが宇宙人的発想なのよね」
ミイコ「今後は改めます」
そら「そうね、そうして。テレビでもやってるでしょ。今日の料理番組とか見なよ。錬金術とか使わなくっても、普通のフライパンとトースターでいいのよ。社と一緒にご飯作った時は人間の食事っぽいのができてたじゃん」
ミイコ「はい」
そら「でも、味付け自体は悪くないわ。ごちそうさま」
 なんだかんだと言って、十分な栄養の朝食を全部平らげるのがそらという女王だ。
レイ「そら様、新聞です」
 歯を磨いて食堂の隣の居間でくつろぐそらに、執事が新聞を差し出す。家庭教師の社が来るまでに、その日の朝刊に目を通すのが日課であり、宿題に成っているのだ。核爆発事故は朝刊が印刷された後であったので、記載されてはいない。ザッと目を通し、
そら「そろそろ社が来るわね。さて、お勉強しますかー」
 成長期の体をぐい、とそらして立ちあがり、二階の勉強部屋まで登って、そらの朝食時間はおしまい。テレビのニュースも核爆発事故の話題をもう終えて、主婦向けバラエティコーナーが始まっていたが、そらが食卓を発つと自律的に電源が切れた。


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