玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。旧玖足手帖から記事・ブクマを引き継ぎました。


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『FSS』を読んだことのない僕が、『GTM』を見るために14巻まで読了した結果

こんにちは、富野信者のグダちん(@nuryouguda)です。36歳年男です。

togetter.com
 三番煎じです。


突然ですが、みなさんは『ファイブスター物語』(ファイブ・スター・ストーリーズ、英字表記:The Five Star Stories、略称:FSS)という作品をご存知でしょうか。アニメ雑誌月刊ニュータイプ」にて1986年4月号から、休載を何度か挟んで連載されている。また、1989年には第1話を基にした劇場用アニメーション映画が作られている。今までに単行本を累計850万部売り上げている。いわゆるロボット萬画です。
FSS IMS 1/100 L.E.D.MIRAGE V3


1982年に生まれた私は、これまで富野アニメを全部見てきました。もちろん作品の存在自体は知っていましたし、モーターヘッド(MH)のガレージキット作例も小学生の頃からホビージャパンで見たことはありました。しかし、私にとってのF.S.S.とは「読もうと思ってはいたけどいまいちきっかけがつかめない萬画」でしかなかったのです。


そんな私が、今更FSSを全巻読むことになったのは、ある出来事がきっかけでした……。

  • GTMハラスメント

6年前の『花の詩女 ゴティックメード』(GTM)が上映しているときに、ひょんなことから重いうつ病になりました。なので、劇場まで見に行く気力がなく円盤になるのを待っていようと思っていました。


しかし、NT2014年9月号で、永野監督は「映画で作ったものは映画館で見ないとおかしいじゃない?」と言ってきたのです。


まあ、わからなくもありません。映画用に作られた絵と音響を映画館で勉強することは、確かに重要なことでしょう。
ユリイカ2012年12月臨時増刊号 総特集=永野護 『ファイブスター物語』の普遍、『花の詩女 ゴティックメード』の衝撃



しかし、30数年前に開始したFSSの派生映画のGTMを映画館で見ることが現代のオタク活動に果たしてどれほど役立つのでしょうか。いや、そもそもこれは映画館に行くとかなりの確率で風邪を引く私に対する嫌がらせなのではないか。もしくは、365日作品とロボットデザインの事ばかり考えている自分を正当化するために、後に引けなくなっているのではないか。はたまた、「変化を恐れるのは老人だけだ。立ち止まるならその立ち止まった時点で死んでしまえばいい」という一見深そうな課題を与えることで自身の尊厳を守ろうとしているのではないだろうか……。


いずれにしても、GTMが円盤になっていないので見れないことを背景に、精神的な苦痛を与えられている以上、これは永野護(クリス)ハラスメントと言わざるを得ません。クリハラです。ファイスタです。


そして、ドリパスのイベント再上映で急きょ、10月21日に近場でGTM再上映されることが決まり、チケットを買いました。


こうなったら、全巻読んで反論のひとつでもしてやろう、そしてついでに世にはびこるクリハラを滅却してやろう。そんな訳で、決してクリス先輩に言われたからではなく、2年前から積んでいたFSSを全巻読むことにしました。(リブート4までは読んでたんですけど、リブート5から14巻まで1週間で読んだ)


ファイブスター物語 リブート (1) LACHESIS (ニュータイプ100%コミックス)


  • 最強神と愉快な仲間たちのお話

まずはじめに、FSSを読んだことがない方のために、どのような作品なのかを簡単にご説明します。

FSSは、人気ロボットアニメ『ブレンパワード』のデザイナーとしても有名な永野護による萬画作品で、ガンダムを作った富野監督が1984年に放送した『重戦機エルガイム』をモチーフにして作られています。

主人公である「アマテラスのミカド」と愉快な仲間たちが、協力したりしなかったりしながら強い敵たちと戦っていくおとぎ話で、途中、主人公が神であることが発覚したり、女になったり、分裂したり、世界征服(予定)をしたり嫁を追いかけて異世界に飛んだり(予定)します。


