玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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ブレンパワード第22話[乾坤一擲]

ブレンパワード 第22話 乾坤一擲(B-ch)

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脚本:浅川美也 絵コンテ・演出:森邦宏 作画監督:瀬尾康博


変なタイトルだ・・・。

けんこん-いってき 【乾坤一擲】<

〔さいころを投げて、天がでるか地がでるかをかける意〕運命をかけて大きな勝負をすること。
「―の大事業

大辞林 第二版 (三省堂

つまり、終盤でこういう大仰なタイトルが出ると言う事はどれほどの「決勝リーグ」的なスペクタクルアクションが見られるのかと期待していたのだが、すごく、生活感が溢れていたし、戦闘シーンもほとんど無かった。
のだが、ここでのやり取りがラストを決めるターニングポイントだった、と言う事かもしれないし。脚本段階では大スペクタクルだったのを絵コンテで富野監督が変えたのかもしれない。


じゃあ、何がターニングポイントなのかと言うと、やっぱり依衣子姉さんなのかなあ。今回はいいこねえさん萌萌回でした。
依衣子姉さんは4着くらい着替えました。渡辺久美子
依衣子ちゃんですよ!あああああああああああ。
農作業得意。本質的には優しいんだ。上の村で育ってたし。それが、科学技術一辺倒のリクレイマーの中でのアイデンティティーを持たなければならなくなったからペルソナがこじれたんだな。
それで、ノヴィス・ノアに来てからの依衣子さんを見ると、子供たちの前ではいいお姉さんのペルソナを演じているのかもしれないと言う訳で、優しいお姉さんであるのはかわいいのだが、少し悲しい。
アイリーンの心理テストがどういうものかはわからんが、それに合格する、というのも他人に合わせる事に長けているんじゃないかと勘繰ってしまう。
言われるままにネリー・ブレンに乗って見せるのも。
そういう生き方をしてると、本当の自分が判らなくなって、(なんてバカな中学生みたいだけど)成人に近くなると(依衣子姉さんは19歳だ)アイデンティティークライシスというか、簡単に言うとやることとやりかたがわからなくなって困ったり、自分のやり方を強制する人に食い物にされたり、創意工夫が必要な社会現場において使い物に成らなくなったりするのね。僕みたいに。
戦争とかお金とかをアイデンティティに出来れば簡単なのかもしれんが、そういうわけでもないしねえ。と、言いつつも借り物のアイデンティティであっても現実的な行動力に繋がれるような人の方が瞬間的な力を出せのだからカリスマやそれなりの名士として扱われたりもするわけだし、実際そういう人の方が有能ではあるんだよね。そこら辺が難しいんだよなあ。
僕はグダグダ考えすぎなんだが。自分ルールがあればいいんかなあ。わからんな。
脳内妹の自分ルールは、「少しでもマシな人間に成りたい」です。
まあ、それもちょっと思い込みが強すぎるかもしれんのだが。妹はかわいいから良いか。


閑話休題
そんな依衣子姉さんなんだが、勇に向けて激昂してみせる、「ここに来てからの私、なんだか変だ」と思うような変化がおきている。
それは、オルファンでは自分のエゴを他人や人類のためだと履き替えて行動する人がクインシィの周りに居て、クインシィに目的を与えてくれていたのだが、ノヴィスでは基本的に「飯を食うために働く」というだけの目的で、その他の行動は依衣子のために行動してくれているから、自分のためという事に慣れていない依衣子は混乱したのか?
あるいは、勇に、グランチャーの事で、激昂すると言うのは弟とグランチャーが依衣子のコア部分であるから、その二つがぶつかり合う事に対して過剰反応したのだろうか。
しかし、その過剰反応も依衣子ちゃんは優しいから他人に対してのものなんだよな。
他人というか、グランチャーの心を解かろうとするため。
グランチャーの心を分かれるクインシィというのは、宇都宮比瑪と同じくらいの深い優しさを持っているのかもしれないし、やっぱりこの人もヒロインなんだよなあ。女神なのかもしれない。

クインシィ 「解かろうとしてやれば、こんな所でブレンパワードに乗って気持ち良さそうに暮らしているわけがない!」
勇 「楽しい事ばかりあったわけじゃない!」
クインシィ 「それでもオルファンにいるよりは良かったんでしょう!?辛いから逃げたんでしょう!?残されたあたしの辛さなんか考えもしないで・・・!」
勇 「・・・だから何度も、俺はオルファンから出ろって言ったじゃないか!」
クインシィ 「どうして逃げられる!辛いからって私までいなくなる事なんて出来っこない!・・・うっ、くううっ・・・」
http://damegano.web.infoseek.co.jp/brain22.html

