玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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∀ガンダム第15話「思い出は消えて」

脚本・高橋哲子 絵コンテ・斧谷稔 演出・渡邊哲哉 作画監督佐久間信一
http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Pastel/3829/words15_TurnA.html
http://www.turn-a-gundam.net/story/15.html
ソシエ「ホワイトドール、ヒゲの威力でぇ〜立てーっ」
髭の威力かよ。
今回は、なんといってもウィル・ゲイム。「母さんです」以上のトラウマシーン。
このシーンだけは本放送のときから鮮明に覚えている。


なんというか、みんなのちょっとした自己都合が噛み合わさって誰も意図していないウィル・ゲイムの死に結集する構造は本当に見事で恐ろしく、また自然だ。
高橋哲子さんは前のローラの牛でも小さな事件がラストの「ムーンレイスなんですよぉおお」に結集するって言うホンを書いてたんで、そういうのが得意なのかしらん?精緻に水面下で感情の流れを動かすっていう?
ディアナ・ソレルはキエル・ハイムと遊び心で入れ替わり、ウィル・ゲイムIII世には思い出のままにディアナの話をしすぎた。
そしてキエル・ハイムはウィルに入れ代わりがばれそうになり、
ハリー・オードはスキャンダルを恐れてウィルを遠ざけ、
フィル・アッカマン少佐はウィルをハリーに押し付けられたやっかいなお荷物だと思って、不十分な援護で無意味な作戦に使う。本気で宇宙船を占領するつもりはなさそうで、宇宙船があるかどうか、ミリシャの展開を探らせる程度かな。
ポゥ・エイジは体育会系で素直なんでウィルの死に泣いたが、ディアナ・カウンターの先制攻撃禁止の原則のためにウィルに先に撃たせたりもした。
ウィル・ゲイムとシドとスエサイド部隊の宇宙船の所有権争いと連絡の不十分さも有り。
テテス・ハレはソレイユに潜入できさえすればよかったのか。
これを愚かな夢を見たウィル・ゲイムの自己責任という人とは一生友達になれない気がするけど、お金やご飯や情報をくれたら仲良くします。ヘッヘッヘ。



まあ、今回明確に悪意(殺意)を持っていたのはハリー・オードって言うことになる。宇宙一いい男も罪作りです。だが、そのハリーもディアナ様がウィル3代目と出会ったことは知らない
(追記)いや、「ディアナの話をよく知っているキエル・ハイムと会った」というウィルの言葉からディアナ様と会った事は推測できるわけだし、これまでもキエルさんの行動に疑問っぽいハリーのリアクションはあったような気がする。
嫉妬?うーん。ハリー悪いな。ディアナ様がウィルの死を目撃すると言う所までは分からなかっただろうが。いや、ハリーはまだ半信半疑だったのだろうか?
「所詮下衆な男で、」っていうのはキエルの言った言葉ではない。ハリーがキエルに「あなたが下衆な女ならば、同じ目に合わせる」と、釘を刺すセリフでもあるのか?
親衛隊のものだよ。ディアナ様のためなら一般人くらい消す。
キエル・ハイム(に扮するディアナ)とウィルが出会ったと聞いたのなら、ハリーがウィルに付いて谷に向かってディアナ様を探すべきだったのに。やはり、消すつもりだったのかなー?
消すという気持ちもなく、フィルに放り出せばよいと思っただけか?ウィル・ゲイムは口が軽そうだからフィルに「ディアナは偽者かも」とか言い出すかもしれんかったが。地球人を蛮族と見下すフィルはそういうことは気にしないか?
ここら辺の、ハリーがどの程度、何に気づいていたかというところは割とぼかして描いている。モノローグも無いし。キャラクター同士もウソをつくし、視聴者もその腹を探らないと分からないハラハラ感はある。分かりにくい事は分かりにくいが。
ま、そういう行動理由をはっきりさせなくても事件は起こってしまうって言う演出目的とか物語自体のテーマには一貫性があるから良いのだけど。
ハリー・オードも理想的なナイトというだけの人じゃなくて腹黒さもかなりあるよな。ディアナ様が見てないところでコレンを利用したり、色々してる。かと言って人を利用するだけの悪党では決して無い。∀の人間造形はワビサビと言うか深いな。