また、タイトルにもなっている「ファイブスター」とは、スタント遊星を含む5つの恒星系、人類が居住可能な5つの惑星を差す。

  • 反論開始

FSSを読了したときの率直な感想は、「最高にすごく尖ってる」というものでした。読んでいる最中も、「早く次のエピソードを読みたい!でも途中の謎の戦車やファッションの解説を読むのがしんどい。いや、本当にドイツ戦車のプラモ関係ないだろ!!!!」という、感情でした。


とはいえ、日本のみならず世界中で多くのファンを持つ伝説の大ヒット作品であることは間違いありません。

何がFSSを伝説たらしめたのか、そしてなぜ私はその作品にハマることができたのか、ということを「ストーリー」「世界観」「時代背景」の3つのテーマに分けて考えてみました。

  • ストーリー

本作品がヒットした要因のひとつに、「主人公のキャラクター設定」があるのではないかと思います。

主人公であるアマテラス王子は、幼少期から感情と感覚がない環境で育てられます。そして物語のはるか以前の回想シーンで、宇宙最強クラスの神である「天照の帝」であることが発覚します。

どうでしょうか、どこかで聞いたことのあるキャラクター設定だと思いませんか。


こんな奴いるか!!どちゃくそ永野護ナルシシズムがあふれとるやんけ!!

物心がついた頃から本来の意味での親がおらず、かと言って死んだ母親がカジュアルに幽霊になって出てきて、生まれ持った才能を持つ主人公。そしてその才能の理由が人間に興味があるのかないのかよく分からない神としての性格で……。そうです、これは神話の黄金パターンなのです!

例えば、出雲の鳥髪山(現在の船通山)へ降った建速須佐之男命は、その地を荒らしていた巨大な怪物八俣遠呂智への生贄にされそうになっていた美しい少女櫛名田比売命と出会う。

スサノオは、クシナダヒメの姿形を歯の多い櫛に変えて髪に挿し、ヤマタノオロチを退治する。そしてヤマタノオロチの尾から出てきた草那藝之大刀(くさなぎのたち、紀・草薙剣)を天照御大神に献上し、それが古代天皇の権威たる三種の神器の一つとなる。その後、櫛から元に戻したクシナダヒメを妻として、出雲の根之堅洲国にある須賀(すが)の地(中国・山陰地方にある島根県雲南市)へ行きそこに留まった。


また、同じ萬画作品でも同様の主人公が神の設定をとる作品は数多くあります。
comic-sp.kodansha.co.jp

このような主人公のキャラクター設定には、高貴な身分の神様ゆえに多くの人間の死を見送る宿命という悲劇、そしてその境遇に立ち向かい本当の愛する存在を手にするというサクセスストーリー、といった読者の心を掴む要素があるのではないでしょうか。

しかし、ことストーリーの内容については、作り込みが雑な作品というわけではないように感じました。「リブート3」コメントでは、作者の永野護自身が次のように言っています。

過去から未来へと、未来から現在へとさまざまに好き勝手時代を飛び移る「ファイブスター物語」の中で、この「タイカ・エピソード」は時間どころかその上の宇宙を飛び越えて別の宇宙へとぶっ飛んでしまった。なぜぶっ飛んだのかはインタビューページを読んでいただきたい。まあ、要するに作家のストレス発散である。
(出典:ファイブスター物語リブート3 228P)

ファイブスター物語 リブート (3) TRAFFICS (ニュータイプ100%コミックス)


本作品は、いきあたりばったりで作られているのです。

もちろん、それが読者の想像を超えるストーリー展開に繋がっている可能性は大いにありますが、私としては「年表で完結していると見せかけて年表が変わってるじゃねーか!!」と感じてしまったのです。

