玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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3クール目の富野絵コンテ前篇。30話 「怪力ガンマー脳天つぶし!」

あらすじ

孤独な洸に、母のぬくもりを感じてもらおうとレッド団がダンの母親を連れてきた。だがライディーンは彼らをかばって右肩に重傷を負う。執拗に右肩を狙う巨烈獣ガンマー。その時、洸は神面岩から発見されたタブレットに母の手がかりが記されていると知る。母のため全力で巨烈獣を倒す洸。神面岩に残された棺には、母の顔が彫り込まれていた。人工冬眠によって、母は現代に甦ったのだ。ひびき博士、明日香麗は今もどこかにいるはずの母を捜すため旅立った。
勇者ライディーン|WOWOW ONLINE

解説!

#30「怪力ガンマー脳天つぶし!」: 色・彩(いろ・いろ)
http://chai-chau0347.moe-nifty.com/blogbox/2006/11/30_a8d1.html

いまいちどこら辺が脳天つぶしなのかわからない話だったのだが・・・。なんかライディーンはこういうプロレスの煽り文句みたいなサブタイトルが多いよな・・・。
えーと、今回の敵の巨烈獣は、全身にカッターを装備したロボット怪獣で、力が強く、かつ、脚のロケットで自在に空を飛び、頭が鳥です。


で、今回は第三クールに2つある富野喜幸斧谷稔)絵コンテ回の1つ目。
テーマは母!そして仲間!
それと、第2クールまで監督だった富野監督によって、人員整理と、母への想いというストーリーの説明が行われるという話。
人員整理は、シャーキンの入れ替えとかやってるけど。
ひびき両博士と、アスカ・レイがチベットに旅立つという人員整理です。アスカ・レイは明らかに富野好みの大人っぽい神秘な女という感じだが、そのラストシーンは富野本人が決着をつけたということか・・・。今後、実質的に出番はなし。
それと、ひびき洸の母が1万2千年前に滅んだムー大陸から人工冬眠をしていて、それがチベットの遺跡と関係している、というオカルト要素で話の縦軸が補強された。アクエリオンみたいな設定だな。(ていうかアクエリオンラーゼフォンライディーンのオマージュ)
そして、その失踪した母をさがすために、洸の父と祖父のひびき両博士がムトロポリスの地下の人工冬眠機に残されていた遺跡の文字を頼りにチベットに旅立つという。結構、ストーリー的な転換でもある。
脚本は五武冬史さん。この人もザンボットとかザブングルとかGガンダムなどで濃い世界を描いたベテランでメインライター。

  • 母親

今回、洸が母親の人工冬眠機を見つけて、急に母を恋しくしなって、海に向かって「かあさーん!」とか叫ぶ。

それを後ろから仲間たちに見られている。

この、一番下手の崖に小さく映ってるという構図が、洸のマザコンぶりの気の毒さというか、弱さを表現してますね。惨めったらしい。
そんで、友達の荒磯の母親に一日母さんをやってもらうっていうくらい憐れまれる。
情けないな・・・。
っていうか、荒磯は父親がいないだろ!二人とも片親なのにな・・・。親友なんだけど。


そんで、レッド団の荒磯は巨列獣に不用意に戦いを仕掛けて、死にかけて母親に「危ないからおやめ」って、心配させる。
母親がレッド団の子供たちを庇おうとして、それをかばったライディーンが中破して洸の肩の骨が折れる。
リアルに折れる。
なんかライディーンのコックピットの天井についている20センチ四方のトランジスターみたいなものが落下して、
ひびき父「肩の骨が折れている。ライディーンに乗っていなかったら即死だった」

普通に怖い。
洸がかわいそう・・・。洸は強がって「戦いにけがは付き物だ」と、荒磯の母親に言う。
しかも、荒磯の母親は洸に怪我をさせたことをスルーして「レッド団を解散させるように洸さんから言ってくれないかね」って言う。母親のエゴイズムだ。子を思う母が洸に重圧を。
だが、レッド団は洸への友情があるから戦場に出てしまう。「自分一人で戦っている洸を見捨てておけないんだ!」と。でも、邪魔だよ。めんどくさいなー。こういう人間関係がめんどくさい。
マリは「レッド団は洸が命令して出撃させてるわけじゃないんだから、荒磯のお母さんの言ってる事は酷い」と言う。
洸は洸で、マリに「母親って言うのは子供が心配なんだろう・・・。俺の事を本当に心配してくれる人はいるのかな・・・」と、孤高のヒーローのような事を言う。自分の事を心配してくれてる女に向かってな!
富野らしいわ。
人間関係が実にめんどくさい。
ちなみに、洸がこういう当てつけを言ったせいか、次回、マリは戦闘機に無理やり乗って死にかけて、そのままパイロットになります。マリは健気というか・・・。
女らしいというか。洸も罪作りなイケメンだ。



