新作ガンダムの話題以外の講演会レポートは以下に分けます。
僕が感じた「私の個人主義」という部分はちょっと個人的な感想なので、新作ガンダムの記事と、講演会の感想の記事を分けました。
とりあえず、他の話題の部分でのレポートは書いても良いんだが。
ノートに16ページもあって、面倒になってきた。上記の言葉は2p分にも満たない。他の方が書いた記事を転載するだけにとどめても良いと思う。
何故かと言うと、夏目漱石の私の個人主義的な考えに目覚めたので、私が富野の言葉をレポートする事にあまり労力を割きたくないと思ってしまったからだ。
- 私の質問と富野講演会
富野講演会まとめ - 玖足手帖-アニメ&創作-
というわけで今まで僕は参加した富野講演会で全て富野監督に質問をしてきた。
でも、先週、2012年11月17日に梅田阪急ビルオフィスタワー17階 のNHKカルチャーで行われた富野由悠季「アニメを通して得た人生観」という講演会では質問をする気が失せたのでしなかった。
それは、その直前にヱヴァンゲリヲン新劇場版:Qを見て、人いきれする会場で富野の話を必死こいて16ページもノートにとって、精神的に疲れていたから、とか、考えていた質問に対する回答を富野が言ったから、自分から聞く気にならなかったから、とかそういう理由がある。
今回の富野の講演会は、富野個人の生い立ち、経験を話す前半と、著作に対する反省を語る中盤と、思想信条を語る後半と言う構成で、夏目漱石が学習院大学で行った「私の個人主義」という講演会に似た所がある。
そこに、こうある。
何も私を模範になさいという意味ではけっしてないのです。私のようなつまらないものでも、自分で自分が道をつけつつ進み得たという自覚があれば、あなた方から見てその道がいかに下らないにせよ、それはあなたがたの批評と観察で、私には寸毫の損害がないのです。
私自身はそれで満足するつもりであります。
しかし私自身がそれがため、自信と安心をもっているからといって、同じ径路があなたがたの模範になるとはけっして思ってはいないのですから、誤解してはいけません。
図書カード:私の個人主義
- 作者: 夏目漱石,三好行雄
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1986/10/16
- メディア: 文庫
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ヱヴァンゲリヲン:Qを見て「庵野秀明のエヴァンゲリオンは面白いけど、やっぱり自分の描きたい創作とはズレがあるし、自分の理想は自分で書くしかない」と思ったし、庵野の作品が自分の理想と違うからといって「間違っている」とか「庵野殺す」等と言うのは自分では何もしない人間の単なる甘えだと思ったんだ。
夏目漱石は言う。
何かに打ち当るまで行くという事は、学問をする人、教育を受ける人が、生涯の仕事としても、あるいは十年二十年の仕事としても、必要じゃないでしょうか。
ああここにおれの進むべき道があった! ようやく掘り当てた!
