富山で富野由悠季の世界展鑑賞の後、ネット上では旧知の富野ファンの人と感染対策をしつつ少し話し合った。いろいろな話題が出たが、Gのレコンギスタがガンダムではないという富野由悠季監督の最近の発言を擁護する話をした。
「ガンダムで敗北」というのがどういうことかというと、僕は20年前の∀(ターンエー)でガンダムを作ることをやめているわけです。なぜターンエーでお終いにしたかというと、限界だからやめたんです。僕は少なくともガンダムをやっている間に、優れた大統領なり統率者が出てくるような人類史を手に入れたかったんですよ。だけど結局20年後にそうならなかったわけですから、ガンダムは敗北したということです。
富野監督がアニメを通じて優れた大統領を生み出したかったという野心は、ちょっと僕の手に余る議題なので、アニメ作品としてガンダムとGレコを比べるというオタクっぽい文章を書きます。
(でも、富野監督が「Gレコはガンダムではない」と言いながら「G」「Gundam」と書いてある帽子をかぶっているのはちょっとおかしい。僕もその帽子を持ってるけど。そのロゴはむしろガンダムファイトの方のガンダムでは?レコンギスタ表記の帽子を作って欲しい…)
- まずGレコのガンダム要素を抜き出す。
・機動戦士ガンダムと同じ名称の宇宙世紀という時代で人類の絶滅寸前戦争があった以降の時代を描いた作品である
・全高18メートルほどのモビルスーツと呼ばれる搭乗式人型ロボット兵器が出てくる
・ミノフスキー粒子がロボットや宇宙船の運用に活用されている
・ビーム兵器が使われている
・宇宙移民者と地球人の間で政治的な対立が起こっている
・太古の強いロボットに由来するガンダム伝説がある
・主役ロボットのG-セルフには角が2本あって目が2つある
・バンダイのプラモデルとしてガンプラの枠で商品展開されている
まあ、だいたいこれがGのレコンギスタはガンダムと言われる事情だと思う。これを潰していく。
- 宇宙世紀という名称が同じでも違う宇宙世紀である
富野由悠季の世界展でGのレコンギスタの企画書を見た。それによると、1979年のローマクラブの成長の限界とかNASAのオニール型スペースコロニーが世界観の象徴であった機動戦士ガンダムとは違うようだ。
Gレコの宇宙世紀はキャピタル・タワーの元になった軌道エレベーターが3本地球にあり、それによって宇宙に物資を搬出していたらしい。これは宇宙エレベーターがない機動戦士ガンダムの宇宙世紀とは違う。(軌道エレベーターは宇宙戦争で人類が絶滅しかけた時に破壊されて、キャピタル・タワーはぎりぎり残っていたものを修復されたものとのこと)
富野監督によると機動戦士ガンダムの時代には宇宙ロケットや宇宙開発がロマンだったのでそのようにしたが、現代の観点では(スペースシャトルの廃止など現状の宇宙開発の反省を踏まえ)ロケットでの宇宙移民はコスト面から現実的ではないとしている。
また、Gレコの宇宙世紀開拓では、Gのレコンギスタ本編で登場した空気の玉と水の玉だけでなく、「土の玉」という固形物を軽量化、圧縮するファンタジックなオーバーテクノロジーの道具が使われていたとのこと。やはり、宇宙へ運ぶ資材の量は軽量化しないと現実的ではないという、反省して改良され視点がある。
機動戦士ガンダムでのスペースコロニーの材料はアステロイドベルトから核パルスエンジンで運んできたルナツー(現代の名称ではジュノー)などの小惑星であるが、Gレコの宇宙世紀はそこを変えてきている。もちろん、シラノ-5やオーシャン・リングなど小惑星を軸にした巨大宇宙建築物はGのレコンギスタにも登場するし、トワサンガではオニール型コロニーも少し映っている。
なので、Gのレコンギスタの前史である宇宙世紀は機動戦士ガンダムの宇宙世紀とは違うものである。
それに、まあ、宇宙世紀、ユニバーサル・センチュリーという名称もかなり広いものを指した物言いであるので、「宇宙開拓時代が過去にあった」と言う程度の意味でガンダムじゃない作品で使用してもよかろう。
同じように軌道エレベーターが登場する機動戦士ガンダム00は西暦を呼称しているが、現実の西暦世界とはやはりズレが有るパラレルワールドのようでもある。
戦後、アフター・ウォーを年号にしている機動新世紀ガンダムXも宇宙戦争時代が宇宙世紀(の暗喩)だった可能性もある。ガンダムXで言われる第7次宇宙戦争までの戦争も、テレビ放送されたガンダム作品の数と合わせているという説がある。
