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創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年11月 第11話 第11節

サブタイトル[ラスベガスと王の心] 


前節
創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年11月 第11話 第10節 - 玖足手帖-アニメ&創作-


1「エリア0、待ち合わせ1分前を切った。この状況でキング・オブ・ハートと会談する事は不可能と判断する。会見中止を要請する」 
0「エリア1、意図を明示せよ」
1「我々とエリア4は、エリア0の行動中に、地中からインターネットを通じてアメリカ合衆国の核ミサイルシステムに侵入し、先ほど完了した。核ミサイルの不条理発射は超能力同盟が先に行った事。我々が行っても構わぬ」
 日本の宇宙人の不条理ハッキング実行でエリア51やネリス空軍基地からの砲撃も突如として、やんだ。だが、自律行動するケツァル・コアトルだけはまだ止まない嵐の中、レイを探している。
4「同盟の構成員である可能性があるため、他の地球人も無差別核攻撃で、頭令兄妹以外は全滅させる。頭令兄妹も破壊した後復活させることができたのだ。全ての人間の再構成には数十万年かかるが、仕方がない」
 第一と第四のしもべであり、頭令兄妹を守る建築物型の国家は、その地に張ったインターネット網を通じて工作していたのだ。そして兄妹を守るための最終決定を下した。
0「罪を背負うことになる」
4「だが、我々はすでに頭令兄妹を殺した。一度背負って、償っている罪である。二人殺して償うのも、数十億人殺して生き返らせるのも変わらない」
7「むしろ、観測データが取れている分、頭令兄妹の時よりも容易である」

1「然り。再構成する過程で同盟の一員である可能性のある者は復活させなければいい。
 貴国のいるラスベガスから地球生物を滅ぼす。」

 宇宙人は地球人の生命を傷つけることは嫌う。が、最終的に復活させると決めたのなら、一時的に絶滅させるのは構わないと判断した。地球人の価値基準とは違うのだ。そうしてアメリカの基地から戦略核ミサイルが弾道軌道でラスベガスのレイたちに向かって飛ぶ。
1「抹殺まであと10秒。エリア7には全地球生命の現情報スキャンを依頼」
7「了解」

  
  
0「反対する」
7「悪い案ではない」
1「エリア0、もう遅い。最初のミサイルは落着する。備えろ」
0「ならば、我々にさらにいい案がある!
 そのためにミサイルを使用する。エリア2、3、5、に協力を要請する」

 突如立ち止まり、レイは天高く両手を上げた。その手には、6番目のしもべのクロムのロザリオが。そらの眼を盗んで超次元ワープをしてきたのだ。
6「地球人抹殺には我が国も反対である。我々も力を貸そう」
  
  
0「超次元トラクタービーム発射。核ミサイルを捕捉する
  
  
 通常の数倍の国力を得たレイの掌から延びた見えない力が、雷雲を貫きエリア51に落下しようとする宇宙ロケットサイズの核ミサイルを握り、レイはそのままものすごく長い釣竿を上げるかのように、引っ張った。
 着地寸前で無理矢理軌道を変えられた超音速の弾道ミサイルは嵐を割き泥を巻き上げ突進してくる。
 それに向かって、レイは体当たりをかける。一瞬、ミサイルは地面と水平になり、レイの両腕にキャッチされて停止した。
0「バリア展開」
1「どういうつもりだ。エリア0」
2「我々は既にエリア0と同化している」
5「エリア0の重力エンジンに我々の重力子井をバイパス」
3「ノンロスエネルギー輸出維持」
6「我が国のバリア、エリア0と共鳴成功。エリア0と操作を共有」
7「ミサイルをスキャン。燃料、弾頭、ともに安定。爆発可能性情報をエリア0と同期。確認せよ」
4「エリア7、造反するのか」
7「我々は観測が役割である」
0「状況確認、エネルギー・パワー変換問題なし。ベクトル空間変奏。」

 合気道の達人がするように静かに、しかし数千分の一秒以内の素早さで、レイはミサイルの向きをそっと縦に向けた。運動エネルギーを維持したまま、ミサイルの物体としての位置を宇宙人の超微細物質ハッキングによる量子ジャンプで相転移させたのだ。余剰のエネルギーは熱と光に変換され、レイがいた地点が白熱し気化した水と地殻の蒸気が衝撃波を起こす。
 が、レイとミサイルはすでにそこにはいない。もともとの超音速にレイのパワーを上乗せして衝撃波よりも早く急上昇している。宇宙人の強引な空間物質転換により引き延ばされた噴射剤の炎の光がほぼ直線に立ち上り、乱雲に突き刺さる。濃く暗い雲が衝撃波で円形に消し去られて晴天の穴となる。轟音と噴射炎を吐き出すミサイルの後部エンジン、垂直尾翼の上にレイは立っている。
0「このミサイルの軌道変更は地球人には一連のエンジントラブル事件として認識される。
 そして、同盟が先に行使した“ミサイルの誤作動”という不条理は、我々も正当に使用できる」

 レイを狙っていた超音速無人機は人間のパイロットが乗っていれば即死している急激な機動で方向転換し、大気上層に昇っていくレイとミサイルを追う。ネバダ州に暴風を吹き荒らしていたセブン・センサーの一部もレイの体の中に宿って力を貸したので一転して嵐が止み、蒼穹を核ミサイルに乗ったレイとケツァルコアトルが、飛行機雲を引きながら高く高く昇ってゆく。泥と爆弾に洗われた射爆場の砂漠を衝撃波が均していく。
  
  

  • 待ち合わせ地点上空

 レイを載せ昇るミサイルとケツァルコアトル。無人戦闘機の弾丸は尽き、体当たりを敢行しよう追いすがる。

1「エリア0、貴国は核ミサイルの信管に侵入し停止させた。爆発させずにどうするつもりか」
4「貴国近傍に存在が予想されるキング・オブ・ハートおよび地球上の同盟を抹殺するためには地球人の作った核兵器を連鎖させるのが最も効率的である。貴国の行動が状況を改善するのか?回答を要請する」
0「エリア1、4、援護に感謝する。このミサイルで我々を上昇させた事で、問題が解決した。生物を殺傷する必要はない。
 待ち合わせまで数秒、この瞬間、この高度、我々が超時空警戒している状況で、我々エリア0に接近するものはこの無人戦闘機だけだ。他の存在、運動、通信は無い。“待ち合わせ場所にいるはずの招待主”がいない。
 完全に外界と遮断された時空間のこの点で、超音速で離陸した我々を我々として認識し、接近するこの無人戦闘機は異常だ。この機種のコンピューターは防衛拠点から遠ざかる我々をここまで全力で追尾するようにプログラムされてはいない。


 レイがそう看破し、ミサイルに肉薄して相対距離を詰める無人戦闘機の機首へ、接触調査するため飛び移った刹那、そこから錐状の槍が突き出され、レイの顔面を貫いた!が、破壊したのはレイの顔の皮だけ、破れた顔から人型ロボットの頭が出た。その行動の意味をレイは冷静に分析した。
0「この戦闘機にはこのような部品はない。この攻撃は「カード出現」、「ミサイル誤射」と並ぶ新たな不条理である。だが、前回と違い、今回は完全に我々が時空の流れを観測している。この不条理は外界からもたらされたものではなく、この戦闘機の内部から発生した。
 つまり、この自律型無人戦闘機の内部に、キング・オブ・ハートがいる。
 超能力が直接不条理を行使する状況ならば、我々もまた不条理で反撃する事は、
正当!


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