玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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Gのレコンギスタ第1話のここはガンダムという7つのポイント

ウテナを見終わって結構消耗したので、ちゃんとした感想記事は今日は書かないつもりだったけど、ネットのTwitterの「こんなのガンダムじゃない」論争がちょっと面白かったので、「ガンダムって何かしらん?」という記事をかるーく書いてみよう。
こういうのもあります。
https://kaito2198.blog43.fc2.com/blog-entry-1560.html


■1.サンライズのアニメでスタッフがガンダムって言ってるからガンダム
これは基本。それと、世界観を宇宙世紀の延長線に置いているので従来の人口削減問題や環境汚染問題やエネルギー配給問題や補給兵站、前線と銃後というガンダムらしい要素は引き継いでいる。ニュータイプ論や超能力の話は、今回は富野監督はやりたくないらしいとインタビューで。


■2.ロボットの大きさが18メートルくらいで人が乗り込むのでガンダム
これも基本。
ミノフスキー粒子もあります。(今回は従来のガンダムのMSの動力源であるミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉ではなく、フォトンバッテリーで駆動するのでミノフスキー粒子をどうやって生成しているのかは謎なんですが、核融合炉ではなく縮退炉を積む∀ガンダムミノフスキー粒子によるIフィールド・ビーム駆動を採用しているので宇宙世紀の次の世代のガンダム核融合エンジンなしでもミノフスキー粒子を出していいという前例は出ている)
宇宙にも行きます。
リモコンではないのでGロボや鉄人とは違います。また、レイバーやATなどよりは頑丈ですが、勇者ロボやスーパーロボットやバスターマシンやアイドルよりは脆いです。ここら辺がガンダムですね。
じゃあ、ヴァルヴレイヴとかバディコンプレックスとかアルドノア・ゼロなどとガンダムがどう差別化されているのか考えてみよう。


■3.主人公が「メカの操縦技術を持つ」学生
ガンダムで重要なのは、「普通の素人の少年主人公がロボットに乗る」と、見せかけて、前提知識を持っているのです。
ガンダム Gのレコンギスタでも、主人公のベルリ・ゼナム君はキャピタルガードという軌道宇宙エレベーター(キャピタルタワー)の保守点検を行うキャピタルガードという組織の下の訓練校の学生ということで、前提知識を持っているとアピールされます。
過去のガンダムでもマイコン少年だったりジュニアモビルスーツ部で優勝していたり、モビルスーツの部品を扱う仕事をしていたり、工業科の生徒だったり、テロリストの親に英才教育を受けていたり、月の特殊部隊の養成学校を卒業していたり、ガンダムに乗る説得力が事前に用意してありました。
ずぶの素人ではないというのがガンダムポイントですね。そういう点でバディコンプレックスとは違います。
また、プロの軍人として養成されたのではないという点で、ボトムズアルドノア・ゼロ機動戦艦ナデシコ(コメントを受けて訂正、テンカワ・アキトはコックです(むしろずぶの素人)。ナデシコを見てなかったというアキレス腱でした。すみません)、フルメタルパニックとも差別化されます。
Gレコのキャピタルガードは名目上は軍事組織ではなく軌道エレベーターの保守点検公社です。∀ガンダムのディアナ・カウンターのロランも名目上は軍人ではなく地球降下生体実験検体です。
OVAガンダムやコミカライズ、小説版ガンダムやアナザーガンダムは意図的にそこに対してカウンターを打つためにプロの軍人が主人公だったりします。富野監督以外のアナザーガンダムガンダムかどうか論争は泥沼にはまるので、そこは今回は考えないようにします。
富野由悠季監督のロボットアニメと、その他のガンダムではないロボットアニメと比較して、ガンダムは他の作品とどう違うのかを云々して、Gレコのガンダムらしさを書く。
で、ガンダムですが、エゥーゴやクロスボーンバンガードもリガ・ミリティアもミリシャも最初は軍事組織ではなく政治団体であったり専門学校やギルドが前身でしたが、徐々に軍事組織になっていきます。その点で、主人公の所属するキャピタルガードからキャピタルアーミーが発足していくというGのレコンギスタのドラマ運びはガンダム的ですね。この状況が動いていくというのも後に説明しますが、ガンダムらしさの一つです。
また、「マシーンを動かせても、モビルスーツを動かすのは別なんじゃないの?」と疑問も出ますが、Gレコの世界観ではモビルスーツは色んな組織が技術を発展させて新型を作る、と言うよりは昔の宇宙世紀の技術を少しずつ模倣していくという裏設定がある。そして、繰り返される「国際規格」どうもレクテンもG-セルフも入力系統に大した違いはないようだ。プレステが使える人はWiiも使える、と言う程度にはメンタルモデルが共有出来ているのかもしれない。


