玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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無敵鋼人ダイターン3第第17話 レイカ、その愛 富野超能力世界観

脚本:松崎健一 絵コンテ:斧谷稔 演出:小鹿英吉 作画監督:山崎和男
あらすじ

http://higecom.web.fc2.com/nichirin/story/story17.html
番組のガンダムミノフスキー粒子ニュータイプの設定を生んだ人として知られる松崎健一さんの脚本家デビュー作が今回だったりします。のちにSF路線やファンタジーものを多く手掛ける人

タイトルだけではどういう内容なのか、いまいち分からないのですが、端的に言うと、勇者ライディーンへのセルフオマージュの敵が現れるって話。

姿を現した国家レベルの島。それは古代から蘇ったルーミス帝国であり、移民を募集していたのだ。
 潜入調査を開始した万丈とレイカ。レイカは皇帝アキラスと出会う。彼は争いを嫌っている男で、彼の前には特殊な防御装置がない限り考えが読まれてしまうのだ。そして彼はかつてアトランティスムー大陸を沈めた人物である。

前回までが洋画やスタンリー・キューブリックへのオマージュでストーリーを組み立てた話が多かったのだが。今回はもろに「海のトリトン」と「勇者ライディーン」のセルフオマージュですね。「アキラス」ってもろに「ひびき洸」だし。アキラスというアキレウスみたいな名前はギリシア神話を連想させ、海のトリトンっぽさもある。アキラス皇帝は平和を好むあまり、争いばかりしていたムー大陸アトランティス帝国を滅ぼし、1万2千年の眠りについていたが、万丈たちの時代には戦争がなくなったので目覚めて沈んでいた国家を浮上させた、ということだ。だが、実は彼を目覚めさせたのは先にめざめたルーミス帝国の将軍ダムデスであった。彼は皇帝を裏切り、メガノイドに忠誠を誓い、自分の国の古代超科学力をメガノイドに引き渡すために皇帝たちを目覚めさせたのだ。
そして、メガボーグとなったダムデスはルーミス帝国のエネルギーを流用して、ダイターン3を圧倒する。だが、レイカが皇帝アキラスにダムデスの裏切りと現在の争いの根源であるメガノイドのことを伝え、アキラスも彼女の精神を読んで事態を確信し、冷凍睡眠から目覚めた部下の司祭たちの超能力を以ってダムデスを押しつぶし破壊する。
続いて、破嵐万丈ダイターン3も超能力で破壊しようとする。
絶体絶命!
だが、レイカの万丈に対する愛情が彼女の精神力を高め、超能力で万丈を殺そうとする皇帝アキラスの精神波動を逆に押しとどめ、万丈を殺させなかった。
これはなかなかファンタジー要素の使い方が面白い。
精神力で発生させる皇帝の超能力を、逆に普通の女性のレイカの愛情の精神力が凌駕して、精神をハッキングするというか、精神を直接説得するというか、そんな感じで攻撃をやめさせる、というアイディアが面白い。精神力が超能力になるのなら、相手の心を読む超能力者に対して、普通の人間でもさらに強烈な思念を浴びせて超能力を破る、と言うのはなかなか面白い。
キングゲイナーの「嘘のない世界」みたいなトリックでもある。
「強烈な愛情」が超能力を凌駕するって言う。
でも、そういう超能力のトリックよりも、「その愛」が大事なんだ、って言う絵や声の芝居の付け方とサブタイトルの付け方にぬくもりがあって、良いエピソードだと思います。


今後もSFファンタジー(と入浴シーン)を多く描く松崎健一さんの脚本デビューという事で、そういう超能力とか古代文明の理屈や世界観をさりげなくきっちり設定したうえで、愛の力のドラマに昇華しているのが面白い。


また、レイカと皇帝が精神的波動のやり取りをする時、目から波みたいなものがビヨンビヨン出ていて、∀ガンダムの神話の王のクワウトル王とロランがニュータイプ的な感じで感応するところにめちゃくちゃ似ていて面白かった。
ダイターンのこの頃から、ニュータイプのアイディアや演出法が富野監督の中にあったのかもしれない。斧谷稔絵コンテだし。
もちろん、富野監督はガンダム以前のトリトンライディーンで精神的なオカルトを題材にした人で、幸福の科学エル・カンターレ子安武人アニメシリーズみたいなものとの親和性は高かったんだが。今回のエピソードもトリトンライディーンのセルフオマージュでありつつ、ガンダムニュータイプのテレパシーに通じる描写もあり。
富野作品として地続きな感じを得ました。
皇帝がレイカに対して「良き心を開くのだ」とか言うのは、イデオンに通じる言い回しでした。


それと、皇帝や司祭がテレパシーをする時に体が透けている幽体離脱をして他のところにワープして会話したりするのが面白かった。


で、再び眠りについて、世界から争いが無くなるのを待つという皇帝がレイカに対して「世界を平和にするか地獄にするかはそなたたち次第だ」って言うのは、まあ、オチの付け方としてはスタンダードな所。


超能力でムーやアトランティスを滅ぼして地殻破壊装置とかを持ってるけど、メガノイドを滅ぼすのは手伝ってくれないんだ…。争いを嫌ってる人だから…。無責任と言えば無責任っぽくもあるが、超能力国家が万丈に手助けしたらストーリーの流れが変わってしまうし、ゲストエピソードとしては、レイカのキャラクターを掘り下げた所でゲストは退場するのがスタンダードである。
また、レイカが大活躍したのに対して、ビューティーもそれなりにマリン・アントワネットという潜水艦で援護射撃をしたり、コメディーパートを担っていたりしてダブルヒロインのバランスを取ろうとしているのも重要な所かな。