玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。旧玖足手帖から記事・ブクマを引き継ぎました。


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戦闘メカ ザブングル43〜47ブルース

脚本、絵コンテ、演出、作画監督
第43話 ヨップ捜せば大混戦 五武冬史 鈴木行 篠田章
第44話 アーサー様・お大事に 荒木芳久 滝沢敏文 滝沢敏文 佐々門信芳
第45話 太陽に向って立て 吉川惣司 関田修 関田修 坂本三郎
第46話 アーサー様がんばる 伊東恒久 菊池一仁 金山明博
第47話 エルチ目覚めよ 荒木芳久 今川泰宏 加瀬充子 篠田章



戦闘メカザブングル、その終盤の印象は「蒼い」。ブルースである。


主題歌、串田アキラ、挿入歌、MIO(現MIQ)はR&B系シンガーである。

「ブルー・ゲイルなみだはらって、ブルーゲイル きらめくちから!」
最初から、そう歌っている。

スパイク
「どっかのブルースマンが、ブルースの定義をきかれてこう言ったそうだ。『ブルースってのは、どうにもならない困り事を言うのさ』」
カウボーイビバップ
Session XX「よせあつめブルース」より

そう、ザブングルは切ないアニメだったんだ。どうにもならない困り事を歌ったアニメーションだ。
ただひたすらブルーストーンを採掘し、死んでいく惑星ゾラにおいて「悔しいです!」と叫ぶのがザブングルなのだ。
(後年、炭坑夫の少年がガンダムに乗るのが∀ガンダム。これも切ない)


実は私、スーパーロボット大戦Fしかやってないので、ザブングルは富野作品において、ブレンパワードと同じくらい作品内容を知らなかった。ただ、「明るく楽しく、元気な娯楽作」「三日の掟に反抗する元気な主人公」だと言う報道だけを覚えていた。
だが、切ない。これはもう、言い切って良いと思う。
後半のイノセントとシビリアンの支配・被支配階級闘争における人間模様もせつない。
しかし、前半の「元気」とされる部分も、やはり、切なかった。と、思う。
ティンプ・シャローンが主人公、ジロン・アモスの両親を殺害した事に、ジロンはこだわるがティンプにとっては理由もあいまいな仕事の一つだった。
ジロンの父、鉄の腕の旧友だったザイラーもやられちゃうし。
みんな切ないんだ。
やぶれかぶれのカタカム・ズシムが葬式を行われてしまうのも切ない。
イノセントの人たちもせつない。支配階級で偉そうで悪いんだが、彼らも主人公と同じように生きようとしてるだけだし。
自分を捨てて人類再生計画をやってるビエルやアーサーも切ない。
初代アーサー・ランクが「もう一度、大地を日本の足で踏みしめたいという願い」で非効率な二足歩行ロボットを作ったというのも、切ない。アホすぎて逆に切ない。
その使命を守ろうとしてる現代のアーサー様もドラム缶に入れられて切ない。
長命と文明を誇るイノセントであっても、細々と子供を作り、守り育てる家庭を大事にして、それを主人公に奪われてしまうというのが切ない。
そういう支配階級を倒してもおそらくその切なさは晴れないだろうな、というのが切ない。
なぜなら、その切なさは人間そのものだから。


階級闘争SFといえば、ザブングルのちょっと前が松本零士ブームだったのかなー。
松本零士原作作品の支配階級は贅沢に堕落した非人道的な金持という描写が多い気がしたけど、ザブングルはそのような人々も切ない一個人として描く。アーサー様はディアナ様みたいなものか。富野ノブレス・オブリージュ切ないね。
同じような設定の風の谷のナウシカのラストにおいても同じように人類再生計画を行う人たちが出てきたが、ナウシカはそのような人たちを「生きることは変わることだ、だが、お前は変われない。組み込まれた予定があるだけだ。死を否定しているから。」と言う。
だが、アーサー様はシュワの主とは違って、自分の命をかけて、組み込まれた予定を必死に生きている。
それは正しい。
だが、自分が生きるためにアーサーを裏切るカシム・キング達も悪いとは思えないのが切ない。
それに、そもそもシビリアンがイノセントに反抗する動機は、「強い人間になる」というプログラムに従いうものでもあり、イノセントに無用の殺し合いをさせられて来た恨みでもある。
イノセントの因果応報でもある。
それをわからずに唯、殺し合いをさせて、シビリアンが強くなったから合格!自分はすべてを捨てる!と手の平を返してジロン達の味方になるアーサー様は、割とどうかと思う。そりゃ、他のイノセントも裏切るだろ。
ただ、アーサー様はがんばってる。がんばってるから許す。
というか、アーサー様って作者にすごくひいきされてると思うなあ。サブタイトルにすごいたくさん出るし。
っていうかアーサー様が出てきてからジロンの影が薄くなったね。塩沢兼人美形で死すべき王だからなー。トミノすぎる。
まー、ジロンも一度復讐を遂げたけど、いつの間にかティンプを追いかけるだけで話すまなくなってたり、ティンプ個人よりもイノセントと戦う方向に変わっていくジロンも切ないのかも知れん、か?
まー、エルチがいたらエルチにこだわり、ティンプを見たらティンプを狙ってたりするから、ジロンはテキトウなだけかもしれん。