機動武闘伝Gガンダムの未来世紀の前の宇宙戦争時代も宇宙世紀だった可能性がある。
新機動戦記ガンダムWや機動戦士ガンダムAGEなどは機動戦士ガンダムの(おもに逆襲のシャアまでの)戦記の展開やメカの進化をモチーフにしている。
機動戦士ガンダムSEEDのコズミック・イラも宇宙世紀の言い換えだ。
かつて「厄祭戦」と呼ばれる大きな戦争があった。その戦争が終結してから、約300年。というあらすじの機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズもその厄災戦の世界が宇宙世紀だった可能性がある。
というわけで、Gのレコンギスタは富野由悠季作品であるが、そこで使われていた「宇宙世紀」と言う名称も、ガジェットとしてはアナザーガンダムにおける「宇宙開拓時代」や「宇宙戦争時代」と同程度の重みでありアムロやシャアが生きた宇宙世紀とは違うパラレルワールドと言っても支障はない。
また、2009年にイベント上映された短編作品のリング・オブ・ガンダムの企画書を読むと、どうやらSF作品っぽい時間管理局やFate/Grand Orderに登場する人理継続保障機関・カルデアみたいな組織が存在するらしい。複数のパラレルワールドや過去に干渉する未来人によると、機動戦士ガンダムの宇宙世紀は時間管理局が干渉しなかった結果として生まれてしまった、宇宙開発に特化しすぎて暴走した特殊な剪定事象の歴史の異聞帯という扱いをされているらしい。まあ、宇宙世紀ガンダムのボス、割と異聞帯の王みたいなところはある。
FGOは大ヒットしているが、同じようなアイディアを短編で10年以上前に出していた富野監督の慧眼とか商売の下手くそさとか。(スタジオぬえの森田繁さんの発案かもしれないが)(リング・オブ・ガンダムは設定が壮大だけど短編作品なんだよなあああーーーー)
余談だが、富野由悠季の世界展でイメージボードが展示されたヒミコヤマトも、「美少女」と「魔力で空飛ぶ旧軍戦艦」など、ストライクウィッチーズや艦これ以前に出していたらエポックメイキングになっていただろうなあとは思う。(リーンの翼で似たようなことはしたけど)
- モビルスーツという名称のロボットについて
そもそも、ガンダムが新しいと言われたのはロボットではなくモビルスーツと言い張ったことなのだが。その当時の富野監督のご意見としては「ロボットはカレル・チャペックの労働者としての自律型ロボットを指していて、人が乗り込む人型兵器はロボットではない」とのこと。
まあ、割とその物言いも最近は雑になってきて、富野監督も自分が作ってきた作品を「巨大ロボット」と言っているので、別にガンダムがロボットではないと言い張る古のガンダムオタク仕草も大した意味をもたなくなっているが。
富野監督はその後もいろんな名前のロボットを出しているが、重機動メカとヘビーメタルは大きさや形は圧倒的に違うけど、言葉としてはそんなに意味が違わない気がするし、ウォーカーマシンやマンマシーン、シルエットマシンというのも「人型、歩行できる」と言う程度の意味だし。
モビルスーツと他のロボットの名称を入れ替えても大した問題は発生しない気がする。(まあ、パワードスーツがモチーフだが、全然着てる感じがしない巨大な「モビルスーツ」との呼称は、むしろ企画段階での強化外骨格だった頃の迷走を引きずっているとも言える。(スーツよりアーマーのほうが強いとか途中で小学生みたいなことを言い始めるし))
明らかに機械的な人型ロボットとは違っていて、固有であると思われるのはオーラバトラー、オーガニックマシン、オーバーマン、ゴティックメードくらいじゃないかなあ。
- 宇宙移民との政治的対立
そんなん、2010年以降の最近のものに絞ってもガンダム以外のアニメ、アルドノア・ゼロでもヴァルヴレイヴでも描かれてるので、ガンダム固有のものではない。
ビーム兵器についてもいろんなアニメで使われていていまさら新しくもない。
過去に宇宙に進出した人類が滅亡しかけた後を描いたロボットアニメ作品では翠星のガルガンティアとかがありますし。ガンダム固有のものではない。
- ミノフスキー粒子
これまでのガンダムではミノフスキー粒子の発生は核融合炉や粒子加速器によって行われているとされていた。(自然状態では発生せず、人為的に生成させる素粒子というちょっとよくわからないモノ)
