玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

輪るピングドラム第10話 だって好きだから輪る映像の原則を解析する

体調を崩したので、感想を書けていませんでした!!ちくしょう!
とりあえず、面白かったです。具体的には、高倉冠葉がシスコン最高で弟想いでカッコいい兄貴で、苹果の事も思いやってるきれいなジャイアンでよかったです。

過去に重い女関係で苦労した感じだけど、立ち向かっててカッコ良かったです。
今回から小説版には書いてない展開なので、ハラハラドキドキ、何が起こるかわからなくて面白かった。


8話までは荻野目苹果ちゃん篇だったけど、

晶馬の事故があった後、9話の陽毬と眞悧の中央図書館そらの孔分室編をはさんで、苹果ちゃんは大人しくなった。

というか、苹果は弱体化した。桃果の運命日記でデスティニー行為プロジェクトMに熱狂していたのに、それを晶馬に目撃され「こころが真っ黒だ!」って言われて、日記を破られ、茫然としている自分を助けるために晶馬が車にはねられて、いろいろと反省したり罪悪感を感じたり、もう日記の続きがないからプロジェクトMもできなかったり、やる気を無くしている。前回の事故からまだ1日も経っていないからなあ。寝てないし、元気がない。


その苹果に替わり、今度は夏芽真砂子のプロジェクトMが本格始動!

荻野目苹果が高倉晶馬を振り回したこと以上に、夏芽真砂子が荒ぶり高倉冠葉を振り回す!
他人に見えないようにストーカー行為をしていた苹果とは違い、他人に積極的に攻撃をしかけては記憶を消したり異空間を作り出すなど、レベルアップした女!タイガー&バニーのラスボスのマーベリック以上のパワーだ!夏芽真砂子は金も持ってそうだし。
しかも、苹果と同じく、男性関係にはかなり屈折した情熱を持っているようだ。
ボーイミーツガールは晶馬×苹果から冠葉×真砂子にフェイズが移行したかもしれないが、真砂子は第1フェイズよりもさらに狂気が増している。
拉致監禁などはトラップ!異空間で、冠葉に重たい女のプレゼントを見せて「思い出せ!」「これでもか!これでもか!」と声を押し付けて、深く潜ってきた冠葉を「アリアドネの赤い糸をたどって、 ここまでやって来た不実な勇者様」とか言う。狂ってるなー。
ダイダロスの迷宮が、あのペンギンで変質した病棟というのは分かるが、アリアドネは誰だろう?晶馬がお姫様のアリアドネかな?それとも晶馬はミノタウロスで、真砂子はアリアドネを自分だとたとえているのかな?

英雄テーセウスは、彼を慕う王の娘アリアドネーから与えられた糸玉を頼りとして入り、
怪物を倒して見事脱出することができたのだった。
アリアドネーは、テーセウスと一緒にアテーナイをめざして出帆するが、
途中、ナクソス島へ立ち寄ったとき、眠っているすきに置き去りにされてしまう運命だった。
慕う相手のこのような不実がアテーナーの神託であったにせよ、彼女の嘆きははかりしれないものだった。


その姿を見て、慰め、妻としたのが酒と豊饒の神ディオニューソス(バッカス)であった。
ディオニューソスは、集団的狂乱と陶酔を伴う秘儀における神で、女性の熱狂的な崇拝を受け、
節度や個体を破壊するということでは、人間に内在する<荒唐無稽>を象徴しているものだと言える。
http://www6.ocn.ne.jp/~bmline/theaterbrain/secondfloor/second001/001j.htm

真砂子は冠葉に置き去りにされて、ディオニュソスの狂信女になったのだろうか?ディオニューソス的芸術?葡萄をすり潰してワインにするのかしら?
真砂子のそういうナルシスティックで芝居がかった独り言なども、彼女のクレイジーさを強調する。苹果以上にクレイジーな女が出た。STAR DRIVER 輝きのタクトみたいに、いろんな女の子の情念のレベルアップが物語のパートわけになっているのかしら。
輝きのタクトの脚本家の榎戸洋司さんは少女革命ウテナ幾原邦彦監督と組んでいたからなー。少女革命ウテナも女の子博覧会だったらしいし。


