玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。旧玖足手帖から記事・ブクマを引き継ぎました。


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∀ ガンダム 第30話「胸に抱えて」

脚本・浅川美也 絵コンテ・工堂紘軌/斧谷稔 演出・北川正人 作画監督・杉光登

あらすじ
http://www.turn-a-gundam.net/story/30.html
セリフ集
http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Pastel/3829/words30_TurnA.html

二回連続の星山博之脚本の後の浅川さん。
ああ、分かりやすい。
それでも、他のアニメやドラマに比べたら行間はかなり詰まってるが。


今回はギャバンへの気持ちに区切りをつけたソシエ・ハイムが、ロラン・セアックと協力したり海に入ったりして、また高校生同士の淡い関係を作り直す話。
同時に、核兵器に振り回されて混乱したレット隊のキャンサー・カフカと部下のムロン・ムロンがウィルゲムに戦いをしかけて、さらにディアナ様のふりをしたキエル・ハイムに振り回される話。
分かりやすい軸のある話だな。


まーあれだ。
最近二回の星山脚本は3クール目が核爆弾と二人のディアナに振り回されると言う軸を作るために、いろいろと詰め込み過ぎだったのだろうな。メインライターだし。


で、ソシエちゃんにやっとこさスポットが当たります。
核爆発以来、ソシエはゼノアの直談判に付き合って戦ったり、ジョゼフを援護して戦ってばかりで、気持ちの描写がほとんどなかった。
というか、ソシエは悲しいことがあると戦ってしまう女の子。
でもギャバンがいなくなった事を気にしない訳がないのに。
その割に、ロランが核爆弾をどこに捨てれば良いか思案して単独行動したり、ぼんやりと海を見てブルーノ、ヤコップに注意されるような描写はある。
ロランの様子の方がよっぽどおかしい。
むしろ、ロランが核兵器やディアナ様の事で頭がいっぱいだから、ソシエの気持ちがわからない。それを演出するためにソシエの描写が削られてたんだろうか?
かもしれない。
ソシエの親友のメシェー・クンや同じ女性のフラン・ドールはソシエの様子がおかしいとわかってるから、やはり描写されてないところでソシエの様子は変わっていたんだな。
で、それに気のつかないロランは「そりゃ良くないわ」ってメシェーとフランという二人の女性に評される。あ、女性脚本っぽい?
って言うか、ロラン女装もイケる美形で、やせマッチョで、戦いも強い男だが、女心だけはわからないスーパー朴念仁。
いや、逆に少女漫画のイケメンに良くあるタイプ?
てか、歴代ガンダムの主人公はニュータイプでもちっとも飛んでない人が多いもんね。
シローやガロードは女好きだが、ウッソなんか盗撮小学生やばい。
そう考えたらロランはマシな方か。


で、ソシエは一人でギャバンの死を悼もうとして基地を飛び出す。
何故か?
アニメではあまり説明されてないが、スニーカー小説版を参考にすると、ギャバンの死んだ北アメリア大陸から、部隊と一緒にソシエが離れてしまうから、行方不明のギャバンを探せなくなるし、気持ちに区切りを付けたくなるというきっかけだろう。
分かりやすいガンダムSEEDならば、「キラがMIAだ!軍隊はキラを探さないのか!」とか分かりやすい説明用語を交えたセリフで騒ぐんだが、富野アニメはそういう段取りは省く。
あと、セーフティシャッターはないし、アストレイの人に助けられたりもしないでギャバンは消える。


ソシエを心配した女友達やジョゼフを振り切ってソシエは勝手に出て行く。
そんなソシエに、ロランは付き添ってやる。それを許すのだから、やはり、ロランはソシエにとって特別なんだな。
友達には気を使うけど、執事にはどんなわがままを言ってもいいから、自分をさらけ出せる。
ハヤテのごとく!
フランやメシェーやジョゼフはロランに「話を聞いてやるのよ」「側にいてあげるだけでいいんだからね」「優しくしてやんな」って言う。
ロランとソシエの二者関係だけじゃなく、仲間が応援してくれる人間関係は良いね。ガンダム00にはない描写だ。


だが、ロランの馬鹿野郎は、空気を読まない。
海辺にカプルをかわいく体育座りさせて、泣きながら北アメリアとギャバンとの別れを噛み締めていたソシエに向かって、バカロランは「ギャバンの後を追って入水自殺するつもりだったんでしょ!」とか叫ぶ。
アホ過ぎる。話を聞くだけでいいって言われただろうが!ドアホ!
ソシエちゃんブチ切れですよ。


ロランはニュータイプなのか?察しが良いというより先回りして心配する癖?
人がそんなに便利になれる訳ない。
ニュータイプと言ってもエスパー未満だから、何でも分かる訳じゃない。ちょっと勘が鋭いくらい。そのリアルとファンタジーのさじ加減が、おもしろいな。


で、ソシエちゃんは勘違いしたロランに怒るが、怒ったら元気が出るのがソシエだし、ロランが超好きだし、必死に自殺をとめようとするのも自分への気持ちの強さだと思うから、ロランを遠ざけないで、ホワイトドールの手に乗る。
で、ソシエはロランに命令して自分をギャバンの死んだ方角へ掲げさせて、
ウェディングドレスを着た私は綺麗でしょーっ」
と叫ぶ。
名場面すぎる。
北アメリア大陸を離れるから云々という視聴者向けの理由説明は最小限で、こういう見せ場をしっかり描く。
直接涙を見せないのも粋だ。
まあ、行動理由をいちいち説明した方が一般受けはするんだろうが、富野は舞台芝居の様な作り方だし、脚本の浅川さんも劇団主催者兼役者だしね。
佐藤順一の作品は割と説明と見せ場のバランスが良いから、一般にもオタクにも受けがいいな。
出崎統は見せ場しかない。説明すら見せ場。