(それにしても、ノックス崩壊後のディアナカウンターの作戦は小規模部隊でちょっかいを出すのくり返しで、ちょっとアニメとしては単調。
星山博之氏も「変化が少なかった」って反省してた。ソレイユが思い切ってオデッサジャブローまで行ったら風景も変わるんだが(笑)
ノックスを破壊してから明確な攻撃目標がなくなったからか。建国宣言で忙しいとかミリシャが分散したって言うのはある。じゃあ、無理に戦闘シーンを入れなくてもって言う気もするぞ。いや、そこで戦闘シーンを律儀に入れるのがガンダムなんだけど。
ディアナ本人の不在とかアグリッパや暗殺者の疑惑とか補給の滞りとか潜在的な問題が多くあり、ジオンの地上部隊よりも貧乏臭い軍隊なのかも。
でかくて綺麗だけどソレイユとアルマイヤーの2隻だしな。
作戦の混乱にも現れている?ハリーが単独でヒゲを探しにきたのもディアナ様を隠密に探したって言うのも有りそうだし?
ガンダムって決勝リーグはファーストとGとWとSEEDと00くらいしか*1やって無くて、やっぱり∀も小競り合いっぽいな。月もゲンガナムと運河や鉱山の町がいくつか在る程度っぽいし、みみっちい。
ウィルゲムが新しい攻撃目標になるかって言うと、テテスの暗殺とかアニス婆さんとか核兵器とか、ぶれるのよね。戦争行為自体はあまりテーマではない?)



パン屋のキースはほんとうに世界名作劇場の主人公みたいだなー。疎開中に自分と同じように貧乏になったグェンに親切にして、コネを作って基地でパンを売るって言う、施しと労働を尊ぶ。偉い。


グェン・サード・ラインフォードはノックス崩壊後に、リリ様を飛行機で連れ出したりしてたのに、今はガタのきた自動車をリリ様に運転してもらって長旅をして、高熱を出して寝込んでいる。もっと余裕があったのにいつの間にこんな状態に。
あー、「風邪を引いている」っていう芝居を入れるだけで、特に説明しなくても時間経過と登場していない間のグエンの努力ぶりを示すって言う演出なのか。それは効果的。キースとの芝居を入れられたし。
でも飛行機はどこに行ったんですかね?
そういうことを聞くのは御病人に失礼ですか?


リリ・ボルジャーノ様が「うわーお!大きいのに不細工ぅ〜」とヒゲのホワイトドールを評したのはやっぱりターンエーガンダムがおチンチンの象徴だと考えると、そういうことなのか?
やらしいな!
初登場のときよりも小林愛さんは格段にアフレコが上手くなっていて、リリ様がかわいすぎる。
俺も「うわぁ大きいのに不細工ぅ」っていわれたぁい☆
いや、ターンAガンダムは目鼻立ちがくっきりしていて男らしい二枚目だと思うんだが。やっぱりヒゲをスモーに折られていたから本来の魅力が出せなかったのだろうか。乗ってたのもソシエちゃんだし。
リリ様がグェンを「沈んだ太陽が足掻いている」と一見悪口のようにミハエル大佐たちに向かって言うのはイングレッサミリシャの人たちの同郷意識を煽ってもう一度手を結ばせるっていう感じでもあるのかなー?
リリ様は男を使うのがお上手ね。
しかし、リリ様にいいところを見せようとしたギャバン・グーニーが、谷に戻ってきただけのウィル・ゲイムの機械人形に対してすぐにスェサイド部隊を出撃させたのは好戦的過ぎるな。
ディアナ様はそれを一瞬で見抜いて「戦場の前線だけで殺し合いをするのはよくありません」とおっしゃるのはニュータイプっぽい。
まー、ウィルがムーン・レィスのモビルスーツを連れて現れた時点で戦いは避けられないが。


