良作である。
美少女日常系アニメにカテゴライズされそうな絵柄で、女子高生の青春を描いたアニメである。www.youtube.com
だが、そこは佐藤順一作品。
美少女がたくさん登場する作品であるが決して媚びてたりエッチだったり下品だったりしない、上品な質アニメに仕上がっている。
目が大きい美少女のアニメだが、とてもさわやかな雰囲気だ。これはOVA版、TVシリーズ版とも共通している。しかし、今回はさらに映画版という事でキャラクターデザインもリファインされて、キャラクターもちょっと成長し、丁寧な作画が行われている。
惜しむらくは、私が30代の男性であるということ。私が10代の女子高生で、このたまゆらのキャラクターの女子と一緒に成長する感じで視聴できていたら、それは豊かな視聴体験だっただろうな、と思う。
あと、女性キャラクターのファッションセンスの良さ、キャラクターの性格に合わせた服装デザインが非常に良い。これはキャラクターデザインの飯塚晴子さんの手際だろうし、佐藤順一監督のディレクションや他のスタッフ、アニメーターのフィードバックもあるんだろう。
富野由悠季監督もGのレコンギスタ第9巻収録のGのレコンラジオ最終回で「男性スタッフの描く女性キャラクターは媚びた類型が多く、一面的すぎる。だけど、女性のアニメーターが描く時の女性は豊かだったりもします」と仰っている。
佐藤順一監督も微妙に富野監督の下でZガンダムを作ったりした弟子のひとりなんだが、そこら辺、女性の描き方にこだわりがあると思う。
佐藤順一監督作品、好きです。
そういうわけで、キャラクターと同じくらいの年恰好の女性アニメファンのティーンに見てほしいんだが、観客席は満員だったとはいえ、女性声優目当ての、私のような三十代や大学生の男性が多くて、申し訳ない・・・。ごめんな、オッサンで…。
たまゆら映画第二部は高校三年生になった岡崎のりえと塙かおるが夏休みに自分の針路を見つめ直す、と言う話で、非常に自然体。映画版だからと言って特にすごいイベントや悲劇や事件が起こるわけではない。確かにかおるとのりえの悩みが深まって解決される、と言うドラマはある。だが、それはあくまでありうる日常生活の範囲内である。
そういうわけで、陳腐な高校生日記と見ることもできるし、十代の少女の何でもない悩みを取り揚げて映画にするほどのことか?とも思う。そういう意地悪な見方もできるんだが。
しかし、まあ、何でもない悩みを支えてあげる周りの人たちの関わり方が奇蹟的で、しかし奇跡的なんだけど、それも可能な偶然の範囲で、そう言う現実的でありながらも巧みにドラマを作っている。そういう偶然やゆるい人とのつながりで若者たちは少しずつ支え合ったり助けられて成長していけるんですね、と言う優しい世界。
だが、まあ、現実にはそんな優しい世界ではなく若者は悪い大人に利用されたりチャンスを奪われたり無知に付け込まれた挙句自己責任だと放り出されることもある。だから、「所詮たまゆらはファンタジーの優しい世界なんだよね」という事もできるんだけど。
だけど、そういうきれいごとの世界も人間の可能性としては充分現実の範囲内だし、それは目指していきたいし、ちゃんとした大人になりたいですね。と言う気持ちとしては30代が見てもよかった作品です。
まあ、そういう説教臭さみたいなのは佐藤順一作品には地味にある。でも、まあ、かわいい女子高生の楽しい日常のギャグシーンとか、美味しそうな食べ物とかきれいな景色と言う映画的なお楽しみの場面もあるので。
また、悲劇とかSFとかメンヘラとかトラウマとかを強調してドラマにするアニメもたくさんあるなかで、そんな人の嫌な部分を強調しなくても劇は作れるんだよーと言う意志表示のポジティブさとしても、この作品は評価できる。僕は基本的にひねくれ者ですが、たまにはこういう人への信頼が描かれた作品も見たい。
あと、劇中で登場した広島お好み焼き「ほぼろ焼き・極」ってものすごいレシピだけど、パンフレットによると実在するらしい。竹原市とたまゆらはコラボしているけど、モデルになったお店があるらしい。www.horikawa-1919.co.jp
タイアップメニューを2013年からやっているらしい。僕も今すぐ旅行に行く金はないのだけど、いつか食べてみたいので、それまでほぼろ焼きをやっててほしいな。
たまゆら~卒業写真~ 第1部 芽-きざし-は、うっかり映画館で見忘れて、近所のレンタル屋にもなく、かと言ってDVDを買うのも高い・・・。
と思っていたら、GyaO!で無料配信されていたので見た。昨日までだったんだけど…。
たまゆらの過去作品も配信中。gyao.yahoo.co.jp
有料版GyaO!では432円で配信中!ネットでDVDレンタルよりもお手軽だしレンタル屋にはなかなかおいてないので、こちらで見るのがリーズナブルかと。streaming.yahoo.co.jp
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私もガンダムとかメンヘラアニメとか変なSFとかアイドルアニメばっかりじゃなくて、こういうたまゆらのような地味な佳作も応援していきたいんですが。(でも、たまゆらは結構リアルイベントで人気があるらしいしDVDもイベント上映で販売される程度には固定ファンがいる氏5年も続いたプロジェクトなので僕一人が応援しなくても十分成功作品っぽいんだが)
予告編で「ARIA The AVVENIRE」を見た。これもサトジュン監督作品で9月26日上映開始。サトジュン、精力的にいろいろやってんなー。
実は僕はARIAは元々の放送が映らない地域にいたのと、長いシリーズだから、っていう事で見てなかったんだが…。見るべきか…。多分サトジュン監督はアニメ屋としてメジャー感覚を持ってる人だから一見さんお断りではなく、それなりに知らなくても楽しめるようには作ってくれてると思う…。ガンダムもほら、最低限他の作品を知らなくても楽しめる作りにはなっているし…。
『ARIA The AVVENIRE』公式サイト
そして、「心が叫びたがってるんだ。」2015年9月19日公開予定。『ここさけ』の略称が用いられる。 監督:長井龍雪 脚本: 岡田麿里
うーん。なんだかトラウマ吃音症障害者美少女で感動と言う感じなのか…。そういう24時間テレビ的なキャッチーさはたまゆらとは違うんだけど。
でも、機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズの監督と脚本と言うわけで、ガンダムの予習を兼ねて見るというのも一つの見方かもしれない。
一応、僕はネットのブログ界のガンダム係だし、基本的には貧乏ですけど、アニメファンとしては大ヒット作以外の作品も見てアニメ界を応援していきたいです。
でも、アニメ(ーター)見本市を見て感動するほど、アニメーションの表現そのものが好きと言うほどのディープなファンではないし、やっぱり物語が見たい、と言うのはある。