と、いうのが大まかな感想。

  • それでは、今回の後藤圭二さんの絵コンテを解析して見ましょう

いや、今回は「作画崩壊」とか2ちゃんねるまとめブログで言われてた。でも、それ以上に後藤圭二氏の一人絵コンテ、演出、作画監督、原画による意思統一が面白いと思ったのだ。
一人原画だから実際ちょっと速書きっぽい所や、デッサンが丁寧じゃない所があった。

↑この晶馬の肩とか。

↑この苹果はもうちょっと鼻が高いほうが見やすい。あと、普段のピングドラム星野リリィさんの原案はもうちょっと口が大きい。
速描きしたところは、後藤圭二さんの手癖が出て、他の話との鼻や口の絵柄のすり合わせができてなかったのかなーと。

↑この絵もいつもの陽毬じゃないけど、でも、この絵自体はかわいいと思う。

目がぱっちりしてて、鼻が小さくておちょぼ口なのは後藤圭二さんの手癖かなあ。
↑は後藤圭二さんが一世を風靡したナデシコ。速く描こうとして手癖が出るのはいたしかたない所ではある。

↑兄貴の眼のキリッとした感じは今回の方が好みかもしれないけど。

↑縛られてるけど、この眉毛と目は今までの高倉晶馬の中でもカッコイイと思う。
作画が悪いって言われるほど酷くないと思う。ただ、アニメはスケジュールがきついし、一人で絵コンテから原画までやると、気が抜けて手癖の絵が出てしまう、というところか。
あと、今回は↓みたいな

俯瞰・引きの構図でカメラが遠くて、小さく描かれた人物の絵の線が少なく、結果として「丁寧ではない」「絵が雑」と言った印象を喚起しやすくなったのかと思う。また、これは放送のハイビジョン化やテレビ画面の大画面化や液晶画面の普及で、視聴者が高画質に慣れているという事の影響もあるだろう。
私は、あんまり単純に「後藤下手だな」とか「作画崩壊www」と言ってしまうのは好きではない。どうしてそう言う事になったか、どうしてこういう風に自分が受け取ったのか、それはどういう風に制作されたからなのか、を解釈したい、ってのがオタクとしての私なのよね。


ちなみに、この晶馬の絵は、無意味に手抜きで小さく描いているのではなくて、演出的に意味がある。

↑文字はクリックしてオリジナルサイズを表示して拡大して見て下さい。
私がパッと見で感じた印象をメモしただけでも、これくらいの情報量があります。
俯瞰や遠景にもちゃんと演出意図があるんですよー。
(こういうレイアウト分析はいつもならid:mattuneさんかid:karimikarimiさんあたりがやるべきなんだけどな・・・輪るピングドラム第01話の演出の解説 赤と青の意味 赤と青の魔女の正体推測 - karimikarimi
ギャグ枠のペンギンも上手く使ってますね。ペンギンのギャグコーナーが別物として並行する事で、ペンギン枠を外したときに、本筋のドラマの枠が、画面に映っているものとまた別の意味を持つようになっています。
これは16:9の画面ですが、上図でペンギンの枠とカーテンの枠を外して4:3の画面にしても会話シーンは成立します。地デジ移行期の断ち切り枠みたいな感覚。断ち切り枠の上手側にイレギュラーなペンギンを入れて和み要素を入れてる。下手側のカーテンはあまり動きや意味がないけど、病院の不安感を出してるのだろうか。(あまり下手側に怖いものを置きすぎると全体の印象が重くなるので避けるべき)
ペンギン枠を取った時、晶馬は病室の枠の中では一番上手の隅に小さく位置する事になる。これは落ちそうになってるとか、傷ついた晶馬が3兄妹の中で一番弱体化しているという事を示してるのかな。俯瞰だし。画面の半分を占める病室の床の空間による圧迫感も映画的な印象を持たせています。(映画的な印象であって、絵画的印象とはまた違う)


と、こうして分析してるのは、私が富野由悠季監督の書いたアニメーションや映画の演出技法書の「映像の原則」改訂版を読んでいるからです。これは最近、改訂版が出たので買ったのです。(宣伝戦略!)