ガンダムシリーズに登場する機械の主な動力源であるミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉は炉心の封じ込めや放射線の遮蔽にミノフスキー粒子を使用しており、卵が先か鶏が先か、みたいな関係が核融合炉とミノフスキー粒子にあるのだが。
Gのレコンギスタの企画書でのミノフスキー粒子の発見(発明)は太陽風などの宇宙放射線を防御するため開発されたとのこと。
ガンダムシリーズの核融合炉の原理(いわゆるミノフスキー物理学)でも結果的に放射線の遮蔽にミノフスキー粒子が使用されているので、些細な違いとも言えるが。
Gのレコンギスタの企画書でのミノフスキー粒子の発明は、ミノフスキー博士による大統一理論の研究の一環とか核融合炉の副反応というよりは、水の玉、空気の玉、土の玉と同じく「宇宙開発に必要な道具」として「宇宙では放射線対策が必要である」という趣旨で作られたものというニュアンスを感じる。
結果的にGレコの劇中でもミノフスキー粒子はガンダムシリーズと同じようにレーダージャミングに使われているし、Iフィールド(宇宙世紀ガンダムシリーズのミノフスキー物理学のために作られた造語)も登場する。Iフィールドよりももっと大規模なミノフスキー・マグネット・レイ・フィールドというものもキャピタル・タワーの運行に使われている。
ただし、Gレコのモビルスーツや機械全般は核融合炉ではなく、もっと安全なフォトンバッテリーで駆動しているので、Gレコでのミノフスキー粒子が核融合炉の遮蔽物なのかは不明。(まあ、フォトンバッテリーは核融合炉よりも安全で手軽な電池とはいえ、地球人が分解しようとしたり、モビルスーツが破壊されると爆発する)(そんな爆発するバッテリーを集積して、一個の直径が東京23区よりもデカい樽状の宇宙建築物にして、それを何十個も球状に並べたビーナス・リングを作ってしまうヘルメス財団は本当にヤバい。ジット団とメガファウナの交戦でビーナス・リングが爆発していたら富野アニメ最大規模の爆発が起こったと予想される)(まあ、イデオンの超時空惑星粉砕流星の方が殺意にあふれているが)
小型核融合炉という20世紀の夢の技術と作劇の都合に必要なレーダージャミングとか空中浮揚をアニメで説得力を出させるために作られたのがガンダムシリーズのミノフスキー粒子などの設定であるが。
Gのレコンギスタでのミノフスキー粒子は核物理学や核融合はあまり重視されず、「宇宙開発に必要な放射線遮蔽粒子」との側面で生まれたという風に、微妙な差異がある。
富野監督自体がターンエーガンダムまで20年間ガンダムをやっていて20世紀の科学の花形であった核物理学(なにしろ鉄腕アトムもドラえもんも原子炉を積んでいるのである)から発生したミノフスキー粒子に飽きて、逆に原点である「宇宙開発」を再考してリファインしたのがGのレコンギスタでのミノフスキー粒子と言えはすまいか。
まあ、Gレコでも劇中ではほとんどガンダムシリーズのミノフスキー粒子とほぼほぼ同じように扱われているが。ミノフスキー粒子よりも強いアンチミノフスキーとかフォトン・アイ・ミサイルとかフォトンサーチャーなども技術インフレという感じで出てきているけど。
一説によるとミノフスキー物理学では、ミノフスキー粒子は光子と対になる素粒子とされることもあり、光子力エネルギーであるフォトンバッテリーがGレコで使われているのは、発想としては突飛ではない?(まあ、富野監督は設定オタクではないので、ミノフスキー物理学よりも作劇を優先していると思うし、数十年前になってしまったガンダムセンチュリーの頃の裏設定とか忘れてそうだが)
Gレコの企画書ではリギルド・センチュリーの前史である宇宙世紀の破滅的な戦争は、ミノフスキーフライトの発展による宇宙戦艦の実用化に伴って軌道エレベーター軽視の風潮が起こり、それによる軍拡と宇宙での戦争の拡大、タワーの破壊、タワーの崩壊による環境破壊、そして飢餓という流れだったらしい。
ミノフスキー物理学、本当にろくでもない!(なので、ミノフスキーフライトを実用化しちゃったリギルド・センチュリー1014年のアメリア軍やゴンドワンはタブー破りと言うか知らないうちに宇宙世紀の破滅戦争を再現しかけたとも言える)
(アイーダ・スルガン主導のクレッセント・シップによる地球人への示威行動はタワーの軽視に繋がる可能性も????)