こういう感投詞を心の底から叫び出される時、あなたがたは始めて心を安んずる事ができるのでしょう。
あなたがた自身の幸福のために、それが絶対に必要じゃないかと思うから申上げるのです。
もしどこかにこだわりがあるなら、それを踏潰(ふみつぶ)すまで進まなければ駄目ですよ。
――もっとも進んだってどう進んで好いか解らないのだから、何かにぶつかる所まで行くよりほかに仕方がないのです。
腹の中の煮え切らない、徹底しない、ああでもありこうでもあるというような海鼠のような精神を抱いてぼんやりしていては、自分が不愉快ではないか知らんと思うからいうのです。
もし私のような病気に罹った人が、もしこの中にあるならば、どうぞ勇猛(にお進みにならん事を希望してやまないのです。もしそこまで行ければ、ここにおれの尻を落ちつける場所があったのだという事実をご発見になって、生涯の安心と自信を握る事ができるようになると思うから申し上げるのです。
宝島で、一本足の海賊ジョン・シルバーは言う。
「つまりな、俺にとっての一番大切なものってのは俺自身まだ何なのかわかんねぇんだ。だから俺はそれを探すために毎日、毎日を過ごしてる。」
「あるよなぁ、ジム。どっかで俺が、俺の一番大切なものってやつに出会う時があるよなぁ・・・そうでなけりゃ、そうでなけりゃあ、あんまりさみしすぎらぁ」
ただ一つの俺だけの憧れを見つけるには、他人の「何か」ではなく自分の個人主義的な何かを追求せねばならん。
と言うわけで、僕は先週の土曜、庵野秀明の映画を見て、富野由悠季の言葉を聞いて、彼らに対する興味が若干減衰した事を実感して、寂しさを感じたが、自分の創作をやろうと言う意欲は逆に強まったのである。
そこで創作をせずに、アクセス稼ぎのためにこういうとりあえずのレポートを書く、と言うブロガーとしての癖はあるんだけどね・・・。睡眠なくても働く体になりたいが・・・。
夏目漱石「いくら私が汚辱を感ずるような事があっても、けっして助力は頼めないのです。そこが個人主義の淋しさです。個人主義は人を目標として向背を決する前に、まず理非を明らめて、去就を定めるのだから、ある場合にはたった一人ぼっちになって、淋しい心持がするのです。」
俺の、寂しさを埋める何か、俺は俺の創作で見つけられるだろうか?
あ、労働面では不況だし体力もないし学歴も職歴もないし社交恐怖障害なので、俺の何かは見つけられないですね。糊口をしのぐ程度です。それもちょっと、プライベートの経済の悪化に伴って無理になるかもしれないので、僕の富野と同じく2年くらいで死ぬかもしれない。まあ、伊藤計劃も死んだからそれは別にかまわないんだけど。
- では、概略の転載
富野の言葉は非常に尖った部分があると同時に話題の範囲が広いので、文脈をハズすと意味合いが全く変わると言うやっかいなものだが、いかんせん私もめんどくさいので、転載にとどめる。
多少、グダちんなりに脚注と補記はした。(他人のブログにアクセスを張るだけでも良いんだが、他人は他人の都合でアカウントを消すかもしれんので、転載する)
ニュアンスは間違って伝わってしまうが、生講演会で伝わったもののインターネット記事が本当に伝達できるか?モニターを通した真実に意味があるのか?という気もするし、富野の事は富野本人にしかわからないので、もう作品で語るしかなく、講演会のレポートを正しく転写する事がそれほど大事なのか?と、思ってしまいます。
全文文字起こしを期待した方はすみませんが、興味があったら富野監督のアニメを見た方が手っとり早いし儲かるよ。
五年前は、
中途半端に富野の言葉を語らないで欲しい - 玖足手帖-アニメ&創作-
なんていう講演会レポート記事を書いたのにね・・・。模倣子の限界…。
だって父さん、ドダイだよ:富野由悠季かく語りき
富『こないだ71才になっちゃいました。驚いています。まさかこの仕事で70まで生きられると思ってなかった』
富『NHKの人には悪いですがこのタイトル(アニメを通じて得た人生観)ウソです!』
会場笑
富『小6の頃の文集で”将来なりたいもの”というのにヘリコプターのパイロットと書きました。ヘリコプターと限定するところが大事なんです』