■4.ガンダムは主人公の専用機ではないが、軍事的マシーンである
主人公がロボットに偶然乗り込むというのはロボットアニメのテンプレートだし、また逆に親や博士が主人公たちを乗せるためにロボットを作るというのもロボットアニメのテンプレートです。あるいは、プロの軍人や公務員のための量産型車両としてのロボットというジャンルもあります。
ガンダムはその中間として、「主人公以外の人が乗り込むことを想定して製造されたが、主人公が乗ることになる」という微妙なポイントに位置しています。
そう考えると、ザブングルはかなりガンダムっぽいんですが、ザブングルは戦闘メカではあるが軍事機器ではないという点でガンダムではありません。同じくキングゲイナーも軍事マシーンと言えるのかあいまいな骨董品なので、ガンダムではありません。
ダンバインは部品が生ものを使っているし、大きさも違うし動力源に精神エネルギーを使っているし、近代的な軍の機械と言うよりは中世的なファンタジー世界の法具に近いので、ガンダムではありません。
イデオンブレンパワードは生き物なのでガンダムではありません。
ザンボット3ダイターン3エルガイムは主人公の専用機なのでガンダムではありません。
なので、同じく専用機であるエヴァンゲリオンマジンガーZコン・バトラーV系のスーパーロボットダンクーガコードギアスガンダムではありません。
で、ガンダムシリーズですが、どれもガンダムは初登場時は主人公とは別の人が乗る予定だったり乗っていたりします。
Gのレコンギスタでは、先にラライヤ・マンディアイーダ・スルガンが主役ロボのG-セルフに乗り込んでいます。それを奪ってベルリ・ゼナムが乗り込む事になるので。


■5.主人公はガンダムに乗る前に他のマシーンに乗っている
これは設定と言うよりドラマの運びですし、前項の3、4を合わせたものです。
「主人公はマシーンを操縦する技術を持っているのでガンダム以外のマシーンに乗っている」「ガンダムは他の人のために用意された」の合わせ技ですね。
Gレコのベルリ君は最初はレクテンを操縦していますが、Gセルフに乗り換えます。乗り換え要素はガンダムの重要なドラマポイントです!
乗り換えを能動的に行うことで、「ガンダムに乗るぞ!」という主人公らしい意志を示しているのです。それを描いた点で、Gのレコンギスタの1話は非常にガンダム的ですね。
ベルリ・ゼナムG-セルフに乗って動かしたのはデレンセン大尉に「腕ぐらい動かして見ろ」と言われたところもありますが、エヴァのシンジ君みたいに命令されて嫌々乗り込んだのではない。割と本能的にガンダムに引き寄せられるようにガンダムのハッチを開いて自分から起動スイッチを押し込みます。
命令されて乗り込むのではなく、あたかも自分がガンダムに乗るのが自然なように本能的にガンダムに乗り、運命の出会いを果たすというドラマ運びは、ガンダムの主人公らしいところです。


