玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

二千年代の創造神富野VII最終章 富野由悠季の「アニメる力」

目次
二〇〇〇年代の創造神、富野由悠季のアニメる力・目次 - 玖足手帖-アニメ&創作-


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これで終わりです


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 理論と感性。理解と不思議。男女。現実の中の虚構の中の真実。戦争と平和。絶望の中の希望。
 これまでの章で、富野由悠季は陰陽が矛盾した存在だと書いた。そして、それが「アニメる力(ちから)」だと。
 そもそもアニメーション、アニミズム、無生物に命を見るという概念が絶望的に矛盾しているのだ。
 なら、現実を描かずにはいられない富野は、矛盾しつつ対生成で奇跡を描かずにはいられないのではなかろうか。ロボットアニメーションを富野が自嘲しつつやり続けているのは、そこに奇跡があるからだろう。命のないものが命を持つ、無力な少年が力を拡大するという奇跡。
 アムロは朽ちたガンダムを見て「まだ、助かるっ」、ウッソ・エヴィンは「ガンダムよ、天に昇れ!」と。
 芸能が「辛い現実からの訴え」であるというなら、リアル・ロボット・アニメでこそ奇跡は起こりたまえ!
 富野の中には陰陽が蠢いている。なら、その中心は中庸であろう。回転する太極図のように。
 富野は『海のトリトン』時に決めた信条を次のように語る。

「子供に向かって、あなたにとってこれはとても大事なことなんだよということを、大人が一生懸命話せば、その時に全部理解できなくても、絶対にその話を思い出してくれる」
「その時に子供に向かって話す大人の言葉は、右でも左でもない。時代論でもないだろう。
(中略)
それはコモンセンスしかないんですよ」
「二、三年の時代性なんて全然問題じゃないの。お勉強のできる人にとっては大きな違いなのかもしれないけど、多くの人にとっては、そこには何の違いもない」
「ともかく嘘はついちゃいけない」
(「富野由悠季 安彦良和 対談」、『月刊ガンダムエース』二〇〇九年九月号)

GUNDAM A (ガンダムエース) 2009年 09月号 [雑誌]

GUNDAM A (ガンダムエース) 2009年 09月号 [雑誌]

本気で語る話なら中庸の奇跡くらい子供に見せたい。それでも、物語は抜きがたく嘘なのだ。
 『リーンの翼』新装版では、行き詰まりを見せた現代地球に残されたバイストン・ウェルの記憶が、人類を救うかもしれないという奇跡を見せた。『聖戦士ダンバイン』のチャム・ファウのように。その後書きで、富野はこう述べる。

「生きて行く上で、過去を全否定してしまうのは間違いなんです。
(中略)
でも同時に、過去が素晴らしかった、という意見もイヤなんです。新しい明日に過去なんて持ち込んでもらっちゃ困る、ということも強く言いたい。
でなければ、僕は若い人に『生きろ』と言えないですよ。年寄りは若い人にウソでもいいから『明日という日があるんだよ』と言わなくちゃいけないと信じている立場ですから」
(『リーンの翼』、角川書店、二〇一〇年)

ウソでいいのかよ! 本当は滅ぶしかないのか?
だが『Vガンダム』を見た不登校の子が「ウッソみたいな(自分より年下の)子が頑張っているのに、自分も頑張らないと」と学校に行き出したという事実はある。富野監督の身近でもあったらしい。(『富野由悠季全仕事』)

富野由悠季全仕事―1964-1999 (キネ旬ムック)

富野由悠季全仕事―1964-1999 (キネ旬ムック)


 それを積み重ねていければ、死に逝く者のアニメる力(ちから)でも未来を拓けるかもしれない……。せめて五十年生き延びられたら、その間に誰かが生まれるかもしれない。過去を得た年寄りは、それを証拠に「明日がある」とウソかも知れなくても、その誰かのために言わなくちゃいけない。
 そういえば、小惑星探査機「はやぶさ」が二〇一〇年六月十三日に地球に再突入する前にJAXAのスタッフは『無敵超人ザンボット3』のエンディング「宇宙の星よ永遠に」を聴いていたらしい。
twitter Hayabusa_JAXA 、 
はやぶさ帰還ブログ on Twitter: "6/13午前1時。再突入まで残り22時間です。残り距離は約42万km。検索で有名な某先生も粋なことをしますね。再突入はまだ先です。皆さんも好きな音楽でも聴いてリラックスして休んでください。わたしも大好きな堀光一路さんの「宇宙の星よ永遠に」を聴きながら仮眠します。(IES兄)"
http://twitter.com/Hayabusa_JAXA/status/16013506680、二〇一〇年七月十八日閲覧)
富野も『ガンダムエース』二〇一〇年七月号の「教えてください。富野です」でJAXAはやぶさ」プロジェクトマネージャ川口淳一郎氏に取材に行っている。富野アニメ世代が実社会で活躍する時代でもあるのだ。

GUNDAM A (ガンダムエース) 2010年 07月号 [雑誌]

GUNDAM A (ガンダムエース) 2010年 07月号 [雑誌]


 「アニメる力(ちから)」が人間の活力に成り、現実と対決する力に成れれば、本当にアニメーションは二〇〇〇年代の創造神になれるかもしれない。
 だが、「アニメる力(ちから)」自体も矛盾した存在だ。アニメを見るだけで力を使い果たすオタクもいるだろう。富野作品の中の現実を見るだけで世の中を知った気になり、代償行為に満足して終わるオタクもいるだろう。『キングゲイナー』のゲイナーのように「アニメる力(ちから)」から現実に対抗する力を得ることもできるし、オーバーデビルのような闇に飲まれる事もあるのだ。「アニメる力(ちから)」はカンフル剤で、過剰摂取はいけないのか?だけど、僕は、素晴らしいアニメを素晴らしいと伝えたいし、それを見たいのだ。

君は、生き延びることができるか?『機動戦士ガンダム
絶望しなければね……。『リング・オブ・ガンダム