こういう葛藤は長女で長子の依衣子姉さんらしい。
家族が崩壊していても、弟のように要領よく家を飛び出していけないで、なんとか周りに気を使って絆を維持しようとしつづける。弟の要領のよさに怒りを感じても、自分も要領よく行きたいわけではないし、誠実にやっている事を認めてもらいたいだけ。
依衣子さんは親思いの女の子なんだなあ。やさしいなあ。
そこら辺の要領の悪さは僕も長男なので共感はする。まあ、僕は親不孝ですけど。
で、娘が優しくても親は依衣子の事を思っていないでオルファンの事を考えている。
だとすると、依衣子がクインシィを名乗って親とは他人のように接してオルファンのアンチボディとして振舞っていたのは、親が思うオルファンのためになる事で親のためを思っての事でという歪みか?
依衣子ちゃんは要らない苦労を背負い込みすぎるなあ。


そして、グランチャーが暴走する。
クインシィと離れて寂しかったんだろうな。
あるいはいじめ?ネリー・ブレンが「嫌いな奴 排除  きらいなやつ いなくなれ
」と、クマゾーに言う。
だが、ブレンの声を聞けるようになったはずの勇には何も言わない。陰湿だなあ。
勇がグランチャーを嫌っている事は知っているからか?
ブレンパワードって言う奴も図体はでかいけど決して神様とか王蟲のような雄大な存在ではなくて、TV版のカミーユ並の怒りん坊で馬鹿な事もする奴なのかも。
とまれ、ここらへん、ネリーブレンとクインシィグランは特別なアンチボディなので、どこが嫌いなのかはよくわからんのだけれども。


ともかく、クインシィはグランチャーに向かって叫ぶ。
「飛べ、あたしの分身!世界を翔けろ!あたしの代わりに!おまえには、それが出来る!」
依衣子姉さんは女だから、長男である僕以上に葛藤は大きいのかも知れんな。
長子だから家を維持する責任感はあるけど、女だから家を継ぐという事は出来ない。勇の方がアンチボディの特性があると依衣子よりも後に引き取られてもてはやされた(惣流・アスカ・ラングレー?)。その勇は家を出た。自分で自分の幸せを考える事も出来ない。
その代わりに、自分と共に在ったグランチャーに世界を翔けろと言う。性別の無いグランチャーが依衣子の子供で人形遊びの延長なのかもしれない。


依衣子ちゃんの怒り方のきっかけや行動はアニメの構造としては電波なのだが、女の怒り方としてはすごい生っぽいな。感情の持っていき方が。
デフォルメはしてあるけど、それこそが物語りの醍醐味と言う訳で。


だが、世界を翔けろと言われたグランチャーはオルファン以外に行く場所も無いのだ。ソレがクインシィの人生経験の結果である。
だから、僕は、見た後に無性に泣けてきた。依衣子ちゃんが優しくて弱くて悲しくて。


新世紀エヴァンゲリオンの終盤を見て、涙した女性がいるから、その女性のためにエヴァを作ったと庵野秀明監督が言っていたような記憶がある。
エヴァにはそういう生々しさは在った。でも、ブレンパワードはもしかするとそれ以上の深さかもしれん。
エヴァは子供と父親の葛藤を描いたが、碇ユイや惣流キョウコは聖母として距離を置くしかなかったのが、まだまだ子供っぽい。ブレンでは母親や女の葛藤を曾祖母の代から、家族史の因縁として描いている。それに振り回される男も。
そして、エヴァの先を行っているとも思う。それは最終回のお楽しみですが。
なので、庵野氏が

ブレンパワードは・・・・・・1分半くらいだけ見たなあ・・・・
古かったッス
http://wijayu.at.infoseek.co.jp/scan/18.jpg
http://wijayu.at.infoseek.co.jp/scan/ero_anno.htm

というのは非常にもったいない。
まあ、エヴァをやった庵野氏からするとエヴァの焼き直しのポストエヴァだという売れっ子の傲慢な認識があったのかもしれないし、古参の富野監督がエヴァの真似をして古いスーパーロボットのエッセンスで作ったと思って古臭いと思ったのかもしれん。食傷というか。
あるいは、自分の作品を否定されるかもと思って避けていたのを虚勢を張っていたとか。
もったいねー。どんな理由でも娯楽を放棄するのはもったいない。
まあ、庵野氏のように大人になって仕事が忙しくなるとアニメを見る時間もなくなるのは、そりゃそうだよなあ。
その、作品との縁って言うのは作品の良し悪しと自分の都合があるわけで、そこは履き違えたくないな、と。
自分が愛でている作品は良いと思っているわけだが、自分が良いと思っていない作品が必ずしも良くないのではなくて、自分の都合で自分には合わなかったという事もあるんだしなあ。それを作品がダメだという風に思うのは自己欺瞞っぽいかなーと。
とか言いつつ、新訳Zガンダムのマーケティングを踏襲して映画まで造ってしまうということは復活後の富野のことは認めているという証左に成るか?
庵野氏もブレンパワードを見てくれていると嬉しい。というか、一人でもブレンを見てる人がいると誰でも嬉しい。


クインシィ・グランが異物である義足を指で弾くのが印象的だった。
あの素材もオーガニック・マテリアルなのか?



