と、上記のように響け!ユーフォニアムの被写界深度の浅いピンボケが多用される撮影処理演出に着目した記事を書いた。
人物にピントが合っていて背景がボケてる。
なので、実写ドラマ映画みたいなカメラ目線のリアリティを感じさせようという演出なんだと思う。
被写界深度とは。
カメラでピントの合う範囲。被写界深度が浅いと、背景や手前にあるものがボケて写るので、奥行きが感じられる。
で、上記の記事では「京都アニメーションは実写映画のようなリアルな表現を目指しているのだろうか」と書いた。
しかし、11話まで見て、そうでもないような気がしたので過去の京都アニメーション作品の被写界深度と比較してみようと思った。
元々、京都アニメーションは仕上げや撮影などを行う会社が母体だったので、京アニの撮影に対する態度や演出の変遷をまとめて見ることも面白いのではないかと思ったのだ。
ハルヒシリーズでもかなりリアル目の作画で当時話題になった。ライブシーンは楽器アニメなのでユーフォニアムと共通点がある。なのだが、数人が並んだシーンでもピンボケ処理は無し。照明でちょいぼかし。
多人数のシーンでもピンボケはないっぽい。(全話探したわけではない)
多人数のダンスシーンでもピントは同じ。(同原画?)
重ねた時に後ろがチョイボケ
ふわっとした背景作画で、周辺をちょい暗めにしているけどキャラクターのピントのいじりは無いっぽい。
- 空を見上げる少女の瞳に映る世界(MUNTO様)監督 木上益治
教室のちょっとごちゃごちゃとした多人数のカットだけど、プレーンに書いてある。
同じようなシーン、響け!ユーフォニアムだったら、後ろの生徒のレイヤーにぼかしを入れて背景も机と壁と窓でピントをずらして描いてる。
空を飛ぶこういう広がりのあるアクションカットで、ちょっと奥のキャラにぼかしが入ってる。これは空間演出のためだろう。
楽器アニメ。なのだが、放課後ティータイムのバンドメンバー全員にピントが合って作画されている。楽器の質感もキャラとそれほど差が無い。
ユーフォニアムだと4人横並びでもピントをそれぞれ変えているし、金管楽器の硬質感と人間キャラクターの柔らかい絵柄とは描き分けがされている。
- 日常 監督 石原立也
元が萬画だからと言うのもあり、キャラクターと背景の建物の線も割と均一に描いてある感じ。(漫符的表現での演出変化はあるが、実写的なピントのいじりは少なめだった印象)
文科系部活アニメという共通項がある。全体にカラー処理をしているが、割と背景も硬めに書いてあるしキャラクターのピントも一定。
最終回の必殺のシーンで、キャラにピントを合わせて背景をぼかしている。
ここもかなり撮影処理で背景や光源をいじっているが、キャラクターの線画自体は割と一定。
- 中二病でも恋がしたい! 監督 石原立也
これぐらいの距離だと、ユーフォニアムだと台詞ごとにピン送りしそう。
凸守のピントがちょっとボケてるが、Tutiに継承されてるっぽい。
全体的にフラットで明るい絵柄。最終回でもあんまり奥行きが感じられない雰囲気。
バトン部の発表会でも、あまりぼかしが無い。デラが飛び出しても、そんなに奥行き感は出してない。
距離感が無い、もち蔵。
史織ちゃんはちょっと距離感を感じさせる心情演出で、ちょいボケ気味。
- Free! 監督 内海紘子
手前人物の後ろ頭をボケさせるのは割とスタンダードかな。
飛び込むのをボケさせたり、
背景のピントをずらして空間演出をしてる。Free!は絵柄と言うか筋肉もリアルっぽい絵柄なので、背景のピントの使い方も実写寄りにしているんだろうか。
部活(?)シーン
ミュージックPVっぽく、人物にピントを合わせて背景にぼかし。
バトルシーン。破片とかには撮影処理でぼかしを書けてるけど、キャラクター自体にはピントが合ってる。
ただ、現在公開中の劇場版では、キャラクターの後ろ頭(というか画面周辺)をぼかして背景はさらに遠くにぼかすという被写界深度のいじり方をしていて、これはユーフォニアムっぽい。
基本的にギャグタッチなので、そんなに実写を意識したカメラワークは無さげ。漫画的なディフォルメタッチの絵が多い。
立体的な構図でも周辺をちょい暗くしてるくらい。
ただ、ロマンチック構図では、キャラを引き立たせるために背景とか絵の周辺をぼかしている。
ユーフォでも似たような構図があり。
- まとめ
元々京都アニメーションはこった撮影をする会社だったが。どうやら、氷菓以降に背景や光源を派手にぼかすデジタル技術が浸透したっぽい。
空間演出のために手前奥をぼかすのは割と昔のアニメから使われている手法だが、京アニでも作品の絵柄のタッチやシーンのニュアンスによって、立体感を強めるのか、プレーンさを見せるのか使い分けているようだ。
それで、キャラクターの印象を強めるために線画にもぼかしを入れる傾向は徐々に強まっているようだ。
ただ、響け!ユーフォニアムは単にデジタル技術の向上や実写指向のためだけにピントを調整しているわけではなさそうだ。
過去の作品の絵と比べて、やはり明らかに響け!ユーフォニアムは被写界深度が浅く、それを意識させるように演出している。
それには作品固有の理由があるのではないか?
そう言う記事を次回書きます。
そして、次の記事が始まるのです!