玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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輪るピングドラム第20話「選んでくれてありがとう」小さい芝居の良さ

脚本
幾原邦彦伊神貴世
絵コンテ 演出
林明美


作画監督
林明美 桑名郁朗 楠本祐子


絵コンテ 演出の林明美さんはウテナにも参加してた人?少女革命ウテナはマンガの一巻とアニメ雑誌の監督のグラビアインタビューを読んだだけで見てないんだけど。

  • 今回の絵の小芝居の良さ、可愛さについて

本論を語る前に今回の絵について感心したので書く。


3歳の陽毬がちっちゃくてかわいい


いやー、今回の陽毬ちゃんはかわいい!実に妹!って感じの絵で素晴らしい。3歳の子供の重心が体の上の方に遭ってフラフラしてる動き方とか、寄る辺ない感じがとても子供らしくてかわいい!守りたい!
晶馬もかわいい。
また、単に小さくてかわいい物を書いているだけでなく、小さい芝居を拾って描いているので、そこも全体的にちぃちゃいもの感を上手く描いてる。

  • 小芝居が良い


眞悧がキスに対する理論を言う台詞に被せて、キスをするシラセとソウヤの寸劇が小芝居で良い。

チョロチョロと晶馬にまとわりつく山下の動きも楽しい。(山下の言う「連帯責任」とは何のことだろうか?という小さな違和感の提起もおもしろい。連帯責任とは、冠葉の居た夏芽真砂子のトラック横転事故か、多蕗の爆弾事件か?)



高倉陽毬の顔に渡瀬眞悧の髪の束がパラっと落ちる小さい芝居が良い。この、ちょっとだけくすぐったい、という、「ちょっとだけ感」が良い。「軽くて小さいけど、確かにある」という芝居の拾い方が良い。ここら辺は林さんが絵コンテ演出と作画監督を兼ねたことの良さかなーとか思ったり。

林さんの演出は、ピンドラで目立つ奇抜さや凝った画面を作るというよりかは
平凡で日常的な作りを目指していた感じです。
でも、その奇抜ではない、キャラクターに焦点を絞った見せ方が
陽毬と晶馬の関係を綺麗に見事に描いた印象です。


おそらく丁寧に日常を描くという意味では、
ガイナックス時代の仕事が大きかった、
特に影響を受けたといわれる平松禎史さんの演出を
目指した感じに見られました。
失われた何か 輪るピングドラム 20話「晶馬と陽毬の出会いが語られる、林明美さん絵コンテ・演出・作画監督回!」(感想)

丁寧に芝居を拾ってるよね。

こういう楽しげな子供らしさもそうだし、猫が行ってしまった後の陽毬の表情とか、かかとや膝のあかぎれた感じの細かい所が良い。

あと、幼い晶馬が雪に残した足跡とか、雪でぬれた靴がコンクリートに残す水滴の足跡とか、

そういう細かい絵を描いて、「子供の歩幅の小ささ」→「子供の弱さ」とか、そういう演劇的な意味をちゃんと丁寧に演出する絵になってて、良い。


冒頭で夏芽真砂子にやられて倒れた陽毬を晶馬が助け起こした後の、この陽毬の顔のアップの二段階の描き方の二つ目で、陽毬から晶馬が光り輝く物に見えている、というふうに感じさせる演出も丁寧でいいなー。

ロングのカットで晶馬と苹果を映しながら、小さいけど肩を落として、塀にもたれて足を曲げるような小芝居を上手く見せてて、良い。晶馬と苹果の鞄が同じ所に並んでるのも演出がさりげなく意図的で上手いなー。



眞悧と陽毬の会話で、眞悧がすごく簡略化されて小さく描かれてるのに、よく動いてて面白かった。細かいけど、上手く芝居してる。アニメーターだなあ。

このバストアップの陽毬の肩が上がって、身を乗り出してる感じの芝居も良い。




この靴の変わり方とか

張り紙の細かい変わり方とか


こういう細かい所のうまさが、

苹果との出会いとか16年前の事件を引きずっている多蕗との18話の事件や前回の記憶の思い出しがあったせいで、1話と同じように「晶ちゃんのお味噌汁はお母さんの味がする」と言った陽毬に晶馬が怒ってしまう朝食の異和感とか、

両親と冠葉が同じ場所にいるのにどうも食い違っているように見える感覚とかを細かく醸し出してて上手い。
今回は台詞が暗喩的というか、言外の意図があまり喋らないような意味深な台詞が多かったけど、絵の細やかさもそれに合致してる。(この場面は、千江美が剣山と冠葉の間の壁になってるっぽい姿勢なのかな。カメラの横パンの動きで二人を分けてるのも微妙な感覚を醸し出してる)


他にも企鵝の会の会合での冠葉が林檎を手の中で遊ばせている所とか、その場面での冠葉、真砂子、マリオの佇まいとか、細かい見せ方が多くて良い。

冠葉も運命の果実を持っていたんだねー。っていう


細かくてさりげなくて丁寧な作画を積み重ねて意味性を作りだす演出が光る20話です。
18話の山内重保さんの強烈なカット割りの感じとか、後藤圭二さんの真砂子ギミックな感じとか、真砂子やゆりの回想の幻惑トリックな演出とか、9話の武内宣之さんの作りもので埋め尽くされた異次元空間とか、4話の苹果の人形劇とか、
多彩なスタッフでいろんな演出の違った種類を見せながら、どれも魅力的というのが、この輪るピングドラムってアニメの良い所だなあ。


それで、この20話は幼い晶馬や陽毬の小ささとか慈しみが丁寧に描かれてて、なんかかわいいです。
萌え美少女のかわいさとか、アクションの格好良さなどとはちょっと違って、なんとなくいとおしく思えるような作品になっているなー。と。


ちょっと、風邪気味なので絵の事だけ書きます。お話の感想はまた後日。