Gレコの制作前に富野監督が宇宙エレベーター学会に入会して取材しつつ宇宙エレベーターが嫌いだったとか、富野監督は子供の頃から宇宙ロケットのオタクだったとかで、Gのレコンギスタはテーマ的にも「ロケットとエレベーターの対立」がモチーフとしてある。
(世界は四角くないんだからぁ!という、自由に飛び回るロケットやモビルスーツと、規律によってまっすぐ運行するエレベーターの対比っていうのが第一話からあったわけで)
で、そういうミノフスキー粒子や宇宙世紀の流れの微妙な改変について、企画書で富野監督は「現実でも歴史の捏造はされるので、フィクションでも変更は許される」と開き直っているし、自覚的に設定を変更しているようだ。なので、ガンダムシリーズの用語を使っていても、Gのレコンギスタはガンダムではないという論法もここで成り立つ。
いわゆるアナザーガンダムでの『機動戦士ガンダムSEED』の「ニュートロンジャマー」、『機動戦士ガンダム00』の「GN粒子」、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の「エイハブ・ウェーブ」も、ミノフスキー粒子と同様に通信障害やロボット運用に利用される設定となっている、とのこと。まあ、名前を変えただけって気もする。
(00の太陽炉は木星の環境でしか作れないとか、微妙な際はあるけど。まあ、量産化されちゃいましたが)
まー、ミノフスキー粒子だけが新しいわけではなく、マジンガーZの超合金Zとか勇者ライディーンのムートロンとか、ロボット運用に説得力を出すための架空素材はわりとまあ、よくある。スター・ウォーズやスタートレックでもそういうのはよくある。
- ガンダム伝説
現実の地球でも韓国などの国では超強いロボは「ガンダム」と言われたり、おばあちゃんがガンダムのプラモデルと間違えてガンガルを買ってきたり、レディ・プレイヤー・ワンなどの映画や萬画のバスタードでも強きものとして「ガンダム伝説」が引用されているので、もうガンダムは一般的な「強いロボ概念」と言えるのではないでしょうか?
なのでトワサンガのガヴァン隊長がガンダム伝説を知っていたりGITラボラトリィでG系が研究されているのも、異世界のグランブルファンタジーなどのゲームでバハムートとかユグドラシルなどの現実の地球の古典文化から発祥した名称が引用されているのと同じで、ガンダムも、もう神話とかファンタジーの領域になってるの。だからガンダム作品じゃなくてもガンダムって単語を出してもいいの。(さすがに木星帰りのヨシユキ・トミノの著作権はR.C.では切れてるやろ)
バンダイのコンパチヒーローシリーズ的にも2メートル程度が仮面ライダーで、20m位がガンダムで、40m以上がウルトラマンやエヴァンゲリオンです。
- バンダイのプラモデル
ガンダムって名前をGレコに使わないとスポンサーが付かなかった、などの恨み節が富野ファンであったりなかったりする。
なので、バンダイから自由になることの象徴として「ガンダム」という名をGのレコンギスタから外すことに政治的な意味が伴ってしまっていたりもする。
でもまあ、現実問題としてロボットのプラモデルを出しているのはバンダイかコトブキヤかタカラトミーくらいだし、サンライズの親会社関係としても商品展開はバンダイのガンプラ製造ラインに持っていくのが妥当ではある。(キングゲイナーは造形美があるのだけど、軟質装甲のきぐるみロボットというのが当時のプラモデル事業の環境に向いてなかった感はある。当時のバンダイはSEEDのプラモデルが売れてたので)(海洋堂訂正、コトブキヤのワンコインシリーズは名作)
大人の事情というのが多分にあるが、ガンプラ系列でGレコのプラモデルが出ているからと言ってGレコはガンダムと定義できないと言えないこともない?
