玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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オーバーマン キングゲイナー18刃の脆さ

脚本 野村祐一
絵コンテ 北村真咲
作画監督 井上哲
演出 羽生尚靖
野村脚本らしく忍者の話である。そして、不安の話である。
これ、結構好きなアイディアなんだよね。不安だからこそ不安の中心に切り込むって言うアイディアは好き。
また、ゲイナー・サンガの両親を殺したヒューズ・ガウリが自己犠牲的に自爆しゲイナーに自分を殺させようとすることでゲイナーと決着をつける。また、ゲイナーも親を殺したヤーパンのエクソダスに自覚的に手を染めるって言う通過儀礼の話なんだろう。
だけど、噛みあってないな。
アイディアはいいんだけど、決着へ行くまでのタメが足りない。というか、決着に行くまでに見せるべきものがすかされてるから説得力がないよなー。
ゲイナーがガウリを摘み上げる所でガウリがへたり込んでガチコの影に隠れてるとか、そう言うところ。
あと、作戦終了後にゲインがゲイナーの代わりにガウリを殴り、アデット達がガウリを許すって言う共同体の禊ぎ的なシーンで、ゲイナーがその場にいないって言うのは気持ち悪い。ガウリを持って帰ってきたのはゲイナーだからいるはずなのにいない。というかゲイナーがその場を見ていないで、サラと2人っきりで心情を言うって言うのもなあ。
いや、サラの前だけで泣くって言うのは構図も決まってたし、絵の演技も良かったラストシーンだからキモのシーンだったんだろうな。「優しさ」っていうキーワードで。ただ、大河内脚本以外でも、若手ってキーイメージ優先で他のシーンに力が入らないって言うのはあるのかも?
好きなシーンを上手くできるのは当たり前だし、ひどい事を言うとアイディアは誰だって出るんだよな。その繋ぎ方ができるかがプロかどうかだと思うので、そこら辺は私も他山の石としてだな・・・。脳内恋愛の整合性をだな(笑)
各話ごとの面白さを追及してシリーズとしての整合性は無視って言うのはあるかもしれないけど。でも、1話の中でも雰囲気が上手く流れてない気が。
サラがパンサーに乗ってないって言うのも理由が分からんし。ガウリがガチコを持ち出してっていうのは乗換えには必要かも知れんが、楽屋の理由が透けてガウリの理由が見えない。


うーん。キンゲっていうのはおバカなお祭りアニメにしようって言う演出方針と悲劇的な要素とがかみ合わないって言う面もあるのだが。だがなあ。キンゲの仮想敵だったクレヨンしんちゃんの映画版も割と悲劇的な要素はあったりするんだよな。要素としては。
ただ、サンライズの富野アニメだからだろうか?いまいち弾けきっていないのが煮え切らない。いや、弾けた話はすごく良いんだけど。
作画の問題かなあ?今回は。カット割のテンポが遅いって思ったのは絵の密度が足りなかったから?あと、芝居ももたついてたかも。
吉田健一氏が

「僕はそれまでオーソドックスな普通のアニメしかやってこなかったので、いわゆるコメディ的な作品ってどう描けばよいのか迷っていたんです。それならば、いっそ大まじめにしっかりとした作画をすることが、シチュエーションコメディを成立させるのではと思い愚直にまじめな作画をめざしました。」
http://dargol.blog3.fc2.com/blog-entry-1403.html

っていう方針にしたのもちょっとあれだったかなー?吉田氏はジブリ畑の人だったから作画リソースに頼れない時にディフォルメとカット割の勢いで飛ばすって言う感覚はあまり無いかも。Gガンとか。
うーん。でも、レイアウト段階からちょっと今回はおとなしかったなー。「サラのハートにオーバーヒートだ!」はもうちょっとゲイナーに寄った方がバカっぽく見えただろうに、引いたカメラ位置が冷笑的で乗りにくい。
ま、どこらへんが絵コンテでどこからが作画段階か、見ただけではわからんって言うのはオーガニック的に絡んでるんだけど。
今回は不安がテーマだったんだけど、キャラクターが元気がなくなるって言うことを示すのに作品まで元気がなくなったら面白くない。クレヨンしんちゃんだったら、不安で落ち着かないって言うのをもっと珍妙で小刻みな動きで書いたんだろうと思う。
福本伸行のざわ・・・ざわ・・・ぐにゃ〜〜〜
みたいな萬画符号演出を使っても良かったんじゃないかーって思う。一部、そう言うところはあるんだけど、やっぱり全体的には富野アニメのリアルっぽさに引っ張られてるか。
ガウリが大衆演劇のような夢を見るシーンも、もっと様式的にハッタリを効かせたギャグにしてしまっても良いのに、ちょっとまだ照れがある感じで、そう言うネタが一番滑る。




あと、音楽も妙にたるい。田中公平は好きなんだけどね。ガオガイガーとか。
∀ガンダムの音楽のアニメとのマッチングはオペラかと思うほどはまってるんだが、キングゲイナーも同じ音響監督の鶴岡陽太氏なのだが。
どうも、劇伴曲の最後の「ジャジャジャンッ!」っていう所だけを合わせようとして1曲ダラっとかけてる感じのが多い。
で、キンゲって割と細かいネタが入ったり、負けてたと思ったらトンチで逆転したりって言う風に、シーンの意味合いや雰囲気がコロコロ変わるんだけど、そこで音楽の調子が一貫していると、絵と音が不協和音だったり。
難しいんですよねえ。戦闘シーンでガーっと勢いで行くだけの曲とシーンなら合うんだが。
でも、コメディーってそう言う所も敏感にしないと笑えなかったりするのさ。僕がちょっと最近笑う気分じゃないからかも?


富野由悠季個人が鬱だった経験が、不安のオーバースキルに影響しているかという事はちょっとわからん。
不安の中心に切り込むって言うアイディアはいいんだけどな。ちょっと唐突で、ゲイナーが不安を感じている描写が足りてないけど。
でも、面白いと思ったのは、「不安だから戦いに行かないと」って罪悪感を不安に刺激されたガウリはガチコを持ち出して自爆する。結果、カシマルの予想通りになる。(まあ、カシマルが「不安の元を叩きに来るだろう」っていう予想も変なんだが)
ゲイナーは「不安だから寝ていれば良いんだ」って言って寝てる。こっちの引きこもりの方が、下手に暴動を起こすよりはいいんじゃないかなあ?
まあ、ゲイナーは一旦出たら勝つけどな。主人公様だし。