映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)

映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)

この映像の原則を適応すると、非言語的なアニメの演出意図が分かって面白いです。
もちろん、アニメはなんとなく見て楽しむべきもので、見ている時に冷静に「このレイアウトにはこういう意図が・・・」なんて考えて分析するのがメインではない。が、演出のやりようや意図の原則程度を了解していると、「なんとなく見る」が「当位即妙に悟る」という風に視聴形態が変わって面白いよ。ほら、スポーツや武道の試合を見る時も、ルールとか作戦を知ってる方が見てて楽しさがアップしたりするじゃん。そんな感じ。
そして、そういう意識で輪るピングドラムの10話を繰り返し見ていたら、言葉では説明されていない人物の精神状態や力関係が暗示されていて面白かった。ので、一度ここでまとめてみる。10話の放送から1週間くらい経ってしまったけど・・・。(お腹を壊したり仕事が入ったりしてたのよ)


とりあえず、このエントリは富野流映像の原則をメインテキストとして書いてみる。
富野流の映像の原則を手っ取り早く了解するには、こちらのとてもわかりやすいエントリを参照してください。
落ちるアクシズ、右から見るか?左から見るか?<『逆襲のシャア』にみる『映像の原則』>

↑こちらのHIGHLAND VIEW様のエントリでは逆襲のシャアを題材にして解説していますが、幾原邦彦監督も逆襲のシャア友の会という同人誌に載ってたし・・・。いいかな・・・。
WEBアニメスタイル | アニメ様365日 第458回 「逆襲のシャア友の会」(完結編)


かなり意味合いがカッチリと決まってる絵コンテなので、今回の後藤圭二さんの一人制作は、スケジュールとか人件費を軽くするために一人にお任せしたというネガティブな理由よりは、監督と一人の演出家がマンツーマンで制作して、意図を作っていくという計画なのではなかろーかと、思った。
後藤さんもイクニも90年代のスターアニメ作家だし気心が知れてるのかな。前回9話の武内宣之さんとか。
幾原邦彦監督はシリーズ構成・脚本も伊神貴世さんと連名だが全話手を入れてるし、絵コンテもかなり書いてるし、オーバーワークだからなあ。一人演出一人原画とマンツーマンの方が仕事量が整理されるのだろう。
今回の病院の異空間は放送前のTVスポットの4つ目でも描かれたものなので、後藤さんだけの意思ではなく、割と前から幾原監督のプランニングで在ったんじゃないかなーと思う。いや、スケジュールわからんけど。
http://penguindrum.jp/special/

  • では、まずは弱体化した苹果から解説

今回の苹果は弱体化しています。ですから、俯瞰で見降ろされる構図が多いです。

映像の原則によると、俯瞰での見下ろしは、見下ろされる側が弱体化しているという事を示します。
描き足すと、

苹果は晶馬にだけ自分の汚い所を見せてるので、陽毬や冠葉の言葉に責められてるような圧迫感を感じる。それを感じさせるように、カメラが俯瞰で映して、苹果が小さく縮こまって映ってるように見せてる。

でも、苹果が悪く見えすぎないように、好意的に見えやすい上手に配置して、苹果に対して視聴者が同情しやすくなるようにもしている。
弱体化してますね。色んな枠を配置して、それに挟まれた苹果が圧迫感を受けるようにレイアウトをしています。

この苹果もすごい、左側から圧迫感を感じてるようですね。映像の原則によると、人間は心臓が左にあるので、左側からの圧迫感にはストレスを感じるそうです。光源も左上で、この絵は左上から右下の(下手上から上手下の)苹果への圧迫感がある。だいたい、苹果は今回の前半はこんな感じ。


だいたい右側に居る。

  • 前回の主役の陽毬

前回、幼少期からの辛い思い出やプリンセス・オブ・クリスタルになった所以などを見せた陽毬。中央図書館そらの孔分室でのイリュージョンシーンと眞悧との謎めいたやりとりなど、かなりすごい主役としてのドラマをこなした陽毬である。
が、今回はそれが嘘のようにまた、イノセントな陽毬になってる。

ドセンターポジションのバストショットで、映像的にすごく安定している。
前回、あれだけ地下空間や過去時間を飛び回ったのに。陽毬のターンは一回休み?しかし、前回の重みがすごかった分、この動かない所がまた陽毬の可愛さを改めて、違う味わいで感じられる。
冠葉との会話シーンでも、中央のやや上手側で安定している。
(この場合の上手側ポジションは、前項で書いたように俯瞰気味の苹果が上手奥で圧迫されているのとは違う。映像の原則は原則であり、いろんな解釈やパターンがあるのだ)