エルガイムをなぞったゴールに向けてストーリーが進んでいくと見せかけて全然違う。主人公を応援しても「どうせ神様だから何とかなるやろ」と思いますが、たまに神の力を封印してピンチになるのでハラハラドキドキしました。いきあたりばったりな書き方は、「エルガイムのロボットデザインをちょっと変えたスピンオフ萬画」と見せかけて、予想がつかない面白さを出しています。また、壮大な時間経過の物語なので、エルガイムのバイオリレーションに対して、「世代が変わっても記憶や志が受け継がれる」という独自の奥深いテーマをつくりだしています。


また、一見、無意味にも見えるギャグ描写や女子高生編もスパイスになっている上に後々の伏線になっていて油断ができません。
また、騎士と呼ばれるロボットを動かせる超人は身体能力に男女関係ないので、女性の描き方も独特のものがありますし、ファティマという美少女ダッチワイフのようなロボットがいるにもかかわらず、女性キャラクターもファティマに勝るとも劣らない魅力があります。
ファイブスター物語 ファティマ・ヒュートラン (エミリィ) ストラップ
FSS 001 FATIMA AUXO (ファティマ アウクソー)


ファティマは押しなべて美少女で主人公の天照は神様なので美形なのですが、美形ではないキャラクターの人種や肉感を伴った描き分けが上手く、繊細なペンタッチによる表情の描き方で心理を上手く描写しています。

  • 世界観

FSSを読んでいると、初めから終わりまで至る場面でツッコミを入れたくなってしまいます。

同じミラージュ騎士団に対していきなり反乱する登場人物の異常さ、当たり前のように地球のファッションブランド名を喋る異星人の登場人物たち、分身したりビーム的な奴を出せる剣聖、大量発生する人造人間、時の流れを巻き戻す神……。

ここでは書ききれないほどのツッコミどころに溢れているのです。

しかし、このようなことは漫画やアニメ、映画をみているとよくあることで、「何を今更」と思うかもしれませんか?もう、ここまで何でもありな萬画は他にないのでは。

なぜここまで敏感にツッコミどころを粗探ししてしまうのか、それは私の性格が心底悪いからでも、私が関西人でありツッコミ能力に長けているからでもなく、ひとえに作品の「世界観の異常さ」が原因なのではないかと考えました。

例えば上記に挙げた神話などでは、非現実的で独特の世界観を前提にしてストーリーが作られています。日本神話やバビロニア神話など、それぞれの神話でそれぞれの世界観を崇めているのです。

だからこそ、その世界観にどっぷりとのめり込むことができ、不可解な出来事が起きたとしても「この世界では普通なんだ」と納得し、違和感なく読み進めていくことができます。


一方、FSSではエルガイム世界に近い世界観を前提にしてハイレベルな作画のかっこいいロボット萬画が繰り広げられています。だからこそ、萬画の文法を無視した展開で不可解な出来事が起きる度に、現実の脳が処理しきれずにツッコミを入れたくなってしまうのです。例えばいきなり中国語を話したり猫耳論争を始めたり。
普通の萬画だと剣聖ダグラス・カイエンはもっと見せ場を用意しそうなんですけど、そうしない所がすごく切ないというか、達観した作者の世界観、倫理観だと感じました。


この世界観の異常が、本作品への没入感を独特のものにしているような気がしてなりません。

  • 時代背景

80年代の頃にFSSを読んでいたという人たちに、「よかった点」を聞いてまわったところ、「デザインがすごい」やら「ストーリー展開が斬新」やら「なんてったって谷明のヤクトミラージュが最高」やら、様々な回答が返ってきました。
海洋堂 トイズプレス 1/220 ヤクトミラージュ FSS 谷明氏作品 レジンキャスト ガレージキット KOG ファイブスター物語

確かに、永野護氏によるデザインズの絵は、あまりにもインパクトがあって夢に出てきた。私も「1ページごとに物語が急展開するスピード感がある」と感じたこの作品を、じっくりと鑑賞してしまったという事実があり、これは絵のうまさや、ロボットの関節の動かし方と格好良さまで考えられたハイレベルデザインによるものなのかもしれません。