歴代ガンダムも2台目以降のマシーンなのです。
アムロ・レイ→エレカ→ガンダム(ジオンのザクへの義憤により)
カミーユ・ビダン→ジュニアモビルスーツガンダムMk-II(MPに暴力を振るいたかったため)
ジュドー・アーシタ→プチモビルスーツZガンダム(お金目当て)
シーブック・アノーガンタンクR→ガンダムF91(自衛と同級生や避難民を守るため)
ウッソ・エヴィン→パラグライダー・ワッパなど→シャッコー→Vガンダム(僕は何をしようとしているんだ?)
トビア・アロナクス→ベズ・バタラ→クロスボーンガンダムX-1(木星のプリンセスのため)
ロラン・セアック→フラット→水素車→ホワイトドール(お嬢さんのため)


乗り換えと、理由がきちんとあります。
今回のベルリ・ゼナム君が「Gセルフに乗ってみよう!」って思ったのは、
・メカの装備のチェックや観察をするのがもともと好きな好奇心
・いい匂いのする女の子の尻が磨いた椅子に座りたい
飛び級など、みんなができないことをやってのけるのが好きだし仲間想いの性格なので、「ハッチが開かないよー」ってみんなが言っていると「じゃあ僕が開けられるかチャレンジして、みんなを助けてやろう」という勇者アレクサンドロス3世、アーサー王的発想。
・女の子たちの前で良い格好をしてみたい
・実習が途中だったからやり直してみよう
などの理由があります。


■6.物語の始まりが戦争の特異点
「全てはレコンギスタの始まりに過ぎなかった!」というキャッチコピーですが、ガンダムの第一話や序盤は振り返ってみると大きな戦局が急展開する関数の変曲点だったと思える時期であることが多いです。
Gのレコンギスタの第一話もこれから起こるであろうレコンギスタの始まりのきっかけとなるように、ラライヤ、ベルリ、アイーダの運命の3人とガンダムが出会う所から始まるのです。そして、同時にキャピタルアーミー設立やアメリアやゴンドワンの政治的陰謀も同時に発生する。
既に起きている戦争の途中とかではない。
大きな戦争の開戦前とか戦局の転換点を物語の序盤に位置するのがガンダムの特徴でもある。(まあ、これは割と普通で、物語に主人公が登場するのが歴史を動かすきっかけになる、って言うドラマツルギーはかなり多い)
ただ、まあ、ガンダムの場合は予定されていたシナリオ通りの運命を仕組まれた話や謎の宇宙人の侵略開始ではなく、色んな人物が策謀し合って事態が流動化した結果なし崩し的に状況が動いてしまうという特徴がある。
で、ガンダムは物語が終わった後に序盤を振り返ると「あれが切っ掛けだったんだな」と思い返すことが多い。


機動戦士ガンダム→シャアの艦隊のサイド7偵察と連邦軍のV作戦による一年戦争の一斉逆転の開始
機動戦士Zガンダム→シャアの小隊のサイド7偵察とエゥーゴ地球連邦軍ティターンズの軍事衝突の開始
機動戦士ガンダムZZ→シャアを失ってグズグズになったエゥーゴが新戦力を得る時と、ハマーンアクシズネオジオンと改称する時期
逆襲のシャア→シャアの隕石落としの開始
機動戦士ガンダムF91→ベラ・ロナとフロンティアサイドを接収するためのクロスボーン・バンガードの侵略開始と、サナリィの新型モビルスーツの開発時期(これは割とロナ家にシナリオが作られた感じではある)
機動戦士Vガンダム→ウッソとシャクティにとって、マシーンと会った日
∀ガンダム→地球降下作戦の実験による主人公たちの運命の出会いと二度の成人式