このおでこコッツンは上手側からセンターでの陽毬の優しい表情である。とても好意的に受け取れる構図なのである。つまり、陽毬は可愛いのである。陽毬がくれる物はとてもうれしく受け取れるのである。
ビバ!陽毬!
3話で苹果の家に潜入する前に冠葉が晶馬におでこコッツンして、「お前の良心は陽毬のためにとっておけ」にも似てるし、高倉兄妹の絆を感じることができるおでこコッツンですね!1話ラストの冠葉の陽毬への下手側からの背徳的なキス(未遂?)とも対応しておる。キスは性的で背徳的だけど、オデコごっつんこは、兄妹の絆。うーん。どっちを取るか?
もちろん今回ラストの夏芽真砂子のキスとも対応しておるのだよ。
とりあえず、今回の陽毬はセンターポジションでかわいい。すごく。ていうか陽毬は毎回可愛いよ!妹萌え!ブヒィ!


  • 高倉冠葉と夏芽真砂子の「闘争」

ま、これが今回の軸ですよね。メイン。
これも、映像の原則によると、方向性がすごくわかりやすい。

まず、メスを研いでいるエスメラルダで敵意を象徴。下手側からの炎で危険を象徴。下手側で火を吹いているガス缶の「NATSUME」で、夏芽真砂子の存在を暗示。下手側に配置する事で、真砂子が今回の敵だと暗示。
(他にも炎が作るパースが炎と影のコントラストで、上から下へという今回の陰謀の方向性を象徴とか、いろいろ。映像的な意味は、絵画的な意味とは違い、ワンカットが他のカットや全体の雰囲気にも影響する、って富野が言ってた。)

俯瞰センターで晶馬の弱さを表現。上手で見下ろす真砂子は強圧的。(上手側だからと言って善だとは限らない!)
で、晶馬をさらう。
色々あって晶馬を助けに向かった冠葉は、屋上の決闘場へ行く。屋上の決闘場だからデュエル空間だからシーツとかたくさんある。




そんで、とりあえず順当に進むぞ、という方向性を出すために、上手側から登場。

上手から下手へ、声をかける方向。ただ、冠葉の立場は不安定だから構図は斜めになってるし、足場は下手側。虚勢は張っているけど、ピンチ!そして危険な左側から赤い弾丸が!

この対立が映画的なドラマなんです。


(戦闘シーンは中略)


センターポジションにある不思議なオルゴールが破壊されて、不思議空間になった病院に飛ばされる冠葉。

真正面構図の音の破壊力。

センターポジションの上側に居る夏芽真砂子。遠い。パースの中心に居る事も合わさって、強大な印象。また、真正面構図は映像の原則で言えば、左右の方向性が全く無い構図であり、イマジナリー・ラインをキャンセルする事ができる構図。

イマジナリィ・ラインの方向性をいったんキャンセルしてから、上手から下手側に走る事で、また←向きの方向性を生み出す夏芽真砂子。←向きに進行する事で、夏芽真砂子が優位に立っている事をアピール。

だが、ダンジョンに突入した冠葉は下手側からのスタート。イマジナリー・ラインを超えてる!冠葉の立場が弱く、夏芽真砂子の誘いに逆らえないという事を暗示。
(冠葉がダンジョンクエストを始める動機は説明されていないが、映像の構図的には間違っていないので、説明がなくても理解できる)
また、イマジナリー・ラインを超えて「→」へ向かう冠葉が、「←」に動いた真砂子と対立するという暗示的情報もある。

「下」に居る真砂子の声が「上」のスピーカーから流れてきて、冠葉を圧迫するというのは、場を支配する真砂子の優位を常に示し続けている。(逆襲のシャアアムロ・ラジオと似てる?)