ストーリーに関しても、当時も今も「ネタバレを先に年表でやってマンガの文法をガン無視」の設定を採用している作品がそこまで多く世に出ているわけではなく、さらに作者の「いきあたりばったり」な書き方も相まって斬新な物語だと感じた読者が多かったのではないでしょうか。

また、エルガイムを書いた後の作品である『Zガンダム』がヒットしたことで、「あの富野監督とガチで揉めた永野護の作品だ」という箔がついていたのかもしれません。

そしてもう一つ、完成品キットがまだ普及していなかった1980年代前半のモデラ―の過ごし方は、らしんばんで当たり前のように完成品キットが買える今ほどに選択肢が多くなかったのではないかと思うのです。まあ、今もGTMの完全再現キットはないんですけど。


果たして1982年に生まれワタル・パトレイバー・勇者などのロボットアニメ時代を生きてきた私にとって、これらの「よかった点」は通じるのでしょうか。

FSSから多大な影響を受け、さらに改良を加えてきた作品を読んでいる私にとって、FSSは「30年もやってるのに常に画力が向上している絵」であり「全く読んだことがない物語」に感じてしまったのです。
そして、エルガイムZガンダムのデザインラインを引きずっているモーターヘッドをぶっちぎってGTMに全部取り替えたのも、最高にロックだし、最高にかっこいいロボットを見せようというハイエンドな芸術に感じてしまうことは仕方がないことでもあるかと思うのです。


百式壊など、永野護を真似たガンプラが出ても、それは部分的に簡単に真似られる所を真似ただけです。僕はガンダムが好きだけど、ロボットの機能美として考えるとFSSの方が何段も上に見えます。
F.S.S. DESIGNS 5 LITTER.pict
1/100 ジュノーン初期型 ガレージキット塗装済み完成品 FSS

有名な関節のデザインだけでなく、動力系やセンサー系統も熟慮されている上に、明らかに異形のGTMなのに「美しい」と感じさせる手腕。そして、半透明装甲という滅茶苦茶難しいものを描き出す画力。色彩センスも抜群だ。
花の詩女 ゴティックメード ワールドガイド
ユリイカ2012年12月臨時増刊号 総特集=永野護 『ファイブスター物語』の普遍、『花の詩女 ゴティックメード』の衝撃

FSSを全巻読んでみて、永野護角川書店に対してメッチャ偉そうな態度をしている理由が少しわかったような気がしました。そして、当時オタク第1世代だった先輩方にとって衝撃的で感動的な漫画だったのだろうと感じました。

また、今でもなお受け継がれるようにみえて誰も真似ができていない「メカデザイン設定」や「絵の書き方」の元とともいえる作品を読めたことは、結果として良い経験だったように思います。

しかし、面白いかと聞かれると……個人的には、30年もやってるのにドンドン面白くなっている。という結論に至りました。理由は14巻の大規模な電子戦とロボットの混戦とリアルタイムの陣形描写をきちんとやった上で、アイシャが駆るGTMのフォクスライヒバイテと剣聖から奪われたGTMデムザンバラの決戦が最高に盛り上がるように構成している演出の妙技です。ロボット萬画はアニメに比べて難しいと言われるなか、ここまで広い戦場と大量のロボットを描きつつ疾走感を出して読者を興奮させる手腕は世界一といえる。

ファイブスター物語 14 (ニュータイプ100%コミックス)


ちなみに好きなファティマはビルドです。


では、映画ゴティックメードの感想に続きます。

www.dreampass.jp
nuryouguda.hatenablog.com

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nuryouguda.hatenablog.com
 ドラゴンボールハラスメントの記事はドラゴンボールを貶すことでアクセスを稼いだけど、逆に褒める文脈に入れ替えることで読みやすくするテンプレートにならんもんか、という実験をしてみました。



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