クインシィが受け入れられる事にイラつくカナンの描写はとてもいい。カナンらしい。
でも、カナンもイラついてるだけじゃなくて、泣いてる依衣子さんを見て認識を改めて、勇を励ますという風に感情のラインの帰着を落とし込んでるのは良い。
他のキャラのリアクションとかナッキィとカント君の生死とかが気になるところだが、ブレンパワードは只でさえ無駄が無く詰め込みすぎなので、いたしかたない。
富野作品はやっぱり3クールが合ってると思う。でも、39話って変則なんだよなあ。
しかし、wowowなんだから少しくらい融通が利かないの?キングゲイナーも放送時間の変更とかは出来たみたいだが。やっぱりテレビ放送の制約って言うのはあるのかなあ。そこら辺、リーンの翼はネット配信なので特攻隊とか在日米軍とかアマチュアテロリストとか内容面では好き勝手に出来ていたと思うんだが、6話・・・。いや、あれは映画を作る練習だったわけで!と思う。
なにしろ富野監督は100歳まで現役ですからネー。死にたいとか引退したいとか言いながら核爆弾から平和を守ったり娘の恋路を邪魔したりする。それは迫水!


小説を読むと、カント君は帰ってきているようだ。1行しか書いてないけど。
ちなみに、やはり3巻になってから富野監督っぽい言葉遣いになってきている。面出明美さんが似せてるのかもしれないけど。トミノ語は小説としては破綻していると良く聞くのだが、僕はトミノ語は情報の圧縮という点ではかなり便利だと思うんだよね。高速言語による呪文詠唱で上位魔法を発動!
でも、富野監督が書くと1話1章という構成にはならないかなあ。


しかし、勇のあのパジャマは無いよな!もっと比瑪の事を心配しろ。寝るな。
勇が居なくなった時の比瑪はメチャメチャ心配していたのに、勇ったら!姉さんの事ばかり考えて!このやろー。
まあ、いろいろあったんで1日2日くらいは休んでもいいか。
つか、比瑪について心配してない事に、ボクも1週間くらい気付かなかった。依衣子姉さんでおなかがいっぱいになってたのさ。


ゲェーッ!ケイディイイイイイッ!
生きてたのもビックリだったが、オルファンに帰還したと思ったのに!げぇーっ!
ノヴィス・ノアは適当すぎる・・・。カナンも勇もケイディの存在を黙認しているようだ。
つーか、本名で潜入の上にイニシャル・・・。長期潜入って、それは潜入とは言わない。
人手が足りんのか。
核爆弾のゴタゴタでノヴィスに収容された米軍兵がいたのかも知れんし、それにまぎれたのかもしれんが。それにしても。
こんな終盤でメインキャラの出番を削ってでもド脇役を再登場させて作品の幅を広げているというブレンパワードの構成は類を見ないし、こういうことをやろうというスタッフの姿勢はすごい。
それに、彼のような脇役が変わる姿を見せる事で、メインキャラが変貌するというドラマに説得力を持たせるとか、違和感を無くすという構成にもなっているわけだな。
ここら辺は富野作品らしいし、作品の作り方のスタンダードでもある。Gアーマーが出る回にド・ダイを出してモビルスーツが浮く世界観だとアピールする事で、Gアーマーだけに違和感を感じさせる事を回避したり。まあ、それが成功していると見るかは人それぞれなんだが・・・。
うーん。ブレンパワードはこうして考えるとすごくスタンダードに作っている部分もあるんだけど、電波だ電波だといわれるのはどういうわけか。わかりやすくはつくってないんだなあ。
しかし、トミノ作品になれすぎると他の作品のセリフや構成は分かりやすく作るための作為が見えすぎて拒否反応を起こしてしまうので、それは不便かな。
本当に上手い物は上手いのだが。


ここでヒギンズが突出する理由はよくわからん。女として満たされているようだったのに、功を焦る理由がわからん。まあ、ノヴィス・ノアとしては核攻撃をされた後に打つ手がなくなっている状態であるわけだから、オルファンに潜入できるチャンスを機と見たのか。
しかし、勇にオルファンの話を聞いてからアイリーンとちゃんと作戦を練って比瑪を捜索するなり何なり、手順を踏んだ方が良いんじゃないかなーと思う。
ノヴィスの人は勝手過ぎる。正式な公務員の集まりという雰囲気ではなくて流れ者やあぶれものの吹き溜まりっぽいわけで、ナデシコっぽくもあるんだが。そーいうのがドラマを動かすのか?
下衆の勘繰りをすると、レイト艦長の事を信じているとわざわざ言うのは自己確認の裏返しで、近くに居るけど別の船に居るから欲求不満が溜まっている?愛があるという事はステキだが、それを確認しなければ居られないというのは困った事だ。レイトが潜水艦で追いかけてくるのを期待したか?
んで、オルファンと分かり合えるかもしれないという風に示しつつも、味方のキャラクターがそれについて行けないでオルファンを潰すという当初の目的に凝り固まって行動してしまうという図式を示すのは高度だなあ。
こういうキャラはオールドタイプ的だから死んでしまってもおかしくないのだが、ブレンパワードではなかなか死なないねえ。