「上」からの声に押されるように降りる冠葉。自動的な印象。


自動的なので、フロアーでの移動は上手側から下手側へ。
そして、ダンジョンでの「敵」はやはり恐ろしい左側から登場する。出る前の「嫌な物」を下手側において、視聴者に先に見せて、冠葉への脅威を印象付ける。お化け屋敷のようだ。


「嫌な物」は下手側から一気に登場して、冠葉を攻撃し、一気に上手側に位置して圧迫感を与える。


キャプチャーの関係で画像が前後して、これは3階の「嫌な物」だが、
右から左に進んだ冠葉は、右下から左上に進む。やはり、自動的なのである。
それが3回繰り返されるが、「→」の動きは最初の屋上のシーンだけ。なぜなら「→」へ、下手から上手へ移動する動作は映像の原則的に言えば「上昇志向」なので、「真砂子に従って下へ降りていく冠葉」には似合わないのだ。ゆえに、カットされる。全体的に俯瞰で冠葉は圧迫されてる感がある。
それで、冠葉の動きは
「↓」
「←」
「↑」
の繰り返しとなる。
 (→)↓
↑   ↓ 
 ←←
という、螺旋で降りていく感じ。ただし、「→」は映さないで、冠葉のピンチ感を持続させる。
このグルグル回ってる感じが「輪るピングドラム」だなー。真砂子に輪されてる冠葉。
前回は図書館迷宮を陽毬が周っていたが、今回は冠葉。
前々回は晶馬が回転した。

あと、3話では3号も回転してたか。「回転」は大事だッ!
でも、「想いが重い手編みのセーター」を着ることで、冠葉は「思い出す」ッ!

試練に耐えて思い出した冠葉は、「→」の動きを手に入れる!


「→」は逆境の動きでもある。自動的ではなく、反抗の意思の動きである。だから、辛さも高まるのだ。
実際、上手側から流れてくるペンギンのマークの数が増えて、冠葉を阻害するようにする。
だが、「→」に歩きながら、冠葉の頭は徐々に
「┌
   \ 」
     へ、斜め上へ上昇する。



冠葉自体は→の動きで逆境に耐えて反抗の意思を見せて苦しんで進んでいるが、冠葉の意思である頭や、フレーム内の位置は←と↑に移動してんの。だから、冠葉が強まってる、という印象なのだ。

で、頭が真中に来たら、カメラの位置が冠葉の後ろに変わって今度は冠葉がセンターポジションに立つ。
この構図だと、画面奥の扉がゴールだろう、と、非言語的にわかるのだ。
「思い出したぜ」「決着をつけてやる!」(9話ラストの予告の冠葉の台詞)


ただ、そのまま話が進まず、苹果のシーンへ。
「高倉冠葉への指令はトラップ」
真正面の構図は、イマジナリー・ライン・キャンセルの力があるので、別のシーンに飛べるのだ。

  • 桃果ノートを失う苹果の戦い。

上手奥で圧迫されて萎縮していた苹果ですが。いきなり真砂子から電話が回ってきて、能動的に動くポジションにされます。
苹果シーンで、最初は「←」向きで安定して、冠葉を座って待っていた苹果ですが。電話がかかってきます。

電話に押されるように「→」に顔がスライドするようにカメラが移動。
電話の真砂子の圧迫感ですね。

この真正面構図に映された晶馬の脅迫画像を見て、


ひぃっ!
電話からの悪意に押されるように、「←」向きだった顔の向きが変わります。

で、「→」向きに変えられます。下手側から上手側に「→」向きに歩きます。これも冠葉の「→」と同様に「逆境に立ち向かう」ですが、苹果の場合は「反抗」ではなく「桃果の日記を失うことへの葛藤」でしょう。歩く向きや顔の向きが変わるという事は、感情が変化するという事です。
つまり、晶馬を助けるために、苹果の心情がここで変化したという事です。これがドラマ性だ。面白いな。

「→」で名残を惜しみます。

真正面の構図でど真ん中の真下に日記が落ちていきます。無慈悲に桃果が遠ざかっていく感じを受けますね。

同時に、この駐車場の模様の「↓」の矢印は、上手側の「強者」の立場から何かが来るという事を暗示させます。

その上手側の「強者」の立場から出た何物かは、次のカットでは下手側の「危険性」をも持って登場し、日記を取って行きます。立っている位置はほぼセンターです。中央は「ニュートラル」だから「何者かわからない」という感覚も付加されます。続きが気になりますね。誰なんでしょうね。

で、日記を取られた苹果は「中央から、ちょっと下手よりの下部」に位置して俯瞰で映されて、途方にくれます。この病院の斜めになっている梁と影が、苹果が下に落ちていくような集中線のような効果を生み出していて、苹果の可哀そうさがより一層高まります。
今回の苹果は全体的に俯瞰で小さい存在として映されます。
上手にいましたが、真砂子の電話で一度下手に行って、上手に歩きますが、日記を失って最終的に下手側に移動して、しゃがみこんで下向きになってしまうという移動をします。
さらに弱体化したというのが、今回の苹果だ。最悪だな。もう、日記も失ったし、可哀そうすぎる。

このエンドイラストは、苹果に差し伸べられた誰かの手か、それとも「桃果」を落とす苹果の手か???
桃果の顔はまだ映っていない・・・か?