ジロン・アモスの周りで人生が変わっていく人もどこか切ない。
後家も切ないし、記憶をなくしたエルチも切ないし、エルチを慕うファットマンはもっと切ない。
というか、もう、ファットマンはすごく泣ける。


しかし、ここ最近はティンプとホーラとエルチとビラルと、悪党が何グループかいる割に戦闘とかはちょっと大味というか、膠着してるね。
まあ、いつもの富野と言えばそうなんだけど。
富野って戦闘ロボットアニメばっかり作ってる割に、ドラマ、というか感情的な気分を優先するからバトルはあんまり興味がない側面もあるのかなー。
でも、バトルに徹した時はすげー燃える演出もやるからなー。どうなんだろ。
機動戦士ガンダムはすごくわかりやすかったよなあ。陣取り争いが一本道で。
サイド6、ソロモン、ア・バオア・クーの軌道計算はちょっと謎だけど、まー、アポロよりは燃費がいいんだろうけど。


まあ、とりあえず、ザブングルは切ないって言いたかった。
ここら辺は小黒祐一郎アニメ様は

後半になると、エルチが捕まって洗脳され、敵に回ってしまう。さらにジロン達が、イノセントに反抗する組織であるソルトと行動をともにするようになり、全体に堅苦しくなっていった。
そのあたりの展開には、ちょっと首をひねった。ああ、やっぱり富野監督は、明るく楽しいだけでは終わらないのだな、と思った。

http://www.style.fm/as/05_column/365/365_111.shtml

って書いてた。ふむ。ふむ。
そうだよねえ。
あと、アニメ様は

身体を使ったアクションの面白さは、『未来少年コナン』を意識したものと思われるが、やはり『コナン』のように上手にはやれていなかった。それについても「頑張って笑わせようとしているなあ」と感じる事があった。
 メタフィクション的なネタで、笑わせるセリフが多く、それも『ザブングル』の悪ノリを代表するものだった。

とも、言う。
それは、僕もそう思う。
富野由悠季って、世界構築型作家で、バイストン・ウェルの実際の並行世界を窓から覗くような(キューブリックの影響が濃い)、生き生きとした実在的なキャラクターを描く割に、たまに、そういうくっだらないメタネタを入れて場を白けさせる癖があって、私も内心「このハゲはバカじゃねえのか」って思います。
ダンバイン後半の「最終回だからか?」とか、大っきらい。
ただ、ザブングルの世界観は、弱肉強食の西部。
イノセント体制が倒れても、おそらく、世界は荒野。
北斗の拳のような「愛」や「正義」という「救世主」もいない。救い、無し。ジロンはアホだし。
それでも、生きていかざるをえない!それが、黒人奴隷から生まれたブルースのような、作風。つらい現実を笑うための作品を作り続けなければいけないという富野由悠季なのではないだろうか?
荒野の世界という切なさを覆うため、「頑張って笑わせようと」してる気がする。
そして、それも切ない・・・。
それは富野由悠季監督の師匠の手塚治虫も同じようなくだらないギャグを入れる癖があるのに似てる気がする。それについてはトミーノ自身が言ってる。

ブラック・ジャックは実際に執刀するわけです。そして、ある人生に関与していくということをやって、その繰り返しをやっていかなければいけないという物語を作っていると思えるんです。あれはおちゃらかしのキャラクターだけれども、手塚先生の中では「ピノコがいなければ私は窒息してしまいます」という位置付けになっていると思うんです。アトムの成長でもないし、単純にカウンターとしてのセクシャリティを持った、アイドルでもないという意味で、心の中にある澱みたいなものではないのかという気が、僕はします。だからそういうマンガを描いた手塚というのはすごいということです。

http://kaito2198.blog43.fc2.com/blog-entry-684.html

まあ、全部が全部うまくいっているとは言えないし、80年代のパロディセンスと富野のブルースセンスが齟齬をきたしてるよなあって気もする。


最近のザブングルで僕が好きな笑いはジロンに襲われたイノセントの夫妻が子供を守るためにジロンに「土饅頭様はお優しい方でございます」と這いつくばるところです。
ここは、笑えるんだけど、同時にすごく悲しくて、怖い。



ここで、笑いの理論について、カタルシスとか緊張の緩和とか諧謔とかギャグとかペーソスとかユーモアとか調べたいところだけど、なんだか疲れたので(具体的には全身が痛いので)、おしまい。
一応、こちらのページを張っておきます。


↓エナメルさんの諧謔映画論
http://jolietjake.fc2web.com/cinemaindex.html


↓噛み切れない眠り 笑いについて
http://www.poetry.ne.jp/zamboa/rei/3.html


wikiユーモア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%82%A2

喜劇論―改訳 (岩波文庫)

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