で、序盤の変曲点を過ぎた後は、ロードムービーになって宇宙や地球を移動する、らしい。これも基本的な富野ガンダムのフォーマットに沿っている。なし崩しで転がり込んでしまった海賊戦艦に連れまわされるうちに…というのもクロスボーン・ガンダムでやっている。ゆうきまさみ先生も指摘していたが、富野アニメは基本的に「基地のような船で世界や宇宙を旅する」ということばっかりやってる。
ただ、Gのレコンギスタでオリジナリティを感じるところは、キャピタルタワーと海賊船と言う二つの移動する船や母艦があるということです。さらに、その地球の静止衛星軌道上で小競り合いをしているキャピタルテリトリィ陣営と宇宙海賊の上には、宇宙エレベーターを登り切った世界の果てにはフォトンバッテリーを持ってくるトワサンガという月天の存在が居り、さらなる宇宙的存在が宇宙世紀の遺産を守っていることも匂わされている。そういう高い世界をロードムービーとして単に転戦するだけでなく、また敵と味方の両方と親交を深めることで主人公は世界の複雑さを観察する。主人公が世界を観察するという展開は劇場版Zガンダムなどでも使った手法だが、今回はリーンの翼の要素も引き継いで、主人公が敵対する陣営の間を行き来しながら世の中に対する見聞を深めて成長していくと予想でき、今後に期待です。


■7.オープニング、エンディングの歌と絵
ダンスなどの新要素は入っているけど、富野ガンダムのお約束はかなり踏襲している。単に富野監督と言うか絵コンテの斧谷稔さんの癖でしかないのかもしれないが。
・初っ端やラストに地球をバックに宇宙を飛ぶ人工物を入れてくる。
・手を上げてジャンプしたり並ぶみんなの集合写真
・空を駆け巡るガンダム
・ジオンのザクのように編隊飛行するカット・シーやエルフ・ブルックなどのメカ紹介。量産型も紹介。
・G‐セルフとG-アルケインがターンタイプや一千万年銀河リックディアスたちのように並ぶ
コアファイター合体バンク
・エンディングでは空の雲などのイメージシーンが多く、また、横にスライドする気分のカットが多い。
・これまでとこれからの展開をオープニングに取り入れる予告カットは斬新だが、エンディングテーマで予告をやるのは機動新世紀ガンダムXでやった。Xはアナザーだけど…。ブレンパワードでもエンディング中の予告をやったし・・・。


■まとめ.ガンダムGのレコンギスタガンダム
こうやって以前のガンダムと比較検討していると、Gのレコンギスタはデジタルっぽさやメカの描線の硬さを押さえた絵柄や、華々しい色合いや、学園ラブコメ要素や、海賊冒険や、若干骨格が今までのMSとは違うメカデザインや軌道エレベーターなどの、今までのガンダムにはない要素があるし、アナザーガンダムが主体のここ最近のガンダムを見慣れた人には「こんなのガンダムじゃない」と言われるのも仕方がない。
でも、冷静に因数分解して要素を過去の作品のパーツと比較検討すると、やっぱり「ガンダム規格」というルールに沿っているし、パーツは上手く相似形を取っているのが見えてきます。その縛りのなかで、どのように新しく語るべき物語として変奏曲を奏でることができるかって言うのに期待しましょう。


また、ぶっちゃけた話、新作ガンダムは「こんなのガンダムじゃない!」とか「なんだよ、このクソデザインは」とか「なに言ってるか全然わからないし世界観の設定が分からない」ってくそみそに言われて、みんなが喧嘩して罵声と擁護が飛び交う炎上まで含めて、ガンダムと言う儀式だったりする。毎度のことです。
家事とケンカはガンダムの華です。
この戦闘状況を楽しむのは楽しいよなあ!アニメでもネットでも!戦え!そして君の目で確かめろ!


■ちなみに
早口だったり、みんな自己中心的に会話が噛み合ってないで勝手なことばかり言うとか段取り芝居を省きまくるとか、板付きのカット頭をぶっちぎるとかは、ガンダムって言うか富野アニメ全般に言えることなので、詳しく述べることは避けました。
興味のある人は、富野監督の演出理論を書いた映像の原則と言う本を読んでください。

映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)

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