富『小学生の頃は家で写真の焼付けをしていました。押入れの下に入ってシコシコと』
ここからひとしきり昔の写真現像がどれだけめんどくさいかというお話
富『めんどくささとおもしろさ』
富『中学に入って写真部に入ったんだけど、自分が父親から教わった技術がテキトーすぎて赤っ恥をかきすぐやめて読書部へ入りました』
(だから僕は・・・等のエッセイで語られた事である。)富『読書部では女の子たちばかりの中で岩波文庫を読むというフリをしていた。その頃に創作をすることを覚えたような気がします』
- 作者: 富野由悠季,とり・みき
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富『志賀直哉の「暗夜行路」男女の性愛のあり方がわからなかった。エロスの問題』
富「どのレベルから文芸になるのか?どこからがスケベ小説なのか?高一まで徹底的にそれを考えてました。高1の時に旺文社の高校時代に投稿したらダメすぎてつっかえされた。 」
富「なんで僕みたいな文才のない人間がガンダムをできたのか?それは学生運動のおかげじゃないか」
富「日本大学の自治会【中央執行部】は当時有名な右系の組織だった。ある日アメリカ大統領の弟で国務長官のロバート・ケネディが大学の迎賓館にやってきた。僕らはその警護に動員されて応援部をはじめ学ランで50人ぐらいがズラー。ロバート・ケネディが帰ってから学長に呼ばれてちょっと労をねぎらわれた。ところが次の日の新聞を見たらロバート・ケネディが日大に来たことは一行も書かれてなかった!」
富「あの時の記憶があったからギレンにあの演説をさせることができたんだと思います」
絶望に効く薬で語られた事である。
絶望に効くクスリ―ONE ON ONE (Vol.5) (YOUNG SUNDAY COMICS SPECIAL)
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富「エロス、権力、組織、どう切り取っていってもヒーローとヒロインが入れば本来的にエロスが入ってくる問題がある」
富「絶対に意識させない、絶対に意識させないんだけどそっちへ行くぞ!」
(富野監督ここで上着を脱ぐ、水玉のシャツがまぶしい。その趣味は奥方のものと見てまちがいない)
(ビートルズトリビュートのシャツ三万円である)富「自分の本性は?理系か?文系か?」
富「僕は理科が好きだったけど算数ができなかった。本当に悔しい」
富「アニメを作るには理系のセンスがなければ絶対にできないんです」
富「北野武監督の「HANA-BI」フィルムのつなぎ方はきわめて計算されている。パチ、パチ、とカウントをとる音が聞こえるような気がするくらい」
富「勝手にカットが変わる作品は「ハリー・ポッター」」
富「アニメは数理的な感度とリズム感を持ってなきゃダメ。ほとんどの関係者がこれを分かっていない」
富「僕には一回しか会っていない編集の師匠がいます」
富「僕がこうやって歩きます。(普通に歩いてみせる)上下動があると思わないでしょ?」
富「実はこの微妙な上下動を無視して編集つなぐとつながんないの」
富「(さらに図を書いて)これが向こうからこっちに近づいてくる絵でも上下動があるんです」
富「さらに上昇するときよりも下がるときのほうがわずかに速度が早いんです!」
富「だからアニメは”俺の気分はこうなのよねー”ではできない」
富「嘘八百のリアリズムというものが嘘八百ではない」
富「リアリズムな仕事の人のほうがフィクションでモノを考えるようになってるじゃないか!」
富「前回の講演から日本大変事が起こり地震、原発、領土、政界のことなどもあります」
富「ここ数年本気で考えるようになってきた」
富「でも、僕レベルの人間では良い結果は考えようがない。リアリズムとして考えると、あまりいい結果を思いつかない。その結果は無残なものでしかない。」
富「一市民に過ぎない僕は、もう専門家に任せるしかないし、決定に従うしかありません」
富「だから、こういう編集の繋ぎ方の話とか、アニメの話をしてた方が楽しい!