と、言いつつ2回目の戦いでは荒磯の母親は「洸さんに何かあったら、どこかにいる洸さんの母さんに申し訳がないから!」と言って率先してボインダーに息子の荒磯と一緒に乗りこんで戦う。役には立たない。
あと、荒磯の母親は美形の洸が好き。


んで、ライディーンは右肩をやられているので案の定ピンチだけど、電撃を喰らって悶えている時に、荒磯から「負けたら母ちゃんに会えなくなるぞ!」と言われ、基地のひびき祖父には「粘土板を解読したら洸の母が居る場所の手がかりがわかった」と言う通信が。戦闘中なのになー。

で、洸は母親に「頑張って戦え」って言われる幻影を見て、パワーを出す。そして、特に理由もなくファイトが出て、映像の原則的に下手から上手に移動して、パワーアップして勝つ。特に理由はないが、根性が出たので勝つ。「ライライライラーイ!」
映像としては分かりやすいが。
「やったぜ、母さん」


しかし、この母親の幻影は母親本人のテレパシーなのか、母親の記憶がライディーンに宿っていたものなのか、洸の妄想なのか。多分妄想だと思うが。
洸の母のレムリアは、幼少期の洸やひびき家を放ってチベットで最終兵器を一人で作成するために疾走してるような女だしなー。


荒磯の母親が洸に惚れてるし、子供たちを守ろうとしてたけど土壇場で戦闘派になったり、洸の母親が戦いを炊きつけたり、優しいだけでなく戦闘的な母親、っていうのは富野らしく、一筋縄ではいかない所かもしれん。
脚本の五武さんもザブングルとかGガンダムとか、パワフルな脚本で知られますが。


母親たちが子供を守る優しさと、子供を戦わせる攻撃性の2面性を持つって言うのはトミノっぽいかも。
まー、脚本のどんでん返しの面白さと言う点ではスタンダードかもしれん。子供向けアニメだからそんなに難しく考える事もないか。
でも、富野アニメにおいて母親って言うのはすごくめんどくさいポジションの人たちだからなー。

  • 女と恋

いきなり母親が恋しくなった洸が(というか、母親が死んだのではなくて失踪したという事を知ったからか)マリに向かって「母親はいいよなあ。俺を本当に心配してくれる人はいるんだろうか」とか言ってしまうのは、イケメンとしてずるいと思う。
普通の男が言うとマザコンだしキモいけど、イケメンが言うとひどくずるい台詞だよな。洸は天然の女たらしなのか。


そして、ラストシーン、明日香麗さんがチベットに旅立つと、荒磯がマリに「よかったね。マリさん。恋敵がいなくなって」と口を滑らせて、「なにーっ!」っとキレるマリ。図星を付かれたか?
こういう女心のめんどくささは富野らしいなあ。
荒磯がマリに対しても洸に対しても愛されないけど、彼らを愛している二番手のブサメンというのも、なかなか健気で味わい深い。まあ、口を滑らすアホなんだけど。


レイに対してライディーンで見送りをする洸はレイが好きだったのかもしれんが、単におふくろをさがしてくれる人と言うくらいの意識だったのかも。
アスカ・レイは富野らしく神秘少女で大人っぽくて元シスターで、超能力も使えて戦闘機にも乗れるスーパー美少女だったのだが。っていうか萌え記号が多いのだが。ここで退場。
ライディーンとの魂の結びつきのある少女のドラマをもうちょっと見たくもあったけど、そこら辺は描かれなくて3クール目からはリストラされた。
神秘少女自体は、富野はララァとかブレンパワードのネリーまで、ずっと好きだったっぽいけど。
アスカ・レイは洸に対しての恋愛感情は持ってなかったっぽいが、大人っぽい美少女でトミノらしかったけど、子供向け戦闘ロボットアニメにはちょっと重すぎる女だったのかな。元ヤンの過去があるし。