ソシエ・ハイムの戦い方も手投げミサイルで上手くワッドを追い払ったり、上手くなってる。細かい動作はへたくそだが。ヒゲの威力だ。


三代目ウィル・ゲイム最期の戦いの叫び声は男の迫力だ。本当に男らしく、自分の夢を横取りしようとするものへの怒りが爆発だ。カプルやザクを数機撃破してる。
御伽噺に狂っているというだけでなく、没落貴族がブルジョアジーの機械化部隊に抱いている怒りのようなものもあった気がする。
そういう貴族の末裔が爆発しても、連携をとる近代化部隊によってたかってやられてしまう。
掘り出した機械人形というのは、魔法を信じるウィルのロマンスとしては伝説の剣のように万能感の象徴だが、モビルスーツという兵器ならば性能差や戦略を無視した突撃では死ぬ。
スーパーロボット宇宙戦艦ヤマトの主人公のようなウィルとリアルロボットとの戦いでもあるのか?
ターンエーガンダムって王の死のモチーフが何度も出るけど、これも小さな領主の死と産業革命なのかなー?
そういう象徴性を飲み込んで、全体的にはディアナ様の悲しみという見せ方をするのは昇華していてすばらしい。
ディアナ様の焦った声とか大破したウィルのキャノン・イルフートを見上げてロランとソシエを呼ばう力のない声の演技がすばらしい。
ソシエとロランの「いやぁよ!」「ぼくだっていやですよっ」も兵隊とかアニメの中の戦士というより人間的な高校生って言う感じの息遣いでいいなあ。
沙慈・クロスロードは「何も知らない普通の少年」という概念とか役割がはっきりしてるけど、メシェーとソシエちゃんはもっとゆるい感じの女子高生と戦士の間にいる人で、そういう子が死を見せられるのはトラウマだな。視聴者的にも。
視聴者は視覚と聴覚だけだが、ロランとソシエには火薬と肉の焦げる匂いが感じられていたんだろうな。うわあ。トラウマ。


そういう生々しい腕だけかもしれないって言うのを見せる前にディアナカウンター兵士に「生体反応がありません」って言わせるのも上品だが、突き放していて恐ろしい。サイバーエレクトロニクスに身をまかす底なし地獄(アムロ・リフレイン)っていう感じ。ここら辺の機械文明への目線も富野だよなー。
ほかのガンダムとかだと、割合モビルスーツはカッコいいロボットやプラモデルの素体って言う扱いで、「機械」っていう扱い方はないんだよな。いや、ミリタリーっぽさとかリアルロボットのディテールというのは他にもあるんだけど。
なんというか、富野ガンダムはもっと広く機械という概念と人間との界面をドラマにしてるんだよな。
それがなんとも独創的な味わい。ボトムズバイファムは見てないけど。
富野ロボットはコックピット周りのインターフェースも毎回おもしろいし。そういう感じ。あー、エヴァのエントリープラグとかは結構よかったけど、あれは本体がママンだし機械っていうのとはまた違うか。



ところで、ハリー・オードが「地球人のカップルというのは、妙なものだ」というのは何が妙なんだ?
月にも夫婦制度や恋愛感情はあるみたいだけど?月の風とかを見ると。
小説版ではロランは地球へ…みたいな養子だという設定もあるんだけども。でも、それよりはゆるくて、実の親子とか兄弟とか家制度もあるんだよな。帰還民が赤ちゃんに母乳を上げたりしてるし。
うーん?
家内制手工業的に夫婦が一緒に仕事をしてるとかが妙なのかなあ?
ターンエーの地球の女性は実際の20世紀初頭の女性よりは社会進出してるって言うかそんなに差別されてる感じではないけど。まあ、ムーンレィスよりは女性がしとやかというのはあるけども。
でも、ムーンレィスの軍人の奥方も貴族的だったりしたし、テテスさんは蓮っ葉な売女っぽくもあるよな。
ハリーもわりとシャアみたく格好つけて意味不明な言い回しが多いかもしれん。

*1:つまり、アナザーは決勝リーグ好き。人類が半分滅ぶのはファーストくらいだが。9割滅ぶのは黒歴史