アニメの話をしてた方が楽しいんだ!って言っても良いと思う!」
富「どうも人類というものはけっきょく国家経済をコントロールしていく上で、破壊と再生しかない。古い組織が崩れていって新しい組織を作っていく。これは中学の歴史じゃない、小学校の歴史でわかる」
富「国家はだいたいの場合、戦争でつぶれる。ほろぼされる・・・」
富「景気を良くしなければならない、喚起しなければならない、それを言い続けなければならない社会とはなんなのか」
富「全部ウソなんじゃないかな」
富「本当に分かってきたことがある。官僚の中にもかなり優秀な人がいる」
富「理想論には気をつけねばならない」
富「人類は新しい方法論を編み出さねばならないのに編み出せてないよね。歴史の長さから見れば4,50年で編み出せないのはしかなたいけども」
富「地球が有限だと分かったならガバナンスの方法を見つけるしかないがこれもすでに理想論」
富「むしろ貴族社会のほうが良かったかも知れない。あの時代の戦争はまだお行儀が良かった。民主主義以降の戦争で大量虐殺が始まった。関ヶ原の戦いの真っ最中に横で農民が畑をしていたという話もある」
富「アニメは概念を伝える物語をできるかもしれない」
富「もう一度シリーズなり作品が作れるんじゃないかと思えるようになってきた」
ここで質疑応答10分、迷わず手を上げた七井コム斎に富野監督は”しかたないね”という表情でご指名
だがここで問題発生、実はこちらで用意していた様々な質問にほど全て答えられてしまっていた(ここらへんがニュータイプなんだよなレビル将軍並に)のでちょっと泡を食ってしまいとっさに
七井コム斎「富野監督の作品に近づこうと運動をしているのですが、あの千人以上にもわたるキャラクターの匂いがする感じはありゃなんなんですか?」
と、べたな質問をしてしまいました
富「それは今日の講座の中ですでに答えました。・・・エロスです!」(どひゃー)
七井コム斎「他人のエロスがなぜわかるんですか?」(ちょっと食い下がってみる)
富「基本は同質です。それが育ちなどによって変わってくる」(ここ一生忘れんとこ)
七井コム斎「なぜ平民出なのに貴族の育ちがわかるのですか?」(平民て言うてみたかっただけ)
富「わかろうと努力してるから。高貴な方々に認められるような作品を作りたいとも思ってます」
七井コム斎「それは天皇家などですか?」
富『そうです
実際、僕は高貴な人にあった事が無いんです。だから、僕は本当はグレース・ケリー女王陛下のような方からお呼びがかかるようになりたいんです!
』(グレース・ケリーとは富野好みの金髪女優から女王になった人である)
七井コム斎『その点ではハヤオ先生に負けていると?』(最後の一押し)富『ハイ次の方』
最後の挑発は案の定かわされましたけど富野さんが生きてるうちに聞き出せる限りのことは聴いておきたいですからね。僕は同い年の富野・宮崎戦争こそ戦後日本文化隆盛の核だと思っているので
この後も3人ほどの質問者の方々、いずれも鋭い、レベルの高い質問が多かったように記憶しています
これほどガンダムの出てこなかった富野講演会もないんじゃないかと思うくらいw
作者の死後の続編は単なる商売。009も。
ただし歌舞伎の様な継承はあり。ミッキーもそう。キャラクターの模倣はありうる。
だって、死んだマリリン・モンローの新作は作れないけど、ミッキーはできるでしょ?
だが、神山君のサイボーグ009はオリジナルを作れず、商売をしなければ行けないと言う神山君の自分の能力を自覚した上で、それ以上に行きたい、でも行けなかったという意欲と葛藤は感じられています。
『明石家さんまさんや立川談志さんは宗教家ではないかと思うのですが?人を笑わせながら人生を悟らせていく意味では彼らこそが宗教家ではないかと思うのですがどうでしょう?』というような質問があったのですが、良い質問ですよね。富野監督の答えは
富『エンタメの半分以上が踊る宗教なんです。でもボクの好みで言えばさんまみたいな顔はいやだよね(笑)百万人一千万人に拝まれるようなものを提供するのが宗教。されど宗教はビジネスではない』
あちゃー。あのアレな質問をしてた人が七井コム斎さんだったのか……
https://twitter.com/ether2001/status/271357839442841600
富野クラスタの人は最初のクソ質問者を問い詰めておくように。
@damegano 御禿の発言の意味を理解できずに、勘違いしたまま食い下がったお馬鹿ちゃんがいたんですよ。 #tominoやっぱあの程度の人だったのか……。ガンダム講談のキナ臭い話も聞こえていたが……。
https://twitter.com/Char_Tweet/status/271519905449381888
だが、今の僕は「私の個人主義」なので、富野監督の言葉も他者であると同時に、富野監督に質問をした人たちも他者であり、その存在は私からどうする事も出来ず、ただ「こういう人もいるんだ」って眺めるだけです。
僕にできるのは、自分の見たいものを見、書きたいものを書くだけです。
あと、宣伝くらいしておきましょうか?
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