‐戦闘の絵コンテのトミノっぽさ
まあ、富野にとって、ロボットアニメデビュー作のライディーンなので、80年代以降の富野ほどロボットの戦闘の動かし方が上手いというわけではない。
(というか、巨大ロボットものというジャンルが鉄腕アトム(の中の大きめの敵)&鉄人28号マジンガーZくらいしかなかったので)

が、やはり後年の富野らしさを感じることはできる。
あと、バトルシーンの殺陣はトリトンの頃より格段にうまくなってる。あと、アトムの頃より格段に動画の枚数が増えた。カラーだし。(老人みたいな発言)



ここで、ライディーンが敵に吹き飛ばされて、ライディーンの頭の角が地面に刺さるのが、富野らしいリアリズムだなあ。細かい所だけど。ライディーンの固さとか戦闘の速度を表現かな。
ブレンパワードで、ブレンの耳が地面に刺さらないで、耳が曲がる所がかわいかったですね。



あと、ライディーンが逆さまになっているので、操縦席の洸から見た画像が逆さまになっている。細かい。というか、初見では気付かなかった。わかりにくい。
戦闘中に逆さまになっているのがリアルとして有名なのは、機動戦士ガンダムシャア専用ザクガンダムの最初の対戦でのシャアザクの宇宙空間機動のシーンです。
そんな後年の演出へつながる富野らしさを感じましょう。



敵の攻撃で破壊される家のスケール感も、機動戦士ガンダムの第1話のザクが木をなぎ倒すシーンの巨大感に繋がる富野らしさですね。ウルトラマンゴジラなどの特撮からの影響も感じましょう。

この破壊された家の中の女性が赤塚不二夫のマンガみたいな絵柄になっているのは70年代という時代を感じさせますね。絶対死んでるのになー。イデオンの頃の板野一郎ガンダムSEEDなら、もっとグロくしている。板野さんは絵の方面でリアリズムを表現したアニメーターだしなあ。





小型ロボットのボインダーに乗っている荒磯と、ライディーンや怪獣の対比のスケール感も富野らしいですね。端的に言えば、∀ガンダムカプルから顔を出してるソシエですね。

これで、ボインダーのデザインがもうちょっときれいだったら・・・。劣化ボスボロットというポジション。
∀ガンダムカプルは可愛らしさとユーモラスさとメカらしさが上手く混ざった良いデザインと、操縦方法でしたね。ガンダムZZからの流用なのにな!!!
あと、荒磯が戦場に危機感なく出ている事の危なっかしさも∀ガンダムのミリシャみたいだな。荒磯の母親までが一緒になって戦うというオチもミリシャっぽい荒々しさかも。



ライディーン!霞打ち!」
スーパーロボット大戦でも異様に技の多いライディーンですが。装備自体も多いけど、こういうバリエーションも多い。ゴッドブーメランを投げるだけの技ですが、ひびき洸が適当に叫んだ技の名前です。ライディーン霞打ち。
いまいちどこら辺がどう霞なのか全くわからないのが素晴らしく富野ですね!チャクラエクステンション!ユニバース!月光蝶である!オーバーマルチキック!ダブルディスパッチだ!ビームコンフューズ!
富野監督はリアルロボットの人と思われがちですが、こういう無意味な技の名前を叫ぶスーパーロボット的な演出もすごく多いと思う。

藤丸地獄変っていうゲームに霞打ちの松吉っていうニンジャがいます。
木目金はその文様から銘木の一種、鉄刀木(たがやさん)になぞらえて、「タガヤサン地」とも称されていました。また、明治には「霞打ち」と呼ばれたこともあります。
合気道柔術の剣法に霞打ちという技があります。ですが、「左手でブーメランを投げて敵の脚を払う技」ではありません。
意味が分からん。
しかし、まあ、やっぱりライディーンの富野回は忍術小説の影響があるなあ、と思う。時代性かなあ。ライディーン自体のデザインが、西洋風の(ミケーネ文明の遺産である)マジンガーZに対して和風甲冑をモチーフにしているからね。剣豪小説の流れをくんでいる。
後のガンダムVSグフやνガンダムVSサザビーのチャンバラ映画っぽさに通じる富野らしさを感じましょう。
ムー大陸の遺産であるライディーンが何で伊達正宗の甲冑みたいな鎧武者みたいなデザインなのかという事を考えてはいけない!!!