  • 冠葉と真砂子の地下での決闘

そんな苹果のシーンを挟んで、冠葉の動きを一度リセットしてから、晶馬が監禁されている部屋での闘争シーンが描かれます。
ここで登場するのは、さっきのカット尻がセンターに居る冠葉の背中だったので、カメラを室内に切り替えして、

センターに居る冠葉の前側。です。先ほどの背中のカットよりも俯瞰になったのは、暗闇の恐怖と同時に、苹果のシーンで真砂子側のパワーバランスが増したから。だから、冠葉も弱めになって、俯瞰で見降ろされる。

(ちょっとピントが悪いが)
でも、捕らわれの晶馬の方が冠葉よりも弱い位置にいなければいけないので、冠葉は上手側から部屋に歩きます。

そしたら、扉が閉まって、冠葉の後ろ、冠葉よりもさらに上手側から真砂子が登場します。真砂子が最強であるという事を示しているわけ。
真砂子怖い。

そしてこの顔である。こわい。

圧倒的に優位な上手側から迫るのだ。真砂子怖い。

中央に映っている冠葉は真砂子の主観映像。冠葉は真砂子がどこに居るのかもわからないが、暗視スコープで冠葉を中央にとらえる真砂子はさらに優位性を高める。中央構図は動きがない分、不気味なのだ。不気味で怖い。
そんな圧倒的で不気味な真砂子がした事は・・・

キスでしたーッ!
うわーーーーっ!なんだこの女ー!しかも「ご褒美」とか言ってる!
なんだこいつーっ!
しかも、攻撃とかじゃなくて純粋に楽しそうな顔でキスですよ!絶対的優位に立った上での裏闇からのキスを楽しむ女!しかも自分の強引キスの事を「ご褒美」とか言ってる。キモいーっ!
全く、輪るピングドラムに出てる少女たちは大抵クレイジーだな!
しかも、この数十秒後、タイトルコールで「だって好きだから」って文字で名言する。キスが罠かどうか、という疑問もあったが、サブタイトルの力で強引に「だって好きだから」を名言する真砂子。
しかもエンディングでは可愛い堀江由衣の声で歌う!
なんだこいつーっ!!!!
重い!
重い女だ!
男を異空間に誘い込んで苦しめて、手作り系の思い出をぶつけて「私を思い出せ!」「これでもか!これでもか!」だからな!


狂ってる。


妹におでこタッチしてもらってホンワカしてた冠葉が、真砂子にキスされて超嫌そうな顔してるのが、もう、ダメだ。この恋愛はダメだーっ!ていうか可愛い妹に変な重い女が勝てるわけないだろ!でも怖いよ!めんどくさいよ!



上手側から、真砂子とエスメラルダの占めるテリトリー領域が画面の8割を占めるほどの圧倒的なキス!
重い!



そして、キスの圧力で冠葉を下手の下に追いやって、自分は上手の上部から颯爽と去る。
何だこの女。


映像の原則、レイアウトの印象原理に照らし合わせてみても、真砂子のめちゃくちゃぶりがよくわかる演出でした。すげえ。

  • 夏芽真砂子と夏芽マリオ

そんな風に圧倒的に勝利した夏芽真砂子ですが。
帰りの電車では、下手側の遠くに小さく居ます。

煽りの構図だから弱くはないが、いきなり下手に移動します。これは、劇的に意味がある事です。



ドヤ顔で「私は獲物を取り逃がすハンターではなくってよ。ウェヒヒ」みたいな事を言うが、この時の列車の進行方向は、「←」。
このトンネルの中の光は「→」に動いている。地下鉄の窓ガラスに映った真砂子は下手から上手に移動してドヤ顔だが、実態の真砂子は「←」の方向に移動して、上位から下位に移動している。そして、カメラ位置はセンターポジション。ここで、電車の進行方向と鏡を利用してイマジナリー・ラインの転換が起こっている。つまり、真砂子よりも強いものが出るフラグがこっそり立っているのだ。
そして響く「生存戦略ーっ!」の声