だってバンダイさんもほとんどガンダムのMSだろって感じのデザインのオリジナルロボットプラモデルシリーズの30MMとか最近出してるし。
Gレコの演出家を務めたた松尾衡監督の革命機ヴァルヴレイヴもガンプラに非常によく似たフォーマット(具体的には箱のデザインとか)で出してるし、ガンダムの仮想敵の一つのマジンガーZもエヴァンゲリオンもいつの間にかバンダイでプラモデルやフィギュアになってるし。そういうもんだよ!
(そう考えると、ファイブスター物語がニュータイプで連載しつつ、ボークスやWAVEのガレージキットとしてガンプラよりもひとつ上の造形物としての地位を確立している永野護さんは立ち回りがうまいなあ。ダッカス・ザ・ブラックナイトの展示模型に富野監督がキレたのも、そういう微妙な力関係とかライバル心があるんだろうなあ)(まあ、多作の富野監督とほとんどファイブスター物語で還暦を迎えた永野護さんと、どっちが偉いかは難しいところだ)
(※追記 まあ、FSSという物語の枠の中で複数のジャンルの萬画を描いているとも言える)
まー、グッドスマイルカンパニーみたいな元セガのエヴァンゲリオンやバンダイのパトレイバーやタカラトミーのシンカリオンとかいろんなアニメのねんどろいどとかを出している横断的な会社もありますが。宮崎駿が認めたファインモールドとかもある。
話のついでって感じですけど、G-セルフのMGや1/100プラモデルが出ないのは、コア・ファイターの再現とか、リング・オブ・ガンダムの流れをくむ胸部分割装甲など、こだわりだしたらキリがない安田朗デザインなどが難航しているような気がする。クロスボーンガンダムのプラモデルは元がおおらかな絵柄の萬画なので、割とプラモデル化の時に違ってたりするらしいが。
G-セルフの胴体はコア・ファイターが入るためにスカスカですし、背面装甲の開閉も割とよくわかんないし強度の問題もあるので。
まあ、Zガンダムのプラモの変形の歴史(ウェイブシューターってなんだよ)など、バンダイのプラモデルは劇中の無茶デザインと格闘してきた歴史でもありますし、ターンエーガンダムもMGが出るまで7、8年かかったし。
- 本題 作家のスターシステムの距離感
なんかオタクなので、宇宙世紀とかミノフスキー粒子とかプラモデルのメーカーとか小難しいことを長々と書いてしまったけど、結局は富野監督の感覚の問題だと思う。
で、富野監督の最初の上司である手塚治虫先生はスターシステムというわけで、同じデザインや名前のキャラクターを別の作品で出したりする。
富野作品でもライディーンがいつの間にかシリーズ化されたりしている。(YMOとか筋肉少女帯とか・・・・)
ギャブレット・ギャブレーというキャラクターが「戦闘メカザブングル」と「重戦機エルガイム」に出ている。
エルガイムは更にボツ企画の「ムゲン・スター」から来て、「ファイブスター物語」に流れて、モーターヘッドがGTMに刷新されるという暴挙が行われている。弟子である永野護さんがそういう暴挙をしているのなら、富野監督がガンダムに対して暴挙してもいいと思う。
クレッセント・シップの元ネタは没になった「∀ガンダム2」の企画から来ているらしいが、それを言ったらホワイトベースとハロも元は「無敵鋼人ダイターン3」のゲストメカデザインだし。
デザインや名前をガンダムシリーズから使いまわしても、それはガンダムということには、ならない!(長谷川裕一萬画の口調で)
あと、富野由悠季の世界展で富野由悠季の作品を俯瞰的に一挙に見るという経験も、「Gレコはガンダムではない」という感触を得るきっかけになった。
富野監督が無敵超人ザンボット3から機動戦士ガンダムZZまで連続して毎年いろんな世界観のロボットアニメを作っていた。作品ごとに距離感がある。
富野由悠季の世界の展示も、必ずしも時系列ではなく、少年時代、宇宙もの、エンターテインメント路線、ファンタジー世界、地球帰還、新作のGレコ劇場版の応援、というふうにテーマがにている2,3作品を塊にして展示している。