閑話休題


この、死んだ相手に花嫁衣装を着て見せるのは、植芝理一ディスコミュニケーションというマンガの「げに尊きは彼女のふくらみ」でやってたムカサリ絵馬死後婚姻儀式に似てますね。
ターンエーガンダム世界は20世紀初頭みたいだから、ソシエちゃんはムカサリ婚姻みたいな風習を知ってる子だったのかも。
ビシニティには水子と夭逝児供養の石碑が在るしね。死を悼む作法が地域的に身近なんだろう。
で、死を悼んで死者と結婚儀式をして、逆に残されたソシエが前向きに生きて行く区切りになったんだろうな。
それは現代日本の都市生活者では希薄な意識かもしれないが、こういうガンダムみたいな変なロボットアニメを通じて忘れた文化を思い出したい。
富野監督は∀の癒しというエッセイで「特攻隊を見送る少女も美しいよ、ということを描きたい」とか書いてる。
維新後や戦後の日本は風習を捨てて来たが、昔からの風習をアニメで見たら感動する程度には、人の心には土着性がある。


で、ソシエちゃんはギャバンに区切りを付けたから、これからはロランと一緒に居る機会が増える。ウィルゲムに乗らないで二人のモビルスーツだけでカリブ海を渡ります。
ロマンスだな。
でも、ソシエは心理的に未亡人だ。
かんなぎでナギが非処女とかで騒ぐオタクは富野アニメを見るのは難しい


という感じの通過儀礼をソシエはした。
ギャバンのために泣いてもいたので、ロランへの当て馬というだけではなかっただろう。愛していたはず。
ウィルゲム離陸でロランからギャバンに乗り換えた描写もあったしね。
だけど、男が戦死したあとに女はきちんと気持ちを整理して他の男の人と付き合って良いというのがターンエーガンダム
ロランと付き合うのはギャバンに不貞とか、逆にギャバンは最後まで当て馬だったというようには見えない。ソシエはそんな悪い子じゃない。
が、ソシエについてそのように言われることが多いのはとても悲しいことだ。
まあ、ドキュメンタリー以上に記録フィルム的に描写がアッサリして気づきにくい作りにしてるからなあ。


ていうかかわいい子は何人と付き合っても良いじゃん。
ロランとまた仲良くなれば良い。
だが、その夏の恋も続かないのがターンエーガンダムでもある。

ソシエはそんな感じ。




問題は、ディアナとキエル。
わかりにくい!
まず、前回親衛隊がかっこよくディアナ様を連れ出したが、彼に命じたミラン執政官はフィル少佐ともアグリッパとも通じているようで、ディアナ様や親衛隊の味方というだけではないらしい。
扱いにくいディアナ様を外に出すのはフィルの意向みたいだが、ミドガルドに引き渡したのはアグリッパかギンガナムへ擦り寄るため?
誰がどの陣営かわかりにくすぎ。
大体、ディアナ様を一人でミドガルドに預けた事について、ハリー以外の親衛隊は納得してるの?
∀ガンダムは群像劇ではなく、主要人物のためのお伽話なのか?
でも、脇役を活かした群像描写もある。統一感がないのか?


ウィルゲムの方の話に行くと
前回ディアナ様のふりをしているキエルさんをウィルゲムに送り届けたハリー大尉は、今回は影も形もない。
行間をニュータイプ能力で補完すると、ハリーにとってキエルは本物のディアナへの暗殺者たちの目を逸らすための影武者に過ぎないから、
キエルさんをウィルゲムに預けたら本物を守りに戻るのが当たり前だ。
でも、話の区切りの間に説明無くいなくなるのは分かりにく過ぎ。


まあ、良い。本放送から十年後には分かる。


今回の敵はレット隊のキャンサー・カフカとムロン・ムロン。
彼等の行動はまだ分かりやすい。
核兵器に振り回されて、ウィルゲムが核を持ってると疑って、ディアナ様が核攻撃されないように核爆弾を奪いに来た。
そしたら、核はないけどディアナのふりをしたキエルお嬢さまに遭遇して振り回され。
馬鹿だなあ。だけど「姉さんと二人、いいじゃないっすか!」は良かった。
ローラに助けを乞いながら拒絶されて戦うとかもかわいそう。

ムロン「お前がムーンレィスなら、ディアナ様を敬っている俺達を助けてくれたっていいだろ。」
ロラン「ごめんなさい」
ムロン「…なんでこうなる?ムーンレィスの裏切り者」
ロラン「僕は裏切り者じゃない。なんで皆さんは話し合おうとなさらないんですか?あなた達こそ」

ロランは「戦いより話し合いで解決」ってレット隊に言うけど、ロラン・セアック本人はあまり話し合いをしてないよね。
「グエン様とディアナ様が力を合わせてくださればいまわしい過去をなくすことは出来ます」とか偉い人に丸投げ。
さてディアナとグエンにまかせて平和になったか?


その他の人について
リリ・ボルジャーノ様はミハエル大佐とムーンレィスの技術者の言い争いを、トンチで静め、グエンとくっついてるだけではない、政治センスを見せた。
今はまだ、グエンにくっついている方がメインだが、才能の片りんを見せ始めている。
リリ様の兄上姉上は何をしている?


ジョゼフはフランとラブラブで優しくなった。
フランが写真を撮っていたのはフロジストーンを干している人。
フロジストーンは海から取れる水素燃料自動車の燃料。
これも分かりにくい。ワカメかと思った。



というか、俺、「分かりにくい」とばかり言ってるなあ。
でも分かりにくいのを色々考えるのは面白い。それに、分かりにくいのは説明より見せ場を描いてるからだから、やっぱり面白い。