驚く真砂子。高倉兄弟と苹果に圧倒的に勝っていた真砂子だが、この驚きである。

開くドアが一瞬映る。ドアの向こうにいる人物は、上手上方という最強の位置の人物となる。

その最強の人物とは、第二のペンギン帽子・夏芽マリオ。
ここで、真砂子は上手に移動しているが・・・。マリオに対して真砂子が優位に立っているという事か???だが、ドアーのカットは短かったが、「真砂子の車両から見てマリオの車両は上位」というカット。「マリオが左から登場する」という事は確実に「マリオはヤバい存在」「不自然な存在」という事ではある。「上位」と「ヤバい」が混ざっている登場シーンだ。
そして、

夏芽マリオのラストカットはドセンターポジションに静止するという圧倒的に安定した構図。超越的なのだ・・・。
いったい何者なんだ・・・。


そして、続く。


おお、すごく演出的に綺麗だぞ!

  • 強さが分かる演出は面白い。

今回は、高倉兄弟&荻野目苹果VS夏芽陣営という戦いの図式でした。
だから、こうやって演出を映像の原則に基づいて絵解きするのも分かりやすかったし、楽しかった。
今回の構図から強さを見ると
「謎の超越者」・夏芽マリオ>=夏芽真砂子>>>>>高倉冠葉>高倉晶馬>>>>荻野目苹果。
ニュートラルな位置の超越者」・高倉陽毬=プリンセス・オブ・ザ・クリスタル。
ということになる。
こういう力関係は説明されないが、演出や画面構成では明確にされているし、印象としてもわかる。
この力関係を整理して見ると、11話以降もわかりやすく見れるでしょうかね。


あと、ペンギンたちはギャグ要員で、本編のレギュラーキャラのドラマの枠の外で遊んでいて、作品全体のイメージが暗くて重いだけの印象にならないように軽くするように努めている。
これは、篠房六郎さんがツイートしていた事に似ている。

sino6 篠房六郎

お笑いで重要なのは、舞台に立って、客が退屈してるなと感じた時どれだけ即興で対応出切るか、と言う事。ウテナピングドラムのすごいのは、ふざけたシーンは的確に話の流れ上、間が空いてしまった時に的確にやっているのと、それが本当にアドリブで、適当に遊んでいるように見える事。

7月29日

https://twitter.com/#!/sino6/status/96604337404526593

うむ。上手いな。
季刊エス輪るピングドラム特集の幾原監督のインタビューでも、

ウテナの頃は実家の母に「わけわからん」って言われたけど、ピンドラでは「孫が『ペンギンが可愛い』と言って見てるよ」と言われた。

季刊 S 2011年10月号(36号) [雑誌] ?

季刊 S 2011年10月号(36号) [雑誌] ?

と、語っていた。
イクニは甥っ子姪っ子に作品を見てもらえるのか。よかったな。こどもも見てくれるアニメは大事だよな!
深夜アニメだけど!
絵柄はかわいいけど、内容は子供が見たらトラウマものになるのは少女革命ウテナの頃からですね!ファビュラスマックス!


輪るピングドラム 1(期間限定版) [Blu-ray]

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  • 今回の反省。

放送した日に体調を崩したし、画像キャプチャーとか説明図とか長文で時間がかかって、放送から1週間経ってしまった。
関西ではもう11話が放送されてるけど、まだ見てないよ。
関東よりは早いけど・・・。
こういう風に画像を整理したり、演出を解析すると細かくなるし、絵コンテを読んだ方が早いし、時間がかかるからもうやりたくない。
ウテナ信者のまっつねさんがやればいいんだ。
ていうか、2ちゃんねるまとめブログとか、コメントで「作画が崩れた」とか「つまんね」とか「話が進んだねー」とか「怖い」とか、短い文章しか書いてないのがずるい。
っていうか、もっとオタクっぽく長文をかけよ!
キャプチャーするなら、画像の意味性を解析しろよ!オタクだろうがよ!


でも、普通の社会人はオタク活動は短文コメントで済ませて、他の時間は真面目に働いているんです。無職で長文ブログを書く僕の方が悪いんです・・・。
すみませんすみませんすみません。



11話の感想は簡単に済ませるぞ!

ノルニル・少年よ我に帰れ

ノルニル・少年よ我に帰れ