で、一気にいろんなロボットを見た時に、純粋に見た目の印象として、各アニメのメカニックのデザイン的な距離感は遠近があると感じた。
なんだかんだ言って機動戦士Zガンダムと初代機動戦士ガンダムのメカデザインの距離よりも、エルガイムとの距離のほうが近い。
でも、Zガンダムとエルガイムの距離よりもZガンダムと逆襲のシャアのほうが近い。
非常にオタク特有の感覚的な話だが、ダンバインとエルガイムの距離より、エルガイムとザブングルの距離のほうが近い。
ダンバインはむしろ後年のブレンパワードやキングゲイナーに近い感触もあるが、リーンの翼のオーラバトラーのキャノピーのある航空機モチーフはVガンダムや(小説のアベニールをさがしてのテンダーギア)に近い気がする。
Vガンダムで活躍したデザイナーの石垣純哉さんも参加した∀ガンダムはガンダムの一つの頂点だが、ヒゲと海外シド・ミードデザインなのでガンダムっぽくなさもある。むしろ∀ガンダムは機能美の追求という点でヘビーメタル、というよりはむしろモーターヘッドに近いとも言える。
(なんかメカデザインの歴史においてエルガイムが便利な定規みたいだが)
ターンXの長年修理を繰り返されたという設定もFSSの世界観の方に近いかもしれんし。
神秘であるはずのイデオンの幾何学的な装甲ラインはターンエーガンダムの謎モールドに近い気がする。(ターンエーガンダムも発掘品ですし)(※追記 コメントで補足)
とにかく、富野作品は時系列やシリーズ展開とはあまり関係なくデザインの方向性にすっごい振れ幅がある。
で、メカデザイン初参加の形部一平さんを起用したGレコのデザインや色彩感覚は主役メカが安田朗デザインでキャラクターも吉田健一さんということもあり、ガンダムシリーズよりキングゲイナーに近い匂いがする。山根公利さんも参加しているし。
キャラクターのファッション感覚も、僕が言葉にするには荷が重いテーマだが、作品ごとに空気感が違う。
異世界もののダンバインと、アクションドラマのダイターン3は世界観は違うが、インターナショナルな女性キャラクターの多様性とかは近いものがある。
デザインの距離感もそうだし、作品のテーマというか世界観も宇宙世紀ガンダムと∀ガンダムとGのレコンギスタも距離感がある。似たところもあれば外しているところもあるし、自己否定したところやリファインした部分もある。
演出の空気感とかになると、もっとこう、曖昧になるが、やっぱりZ~逆襲のシャア〜Vガンダムの神経質にピリピリした真面目な感じと、Gレコのワイワイガヤガヤした感じはちがうなーってなる。
修羅の連続を起点にした初代機動戦士ガンダムの空気のヒリヒリ感は、Zガンダムと言うより、イデオンやザンボットに近い。でもダンバインのほうがむしろZガンダムより戦場の空気感はファーストガンダムに近いかもしれない。で、Zガンダムも映画版で味付けを変えてお出ししてきたりして。
Gレコがターンエーガンダムの200年後という富野監督のGレコ最終回放送直後の発言も物議を醸したが、史実や設定的なものではなく、登場人物のメンタリティとか文化水準とかを含めた、劇としての時代的な距離感の話だと僕は思っている。設定じゃなく感覚。
作家は割と感覚的な面があるので。っていうか富野由悠季の世界展に寄せた富野監督のお言葉でも、「概念の展示は不可能なのだが」「「演出」という仕事は、感覚的な仕事であると同時に、たいへん観念的な作業で、「概念(考え方)を示すことができる仕事」なのです。つまり、この一行半を展示で説明することはできないのです」と宣言されている。
www.tomino-exhibition.com
つまり模型や画稿などの視覚イメージや、企画書の文字情報などの展示では、演出の感覚や観念や概念という見えない映画的なるものは展示できない、と富野監督はおっしゃっているわけだが。
展示物はまあ、たしかに視覚イメージに過ぎないんですが。
こちとらには39年間富野由悠季のオタクとして生きて(一部の小説を除く)全作品を見てきた脳内イメージドライブが有る!設定画一枚の比較でも、作品ごとの感触を思い出せるぞ!しかも脳波コントロールできる!
そういう風に、富野由悠季の世界展で多くの作品情報を数時間で一気に脳に流し込んで処理したら、やっぱりGレコはガンダムシリーズとはちょっと違う路線だなーって思いました。
具体的には、現在只今のガンダムの商品展開や三世代のファンによる作品の消費態度などを見ると、ガンダム的な雰囲気を継続しているものは機動戦士ガンダムユニコーンとか機動戦士ガンダムTHE ORIGINとか閃光のハサウェイとか鉄血のオルフェンズの続編とかゲームとかで、Gのレコンギスタはちょっと脳波の波長が違う。
なので別物なので、バンダイやサンライズのガンダムブランドの企業戦略から富野由悠季監督が外されて福井晴敏さんがデカい面してる、ということを悲観しなくてもいいんじゃないかなあ。
(まあ、1スタの工数の奪い合いみたいなのはある気がするけど)
(やっぱり総集編ということでGレコはバンクで作画が稼げるので新規カットに予算を出し渋るみたいなことはあるのかなあ。うーん。まあ、オタクが楽屋裏を詮索しても詮ないので、出された作品を味わうだけなのですが)
めっちゃオタク丸出しの感覚論で書きましたけど。
結論を言うと、富野作品はいろんな味わいがあるので、ガンダムシリーズかどうかは大した問題ではない。GレコはGレコです。
多少具体的に言うとGレコは富野監督が自分のガンダムをネタに作ったアナザーガンダム、あるいはエルガイムに対するファイブスター物語(GTM以降)みたいな奴です。
アナザーガンダムもいろんな路線があるけど、割と宇宙移民との対立とか人類の進化とか戦記物としての流れとかのガンダム要素を引用している。むしろ最初のガンダムを作った富野監督だからこそ、ガンダム要素を知り尽くして、逆に他の人の作ったアナザーガンダムよりも速く遠くにGレコを発射できたって感じがします。
ということでした。
脱ガンダム補足
Gレコの過去作モビルスーツは、クラシックコレクション(彫刻?)や朽ちた残骸という過去のものとして出てるという特徴がある。ヘルメスの薔薇の設計図で再現されないし、レクテンやネオドゥみたいな作業用として長い長い間使い続けられているものでもないんだよね。
— 粘液ップ🚀 (@hagetenai) 2021年2月5日
僕は、「脱ガンダム」をやるために象徴としてガンダム的なものを出発点に持ってきた派
— 粘液ップ🚀 (@hagetenai) 2021年2月5日
まー、Dr.スランプに仮面ライダーやウルトラマンが出てきたようなこともあるし?
— ヌ・リョウグ・ダちん (@nuryouguda) 2021年2月5日
過去の遺跡の宇宙ロボの記号として短い時間で1回目の宇宙時代の次の文明という説明をするのに便利だから過去のMSを出した、くらいかと思ってます。富野監督だからできるズルだとは思います https://t.co/qHOyzH1j2k
まー、そのー、いろいろとあるが、個別の作品として鑑賞している時に面白かったらそれでいいんじゃない?富野由悠季の最高傑作はいつもその時、僕たちが見ている富野作品だよ。(刹那主義)
長谷川裕一先生のクロスボーン・ガンダムについて語ろうとすると、また長谷川裕一先生のオリジナル作品との対比とか沼があるので、ちょっと今回は避けました。(萬画のガンダムはアニメよりもたくさん品数があるので、うっかりすると泥沼にハマる)
しかし、だ。午後4時に買い物から帰ってきて「Gレコとガンダムの距離って、エルガイムとZガンダムの距離よりも心理的に大きくないか?」という印象論の一言を書くためなので「2時間で書けるかなー」って思ってたら、午前3時ですよ。
めんどくさいオタクーーーーー!!!!
- ほしい物リスト。
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